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威津那と高良
4☆穢れた力
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「これがあのお方の子息の代物か……」
レッドスパイの異能部隊の黒山は部隊を呪詛されて壊滅させられた腹いせに威津那を呪詛するため威津那の念がこもっている物を盗み、威津那に気遣う人間を始末した。
宮中にスパイに入ったくせに、仲間に対して呪詛をして何を考えているかわからないが黒御足の御曹司で皆一目置いていることも気に食わない。
組織に与しているくせに、自由に行動し本気でレッドスパイに酔心しないとにかく気に食わないやつだ。
「隊長を任された俺が威津那に負けるはずがない、悪くて対等だ…」
黒山の能力は念の力を見る事。
さらに念のを追えば大切にしている物や思考まで知ることができる。
威津那が借りていた部屋には呪術で稼いだ金しかなかった。
住んでいないのではないかと思うほどだったが、大家が保管していたカメラは念が一番濃く残っていた。
この念をたどれば呪詛を仕掛けることも可能だ。
宮中に忍んでいるのならば、カメラを威津那に見立てて破壊してその身を血まみれにさせ宮中を穢す贄にしてもいい。
宮中に入り込んでいるというのだからこっそりもとに戻してスパイ道具として使うのもいいな。
「ぐふふっ…いい作戦だ…あのお方にお褒めのお言葉を…いや、褒美までいただけるだろう」
妄想しながらカメラをベタベタ触っていたらバンッ!と壊れた。
「っ!?」
「あーあー…お気に入りだったのに……なんてことをしてくれるのかな……?」
黒い瘴気とともに現れた威津那に心臓が止まったかと思うほどびっくりする。
「俺はまだ何も……」
「そうだね、僕が壊したんだ」
「お前のせいじゃねぇか!」
黒山はツッコミを入れ怒鳴る。
怒ると威津那の不気味な力なんか怖くなくなり、強気に睨む。隙を伺う。隠し持ったナイフを用意する。
「だが、僕に優しくしてくれた宿主を殺したのはお前だろ……?」
威津那の声はドスが効いて低いが通る声で若き支配者の声音と風貌を持って黒山を見下ろす。
黒山はそれだけでも背筋凍る思いをしていた。
「カメラのレンズを見るがいい。そこに映るのは誰だ?」
威津那の命令には逆らえず、レンズを拾い見る。
そこには壊れたカメラのようにずたずなになっている、己の姿。
未来の姿…か?
まさか…
「もう、お前はこの世のものではない……」
烏の群れが窓を一斉に突き破った瞬間、烏の群れに空高くまで連れて行かれ落とされた……
威津那は壊れた大切なカメラのレンズを足で踏み割る。
「カメラにも呪詛を仕込んであるんだよね。僕の許可を得ない者が触ると呪いが発動するね……」
高良はさっきの様子を黙って見ることしかできなかった。
呪術を使うのに容赦がない。躊躇もない。さらに酷い処し方をする。
威津那は本当に恐ろしい呪術者だ。
だが……と、高良は考える。
「大家さんのお守りにもなると思ったんだけど、大家さんが先に物理的に処されてしまうとどうにもならないね……そこまで彼の事を考えていなかった僕の罪でもあるよね…」
威津那は心苦しそうな表情をして高良に同意を求めた。
「………」
高良は黙って威津那をじっと見る。
威津那は腹黒いが純粋だ。
「大家さんの件は残念だが、レッドスパイに対してはさっきのみたいに非常でなくてはだめだな。僕も……」
将来陰陽寮長ならばこのくらい、威津那の様に出来なくてはダメだと覚悟している。
レッドスパイや不定な暗殺者から陛下をお守りする裏の仕事を陰陽寮長は代々になっているのだから。
「正直、参考になったよ……」
そんな決意をする、高良の頭にポンポンと手をおいて、
「君が無理することはない、君は清く正しく美しく規律を守っていればいい、こういう役目は昔から黒御足がせおってきたのだから……」
宮中を裏切る前の黒御足は穢れた仕事を担う役目だったと、晴綛から聞いている。
だからと言って阿倍野や香茂が汚い仕事をしないわけではないが、宮中を守る神を依代にして身の穢を浄化しつつ宮中におわす存在を作ってきたと聞いている。
「今はまだ混沌の世がまだ落ち着かない。落ち着いた頃はそんな汚い仕事は少なくなるだろうから、ね?」
ポンポンと優しく高良の坊主頭を撫でる。
高良の威津那を見る瞳がキラキラと輝く。
兄のいない長男の高良には少し憧れの兄のように映った。
レッドスパイの異能部隊の黒山は部隊を呪詛されて壊滅させられた腹いせに威津那を呪詛するため威津那の念がこもっている物を盗み、威津那に気遣う人間を始末した。
宮中にスパイに入ったくせに、仲間に対して呪詛をして何を考えているかわからないが黒御足の御曹司で皆一目置いていることも気に食わない。
組織に与しているくせに、自由に行動し本気でレッドスパイに酔心しないとにかく気に食わないやつだ。
「隊長を任された俺が威津那に負けるはずがない、悪くて対等だ…」
黒山の能力は念の力を見る事。
さらに念のを追えば大切にしている物や思考まで知ることができる。
威津那が借りていた部屋には呪術で稼いだ金しかなかった。
住んでいないのではないかと思うほどだったが、大家が保管していたカメラは念が一番濃く残っていた。
この念をたどれば呪詛を仕掛けることも可能だ。
宮中に忍んでいるのならば、カメラを威津那に見立てて破壊してその身を血まみれにさせ宮中を穢す贄にしてもいい。
宮中に入り込んでいるというのだからこっそりもとに戻してスパイ道具として使うのもいいな。
「ぐふふっ…いい作戦だ…あのお方にお褒めのお言葉を…いや、褒美までいただけるだろう」
妄想しながらカメラをベタベタ触っていたらバンッ!と壊れた。
「っ!?」
「あーあー…お気に入りだったのに……なんてことをしてくれるのかな……?」
黒い瘴気とともに現れた威津那に心臓が止まったかと思うほどびっくりする。
「俺はまだ何も……」
「そうだね、僕が壊したんだ」
「お前のせいじゃねぇか!」
黒山はツッコミを入れ怒鳴る。
怒ると威津那の不気味な力なんか怖くなくなり、強気に睨む。隙を伺う。隠し持ったナイフを用意する。
「だが、僕に優しくしてくれた宿主を殺したのはお前だろ……?」
威津那の声はドスが効いて低いが通る声で若き支配者の声音と風貌を持って黒山を見下ろす。
黒山はそれだけでも背筋凍る思いをしていた。
「カメラのレンズを見るがいい。そこに映るのは誰だ?」
威津那の命令には逆らえず、レンズを拾い見る。
そこには壊れたカメラのようにずたずなになっている、己の姿。
未来の姿…か?
まさか…
「もう、お前はこの世のものではない……」
烏の群れが窓を一斉に突き破った瞬間、烏の群れに空高くまで連れて行かれ落とされた……
威津那は壊れた大切なカメラのレンズを足で踏み割る。
「カメラにも呪詛を仕込んであるんだよね。僕の許可を得ない者が触ると呪いが発動するね……」
高良はさっきの様子を黙って見ることしかできなかった。
呪術を使うのに容赦がない。躊躇もない。さらに酷い処し方をする。
威津那は本当に恐ろしい呪術者だ。
だが……と、高良は考える。
「大家さんのお守りにもなると思ったんだけど、大家さんが先に物理的に処されてしまうとどうにもならないね……そこまで彼の事を考えていなかった僕の罪でもあるよね…」
威津那は心苦しそうな表情をして高良に同意を求めた。
「………」
高良は黙って威津那をじっと見る。
威津那は腹黒いが純粋だ。
「大家さんの件は残念だが、レッドスパイに対してはさっきのみたいに非常でなくてはだめだな。僕も……」
将来陰陽寮長ならばこのくらい、威津那の様に出来なくてはダメだと覚悟している。
レッドスパイや不定な暗殺者から陛下をお守りする裏の仕事を陰陽寮長は代々になっているのだから。
「正直、参考になったよ……」
そんな決意をする、高良の頭にポンポンと手をおいて、
「君が無理することはない、君は清く正しく美しく規律を守っていればいい、こういう役目は昔から黒御足がせおってきたのだから……」
宮中を裏切る前の黒御足は穢れた仕事を担う役目だったと、晴綛から聞いている。
だからと言って阿倍野や香茂が汚い仕事をしないわけではないが、宮中を守る神を依代にして身の穢を浄化しつつ宮中におわす存在を作ってきたと聞いている。
「今はまだ混沌の世がまだ落ち着かない。落ち着いた頃はそんな汚い仕事は少なくなるだろうから、ね?」
ポンポンと優しく高良の坊主頭を撫でる。
高良の威津那を見る瞳がキラキラと輝く。
兄のいない長男の高良には少し憧れの兄のように映った。
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