あやかしと神様の昔語り

橘と威津那の巡り合いと探り合い

2☆組織VS組織

　戦後十年目、未だ宮中に群がる闇に魂を落とした念や救われなかった御霊を浄化させる仕事の最中だ。

　それは、未ださまよう魂を天へ帰らせる事は陛下の命令でもあった。
　陛下自ら行幸なさり癒やされる魂もあるが全てが癒やされるわけではない……

　残されたもの、今後作られる恨みや妬みの邪念も闇に魂を落としたものの糧となる。

　先の世界大戦で日和国は祝皇陛下の大御宝である国民の命を何百何十万とも犠牲になってしまったことを憂う。
　国民みな陛下を慕っていた。
　神の子孫であり日和国の二千年以上支えてきた。
　敗戦した日和国を侮辱するかのごとくに戦勝国は振る舞い、陛下を愚弄した。
　神ではない人間の男だと言うことを見せつけるために日和のみならず世界中に陛下の新聞の御真影をばらまいた。
　戦勝国は馬鹿にするが、祝皇は神ではなく人だということを国民誰もが知っていた。
　戦勝国の神のように一神教、キリシト一人が神というわけではない。
　祝皇は皇帝であって法王。
　神の子孫であって我が国を継続せし日和国民にとって尊い方だ。
　そして、その思いに応えて国民のために神に祈りを捧げる存在。
　そもそも神が神に祈りを捧げるわけ無いではないか……
　自然の神を敬い実り豊かに国民が飢えず幸せに、幸せに、暮らせるように常に神々に祈っていらっしゃり、国の政に口を出さなかった。
　世界中で陛下を悪者にするのは敗戦国の誹りを受けることは致し方ないが、大御宝の国民の中にも不貞な輩が溢れ、陛下を否定し愚弄する組織レッドスパイが幅を利かせていた。
　それはGHQの中にも潜み、世界を混沌に陥れようともしていた。
　そのような企みは一応阻止されたが、日和国内でうごめく闇の組織化されたレットスパイの怪しげな動きを現在盛大に活発化している。
　教育機関に日和や祝皇を憎むように教育を変えて実際に愛国心をもつ若者の思想は国を滅ぼすような念を放つほどだ。
　それは、祈り姫の思いを巡らす力を負に変え日和を滅ぼすことに力を貸すことになる……日和国にとって、いや世界にとっても由々しき事なのだ。
　さらに、人の心や死者のたましいや、邪念を操る組織と陰陽寮は戦っていた。
　一応陰陽寮は表向き芽維治のときに廃止されたが、奥（宮中陛下のお住い）では存在していた。
　元宮家であった中務卿が組織する代々陛下に使える陰陽師や世間一般では信じられないような超能力者を集めたのだった。
　その組織は舎人寮のなかにもいる。それは『太刀の者』と呼ばれる目に見えざれぬものを『退魔の刀』を用いて陛下を守る武士だった。
　普段は陛下、殿下おそばに侍りて護衛をする者たちだ。
　GHQの支配がなくなったとはいえ無念を癒やしに来る目に見えざる者たちからお守りする役目を持っている特殊な者たちだ。
　だが、そのことも無意味だと言う教育は更に強化され、目に見えないものに敬意を払わない教育にもなっている。
　今後は科学が更に進めば、霊やあやかしを信じる者は更に減ることだろう。
　日和国は目に見えぬ神、あやかし、霊に、思いを残したものを、祈り姫の祈りにのせて世界にめぐらせて世界の平和を『#_祝ぐ_ことほ__#事』が祝皇のお役目である。
　陰陽寮や舎人寮の闇を浄化させる仕事は祈り姫宮の手助けにもなるのだった。
　その組織に入れたこと重宝されることは橘と咲羅子にとって、表では知られない仕事ではあるが光栄な事だった。