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阿倍野家の中秋の明月にご招待
3☆阿倍野家族
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大きい玄関扉が勝手に開くと母の流花が出迎えてくれた。
「あらあらあら♪娘が殿方を連れてくるなんて初めてで、どうしましょう!ふふふふふ♪」
きちっとした着物姿の母は、頬を綻ぶのを我慢しようとしても緩んでしまう口元を手で隠しながら迎え出てくれた。
橘の母はとても美しい熟女で品の良い色気が漂う熟女だと威津那は思わず惚けた。
女神のように美しいとは橘の母の事だと素直に思う。
「痛っ!」
橘は握っていた威津那の手をぎゅっと半妖の力で握った。
「………威津那さん?母様に惚れちゃだめよ……」
『さん』付けする時は本気で怒ってる手前だと最近気づいた。
「そんなことないよ、橘以外惚れない自信あるしね」
と、素で言う威津那に橘は嬉しくて緩む両頬を押さえて照れて言葉を失う。
(母娘似てる)
と思うと微笑ましくなる。
「素直な方なのね。橘とお似合いね。
ささ、上がってくださいな。」
流花は二人を案内する。
洋館だが、靴は玄関で脱ぐ。
屋敷内は和洋折衷だった。
阿倍野家の家族団欒にお邪魔する威津那は改めて緊張して、襟元を正した。
そんな真面目な威津那を見て橘は笑みが溢れる。
握る手が汗ばんでいるのも、緊張しい、ということがわかる。
呪術を使う時は人間離れしているのに、普段はいつも以上に人間らしいなぁと改めて思う。
案内された中庭は日本庭園のように美しく池があり広い軒先があってススキと月見饅頭が捧げられていた。
「やっときたか、待ちくたびれたぞ」
晴綛は、煙管を吹いていた。
いつもの狩衣姿ではなく着崩した着物を着ていて狐耳と尻尾が異様な姿だが、壮年の色気を思わせる。
陰陽寮にいる時と違い寛いでいるように思う。
晴綛と姉三人は既に軒先で二人を待っていた。
姉三人は、右からアキ、ミキ、サキと挨拶をする。
三人とも似ているが個性がそれぞれ違う。
アキは真面目でしっかりもの。
ミキはおっとりしている。
サキは人をよく観察するはっきり言う性格だと橘から聞いていた。
四姉妹は個性的だ。
だが、母親ほどの神秘性と品位は四姉妹には持ち合わせていないと威津那は分析した。
みんな挨拶し終わったところで、橘は狐耳と尻尾をピン!とたてて、威津那を引っ張り改めて五人の前に立つ。
「この人が私が十年間も想い続けた助けてくれた軍人さんで、私の恋人の黒御足威津那さんです!」
改めて紹介されて、威津那は照れながら会釈する。
これは橘の一番に自慢する案件だった。
「しかも、将来は威津那のお嫁さんになる事は赤い瞳やウカ様からのお墨付きなのです!」
ふふんっと、いつも以上に子供ぽく胸を張るのは、安心できる家だからだ。
そんな、子供っぽい態度すぎたかな?と、心配して威津那を見ると…目があってぽんぽんと、頭を撫でられた。
(うふふ。なんか、懐かしい…)
ふと十年前の出会った時のことを思い出し、今家族に紹介していることが夢のようにも感じてしまう。
三姉妹は、妹に先を越されて不満を表すかと思ったら、
「十年間思い続けていただけあるわね!」
「思いは叶うのねぇ。」
「橘はほんっとしつこいくらい毎日軍人さんの話ししてたものね……これでやっと妄想から解放されるわ!」
と、ほっと安堵のため息を同時に吐いた。
(どんだけ十年前の話を語っていたのだろうか?)
