あやかしと神様の昔語り

花咲蝶ちょ

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ドキドキデートと不穏の影

4☆恐々喜々の男

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「何者⁉︎」
 直感で危険を感じた橘は狐火を出して狐面の男たちに容赦なく投げつけ着物に火をつけボッと激しく燃える。
 仮面の者たちは一瞬怯んだ隙になって場から逃げようとしたけれど、橘はその場から体が動かない。
「な、なんで?」
 狐面の火がついたはずの着物はすぐに元通りになっていた。

「強いな….…さすが最強の狐の器だ…」
 そう言って、動けない橘に近づく。
(…ん?声がなんだか威津那に似てる…)
 狐耳なので声の判別が人の耳よりも敏感だ。
 威津那の声に似ているなら尚更敏感になる。
「でも、期待外れ…まだなってないんだね……」
「な、何に『なってない』って言うのよ!」
 橘は、キッと仮面の男を睨む。
「自我があるってことはそう言うことだ……」
 言葉遣いが偉そうなので、威津那とは違う……高圧的な性格だと思う。
 だけど、威津那と再会した時の恐怖の感覚を思い出す。
「九尾じゃないと、その程度なんだな…早く計画を進めてくれればオレが出てくることなんてなかったのになぁ……」
 男は悦に入ったような口調になる。
 正直言って気持ち悪い。
 犯罪者気質を感じる。
「九尾って……」
 威津那は九尾に拘っていたことを思い出す。
「もしかして、あんた達レッドスパイ…?」
 リーダーの狐面の男以外のものが橘を両脇から押さえ込み尚更逃げられない様にする。
「知ってるんだぁ……?むしろ裏切った威津那が何もかも喋っちゃったのかなぁ?あのバァカは?」
 裏切られた怒りよりも悦に入っているのがやはり気持ち悪い。
「レッドスパイは裏切り者を粛清しなきゃいけないんだよ…それも、心えぐるような制裁を……ふふ」
「あ、あんた達なんか全て潰してやるんだから!」
 狂気を彷彿するこの男に.これくらいの言葉しか反論できなかった。
「威勢がいいね、九尾になるまで君の処女はまだ奪わないであげる……」
 そういって、突然スカートを捲り股を遠慮なく弄る。
「なっ!いや、やめろっ!触るなっ!」
 あまりのことに橘は瞳を金に煌めき、弄る男に火をつけてやるとさっと手を離して火を消す。
 恥ずかしさと悔しさと殺気で男を睨む。
「フーッ!フーッ!フーッ!」
 声も出ず威嚇しかでてこない。
「ふふ…いい反応だ…嫌いじゃないよ」
 そう言って指をV字に橘の瞳の前におく。
「っ!」
 それは瞳を容赦なく潰すと言う脅しだ。
 恐怖で胸が冷たくなる。
 怖さで涙がでてくる。
 本気の恐怖なんかこれが初めてだ…
 威津那が悪戯で宮中に呪詛をかけたとかですらこんな恐怖は味わったことはない。
 それは本気ではなかったとわかるけれど……
「君はこれから僕の管狐として働くんだ……」
 管狐…威津那がよく言っていた狐を式神にする呪術……
「イヅナの一族……」
 イヅナの…黒御足の力ある異能者か……どうりで体が恐怖で動かないはずだ。
「ご名答、さぁ、口を開けて、これを飲ましてあげる……口付けで……」
 橘は男が取り出した怪しげな小瓶の中に妖気が漂うのを見えた。
「い、いやっ!威津那!…助けて!」
「威津那の顔を見たら落ち着く?」
 男は仮面を外す。
 橘は驚きのあまり瞳を見開く。
「威津那……?んんんっ!」
 威津那に似た男は強引に橘の唇を奪い何かを流し込んだ。
 橘は気を失う……
「目が覚めたら威津那を、弟を…お前が殺すんだ……
 そして、九尾となり日和を我らの父の瑞兆として寿ぐんだよ……」
 不吉な言霊を男は言い橘の頬を撫でて不気味に微笑んだ。
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