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橘と威津那の巡り合いと探り合い
11☆恋仲
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「妖怪の姑獲鳥と念が同調してしまったようだな。そして、悪さをしている。操られているのか、念の意思なのか……どちらにしても早急に手を打とう」
と晴綛は決断すると、橘と隣に並ぶ威津那に視線をやり、
「お前ら二人で始末してこい」
「えっ!そんなのダメですよ!」
即座に否定したのは朔羅子だった。
「男女二人で夜中にあやかし退治なんて、橘が危険すぎます!娘を大切にしてあげてください!」
と、晴綛に詰め寄った。
「あやかしよりも、あの方は危険な人物なのですか?姫」
槐寿は真剣になって威津那を不審な目で見る。
朔羅子は真剣に頷く。
さらに信憑性を与えてしまうではないかと威津那は思う。
(否定はしないが……)
「仕事は疎かにしないよ。元軍人として違うよ」
「軍に所属していたのですか、そうですか!尊敬致します!武術を嗜んでいらしたのならばいずれお手合わせ願います!」
槐寿に尊敬の瞳を向けられて威津那は苦笑いをする。
今はもう日和に軍はない。
自衛隊という名前に変わった。
槐寿は今や帝のための軍ではないことに不服がある。
帝国軍人というのは、陛下の御意向に傷がつかないように行動する規律正しい組織だからだと、年の離れた亡き兄に教え諭されたことを思う。
教えも家系からの血筋もあって槐寿の忠義心は誰にも負けない自信がある。
「まぁ、呪術師として密かに重宝されてただけだから……武術は苦手かな」
「では、陰陽寮の夜の仕事にはもってこいな力を持っているのですね!」
尊敬の眼差しで、ぐいぐいくる槐寿に苦手を感じる。
後ろで朔羅子がほくそ笑む。
「彼、軍が大好きだから実際やっていた人の話聞くのも好きなのよね」
威津那はその時のことはあまり話したくないようだった。
困ってる威津那の前に橘は割って入って、
「と、とりあえず、父様…陰陽寮長の命令は絶対だし頑張るよ」
威津那と二人っきりで仕事というのは不安はあるけれどなんだかわくわくする。
と、顔に出ていると朔羅子は思ってなんだかモヤモヤする。
あやかしの管理はあやかしの棟梁の娘である橘が代行してあやかしと交渉することがある。
晴綛は朔羅子の頭をぽんぽんと子供にするように撫でる。
それは父親が愛おしい娘にするような行為で、父を亡くした朔羅子にとっては懐かしさや暖かさを思い出し落ち気が着く。
「もちろんいつもの通りに朔羅子にもぜひ頼みたかったが、高良も、残念ながら凶日じゃろ。外に出て危険な目に遭っては叶わぬからな」
「だがら、今日が大吉の槐寿の後ろを付いてここまできたのよね。
陰陽師と太刀の者は組んで事に取り掛かるのが決まりですわよね?」
「そうじゃ、陰陽師を二人出すという意味だからな。」
威津那には橘に悪さができないように、ルカの神の神呪をしてやったから二人っきりでも大丈夫だと思ったが……
「こちらからは、この槐寿を連れて行ってあげてくださいな、彼はそうしなくてはいかない理由もちゃんとありましてよ」
本当は二人だけで行かせるつもりだったが、槐寿が着いて来てくれるならちょうどいい。
「私は拐われた外国の…仏国の御令嬢と恋仲だったのです」
理由を話し出した。
マリアは日和国とのハーフの外交官の御令嬢で名前はマリア。
マリアは霊感があって、日和に漂う悲しき念や霊を怖がっているのを知った皇太子殿下が日和国滞在中彼女を護衛しておくれという命令がくだり、いつしか恋が芽生えて清く正しくお付き合いの最中だった。
そしてマリアは幼い妹の代わりに攫われて事件が人ならざるものの仕業だと察して陰陽寮の退魔の手伝い担当としている朔羅子に相談して今に至る。
「子供たちやマリアをいち早く救いたいのです……私をぜひお供にさせてください。」
深々と頭を下げて願い出た。
晴綛は迷いなく、
「まぁ、知らぬより、人物をとてもよく思うものが近くにいた方が念が強くなるし有利になるかもな」
ということで、承諾した。
