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阿倍野家の中秋の明月にご招待
1☆過去の世界、進む世界
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今宵は中秋の名月。
ススキとお団子を飾って、家族全員集まる日だ。
この行事は欠かしたことがない。
阿倍野家にとって、とっても大切な日であって、一族が一人きりになってもやり続けるという掟がある。
今夜は外に出ている姉三人と陰陽寮長で普段は多忙の晴綛と美しき女神で母である流花が実家で待っていた。
陰陽寮は副長の卜部家に毎年任せている。
橘は昼に陰陽寮を出て、威津那を連れて実家を案内することになった。
父の晴綛と共に異界の道を通って家に帰れば近かったのだが、少しでも長く二人で威津那といたかったので最近出来たタクシーを頼んで実家に帰った。
二人とも狩衣姿だったので、神主と、巫女の神社関係者と勘違いされた。
「外出るときは、現し世にあった服で外でなきゃだね……まぁ、まだお給料もらってないし、この制服と下着しか支給されてないからなんとも言えないけど、外に出られたことは嬉しいかな」
と言って、威津那は苦笑いをして頭を掻いた。
威津那にとって昼の現世(宮中の外)は新鮮だった。
だからといって宮中の暮らしが特別窮屈とは感じない。
電気水道(井戸)は宮中はもちろん通っているが、ほぼ千年前の生活変わらぬ仕事をしていると思う。
戦後傷ついた町も今や現し世では交通整理もできていて、そびえ立つ電柱や電線が空に伸びて、都心は開発がかなり進んでいる。
服装も、着物を着ているのは年配の方ばかり、若い女性はフレアスカートやらワンピースやら西洋風の可愛らしく、華やかだ。
今は花柄のワンピースが流行っている。もっと奇抜な洋服が今後流行って着物は衰退していくだろう…
「橘があんな服を着ているのを見たことないなぁ…着物より似合いそうだよね。」
橘は同い年の娘がひらひらなスカートにカラフルな柄の模様に憧れる。
最新作だと思う。
十年前ははしたないというイメージがあったけれど天然ふわふわな髪型には洋服が似合うと自負している。
それらを着て流行りの場所で威津那とデートしたい。
「わ、私だって、もってるよ。でも、陰陽寮ではあんまり必要ないから着ないだけで……」
お洒落っ気のない自分の姿に劣等感が湧いてそうごまかす。
「こんど、外出る許可が出たらおしゃれして遊びに行こうよ。デートと言うんだっけ?」
あまり西洋語を使わない威津那はなんて言って誘えばいいのか悩んで仕方なく横文字を使ってそういった。
落ち込んでいた橘はパァァァァ!と顔を明るくして、瞳を輝かせる。
「うんっ!デートしよう!映画も見に行こうね!」
「うん。橘の好きなところや流行りの名所にいこう。気晴らしにもなるしもっと、可愛い橘をみたいしね」
今もとても、可愛い。
両想になると、なおさら幸せにしたい幸せな橘を見ていたいと切に思う。
「うん!約束ね」
そういって、威津那の腕に絡んで歩き出した。
威津那は歩きながらデートの約束の計画を立てるが、
(デートをするとしてもお給料がもしないとしたら、不甲斐ないなぁ…)
この外出許可が出たときに貸家に一度荷物と呪術で稼いだお金を取りに行きたい。
宮中では晴綛の許しがないと眷属を使えない。
黙々と仕事をするのみ許されている。
(あ、今のうちに烏に取りに行かせればいいか……)
密かに命じて取りに行かせたが、レッドスパイに部屋をめちゃくちゃにされているという報告を受けたのは中秋の明月を見た翌日だった。
ススキとお団子を飾って、家族全員集まる日だ。
この行事は欠かしたことがない。
阿倍野家にとって、とっても大切な日であって、一族が一人きりになってもやり続けるという掟がある。
今夜は外に出ている姉三人と陰陽寮長で普段は多忙の晴綛と美しき女神で母である流花が実家で待っていた。
陰陽寮は副長の卜部家に毎年任せている。
橘は昼に陰陽寮を出て、威津那を連れて実家を案内することになった。
父の晴綛と共に異界の道を通って家に帰れば近かったのだが、少しでも長く二人で威津那といたかったので最近出来たタクシーを頼んで実家に帰った。
二人とも狩衣姿だったので、神主と、巫女の神社関係者と勘違いされた。
「外出るときは、現し世にあった服で外でなきゃだね……まぁ、まだお給料もらってないし、この制服と下着しか支給されてないからなんとも言えないけど、外に出られたことは嬉しいかな」
と言って、威津那は苦笑いをして頭を掻いた。
威津那にとって昼の現世(宮中の外)は新鮮だった。
だからといって宮中の暮らしが特別窮屈とは感じない。
電気水道(井戸)は宮中はもちろん通っているが、ほぼ千年前の生活変わらぬ仕事をしていると思う。
戦後傷ついた町も今や現し世では交通整理もできていて、そびえ立つ電柱や電線が空に伸びて、都心は開発がかなり進んでいる。
服装も、着物を着ているのは年配の方ばかり、若い女性はフレアスカートやらワンピースやら西洋風の可愛らしく、華やかだ。
今は花柄のワンピースが流行っている。もっと奇抜な洋服が今後流行って着物は衰退していくだろう…
「橘があんな服を着ているのを見たことないなぁ…着物より似合いそうだよね。」
橘は同い年の娘がひらひらなスカートにカラフルな柄の模様に憧れる。
最新作だと思う。
十年前ははしたないというイメージがあったけれど天然ふわふわな髪型には洋服が似合うと自負している。
それらを着て流行りの場所で威津那とデートしたい。
「わ、私だって、もってるよ。でも、陰陽寮ではあんまり必要ないから着ないだけで……」
お洒落っ気のない自分の姿に劣等感が湧いてそうごまかす。
「こんど、外出る許可が出たらおしゃれして遊びに行こうよ。デートと言うんだっけ?」
あまり西洋語を使わない威津那はなんて言って誘えばいいのか悩んで仕方なく横文字を使ってそういった。
落ち込んでいた橘はパァァァァ!と顔を明るくして、瞳を輝かせる。
「うんっ!デートしよう!映画も見に行こうね!」
「うん。橘の好きなところや流行りの名所にいこう。気晴らしにもなるしもっと、可愛い橘をみたいしね」
今もとても、可愛い。
両想になると、なおさら幸せにしたい幸せな橘を見ていたいと切に思う。
「うん!約束ね」
そういって、威津那の腕に絡んで歩き出した。
威津那は歩きながらデートの約束の計画を立てるが、
(デートをするとしてもお給料がもしないとしたら、不甲斐ないなぁ…)
この外出許可が出たときに貸家に一度荷物と呪術で稼いだお金を取りに行きたい。
宮中では晴綛の許しがないと眷属を使えない。
黙々と仕事をするのみ許されている。
(あ、今のうちに烏に取りに行かせればいいか……)
密かに命じて取りに行かせたが、レッドスパイに部屋をめちゃくちゃにされているという報告を受けたのは中秋の明月を見た翌日だった。
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