と威津那は苦笑するが、己自身も橘を十年求めていたことを思うと不思議な気分だ。
「とりあえず、月見酒じゃ!」
朱色の盃に、お酒をみんなの分を流花は注ぐが、威津那は下戸なので飲めないと断った。
「あらっ、それは残念ね」
「申し訳ありません……お酒を飲んだ後のことをあまり覚えていないのですが、周りの雰囲気が悪くなったことだけ覚えているので、それが怖くて……」
しゅんとした寂しそうな顔をする。
阿部野家に訪れる前にちゃんと言っておくべきだったと後悔した。
雰囲気が悪くなるのは勘弁だ。
「え?酒乱?」
「それやばくない?」
「そんなの義弟ヤダ。」
さっそく三人娘はひそひそ話する。
「酒乱というよりか……人の運命未来をペラペラ喋って不愉快にさせたりして、十年前はそれで部隊から追い出されたので……」
その時のことを思うとさらに深刻な暗い顔になった。
かなりのトラウマらしい。
阿部野家族はなんとなく想像はつく。
赤い瞳の能力を遺憾無く発揮して、予知しまくったという感じか。
「お茶も用意してあるから安心なさいな。」
「御心遣い痛み入ります」
「でも、そんなに未来が見えるのならば、一度大量に飲ませて聞きたいわね」
いたずらっ子みたいに橘はにやにやする。
「ふふ、後悔することになるかもよ?」
威津那は橘にやんわり釘を刺しておいたが、
「威津那との未来に後悔することなんかないもの」
怖気もせず、はっきり宣言されて、威津那はめんくらう。
「ふふ、じゃ、二人きりになった時に飲ませていいよ。」
「二人きり……」
その言葉に橘は瞬時に色々妄想して顔を赤らめる。
「ちょ、橘!恋人を紹介してもいいけど、惚気るのはやめてよ、恥ずかしいし!」
「こっちが照れるわ!羨ましい!」
「二人っきりになれるお部屋案内してあげようか?」
「もーっ!お姉ちゃんたちったら!意地悪っ!」
「こんな優しいお姉さまが三人いる事を感謝しなさーい!」
「かしづいていいのよ?」
「崇め讃えよ!」
「ははっー!ってやらないわよーだっ!」
四姉妹はキャーキャーいってはしゃぎ出した。
女っ気のない世界で生きてきた威津那にとってはとても新鮮な世界に見えた。
その様子を親は微笑んで、
「全く、いつまでも子供なんだから…」
と流花も晴綛も微笑んで見ていた。
そんな暖かい雰囲気の家族を威津那の胸に温かいものが宿るのを感じた。
「あらあらあら♪娘が殿方を連れてくるなんて初めてで、どうしましょう!ふふふふふ♪」
きちっとした着物姿の母は、頬を綻ぶのを我慢しようとしても緩んでしまう口元を手で隠しながら迎え出てくれた。
橘の母はとても美しい熟女で品の良い色気が漂う熟女だと威津那は思わず惚けた。
女神のように美しいとは橘の母の事だと素直に思う。
「痛っ!」
橘は握っていた威津那の手をぎゅっと半妖の力で握った。
「………威津那さん?母様に惚れちゃだめよ……」
『さん』付けする時は本気で怒ってる手前だと最近気づいた。
「そんなことないよ、橘以外惚れない自信あるしね」
と、素で言う威津那に橘は嬉しくて緩む両頬を押さえて照れて言葉を失う。
(母娘似てる)
と思うと微笑ましくなる。
「素直な方なのね。橘とお似合いね。
ささ、上がってくださいな。」
流花は二人を案内する。
洋館だが、靴は玄関で脱ぐ。
屋敷内は和洋折衷だった。
阿倍野家の家族団欒にお邪魔する威津那は改めて緊張して、襟元を正した。
そんな真面目な威津那を見て橘は笑みが溢れる。
握る手が汗ばんでいるのも、緊張しい、ということがわかる。
呪術を使う時は人間離れしているのに、普段はいつも以上に人間らしいなぁと改めて思う。
案内された中庭は日本庭園のように美しく池があり広い軒先があってススキと月見饅頭が捧げられていた。
「やっときたか、待ちくたびれたぞ」
晴綛は、煙管を吹いていた。
いつもの狩衣姿ではなく着崩した着物を着ていて狐耳と尻尾が異様な姿だが、壮年の色気を思わせる。
陰陽寮にいる時と違い寛いでいるように思う。
晴綛と姉三人は既に軒先で二人を待っていた。
姉三人は、右からアキ、ミキ、サキと挨拶をする。
三人とも似ているが個性がそれぞれ違う。
アキは真面目でしっかりもの。
ミキはおっとりしている。
サキは人をよく観察するはっきり言う性格だと橘から聞いていた。
四姉妹は個性的だ。
だが、母親ほどの神秘性と品位は四姉妹には持ち合わせていないと威津那は分析した。
みんな挨拶し終わったところで、橘は狐耳と尻尾をピン!とたてて、威津那を引っ張り改めて五人の前に立つ。
「この人が私が十年間も想い続けた助けてくれた軍人さんで、私の恋人の黒御足威津那さんです!」
改めて紹介されて、威津那は照れながら会釈する。
これは橘の一番に自慢する案件だった。
「しかも、将来は威津那のお嫁さんになる事は赤い瞳やウカ様からのお墨付きなのです!」
ふふんっと、いつも以上に子供ぽく胸を張るのは、安心できる家だからだ。
そんな、子供っぽい態度すぎたかな?と、心配して威津那を見ると…目があってぽんぽんと、頭を撫でられた。
(うふふ。なんか、懐かしい…)
ふと十年前の出会った時のことを思い出し、今家族に紹介していることが夢のようにも感じてしまう。
三姉妹は、妹に先を越されて不満を表すかと思ったら、
「十年間思い続けていただけあるわね!」
「思いは叶うのねぇ。」
「橘はほんっとしつこいくらい毎日軍人さんの話ししてたものね……これでやっと妄想から解放されるわ!」
と、ほっと安堵のため息を同時に吐いた。
(どんだけ十年前の話を語っていたのだろうか?)
と威津那は苦笑するが、己自身も橘を十年求めていたことを思うと不思議な気分だ。
「とりあえず、月見酒じゃ!」
朱色の盃に、お酒をみんなの分を流花は注ぐが、威津那は下戸なので飲めないと断った。
「あらっ、それは残念ね」
「申し訳ありません……お酒を飲んだ後のことをあまり覚えていないのですが、周りの雰囲気が悪くなったことだけ覚えているので、それが怖くて……」
しゅんとした寂しそうな顔をする。
阿部野家に訪れる前にちゃんと言っておくべきだったと後悔した。
雰囲気が悪くなるのは勘弁だ。
「え?酒乱?」
「それやばくない?」
「そんなの義弟ヤダ。」
さっそく三人娘はひそひそ話する。
「酒乱というよりか……人の運命未来をペラペラ喋って不愉快にさせたりして、十年前はそれで部隊から追い出されたので……」
その時のことを思うとさらに深刻な暗い顔になった。
かなりのトラウマらしい。
阿部野家族はなんとなく想像はつく。
赤い瞳の能力を遺憾無く発揮して、予知しまくったという感じか。
「お茶も用意してあるから安心なさいな。」
「御心遣い痛み入ります」
「でも、そんなに未来が見えるのならば、一度大量に飲ませて聞きたいわね」
いたずらっ子みたいに橘はにやにやする。
「ふふ、後悔することになるかもよ?」
威津那は橘にやんわり釘を刺しておいたが、
「威津那との未来に後悔することなんかないもの」
怖気もせず、はっきり宣言されて、威津那はめんくらう。
「ふふ、じゃ、二人きりになった時に飲ませていいよ。」
「二人きり……」
その言葉に橘は瞬時に色々妄想して顔を赤らめる。
「ちょ、橘!恋人を紹介してもいいけど、惚気るのはやめてよ、恥ずかしいし!」
「こっちが照れるわ!羨ましい!」
「二人っきりになれるお部屋案内してあげようか?」
「もーっ!お姉ちゃんたちったら!意地悪っ!」
「こんな優しいお姉さまが三人いる事を感謝しなさーい!」
「かしづいていいのよ?」
「崇め讃えよ!」
「ははっー!ってやらないわよーだっ!」
四姉妹はキャーキャーいってはしゃぎ出した。
女っ気のない世界で生きてきた威津那にとってはとても新鮮な世界に見えた。
その様子を親は微笑んで、
「全く、いつまでも子供なんだから…」
と流花も晴綛も微笑んで見ていた。
そんな暖かい雰囲気の家族を威津那の胸に温かいものが宿るのを感じた。
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