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橘の狐の嫁入り
6☆稲荷狐の婚礼儀式
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「この、稲荷の結婚は現世の稲成豊穣子孫繁栄を願うもの。今年は豊作になる事を約束しよう。さぁ、結婚式の始まりじゃっ!」
ウカ様は新郎新婦の前に座りそう祝いだ。
二匹は盃を交わすと互いを改めてしばらく見つめ合い、四足になり、ぐるぐる互いのしっぽに鼻をつか付けるように回ると、着ていた着物が脱げて、突然後尾が始まった。
周りはやんややんやと酒を酌み交わし寿ぐ。
橘は顔を真っ赤にする。
「け、結婚ってみんなの前で恥ずかしいことすることなの!?」
囃し立てられて、当の本人たちは恥ずかしがっているようだがやることはやっている。
そして、事が終わると静々と服を着て座布団に座って手をつなぐ様に互いの前足を重ねてほほえみあっていた。
微笑ましい似合いの新婚夫婦だと思うが、あまりのことに橘は戸惑う。
(人間の結婚式であんなことなんてありえないし、できないわ……)
と思っているのを察したウカ様はフォフォっと笑って、
「あれは、皆に結婚しましたよとの愛の証のお披露目じゃて、白狐の儀式でもあるから人の世界じゃ違うがの。」
わかっていたけれど、ほっとした。
(もし、狐の結婚儀式で威津那とみんなの前であんな事をする…なんて……恥ずかしぃ!)
橘は妄想が止まらない。
幼い頃から威津那を思って色々妄想してたけれど、狐を人間に例えるハンパな妄想をしてしまって恥ずかしくなるしドキドキする。
誰にも知られたくない自分一人の妄想だ。
(人間世界のだと、初夜というものを二人だけでするんだからそっちの妄想にしなきゃ!でもでも、西洋だと、口づけを結婚式出することはさっきの後尾と同じのような…違うようなぁ…)
一人妄想に頭を混乱させていると、突然小指を絡められた。
「ひゃっ!な、なに?」
橘はやっと現実に戻ってきたが、紺太は絡めた指を紺太の口元に寄せ、軽く口づけをした。
それは艶っぽさを感じる。
「僕は橘とならみんなの前で証明したいかな?」
「え、やめてよ。恥ずかしすぎるし。」
橘は冷たく速攻拒否をする。
紺太はに青い瞳を橘に合わせて微笑む。目の心は笑っていないと橘は思う。どこか僅かな怒り、闘志が灯っていると思う。
「じゃ、内緒でしちゃおうよ?」
青い瞳が橘を縛る。
「な、内緒なら……」
はっと、橘は口元を抑える。
(私何を!しかも妖術にかかってる……?)
幼い頃いたずら狐に化かされて、からかわれたことを思い出した。
優しい神狐たちの中には半妖が嫌いなものもいた……
紺太のはそれとは違う、誇りのようなものを守るようなものだと、橘は直感する。
「小指の縁も変えた…僕と陛下の瑞兆をつくるんだ……」
「瑞兆を…つくる?」
意味がわからない。だけれど頭の芯がしびれているのがわかる。
目の前がぼやける。
「僕は縁結びの神、ウカの孫でもあるんだよ。ばあちゃんにも了承済みなんだよ」
何かを企んでいる、それが成功したというように恍惚とした表情を紺太はしている。
「ウカノミタマの化身として、わしが紺太との縁を結んでやるぞ。」
ウカ様はフォフォっと笑う。
「半妖と半妖のほうがよい異能者が生まれるじゃて。
かの、『九尾殿』にも勝る狐も生まれるかもしれぬ。試してみようではないか?」
ウカ様は面白い実験をすることにワクワクしているようだ。
しかも息はとても酒臭い。
「お主の想う運命の相手よりも紺太に惚れて、次の帝の瑞兆を作るのだ。」
それは威津那を諦めろと言うことか…そんなのしたくないのに…威津那の顔すら思い出そうとすると滲む。
「お主には瑞兆を産む役目がある。これは変わらぬことよ。男の相手は誰でもいい……産むのは橘だからの。」
産む…?威津那の子では無い誰かと結ばれて……?
「威津那ではないほうが宮中に災いを起こさぬだろうよ。」
威津那が災いをもたらすのはなんとなく直感でわかっていて見ないふりをしていた…そこが信用だきなかった……前科もある…でも…好きなのはやめられない…どうしても……
それは変えられない宿命のような恋……
「まぁ、運命が宿命に勝てればじゃがの…」
頭のしびれは強い眠気を誘い意識を保てなくなった。
最後に聞こえたウカ様の言霊だけが橘の希望になり得た。
ウカ様は新郎新婦の前に座りそう祝いだ。
二匹は盃を交わすと互いを改めてしばらく見つめ合い、四足になり、ぐるぐる互いのしっぽに鼻をつか付けるように回ると、着ていた着物が脱げて、突然後尾が始まった。
周りはやんややんやと酒を酌み交わし寿ぐ。
橘は顔を真っ赤にする。
「け、結婚ってみんなの前で恥ずかしいことすることなの!?」
囃し立てられて、当の本人たちは恥ずかしがっているようだがやることはやっている。
そして、事が終わると静々と服を着て座布団に座って手をつなぐ様に互いの前足を重ねてほほえみあっていた。
微笑ましい似合いの新婚夫婦だと思うが、あまりのことに橘は戸惑う。
(人間の結婚式であんなことなんてありえないし、できないわ……)
と思っているのを察したウカ様はフォフォっと笑って、
「あれは、皆に結婚しましたよとの愛の証のお披露目じゃて、白狐の儀式でもあるから人の世界じゃ違うがの。」
わかっていたけれど、ほっとした。
(もし、狐の結婚儀式で威津那とみんなの前であんな事をする…なんて……恥ずかしぃ!)
橘は妄想が止まらない。
幼い頃から威津那を思って色々妄想してたけれど、狐を人間に例えるハンパな妄想をしてしまって恥ずかしくなるしドキドキする。
誰にも知られたくない自分一人の妄想だ。
(人間世界のだと、初夜というものを二人だけでするんだからそっちの妄想にしなきゃ!でもでも、西洋だと、口づけを結婚式出することはさっきの後尾と同じのような…違うようなぁ…)
一人妄想に頭を混乱させていると、突然小指を絡められた。
「ひゃっ!な、なに?」
橘はやっと現実に戻ってきたが、紺太は絡めた指を紺太の口元に寄せ、軽く口づけをした。
それは艶っぽさを感じる。
「僕は橘とならみんなの前で証明したいかな?」
「え、やめてよ。恥ずかしすぎるし。」
橘は冷たく速攻拒否をする。
紺太はに青い瞳を橘に合わせて微笑む。目の心は笑っていないと橘は思う。どこか僅かな怒り、闘志が灯っていると思う。
「じゃ、内緒でしちゃおうよ?」
青い瞳が橘を縛る。
「な、内緒なら……」
はっと、橘は口元を抑える。
(私何を!しかも妖術にかかってる……?)
幼い頃いたずら狐に化かされて、からかわれたことを思い出した。
優しい神狐たちの中には半妖が嫌いなものもいた……
紺太のはそれとは違う、誇りのようなものを守るようなものだと、橘は直感する。
「小指の縁も変えた…僕と陛下の瑞兆をつくるんだ……」
「瑞兆を…つくる?」
意味がわからない。だけれど頭の芯がしびれているのがわかる。
目の前がぼやける。
「僕は縁結びの神、ウカの孫でもあるんだよ。ばあちゃんにも了承済みなんだよ」
何かを企んでいる、それが成功したというように恍惚とした表情を紺太はしている。
「ウカノミタマの化身として、わしが紺太との縁を結んでやるぞ。」
ウカ様はフォフォっと笑う。
「半妖と半妖のほうがよい異能者が生まれるじゃて。
かの、『九尾殿』にも勝る狐も生まれるかもしれぬ。試してみようではないか?」
ウカ様は面白い実験をすることにワクワクしているようだ。
しかも息はとても酒臭い。
「お主の想う運命の相手よりも紺太に惚れて、次の帝の瑞兆を作るのだ。」
それは威津那を諦めろと言うことか…そんなのしたくないのに…威津那の顔すら思い出そうとすると滲む。
「お主には瑞兆を産む役目がある。これは変わらぬことよ。男の相手は誰でもいい……産むのは橘だからの。」
産む…?威津那の子では無い誰かと結ばれて……?
「威津那ではないほうが宮中に災いを起こさぬだろうよ。」
威津那が災いをもたらすのはなんとなく直感でわかっていて見ないふりをしていた…そこが信用だきなかった……前科もある…でも…好きなのはやめられない…どうしても……
それは変えられない宿命のような恋……
「まぁ、運命が宿命に勝てればじゃがの…」
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