50 / 161
威津那と高良
3☆大家と威津那
しおりを挟む
もう、警察は調べ尽くして、そのまま貸家は放置されているが取り壊しになるだろう。
威津那と同じく貸家を借りていた住人は不吉なことがあった貸家を引っ越そうとしている家族が荷造りをしていた。
「あ、黒羽さん、あなたも引っ越したほうがいいよ、大家さん死んじゃったし、まだ犯人捕まってないしね…いい大家さんだったのに…残念ね…」
黒羽は偽名で使っていた姓だ。
「もしかして、お前が犯人じゃ…ないよな?」
五歳くらいの子どもがお母さんの後ろからひょっこり現れる。
「その犯人僕が捕まえてボコボコにするから安心しておくれ」
「お、おう…」
といって、またお母さんの後ろに隠れてしまった。
高良は子供の心を覗くと、引っ越してきた威津那にいたずらしたら夜中赤い瞳を光らしたカラスが周りを囲んでいた事があった。
夢かと思ったら、朝、威津那は雀に餌をやるか如くに大量のカラスに米をまいていた。
その光景を見たとき威津那に恐怖を覚えたようだ。
高良は呆れた瞳で威津那を見た。
(こいつ。何するかわかんないやつだな……)
やっぱり警戒は最大限にして置くべきだなと心に決めた。
☆
威津那の貸家は強盗に入られたようになっていたが、さらに大家の家の部屋は血まみれにななっていた。
凄惨な亡くなり方をしたと想像できる……
もう大家の遺体はないが、暫く黙祷した。
「スパイとしては、最低限の手荷物くらいしかもってなかったんだけど…カメラだけは預かっておいてくださいとお願いしてあったんだよね……」
もしかして、そのために命を狙われたと思うと胸が痛い。
はっとした威津那は真っ直ぐに視線を固定する。
「高良くんは幽霊見える?」
「見えたことないですね。品が高いので…」
正直時たま神様なら見ることはできるけれど…とは言わない。
「じゃ、僕は品が低いな。大家さんが見える。」
幽霊の大家は威津那に気づいて
(君が無事でよかったよ…でも預かっておいたカメラ取られちゃった…すまないね…)
その事が心残りで残っていたようだ。
「僕の方こそ迷惑かけて申し訳ありませんでした……あなたの敵は必ず取ります……」
と威津那は大家の霊に応える。
(家族が迎えに来たようだ……)
と言って数人の光とともに消えた…
「威津那殿、泣いてる…」
「え?あ……」
この頃、家族の温かさや人の優しさに脆くなっていると思う。
一晩、阿倍野家にお世話になった時からか…いや、姑獲鳥を取り込んだときからかもしれない……
もしくはもとからか…霊獣のかーちゃんを身に入れたときに消えた記憶があるが魂は覚えているのかもしれない……
威津那は涙を拭うと瞳の奥に冷たい殺気を宿した。
「高良くん、阿倍野の部屋に行く前に君の家にまたお世話になるかもね………」
呪詛以外で穢れるやつを置くのは気が引けるが、代々香茂家や阿倍野家、黒御足家は呪詛以外で陛下の命を狙う奴らの命も奪うのも役目でもあった。
時たま太刀の者が人を切ったときも魂の決済の為に招くこともある。
阿倍野家に住まわせてもらうのならば香茂家ではなく阿倍野家にお世話になるかもしれないな…と思いながら、
「監視の僕の目の届くことなら許す。」
「ありがとう!さぁ行くよ!」
威津那は高良の腕を引っ張ってカーちゃんに素早く乗せて犯人のもとに向かった。
「ぎゃぁぁぁ!カラスの化物!やっばあいつ人間じゃない!」
と、偶然空を見上げた子供は泣き叫ぶ。
彼はカラス恐怖症となってしまったことは言うまでもない。
威津那と同じく貸家を借りていた住人は不吉なことがあった貸家を引っ越そうとしている家族が荷造りをしていた。
「あ、黒羽さん、あなたも引っ越したほうがいいよ、大家さん死んじゃったし、まだ犯人捕まってないしね…いい大家さんだったのに…残念ね…」
黒羽は偽名で使っていた姓だ。
「もしかして、お前が犯人じゃ…ないよな?」
五歳くらいの子どもがお母さんの後ろからひょっこり現れる。
「その犯人僕が捕まえてボコボコにするから安心しておくれ」
「お、おう…」
といって、またお母さんの後ろに隠れてしまった。
高良は子供の心を覗くと、引っ越してきた威津那にいたずらしたら夜中赤い瞳を光らしたカラスが周りを囲んでいた事があった。
夢かと思ったら、朝、威津那は雀に餌をやるか如くに大量のカラスに米をまいていた。
その光景を見たとき威津那に恐怖を覚えたようだ。
高良は呆れた瞳で威津那を見た。
(こいつ。何するかわかんないやつだな……)
やっぱり警戒は最大限にして置くべきだなと心に決めた。
☆
威津那の貸家は強盗に入られたようになっていたが、さらに大家の家の部屋は血まみれにななっていた。
凄惨な亡くなり方をしたと想像できる……
もう大家の遺体はないが、暫く黙祷した。
「スパイとしては、最低限の手荷物くらいしかもってなかったんだけど…カメラだけは預かっておいてくださいとお願いしてあったんだよね……」
もしかして、そのために命を狙われたと思うと胸が痛い。
はっとした威津那は真っ直ぐに視線を固定する。
「高良くんは幽霊見える?」
「見えたことないですね。品が高いので…」
正直時たま神様なら見ることはできるけれど…とは言わない。
「じゃ、僕は品が低いな。大家さんが見える。」
幽霊の大家は威津那に気づいて
(君が無事でよかったよ…でも預かっておいたカメラ取られちゃった…すまないね…)
その事が心残りで残っていたようだ。
「僕の方こそ迷惑かけて申し訳ありませんでした……あなたの敵は必ず取ります……」
と威津那は大家の霊に応える。
(家族が迎えに来たようだ……)
と言って数人の光とともに消えた…
「威津那殿、泣いてる…」
「え?あ……」
この頃、家族の温かさや人の優しさに脆くなっていると思う。
一晩、阿倍野家にお世話になった時からか…いや、姑獲鳥を取り込んだときからかもしれない……
もしくはもとからか…霊獣のかーちゃんを身に入れたときに消えた記憶があるが魂は覚えているのかもしれない……
威津那は涙を拭うと瞳の奥に冷たい殺気を宿した。
「高良くん、阿倍野の部屋に行く前に君の家にまたお世話になるかもね………」
呪詛以外で穢れるやつを置くのは気が引けるが、代々香茂家や阿倍野家、黒御足家は呪詛以外で陛下の命を狙う奴らの命も奪うのも役目でもあった。
時たま太刀の者が人を切ったときも魂の決済の為に招くこともある。
阿倍野家に住まわせてもらうのならば香茂家ではなく阿倍野家にお世話になるかもしれないな…と思いながら、
「監視の僕の目の届くことなら許す。」
「ありがとう!さぁ行くよ!」
威津那は高良の腕を引っ張ってカーちゃんに素早く乗せて犯人のもとに向かった。
「ぎゃぁぁぁ!カラスの化物!やっばあいつ人間じゃない!」
と、偶然空を見上げた子供は泣き叫ぶ。
彼はカラス恐怖症となってしまったことは言うまでもない。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる