53 / 56
桂と薫と野薔薇の異界探検
13☆またいつか
しおりを挟む
子供達は遊び疲れて眠ってしまった。
「楽しいお正月になってよかったわ…毎年呼べればいいんだけど……これが最後かもしれないわね…」
橘はフゥ…と悲しいため息を吐く。
「ウカ様の食べ物を食べたから霊力も上がって異界に迷い込いこんでも抜け出せ行き来きできる能力を得たよ。また会えるよ…それは将来、良き力になるよ」
威津那も束の間の孫たちと触れ合いが終わってしまうと悲しい。
眠る孫たちの額を愛おしそうに撫でる。
「明綛も彷徨うことはなくなったと思うわ…野薔薇ちゃんと縁が繋がっているもの……」
流花は微笑む。
「繋がりが出口ということか」
流花と夫婦になって愛の結晶の血縁がいることに嬉しくなる。
正直このまま黄泉に行っても悔いはないのだが……
この阿倍野屋敷に導かれたということはいずれ、威津那の代わりに陰の神として鎮座することになる…可能性があるということか……と思う。
その時に流花がそばにいてくれたら寂しくはないだろうなと…明綛には見えない未来を思う。
「ここはあの世に近く現世への入り口、異界は時を超える場所…野薔薇ちゃんに出会えた事で縁も繋がり現世に帰る事ができるわ……
だけど、時は重なるかわからないけれど…」
「時が重ならないのは分かっていた……」
明綛は悲しい顔をして苦笑した。
もし、現世に戻れたとしても野薔薇もこの世のものではなくなっている可能性もある……と思うとこのまま留まりたい気持ちになる。
いつも自分は優柔不断だと思う。
未来を思うのに、未来が怖い…
流花とあの世に逝きたいのに、生きて人生を全うしたい……
それが、神誓いを失敗した原因で罰を食らった。
決断しなくてはいけない時に迷うことは、大切な存在を守れないということなのだから……
眠る野薔薇の頬をふれると。
「現世であいまつ…ひいおじいちゃま…むにゃむにゃ」
「そうだな…お前にまた会いに行くよ…絶対」
とりあえずの目標は生きて野薔薇に会えると信じよう。
『さぁ、みんな起きて、お母さんお父さんが心配をしているわ』
『連れてきちゃってごめんねって伝えておいてくれ。』
『また、来世で会いましょう。きっとあなたを見つけてあげるから』
《……現世への扉を開けよう……》
そういって阿倍野屋敷の玄関の両開きの扉を橘と威津那で開け放つ。
玄関向こうは暗闇ではなく、優しい朝日が差し込むように光輝いて、子供達と明綛を迎え入れた。
「楽しいお正月になってよかったわ…毎年呼べればいいんだけど……これが最後かもしれないわね…」
橘はフゥ…と悲しいため息を吐く。
「ウカ様の食べ物を食べたから霊力も上がって異界に迷い込いこんでも抜け出せ行き来きできる能力を得たよ。また会えるよ…それは将来、良き力になるよ」
威津那も束の間の孫たちと触れ合いが終わってしまうと悲しい。
眠る孫たちの額を愛おしそうに撫でる。
「明綛も彷徨うことはなくなったと思うわ…野薔薇ちゃんと縁が繋がっているもの……」
流花は微笑む。
「繋がりが出口ということか」
流花と夫婦になって愛の結晶の血縁がいることに嬉しくなる。
正直このまま黄泉に行っても悔いはないのだが……
この阿倍野屋敷に導かれたということはいずれ、威津那の代わりに陰の神として鎮座することになる…可能性があるということか……と思う。
その時に流花がそばにいてくれたら寂しくはないだろうなと…明綛には見えない未来を思う。
「ここはあの世に近く現世への入り口、異界は時を超える場所…野薔薇ちゃんに出会えた事で縁も繋がり現世に帰る事ができるわ……
だけど、時は重なるかわからないけれど…」
「時が重ならないのは分かっていた……」
明綛は悲しい顔をして苦笑した。
もし、現世に戻れたとしても野薔薇もこの世のものではなくなっている可能性もある……と思うとこのまま留まりたい気持ちになる。
いつも自分は優柔不断だと思う。
未来を思うのに、未来が怖い…
流花とあの世に逝きたいのに、生きて人生を全うしたい……
それが、神誓いを失敗した原因で罰を食らった。
決断しなくてはいけない時に迷うことは、大切な存在を守れないということなのだから……
眠る野薔薇の頬をふれると。
「現世であいまつ…ひいおじいちゃま…むにゃむにゃ」
「そうだな…お前にまた会いに行くよ…絶対」
とりあえずの目標は生きて野薔薇に会えると信じよう。
『さぁ、みんな起きて、お母さんお父さんが心配をしているわ』
『連れてきちゃってごめんねって伝えておいてくれ。』
『また、来世で会いましょう。きっとあなたを見つけてあげるから』
《……現世への扉を開けよう……》
そういって阿倍野屋敷の玄関の両開きの扉を橘と威津那で開け放つ。
玄関向こうは暗闇ではなく、優しい朝日が差し込むように光輝いて、子供達と明綛を迎え入れた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~
緑谷めい
恋愛
ドーラは金で買われたも同然の妻だった――
レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。
※ 全10話完結予定

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる