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橘と威津那の巡り合いと探り合い
7☆さぐりあい
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橘はまず陰陽寮の中を案内する。
陰陽寮は寮というだけあって、各自に部屋を設けてある。
寮長と副長は局をもらい、他の職員は、簾や屏風で大部屋を区切られていた。
職員全員が宮中の陰陽寮に居座れるわけではないが、特殊能力で行く宛のない者はすべての力を陛下のために使うことを神と誓約をして住んでいる者もいる。
「威津那さんは家はあるの?」
「ないよ。身元をあまり知られたくないから貸家を転々としていたんだ」
(お婿さんに来て貰うにはちょうどいいかも)
と、橘は密かにほくそ笑む。
「じゃ、父様にお部屋用意してもらわなくちゃね」
「せっかくなら君の部屋の隣がいいな」
からかうように威津那はいう。
橘は顔を真っ赤にする。
(それって、夜這い宣言!?)
「き、基本陰陽寮ではそういうことは禁止なの!宮中で不謹慎でしょ!」
橘は慌てて威津那に注意をするが、わざと威津那は首をかしげて、
「不謹慎なことって?何かな?君の部屋と隣だと何か不謹慎な事ってあるの?」
子供みたいな質問してくるから尚更顔が赤くなる。
「お前の部屋は、橘の隣にしてやるぞ。ただし、ワシの局の隣ということになるがな」
後ろから晴綛が二人の間に割って入って橘を守る。
「あ。私、父様の局の半分もらってるのよ。」
「橘に手を出したら生きて帰れないことを覚悟することだな」
晴綛は妖気を脅しで放って本気だった。
陰陽寮は炊事場もお風呂もちゃんとある。
薪割り当番から自炊当番まで多岐にわたる。
新人は下働きの仕事もある事を威津那に伝える。
陰陽寮職員は、陰陽寮以外の寮に出入り禁止である。
職員に暦をお届けするのは陰陽寮長か、古い一族の信頼された陰陽寮職員だけだ。
スパイが入り込んで密会や最悪暗殺を防ぐためでもある。
外の世界とあまりかかわらない橘とまだ学生で由緒正しい家系の高良がその任を担っている。
普段の陰陽寮職員のやる事は、暦を手書きで書くことだ。
職員全員分なのでかなり時間がかかる。人手が正直必要なのだ。
ということを伝えて、暦の書き方を教える。
「五行の基本は知ってるよ。呪術の基本でもあるからね」
「やっぱり、陰陽師の家系ってより呪術師の家系なのね?」
「そうだよ、未来はもう決まっているものだから興味なかったんだけどね……」
と言って、じっと橘を見つめて艶っぽく優しく微笑む。
橘は色っぽさにドキドキ浮き立つ心が止まらない。
自分に向けられている瞳と優しくも色っぽい表情は初めてあった頃を思い出す。いやそれよりも大人っぽい雰囲気。
「で、でも、運命は変えられるものだし…悪い運命は変えなきゃいけないものだから…
陛下のために…それが陰陽寮職員のお仕事なの!わかった?」
途中、気持ちを正すために言い切った。
「うん、うん、わかってるよ。
僕も帝国学校出てるからね。陛下が日和そのもので陛下がおられないと国は国じゃなくなるし、陛下はとても大切な尊い御方だ……」
威津那が陛下を思う熱い気持ちが伝わってきた。
威津那はちゃんと陛下を尊く思っていると感じた。
橘の直感は当たる。
いろいろ威津那のことを知りたいのは確かだが互いに探りあっているなとは感じていた。
(まぁ……普通の友達になる人にも似たような探り合いはするけど…逆にほだされて私のこと何でも喋りそうだわ…)
と威津那の事を気にはなるけれど、気が抜けないと肝に命ずる橘だった。
陰陽寮は寮というだけあって、各自に部屋を設けてある。
寮長と副長は局をもらい、他の職員は、簾や屏風で大部屋を区切られていた。
職員全員が宮中の陰陽寮に居座れるわけではないが、特殊能力で行く宛のない者はすべての力を陛下のために使うことを神と誓約をして住んでいる者もいる。
「威津那さんは家はあるの?」
「ないよ。身元をあまり知られたくないから貸家を転々としていたんだ」
(お婿さんに来て貰うにはちょうどいいかも)
と、橘は密かにほくそ笑む。
「じゃ、父様にお部屋用意してもらわなくちゃね」
「せっかくなら君の部屋の隣がいいな」
からかうように威津那はいう。
橘は顔を真っ赤にする。
(それって、夜這い宣言!?)
「き、基本陰陽寮ではそういうことは禁止なの!宮中で不謹慎でしょ!」
橘は慌てて威津那に注意をするが、わざと威津那は首をかしげて、
「不謹慎なことって?何かな?君の部屋と隣だと何か不謹慎な事ってあるの?」
子供みたいな質問してくるから尚更顔が赤くなる。
「お前の部屋は、橘の隣にしてやるぞ。ただし、ワシの局の隣ということになるがな」
後ろから晴綛が二人の間に割って入って橘を守る。
「あ。私、父様の局の半分もらってるのよ。」
「橘に手を出したら生きて帰れないことを覚悟することだな」
晴綛は妖気を脅しで放って本気だった。
陰陽寮は炊事場もお風呂もちゃんとある。
薪割り当番から自炊当番まで多岐にわたる。
新人は下働きの仕事もある事を威津那に伝える。
陰陽寮職員は、陰陽寮以外の寮に出入り禁止である。
職員に暦をお届けするのは陰陽寮長か、古い一族の信頼された陰陽寮職員だけだ。
スパイが入り込んで密会や最悪暗殺を防ぐためでもある。
外の世界とあまりかかわらない橘とまだ学生で由緒正しい家系の高良がその任を担っている。
普段の陰陽寮職員のやる事は、暦を手書きで書くことだ。
職員全員分なのでかなり時間がかかる。人手が正直必要なのだ。
ということを伝えて、暦の書き方を教える。
「五行の基本は知ってるよ。呪術の基本でもあるからね」
「やっぱり、陰陽師の家系ってより呪術師の家系なのね?」
「そうだよ、未来はもう決まっているものだから興味なかったんだけどね……」
と言って、じっと橘を見つめて艶っぽく優しく微笑む。
橘は色っぽさにドキドキ浮き立つ心が止まらない。
自分に向けられている瞳と優しくも色っぽい表情は初めてあった頃を思い出す。いやそれよりも大人っぽい雰囲気。
「で、でも、運命は変えられるものだし…悪い運命は変えなきゃいけないものだから…
陛下のために…それが陰陽寮職員のお仕事なの!わかった?」
途中、気持ちを正すために言い切った。
「うん、うん、わかってるよ。
僕も帝国学校出てるからね。陛下が日和そのもので陛下がおられないと国は国じゃなくなるし、陛下はとても大切な尊い御方だ……」
威津那が陛下を思う熱い気持ちが伝わってきた。
威津那はちゃんと陛下を尊く思っていると感じた。
橘の直感は当たる。
いろいろ威津那のことを知りたいのは確かだが互いに探りあっているなとは感じていた。
(まぁ……普通の友達になる人にも似たような探り合いはするけど…逆にほだされて私のこと何でも喋りそうだわ…)
と威津那の事を気にはなるけれど、気が抜けないと肝に命ずる橘だった。
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