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橘と威津那の巡り合いと探り合い
1話☆あやかし陰陽師と女伝統衛士
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すべてを闇に……
光も届かないほどの闇に染め上げたら、悲しき未来は見えなくなるものだろうか……
だけど僕の闇に光がキラキラと輝く……
すべてを闇にする僕の目の前の君が一点の輝く光だとするならば共に未来を見ていたい……
いずれその光は一筋の涙の輝きに消えるとしても……
☆
「橘!闇を照らしてっ!」
「わかったわ!咲羅子姉さん」
夜闇から手を不気味に伸ばす念に囲まれた橘と朔羅子は背中合わせになって呼吸を合わせる。
齢十九歳の橘は桃色の狩衣装束で髪の短い天然パーマの頭からは狐の耳を生やし、お尻から尻尾が生えていた。
咲羅子は齢二十歳の女性で、こちらも狩衣装束に胸当てをし、紅色の括り袴に高く縛った長い髪が若侍を連想させる。
咲羅子の衣装は宮中を守る伝統衛士の正式な制服で、今や簡単には帯刀出来ない刀を構える。
橘は手のひらから出した狐火で闇を照らすと、悲しき魂が現し世にあらわれる。
影が形も失い蠢き光をつかむように手を伸ばしている。
もうこの世のものではない思念の塊で自らが何者だったかもう忘れてしまった操られた魂……
咲羅子は陛下に託された水晶で刀をなでる。
その石は皇太子殿下の祈りのこもった、包石は死者が復活したり生者を死の世界に引きこませないための石。
遥か昔から日和に伝わる祝皇の秘術。
皇太子殿下は物に祈りを込めると聖なる力を与えてくださる特殊な力を持っている。
御本人は自覚をしていなく、謙虚であられる。
刀が包石にふれる鋭い刃は光を宿した刀になる。
只、魔を斬るだけの退魔の太刀が天へ昇天を許す力を宿す。
そして、闇の者の念に向かってひと薙ぎすると闇は光の粒子になり霧散する。
強制的にあの世へ送ることができるのだ。
二人を囲んでいた闇は消えた。
だが、そこに魂が宿っていた人型の形代の紙がひらりと地面に落ちる。
念に具現化の力を与えていた原因の物だ。
「また、この式神……また闇に魂を操ったのね…」
式神の真ん中に鳥の足のマークそれも血でつけたように滲んで禍々しさを感じ触ることすら警戒する。
橘はため息を吐く。
こういう事件が最近多い。
同じ陰陽師が悪さをしている。
レッドスパイは神仏は認めないくせに世界の秩序を崩壊させるためならば禁断の呪術をも利用するようだ。
それは、とても厄介なことだった。
陰陽寮職員のような霊力あるものの集まりと同じ闇の呪術や魔術操る組織で構成されていると陰陽師の責任者の中務卿が導き抱き出した答だった。
日和をどうにかして滅ぼしたい組織の手のものだと言う明確な意思をもつレッドスパイの仕業だった。
だけどこのような事件は日常茶飯事。
先の戦で悲しき魂はときに生きている者や陛下に救いを求めて宮中に闇が徐々に集まる。
みな、先の戦で陛下を慕っていた。勝利を信じていた……平和を望んでいた。
敗戦や死したことに悔やむ魂、生きていて悔しさ無念の思いを操り陛下の命を奪おうとする反逆者がいる。
そのような力を持って人を殺めても今の時代は罪を裁くことはできない。
呪詛を防ぐか、向かい撃つしかないのだ。
それを、陰陽寮職員の阿倍野橘と舎人寮職員で伝統衛士をしている桜庭咲羅子は闇の者を処する命令を受けていた。
光も届かないほどの闇に染め上げたら、悲しき未来は見えなくなるものだろうか……
だけど僕の闇に光がキラキラと輝く……
すべてを闇にする僕の目の前の君が一点の輝く光だとするならば共に未来を見ていたい……
いずれその光は一筋の涙の輝きに消えるとしても……
☆
「橘!闇を照らしてっ!」
「わかったわ!咲羅子姉さん」
夜闇から手を不気味に伸ばす念に囲まれた橘と朔羅子は背中合わせになって呼吸を合わせる。
齢十九歳の橘は桃色の狩衣装束で髪の短い天然パーマの頭からは狐の耳を生やし、お尻から尻尾が生えていた。
咲羅子は齢二十歳の女性で、こちらも狩衣装束に胸当てをし、紅色の括り袴に高く縛った長い髪が若侍を連想させる。
咲羅子の衣装は宮中を守る伝統衛士の正式な制服で、今や簡単には帯刀出来ない刀を構える。
橘は手のひらから出した狐火で闇を照らすと、悲しき魂が現し世にあらわれる。
影が形も失い蠢き光をつかむように手を伸ばしている。
もうこの世のものではない思念の塊で自らが何者だったかもう忘れてしまった操られた魂……
咲羅子は陛下に託された水晶で刀をなでる。
その石は皇太子殿下の祈りのこもった、包石は死者が復活したり生者を死の世界に引きこませないための石。
遥か昔から日和に伝わる祝皇の秘術。
皇太子殿下は物に祈りを込めると聖なる力を与えてくださる特殊な力を持っている。
御本人は自覚をしていなく、謙虚であられる。
刀が包石にふれる鋭い刃は光を宿した刀になる。
只、魔を斬るだけの退魔の太刀が天へ昇天を許す力を宿す。
そして、闇の者の念に向かってひと薙ぎすると闇は光の粒子になり霧散する。
強制的にあの世へ送ることができるのだ。
二人を囲んでいた闇は消えた。
だが、そこに魂が宿っていた人型の形代の紙がひらりと地面に落ちる。
念に具現化の力を与えていた原因の物だ。
「また、この式神……また闇に魂を操ったのね…」
式神の真ん中に鳥の足のマークそれも血でつけたように滲んで禍々しさを感じ触ることすら警戒する。
橘はため息を吐く。
こういう事件が最近多い。
同じ陰陽師が悪さをしている。
レッドスパイは神仏は認めないくせに世界の秩序を崩壊させるためならば禁断の呪術をも利用するようだ。
それは、とても厄介なことだった。
陰陽寮職員のような霊力あるものの集まりと同じ闇の呪術や魔術操る組織で構成されていると陰陽師の責任者の中務卿が導き抱き出した答だった。
日和をどうにかして滅ぼしたい組織の手のものだと言う明確な意思をもつレッドスパイの仕業だった。
だけどこのような事件は日常茶飯事。
先の戦で悲しき魂はときに生きている者や陛下に救いを求めて宮中に闇が徐々に集まる。
みな、先の戦で陛下を慕っていた。勝利を信じていた……平和を望んでいた。
敗戦や死したことに悔やむ魂、生きていて悔しさ無念の思いを操り陛下の命を奪おうとする反逆者がいる。
そのような力を持って人を殺めても今の時代は罪を裁くことはできない。
呪詛を防ぐか、向かい撃つしかないのだ。
それを、陰陽寮職員の阿倍野橘と舎人寮職員で伝統衛士をしている桜庭咲羅子は闇の者を処する命令を受けていた。
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