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桂と薫と野薔薇の異界探検
6☆夜闇に輝く阿部野屋敷
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光放つ白狐は二人の目の前に座り、じっと見つめる。
《やっと見つけたわ、叔父様、野薔薇ちゃん》
白狐はそう口にして、一瞬光り輝くと、狩衣に赤い袴を穿き、狐耳と尻尾を生やした二十代の女性の姿になった。
短髪の癖っ毛で目が大きくてイタズラっぽい面立ちは野薔薇そっくりだった。
「葛葉子叔母さん?」
野薔薇は自分そっくりな目の前の女性を桂と薫の母にそっくりだと思った。
「ふふ、葛葉子は私の娘よ。桂と薫は孫。」
「そうだったのでつか!私たちが入り込んだ異界は桂くん薫くんのおばあちゃん、おじいちゃんが神様になって帝の世を見守っていると聞いたことがありまつ!」
その、神様に会えるなんて思わなかったと言うか、夢を思い出した。
「夢の中で、私を待っていると告げましたか?」
『ええ、せっかくのお正月だもの、親戚みんなでワイワイしたいし、叔父様が子供達を引き連れて屋敷に来てくれる夢を威津那が見たと言うから楽しみにしていたわ』
橘は尻尾を振って頬に手を当ててニコニコ明るく告げる。
「晴綛の娘か……よく喋るところ、似ているな」
黒狐さまは、懐かしそうにそう言う。
『ふふ、よく言われていたわ。今はそっくりじゃないけどね………』
橘はそっぽをむきため息を吐いた。
誓いを破るとほんとうに、見るも無惨な妖怪狐耳ハゲチビエロジジイになってしまうとは……
年だから色気なんか必要ないが、自慢の美男の父だったのでショックは大きい。
「でつよねージジさまに似てるって外見言われたら私なら寝込みまつ」
野薔薇は正直に言う。
生まれた時からあんな曾祖父ちゃんなのでガッカリ感はない。
「そうなのか………」
晴綛を女にしたら…と、黒狐さまはもう少しで余計な事を言うところだったと思う。
『では、早速案内するわ。私の後をついてきて…』
「そうだ!桂くんと薫くんと逸れてしまったのでつ!早く見つけなきゃなんでつ!」
野薔薇は橘の明るい安心させる雰囲気に呑まれて大変な事態を忘れかけていた。
『大丈夫よ、威津那が二人の孫を見つけて、屋敷に連れてきてくれたのよ』
「屋敷?」
『この異界を統べり守る屋敷よ。あなたたちを招待するわ』
そう言うと、橘は翻り、狐の姿になって二人を屋敷に導いた。
案内でたどり着いたそこは異界に引き込まれた洋館阿部野邸だった。
真っ暗闇の中に屋敷中の灯りがついていてさまざまな色のついた窓からの光はステンドガラスから灯りが照らされたように明るく夜闇に光の影を彩って美しい。
「すごい!綺麗でつ!お正月よりもクリスマスにお邪魔したいくらいでつ!」
『ふふ、そうね、今度その日に誘ってもいいかもね。』
野薔薇の喜びように橘は微笑み頭を撫でる。
黒狐さまは、じっと屋敷を見上げて固まっていた。
「これは、私の生まれ育った屋敷だ…帰って来れたのだな……」
そう言って一筋涙が頬を伝った。
《やっと見つけたわ、叔父様、野薔薇ちゃん》
白狐はそう口にして、一瞬光り輝くと、狩衣に赤い袴を穿き、狐耳と尻尾を生やした二十代の女性の姿になった。
短髪の癖っ毛で目が大きくてイタズラっぽい面立ちは野薔薇そっくりだった。
「葛葉子叔母さん?」
野薔薇は自分そっくりな目の前の女性を桂と薫の母にそっくりだと思った。
「ふふ、葛葉子は私の娘よ。桂と薫は孫。」
「そうだったのでつか!私たちが入り込んだ異界は桂くん薫くんのおばあちゃん、おじいちゃんが神様になって帝の世を見守っていると聞いたことがありまつ!」
その、神様に会えるなんて思わなかったと言うか、夢を思い出した。
「夢の中で、私を待っていると告げましたか?」
『ええ、せっかくのお正月だもの、親戚みんなでワイワイしたいし、叔父様が子供達を引き連れて屋敷に来てくれる夢を威津那が見たと言うから楽しみにしていたわ』
橘は尻尾を振って頬に手を当ててニコニコ明るく告げる。
「晴綛の娘か……よく喋るところ、似ているな」
黒狐さまは、懐かしそうにそう言う。
『ふふ、よく言われていたわ。今はそっくりじゃないけどね………』
橘はそっぽをむきため息を吐いた。
誓いを破るとほんとうに、見るも無惨な妖怪狐耳ハゲチビエロジジイになってしまうとは……
年だから色気なんか必要ないが、自慢の美男の父だったのでショックは大きい。
「でつよねージジさまに似てるって外見言われたら私なら寝込みまつ」
野薔薇は正直に言う。
生まれた時からあんな曾祖父ちゃんなのでガッカリ感はない。
「そうなのか………」
晴綛を女にしたら…と、黒狐さまはもう少しで余計な事を言うところだったと思う。
『では、早速案内するわ。私の後をついてきて…』
「そうだ!桂くんと薫くんと逸れてしまったのでつ!早く見つけなきゃなんでつ!」
野薔薇は橘の明るい安心させる雰囲気に呑まれて大変な事態を忘れかけていた。
『大丈夫よ、威津那が二人の孫を見つけて、屋敷に連れてきてくれたのよ』
「屋敷?」
『この異界を統べり守る屋敷よ。あなたたちを招待するわ』
そう言うと、橘は翻り、狐の姿になって二人を屋敷に導いた。
案内でたどり着いたそこは異界に引き込まれた洋館阿部野邸だった。
真っ暗闇の中に屋敷中の灯りがついていてさまざまな色のついた窓からの光はステンドガラスから灯りが照らされたように明るく夜闇に光の影を彩って美しい。
「すごい!綺麗でつ!お正月よりもクリスマスにお邪魔したいくらいでつ!」
『ふふ、そうね、今度その日に誘ってもいいかもね。』
野薔薇の喜びように橘は微笑み頭を撫でる。
黒狐さまは、じっと屋敷を見上げて固まっていた。
「これは、私の生まれ育った屋敷だ…帰って来れたのだな……」
そう言って一筋涙が頬を伝った。
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