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ジジ様自伝

おいさき短い欲

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「ジジ様、葛葉子さんをオレにどうか、ください…!絶対に大切にします」
 葛葉子と瑠香はジジ様の前に二人並んで改めて結婚の許可を求めた。
「瑠香くんなら安心じゃて。葛葉子、幸せにおなり…」
「うん、ありがとう!ジジ様!」
 そう言って葛葉子はワシを抱きしめた。
 瑠香君は背中に荒御魂オーラを放つほど孫とのラブラブを嫉妬する。
 威津那異常に嫉妬深く、実行力のある性格の持ち主だと見抜いた。
 しかも強かだ。
 香茂の人間のことはよく知っているが、瑠香は癖の強い性格をしていることに苦笑してしまった。
 そのことを知ると煽ってやりたくて、葛葉子の胸に頭を埋めるとさらに黒いオーラを吹き出してワシをどうやって亡き者にするか考えを巡らしてる様は威津那以上の逸材になり得るとも思ってしまうほどだった。
「ま、瑠香くんもワシの孫も同然じゃ仲良くしよう」
 そう言って、握手をすると瞬時に思考を読んだのか、荒御魂オーラは消えた。
「もう、寂しい思いはさせませんよ……」
 と、少し泣きそうで真摯な瞳を向けてつぶやいた。
 狐耳のワシの耳には聞こえてしまう。
「瑠香くんは心優しい子じゃのぉ。ヒャッヒャッ…」


 威津那の件も落ち着いて、屋敷も改築中だが、孫の葛葉子は幼馴染の瑠香君と無事に結婚初夜を過ごして、阿倍野姓ではないが、婿入りのように同居をしてくれている。
 今は宮中陰陽師の仕事を謹慎中だが、わしが生きている間に審神者の心得や陰陽師としてのさらなる知識も受け継いでもらえたら良いと、高良も心よく賛成してくれた。
 阿部野家と香茂家はしばらく疎遠を貫いてきたが、二人が婚姻してくれたために再び深い繋がりを結べることだろうと、内心ホッとする。

 全ては丸くおさまった……

 あとはゆっくり寿命が来るまで余生を楽しみたいと思って煙管を吐く。
 全ては神のお導き……
 それに従ったわしが本当の幸せなど、この歳になって望めるとは思わなんだ……

 ワシを残して、愛おしい…妻も、娘夫婦も孫も早くに亡くなった……

 その後を早く追いたい……そう願っていたのだが……
 唯一、一度死んだが生き返った葛葉子の今後のことが心配なのともっと共に思い出を作りたい、ワシのことを覚えていてほしいと欲をかいてしまった。
 しかも、同居して介護もしてくれる気満々なのも嬉しいことだ。

 ワシの人生は捨てたものではない。
 もっと、できる限り役に立たねばなと思う。

 そのせいか、ひ孫の晴房のもとに異界を通じて可愛がりに行って、力の使い方も教えてやった。
 あとは、葛葉子の腹に宿る子供にもワシの教えを伝えたい…

 ワシを忘れないでほしい……

 神に,陛下に支えることを決めてから己れの欲は諦めていたのに、生きることが楽しくなってきた…
 あと数年、せめて葛葉子より早くみんなの元に逝きたいが、残りの人生を思う存分楽しむことにした。
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