あやかしと神様の昔語り

花咲蝶ちょ

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橘と威津那の巡り合いと探り合い

18☆シラスの力とウシハクの力

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 橘も張り詰めた緊張感が解けて、威津那に取り巻く、黒い瘴気もキラキラと光り輝き消えていくのを見た。

 黒い瘴気が光に輝き昇華するものは昇華し、未だ強い念と残る御霊は包石に吸収される。

「これは……殿下の包石の力……?」

 咲羅子が貸してくれた殿下の力が篭った包石の力だった。
 威津那は宮中で式神を送って手を出してもすべてを昇華させられたことを思い出す。
 あれは、ものすごい陽の力を宿した神の代物かと思っていたが、皇太子殿下のシラスの力だと驚愕し納得するとともに理解した。
(皇族のお力はシラスの力…すべてを知り包み込み優しい力……)
 アマテラスがシラス国にせよとテンソンにめいじてこの地を治め今に至り、皇族にはシラスという不思議な力を持っているらしい…
(我らレッドスパイが求め使う力は、世界中が行使しているすべてを支配し所有し恐怖で縛る力…ウシハクの力)
 対比というものではない、開放と縛りの力の違いだ。
 国はシラスで国民は幸せになっても他国に対して強いウシハクでなくては守れないのだから……
 と、威津那はそういう強い思想を持っている。
 だからこそレッドスパイに組みしているのだが……
 きっとそれはすべてを幸せにできない……
 包石の光を見ればそう本当の幸せを考えさせられる。
 恨みや復讐などでは本当の望みは叶わないものだと……
「殿下は、稀に見る眩しい光のオーラをお持ちになるのです。」
 槐寿は威津那が思っていた事を言う。
「あやかしから殿下を守る私の力などとるに及ばぬほどの神々しい方なのです」
 槐寿はお慕いする殿下の直々の護衛として自慢気だ。

「さすが、祝皇になるお方だな……」  
 威津那を蝕む負の念すらも昇華されて、清々しく感心し恐れ入った……
(皇太子殿下でこのような陽の気を放つのならば、祝皇陛下は……)
 恐れ多くてなんとも言えない高揚感が湧く。
 これは、幼い頃から帝国学校まで愛国心を叩き込まれたからか?
 いや、日和国民ならばきっと、物凄さを理解すれば感動し心揺さぶる高鳴りを感じるものなのだ。
 とくに、目に見えない力を使うものならば尚更……

 橘は、威津那が感涙で溢れているのをみて、涙をそっと拭いにっこりほほえむ。
 悲しみの涙ではないものを、改心の涙を流していることに気づく。

 橘はキラキラ光る包石とダウジング石合わせてさらに掲げると、暗闇を照らして異界から脱出する道が現れる。
 さらわれた子供たちを包んでいた卵も消え去り子どもたちも目を覚ます。
 威津那は子どもたちをカラスの背中に乗せて親元に届けるように命じた。
 マリアもカラスの背に載せてもらって、親元に帰ることにした。
 槐寿と見つめ合うと、
「いつか必ず迎えに行きます…」
「約束ですわよ…」
 そう言って二人は口づけをした。
 そして名残惜しく二人は手を振り別れた。
 異界から現し世にでれば、朝日が登りはじめていた。

 橘は朝日に包石を両手で掲げ捧げる。
「陛下の代行として、民の御霊を天へ返します……」
 包石が一層、輝き、包石が吸い取った念と御霊は光になって空に昇華された。
 そして、石もサラサラと消えてしまった。
 威津那は橘の姿が巫女のように美しく穢れない存在に見えた。
「また、殿下に包石を頂かなきゃ……」
 と言いながら、なんとか一件落着したことにホッとした。
 橘は朝日に浴びて普通の人間の姿にもどっている。
 朝日にキラキラ輝いている橘はとても美しくアマテラスそのものにも見えるほど清らかで慈愛に満ちていた……
 そんな橘に威津那は惚けてしまう。

「君は、陰陽師というより、陛下の巫女だね。
 清らかすぎるよ…君を妻にして穢すのは恐れ多いな……」
 威津那は純粋な微笑みをして橘の頬に触れて見つめて言った。
 橘はドキリとする。
 ある意味愛の告白にも聞こえるけれど……
「な、な、何言ってんのよ!つ、妻って!そんなのまだ決まっていないんだから!」
 橘は明らかに動揺してしまう。
 橘は威津那の事をどうしても嫌いになれない。むしろ、まだ好きだ。
「僕の赤い瞳には、僕の妻になることは確定した未来なんだけど…ね」
 迫った時ごまかしてしまってホントのことを伝えられなかった事を直接的に告白してみた。
「………はぁ?もう騙されないって言ったでしょ!」
 橘はあのときの怒りを思い出して怒鳴ると同時に、もっと重大なことを思い出す。
「……それよりもいろいろ聞きたいことがあるのよね……」
 橘と槐寿は威津那を逃げられないようにして宮中陰陽寮に連行していった。
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