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威津那と高良

2☆威津那の監視の高良

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「学校前に付き合わせてごめんね」
 威津那は高良に謝った。
「いえ、陰陽寮長の命令ですし…」
 と言いながら不服だという雰囲気を顔には出ないけれど、気配が怒っていると感じる。
 威津那は前住んでいた貸家を訪れることを許可されて、監視に高良をつけることにした。
「レッドスパイを辞めると言っても、まだ信用できないからな。」
 なかなか元スパイを信用しないところが抜け目がなくて頼もしいと威津那は感心する。
 信用されていないのは悲しいというより、仕方がないと自らも思っている。
「威津那殿のアジトと言うことはレッドスパイのアジトということでもあるんですよね?」
 高良はまだ信用していない。
 無理もない、レッドスパイは世界で害悪とされている組織でもあるのだから……
 一族の長の命令とはいえ、疑問もなく命令に従い宮中に迷惑をかけていた事を威津那は恥じる。
 威津那にとって橘は希望の光だったが、大切なものや感情は希薄、むしろ悲しみや怒り妬みといった暗いものでしかなかった。
 だが、具体的にどのようなものを自ら守りたいか、心の底から分かったとき、レッドスパイなんか入っていてはダメだと気が付き殲滅することを心に決めた。
(その殲滅するための第一号が見つかった……)
 威津那は無意識に口元が歪むのを隠す。
「威津那殿……気を緩んで心を隠す術を忘れましたね?」
「あっ!まさか!」
 威津那はわざとらしく今気づいたように驚く。
 心を読ませないための術をしわすれたことを。
(もう筒抜けのほうが信じて貰えそうだし、いいかってのもあったけどね……レッドスパイに高良くんみたいに心が読めるやつがいたら厄介でもあるけど……)
 高良はやっと威津那の心が、思考が覗けたことに満足気にしかも、意地悪げにニヤニヤと威津那の顔をわざとのぞき込んできた。
(根性悪いな…このガキ……)
「威津那殿って外見は柔和のくせに腹の中真っ黒ですよねー」
 橘のように心の底をズバッと見抜かれるよりもネチネチされるのも居心地が悪いと改めて思う。
「ふーん……まぁ、レッドスパイから完璧に手を切ると言うなら、僕もお手伝いしますよ。」
 高良は屈託なく微笑んだ。
「そんな顔もできるんだね」
(ツリ目過ぎて無理かと思った…)
「ツリ目は関係ないだろ……」
 心の声を聞こえている高良は声を低くして怒る。
 ツリ目は高良のコンプレックスでもあるようだった。
「ごめん。余計なこと言った…まぁ、言ってないんだけど」
 心が聞こえるのも大変だろうな…と威津那は少し哀れに思った。
「いいですよ。年取ればいい感じになるでしょ」
 威津那は高良の手を取り赤い瞳で高良の未来を見てみるといい感じになっていた。
「フフッ、そうだね…今より目が垂れてる」
 人の心を能力で見透かすならばこちらも能力で未来を見ても支障はないだろうと思う。
 年取った高良は穏やかそうで羨ましいと思う。
 そのそばに、小さい狩衣を着た男の子はどことなく晴綛に似ていたが高良の孫だろうか?だが威津那の心にも愛おしい不思議な感覚があった……
 だが、今はそのことは重要ではないと頭を切り替える。
「高良君の時間ももったいないし、かーちゃんに乗っていこう」
 そういって大ガラスを出して背中に載せた。
「うっわ!すごい!すごい!」
「危ないから紐をちゃんと掴んでね。まぁ僕も支えてあげるけど」
 カーちゃんの首に紐をつけて飛ばされないようにしている。
 威津那自身はカラスを体の中に入れることができるので、カーちゃんから振り下ろされる心配はない。
 高良は十五歳になるが幼い子供のように興奮して街を見下ろす。
「意外と可愛いところあるよね」
「だ、誰だって興奮しますよ!」
「なんか、君とは仲良くできそうだよ」
「……だといいですねー」
 ちょっと素直じゃないなぁと威津那は苦笑して、貸家に到着する手前で誰もいない空き地に降り立つ。
 高良はまだ胸が高鳴って、
「どんなところで住んでいたんですか?レッドスパイの住処ですか?大家もスパイなんですか?」
 ワクワク感が他の方にも興味が移っている。
「……全く関係のない、人の良い大家さんだったよ……」
 少し寂しげに威津那は苦笑した。
 宮中に近い場所にその貸家はあった。
 宮中に任務でイタズラする目的に借りたかったのでウロウロしていたら、自ら進んで話しかけて住まわせてくれた。
 更に余った食材もタダでくれた優しい大家だった。
 死んだ息子と同い年とも言っていて、独り身でもあった……
(僕が関わらなければ死なずにすんだのに……)
 レッドスパイを裏切ったからなのか、黒御足の足跡を残すことを許さない一族の掃除屋のせいなのか……どちらにしても自分に関わるとこうなる事がある……
 威津那の顔は青ざめていると、テレパシーで覗かなくても顔色を見れば察する事を高良は出来た。
 だがらこそ深く覗くを止めた。
 少しでも危険な闇を知ってしまったら命の危機がある察して黙ることにした。
 高良は改めて慎重に威津那を監視しつつ付いて行った。
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