34 / 161
橘の狐の嫁入り
9☆神狐VS大烏
しおりを挟む
威津那は赤い瞳をさらに見開き、殺気がみなぎっていた。
体から邪気が揺らいでいるように見える。
まるで真っ黒い炎に赤い瞳を持った化物に見えてもおかしくない。
その様子に、橘も紺太も黙って身動きを取ることすら忘れてしまっていた。
「孫の結婚をぶち壊すとは覚悟ができておるのか……?」
ウカ様は普通の神狐たちの四倍の大きさになって威津那に唸る。
真っ白な体中に炎のような紋様が現れ本気で怒り、威津那を威嚇する。
「覚悟?そんなの必要ない。偽りの結婚に意味はない……」
威津那は腕をスッっとウカ様に向けて指先まで前に伸ばすと、影が揺らめき大ガラスがあらわれる。
威津那の闇の影を吸収してウカ様並の大きなカラスに成長して大きな翼を羽ばたくと瞬時にウカ様に向かって襲う。
何度も飛行して、翼の羽に足がぶつかると、ウカ様の白い体に模様じゃない赤い血が滲む。
威津那はその様子を無表情で見つめて追い詰めていっている。
伸ばす指先を一度ハサミのように人差し指と中指を、離してつけると更に鋭いくちばしになって矢のような鋭いピストルの弾丸のような形になった。
貫かれたらひとたまりもないだろう。
ウカ様はそんな異様な形になったカラスと向かい合い、飛んでくるカラスを迎え撃つ。
ウカ様は大カラスの鋭い鋒をギリギリで避けて、青い瞳を煌めかせてカラスを留めさせ金縛りにし、大カラスの喉元を力の限り噛み付くと大カラスはすっと消える。
「グッ……」
威津那の喉元に獣に噛まれた後と血が滲む。
威津那は首から滴る血を手のひらで覆う。
「うふふ……ウカの『化身』である私に叶うと思うてか?」
ウカ様は余裕の笑みをして、臨戦態勢を取る。
今度は威津那自身を消すつもりだ。
「……ウカノミタマ…すごい神様だね。古い神の一柱か……」
稔を司り豊穣を寿ぐ神でありながら、人の願望を叶える神とも言われている。
そのために人々は稲荷社を作りたてまつり願い祈りと念で神狐として繁栄している……だが、ウカ様は獣の肉体を持った古い神狐。
ウカノミタマの『化身』……
……『神の化身の器』……
晴綛の言葉をふと思いだす。
「ということは、あやかし狐から神の化身になったということか……?」
と、威津那はウカ様の経緯を推測する。
「そんな大昔の事など忘れたわ。『今ある』わしがわしであることに変わりはないからの?」
ウカ様は自分を威張ることをあまりしないが皆が崇めたててくれることで存在を強くする神なのだ。
御霊でもあり現存する古狐の一柱であることは変わりない。
威津那はにやりと口元が笑う。
「……本当は世界を混沌に落とす九尾がよかったんだけどね……」
それは陛下の統治なさる日和を破壊するという宣言にも聞こえる。
(……そうなのよ……それが威津那の目的……)
直感を確信すると橘は胸が痛い、怒りのような悲しみが胸を締める。
威津那は橘の複雑な顔を見ると悲しそうな顔をして、
「本当は……橘を管狐にしたかったんだけどね……」
とつぶやいた。
(それは、出会ったときに言っていた謎の言葉だ……)
橘が白狐じゃないから管狐にしないと言っていた。
(威津那は私を九尾にしようとしていた?そして、日和に牙を向こうとしている?ウカ様は神様だからこそ、未来を見る事が出来るから私の縁を紺太に変えさせたかった?)
ウカ様は優しい神様、ご先祖様でもあるのだから子孫を少しでも不幸にさせたくはなかったのかもしれない……
(ウカ様の気持ちを知ると嬉しいけれど……)
橘は怒りと悲しみと不安に苛まれていた心がすっと決まる。
(私が威津那を止めればいい)
「ウカノミタマは九尾と対象的に日和を寿ぐための力を僕の意のままにするのもいいよね?」
といいながら、日和の豊穣を思いのままにできれば『九尾』でなくてもレッドスパイの計画は成就するだろう……
だが、強い力を得たのならレッドスパイなどに属さなくてもいいとも思う……
他外国の支配下の組織と、偽りの平和を破り陛下のために強い日和にすることすらできる……
むしろ、陛下の為にこの力を献上したい……
内心苦笑する。
(本心はギリギリでないと出てこない……)
豊かさも破壊もかわらない。
祈りと呪いのように
稔の神、破壊の神…
己自身曖昧でいたけれど、
やはり陛下の側にいたい……
本心から陛下を敬愛している。
そして、橘に対しても曖昧な関係だった……
橘との運命が変わったときに自分の気持ちが正直にわかった。
橘に本気で心惹かれていると……
晴綛が注意したように橘を白狐にするならば『命を削る』と言うならば削らない未来を作るしかない。
(あのクソガキ狐に未来を変えることができたのだから……)
「……神を操ろうとは不遜だな…」
ウカ様の体から青い炎が浮かびあがる。
「私の計画通りお前を消し去り橘を紺太と無理やり結ばせ日和を寿ぐのだ。そのためにやはりお前が邪魔だな……」
ウカ様の青い瞳がキラキラと光る。
それは体中にキラキラと輝く光に満ちる。
神の力で闇を司る一族の威津那を消すつもりだ。
「僕が消えるなら、紺太も消える…誰にも橘を渡さない……」
威津那は手に握った首の血を紺太に放つとカラスになり、紺太の手足を捉えて壁に貼り付けた。
「なんだ!この術!身が穢れる…うぅっ!痛い!」
「っ!紺太!」
紺太の手首が紫色に変化する。
「十分もしないうちに腐って溶けるよ?」
威津那はウカ様を見下すように微笑む。
「孫が可愛いなら僕の管狐になることを誓うんだ……簡単なことだろ……」
威津那は西洋で言う魔王というにふさわしい悪の化身のようだと橘は思う。
ウカ様は子孫に甘い。
特に紺太は可愛い。
「うう、容赦のないやつよの……」
ウカ様は炎を消し諦めた様だ。
体から邪気が揺らいでいるように見える。
まるで真っ黒い炎に赤い瞳を持った化物に見えてもおかしくない。
その様子に、橘も紺太も黙って身動きを取ることすら忘れてしまっていた。
「孫の結婚をぶち壊すとは覚悟ができておるのか……?」
ウカ様は普通の神狐たちの四倍の大きさになって威津那に唸る。
真っ白な体中に炎のような紋様が現れ本気で怒り、威津那を威嚇する。
「覚悟?そんなの必要ない。偽りの結婚に意味はない……」
威津那は腕をスッっとウカ様に向けて指先まで前に伸ばすと、影が揺らめき大ガラスがあらわれる。
威津那の闇の影を吸収してウカ様並の大きなカラスに成長して大きな翼を羽ばたくと瞬時にウカ様に向かって襲う。
何度も飛行して、翼の羽に足がぶつかると、ウカ様の白い体に模様じゃない赤い血が滲む。
威津那はその様子を無表情で見つめて追い詰めていっている。
伸ばす指先を一度ハサミのように人差し指と中指を、離してつけると更に鋭いくちばしになって矢のような鋭いピストルの弾丸のような形になった。
貫かれたらひとたまりもないだろう。
ウカ様はそんな異様な形になったカラスと向かい合い、飛んでくるカラスを迎え撃つ。
ウカ様は大カラスの鋭い鋒をギリギリで避けて、青い瞳を煌めかせてカラスを留めさせ金縛りにし、大カラスの喉元を力の限り噛み付くと大カラスはすっと消える。
「グッ……」
威津那の喉元に獣に噛まれた後と血が滲む。
威津那は首から滴る血を手のひらで覆う。
「うふふ……ウカの『化身』である私に叶うと思うてか?」
ウカ様は余裕の笑みをして、臨戦態勢を取る。
今度は威津那自身を消すつもりだ。
「……ウカノミタマ…すごい神様だね。古い神の一柱か……」
稔を司り豊穣を寿ぐ神でありながら、人の願望を叶える神とも言われている。
そのために人々は稲荷社を作りたてまつり願い祈りと念で神狐として繁栄している……だが、ウカ様は獣の肉体を持った古い神狐。
ウカノミタマの『化身』……
……『神の化身の器』……
晴綛の言葉をふと思いだす。
「ということは、あやかし狐から神の化身になったということか……?」
と、威津那はウカ様の経緯を推測する。
「そんな大昔の事など忘れたわ。『今ある』わしがわしであることに変わりはないからの?」
ウカ様は自分を威張ることをあまりしないが皆が崇めたててくれることで存在を強くする神なのだ。
御霊でもあり現存する古狐の一柱であることは変わりない。
威津那はにやりと口元が笑う。
「……本当は世界を混沌に落とす九尾がよかったんだけどね……」
それは陛下の統治なさる日和を破壊するという宣言にも聞こえる。
(……そうなのよ……それが威津那の目的……)
直感を確信すると橘は胸が痛い、怒りのような悲しみが胸を締める。
威津那は橘の複雑な顔を見ると悲しそうな顔をして、
「本当は……橘を管狐にしたかったんだけどね……」
とつぶやいた。
(それは、出会ったときに言っていた謎の言葉だ……)
橘が白狐じゃないから管狐にしないと言っていた。
(威津那は私を九尾にしようとしていた?そして、日和に牙を向こうとしている?ウカ様は神様だからこそ、未来を見る事が出来るから私の縁を紺太に変えさせたかった?)
ウカ様は優しい神様、ご先祖様でもあるのだから子孫を少しでも不幸にさせたくはなかったのかもしれない……
(ウカ様の気持ちを知ると嬉しいけれど……)
橘は怒りと悲しみと不安に苛まれていた心がすっと決まる。
(私が威津那を止めればいい)
「ウカノミタマは九尾と対象的に日和を寿ぐための力を僕の意のままにするのもいいよね?」
といいながら、日和の豊穣を思いのままにできれば『九尾』でなくてもレッドスパイの計画は成就するだろう……
だが、強い力を得たのならレッドスパイなどに属さなくてもいいとも思う……
他外国の支配下の組織と、偽りの平和を破り陛下のために強い日和にすることすらできる……
むしろ、陛下の為にこの力を献上したい……
内心苦笑する。
(本心はギリギリでないと出てこない……)
豊かさも破壊もかわらない。
祈りと呪いのように
稔の神、破壊の神…
己自身曖昧でいたけれど、
やはり陛下の側にいたい……
本心から陛下を敬愛している。
そして、橘に対しても曖昧な関係だった……
橘との運命が変わったときに自分の気持ちが正直にわかった。
橘に本気で心惹かれていると……
晴綛が注意したように橘を白狐にするならば『命を削る』と言うならば削らない未来を作るしかない。
(あのクソガキ狐に未来を変えることができたのだから……)
「……神を操ろうとは不遜だな…」
ウカ様の体から青い炎が浮かびあがる。
「私の計画通りお前を消し去り橘を紺太と無理やり結ばせ日和を寿ぐのだ。そのためにやはりお前が邪魔だな……」
ウカ様の青い瞳がキラキラと光る。
それは体中にキラキラと輝く光に満ちる。
神の力で闇を司る一族の威津那を消すつもりだ。
「僕が消えるなら、紺太も消える…誰にも橘を渡さない……」
威津那は手に握った首の血を紺太に放つとカラスになり、紺太の手足を捉えて壁に貼り付けた。
「なんだ!この術!身が穢れる…うぅっ!痛い!」
「っ!紺太!」
紺太の手首が紫色に変化する。
「十分もしないうちに腐って溶けるよ?」
威津那はウカ様を見下すように微笑む。
「孫が可愛いなら僕の管狐になることを誓うんだ……簡単なことだろ……」
威津那は西洋で言う魔王というにふさわしい悪の化身のようだと橘は思う。
ウカ様は子孫に甘い。
特に紺太は可愛い。
「うう、容赦のないやつよの……」
ウカ様は炎を消し諦めた様だ。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
【完結】イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』
あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾!
もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります!
ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。
稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。
もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。
今作の主人公は「夏子」?
淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。
ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる!
古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。
もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦!
アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください!
では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
あさきゆめみし
八神真哉
歴史・時代
山賊に襲われた、わけありの美貌の姫君。
それを助ける正体不明の若き男。
その法力に敵う者なしと謳われる、鬼の法師、酒呑童子。
三者が交わるとき、封印された過去と十種神宝が蘇る。
毎週金曜日更新

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
【連載中】は、短時間で読めるように短い文節ごとでの公開になります。
(お気に入り登録いただけると通知が行き、便利かもです)
その後、誤字脱字修正や辻褄合わせが行われて、合成された1話分にタイトルをつけ再公開されます。
(その前に、仮まとめ版が出る場合もある、かも、しれない、可能性)
物語の細部は連載時と変わることが多いので、二度読むのが通です。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる