あやかしと神様の昔語り

橘の狐の嫁入り

11☆恋まじないに囚われて

　威津那はふっと、苦笑して困ったように、橘の頬に触れる。
「僕が結ばれたいと、ずっと望んでいたのは君しかいないよ……橘……白狐じゃなくてもね」
　橘は、ぱぁあ！と顔がほころぶ。
「威津那…私の名前呼んでくれた……」
　その事もとても嬉しいと思うが、
「あ。でも、名前呼ばれたから威津那の管狐になっちゃった？」
　橘は不安に思って尋ねる。
　威津那は首を傾げて顎に手を当てて考える。
　自分と繋がった感覚や縛ったという感覚もない。
　だが、喉を触れば原因がわかった。
　ウカ様に噛まれて呪詛を解かれたせいだと思い当たる。
「むしろ僕の方に縛られてるよ……藁人形と同じ原理でね」
　威津那は苦笑する。
「藁人形……威津那が藁人形の方なの？」
　それは呪われてる方だ。
　管狐として縛ろうとしているのは威津那の方なのに……
「そう、君は僕にいつもグキを打つ…心に響くね……悪さができないよ」

（本当に無条件に悪さができない……）

　晴綛が宣言したとおりだ。
　白狐の橘にこだわり、日和を脅かす九尾が欲しかった…
　だけど、もう、橘が自分のものになるならばどうでもいいことだと思う。

『レッドスパイを裏切る。』

　その決意は出来た。
　……ただ……
　裏切りの制裁が降りかかることだけが気がかりだ。
　それをもきっと防いで見せる…絶対に……
　橘はうーんと渋い顔する。
「雰囲気台無し……呪いを例えにしないでよ……」
　むーっといぶかしむ橘を赤い瞳で見ると、白狐になっている橘が自分と結ばれている。それも幸せそうに。
　九尾にやはりなっていなかいが、橘が自分のものになっているならばホッとした。
　運命はもとに戻っていることにホッとした。

「そこまで互いに愛おしく思っておるならもう、止めぬわ。」
　今までの張り詰めた気配をウカ様から感じない。
　橘との二人だけの世界になっている時にウカ様は威津那の呪詛付きの式神を狐火で燃やして孫を助けた様だ。
　青紫色の足首も、もとに戻っていた。
「さらに、後尾でもしてしまえ、橘のその格好見て何も感じぬとはなぁ」
　その言葉に威津那は、はっ！として、改めて橘の姿を見ると真っ赤になって凝視した目を手で覆う。
　橘の胸元は大きくはだけていて、覗き込む感じで美しい谷間乳房を見てしまって恥ずかしくなった。
　更に、正座を崩した足もギリギリまではだけて見えてとても色っぽい。
　更に狐耳と尻尾は狐愛好家の威津那にとっては萌える。
　未来の橘の姿は何度も見たことあるけれど、現実では初めてだ。
　体よりも橘のころころ変わる表情のほうが好きなので見えてなかった。
　橘は胸元を糺すのではなく威津那の手を取って、
「触って……」
　そして、乳房を自ら生肌で触らす。
「な、何を…」
　威津那は突然のことに戸惑った。