あやかしと神様の昔語り

花咲蝶ちょ

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橘と威津那の巡り合いと探り合い

10☆対抗組織の能力者

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 威津那が陰陽寮職員になった三日目
 外国人の子供が行方不明になる事件を占う依頼が来た。
 外交官として来ている他国の子供が行方不明というのは国としての威信に関わる。
 それが一人や二人じゃない。
 夜に十歳前後の子供が消えるという。
 闇に飲まれるという感じ。
 残されるは赤い鳥の足跡のみ。
 犯人が何か意図して落としたものなのかと、触れば瘴気に当てられて気を失うというのだ。 
 もしかして、これはあやかしの仕業ではないか?という事で陰陽寮に政府から依頼が来た。
 その不吉なものを青年の太刀の者が陰陽寮に持ってきた。
 精悍で背が高くて体も鍛えていることがわかる武士のような十八歳の美男子だった。
  槐寿紘太郎えんじゅこうたろう
 槐の木を操り刀のように物や人ならざるものを斬ることができる能力を持っている。
 滝口家、榊家、桐島家、槐寿家の四家は代々帝を守る役目を持った家柄で特殊能力を一子相伝で受け継ぐのだ。
 滝口家は咲羅子の母の実家でもあった。
 桜庭家は元宮家でもあるが、祈り姫を代々守ってきた刀を持ち女子が受け継ぐ刀をいただき今現在桜庭家の女当主の咲羅子が刀の主で刀に認められて陰陽寮との仕事を熱心に努めている。
 咲羅子は槐寿の後ろからひょっこり出てきて橘に近づき、きゃっきゃと抱擁する。
 親友同士のいつもの挨拶である。
「ねえ、橘、またあの鳥の足跡に関わる事件なのよ…」
 橘にコソコソと耳打ちする。
「鳥の足の式神を使って念を集めて具現化させる事件って、宮中周辺でしか起こってなかったのに…ついに色んなところで事件が?」
 鳥の足の式神はなんの嫌がらせから宮中のそば近くに黒い念を集めさせて穢をつけようとしている感じだった。
 宮中の守りが強固だ柄嫌がらせで無関係な人間を襲わせているのか?
 陰陽寮長の晴綛に報告したら、
「ちょっと、私が行って締めてきてやる…」
 と言ってから、鳥の足跡の式神使いの悪さは消えていた。
(父様が本体をやっつけたと思っていたのに……)
 事件はまだ終わっていなかったことに橘はため息を吐いた。
 晴綛はさっそく、一人の陰陽寮職員を呼ぶ。
 呼ばれて前に出た彼は千年前の絵巻物にでてくる下膨れのような姫君のような容姿をしていると威津那は密かに思う。
 彼は仲間に手伝ってもらい大きな杯を床に起き神聖なお酒をたっぷりそそぐ。
 そして、鳥の足のついた布を底につけるようにいれる。
 それにも手を付けて浸す。
 彼は少し瘴気に当てられて見えるが真剣に誇り高く作業している。
巳鏡みかがみさんは水鏡を使って犯人を映し出す能力を持っているのよ」
「……へえ。すごいね。」 
(余計なものを落とさないように気をつけなければ……)
 と、威津那は肝に銘じる。
「陰陽寮はこういう一般には稀有に思われて居場所がない人にも仕事を与えて暮らせるようにするのも陛下の望みでもあるのよ」
「陛下は隅々まで国民のことをお知りになる、素晴らしい方だね」
 威津那は改めて感心して言った。
「うん!そうね。で、槐寿さんは皇太子殿下の護衛をしているのよ。だから陰陽寮には訪れないんだけど…」
 いつもなら咲羅子が率先して陰陽寮に怪しげなものを持ってきて仕事を依頼するのだが、何か訳ありのようだ。
 
「皆、静まれ現れるぞ」
 
 水鏡が一雫波紋を起こすと映像を映写機よりも明確に映し出す。

 女の人の顔にくちばしがあり、顔が異様に大きく翼がある。
 気持ちの悪い姿のあやかしに瘴気のような念がまとわりついている。
 更に禍々しさを放って、その姿を見たのならば恐怖と恐ろしさで、気を失うこともあるだろう。
 映像は気を失った子どもたちをあやかしの住まう闇の異界に連れ去るところだった。
「これは姑獲鳥という、あやかしじゃな。
 隣国の子供を失った親の念やら魂やらが具現化して子供をさらうあやかし…という念だな。日和にも石女といあやかしと同類だが、隣国のあやかしとは滑稽だな…」
 晴綛は顎に手を当てて唸る。
 隣国のレッドスパイがわざと日和の威信を汚すためにやっているのだと思うとため息が出る。
 宗教を信じないと言いながら、日和国や皇室を貶めるためならばどんな手をもつかう……
 組織では正式に認められていないことになっているらしいが、こういう輩もいるのがレッドスパイという組織なのだ。
 そしてら陰陽寮も正式ではなくなったことになっているがレッドスパイスパイのようなこういう輩を打ちのめすために必要な宮中奥の最重要組織であった。
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