「……えー……」
と、残念そうな声を発したのは威津那だった。
「二人きり楽しみだったのにね…」
こっそり橘の耳元で囁くと顔を橘は赤くした。
と晴綛は決断すると、橘と隣に並ぶ威津那に視線をやり、
「お前ら二人で始末してこい」
「えっ!そんなのダメですよ!」
即座に否定したのは朔羅子だった。
「男女二人で夜中にあやかし退治なんて、橘が危険すぎます!娘を大切にしてあげてください!」
と、晴綛に詰め寄った。
「あやかしよりも、あの方は危険な人物なのですか?姫」
槐寿は真剣になって威津那を不審な目で見る。
朔羅子は真剣に頷く。
さらに信憑性を与えてしまうではないかと威津那は思う。
(否定はしないが……)
「仕事は疎かにしないよ。元軍人として違うよ」
「軍に所属していたのですか、そうですか!尊敬致します!武術を嗜んでいらしたのならばいずれお手合わせ願います!」
槐寿に尊敬の瞳を向けられて威津那は苦笑いをする。
今はもう日和に軍はない。
自衛隊という名前に変わった。
槐寿は今や帝のための軍ではないことに不服がある。
帝国軍人というのは、陛下の御意向に傷がつかないように行動する規律正しい組織だからだと、年の離れた亡き兄に教え諭されたことを思う。
教えも家系からの血筋もあって槐寿の忠義心は誰にも負けない自信がある。
「まぁ、呪術師として密かに重宝されてただけだから……武術は苦手かな」
「では、陰陽寮の夜の仕事にはもってこいな力を持っているのですね!」
尊敬の眼差しで、ぐいぐいくる槐寿に苦手を感じる。
後ろで朔羅子がほくそ笑む。
「彼、軍が大好きだから実際やっていた人の話聞くのも好きなのよね」
威津那はその時のことはあまり話したくないようだった。
困ってる威津那の前に橘は割って入って、
「と、とりあえず、父様…陰陽寮長の命令は絶対だし頑張るよ」
威津那と二人っきりで仕事というのは不安はあるけれどなんだかわくわくする。
と、顔に出ていると朔羅子は思ってなんだかモヤモヤする。
あやかしの管理はあやかしの棟梁の娘である橘が代行してあやかしと交渉することがある。
晴綛は朔羅子の頭をぽんぽんと子供にするように撫でる。
それは父親が愛おしい娘にするような行為で、父を亡くした朔羅子にとっては懐かしさや暖かさを思い出し落ち気が着く。
「もちろんいつもの通りに朔羅子にもぜひ頼みたかったが、高良も、残念ながら凶日じゃろ。外に出て危険な目に遭っては叶わぬからな」
「だがら、今日が大吉の槐寿の後ろを付いてここまできたのよね。
陰陽師と太刀の者は組んで事に取り掛かるのが決まりですわよね?」
「そうじゃ、陰陽師を二人出すという意味だからな。」
威津那には橘に悪さができないように、ルカの神の神呪をしてやったから二人っきりでも大丈夫だと思ったが……
「こちらからは、この槐寿を連れて行ってあげてくださいな、彼はそうしなくてはいかない理由もちゃんとありましてよ」
本当は二人だけで行かせるつもりだったが、槐寿が着いて来てくれるならちょうどいい。
「私は拐われた外国の…仏国の御令嬢と恋仲だったのです」
理由を話し出した。
マリアは日和国とのハーフの外交官の御令嬢で名前はマリア。
マリアは霊感があって、日和に漂う悲しき念や霊を怖がっているのを知った皇太子殿下が日和国滞在中彼女を護衛しておくれという命令がくだり、いつしか恋が芽生えて清く正しくお付き合いの最中だった。
そしてマリアは幼い妹の代わりに攫われて事件が人ならざるものの仕業だと察して陰陽寮の退魔の手伝い担当としている朔羅子に相談して今に至る。
「子供たちやマリアをいち早く救いたいのです……私をぜひお供にさせてください。」
深々と頭を下げて願い出た。
晴綛は迷いなく、
「まぁ、知らぬより、人物をとてもよく思うものが近くにいた方が念が強くなるし有利になるかもな」
ということで、承諾した。
「……えー……」
と、残念そうな声を発したのは威津那だった。
「二人きり楽しみだったのにね…」
こっそり橘の耳元で囁くと顔を橘は赤くした。
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