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桂と薫と野薔薇の異界探検
4☆桂の内なる力
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影の中に入ると、真っ暗闇だった。
「野薔薇ちゃん!いる⁉︎」
薫の手は引いているので無事なのはわかるが、野薔薇が見えない。
気配もない。
「にーちゃん!野薔薇とはぐれたみたいだ!」
「ええええっ!」
桂は青ざめ叫ぶ。
こんな真っ暗闇で異界で野薔薇一人逸れてしまうなんてとんでもないことが起きてしまったと卒倒しそうになる。
ジジ様曰く迷子になると一生出れなくなるかも知れないと言っていた。
異界は薫くらいの時にジジ様に連れられウカ様の宴に招待された時以来だった。
あまり記憶にはないけれど、夜だと異界は月の光が優しく異界を照らし、さらに浮遊する霊のようなものが通り過ぎたり、桂を脅そうと近づいたあやかし未満の存在がジジ様に瞬時に消されていたのを思い出す。
「とりあえず俺、狐火だして辺りを照らすっ!」
ぼっ!と小さな手のひらから狐火を出しあたりを照らした途端、二メートルあるだろう巨大な半透明のゆらゆらと実態の無いお化けが、歪んだ顔をしてこちらを飲み込もうと大きな口を広げて二人の子供を頭から飲み込もうとして気づかれてピタリと、止まったようだ。
「うわっ!スライムおばけだ!」
薫はゲームのモンスターを連想して叫ぶ。
それは小さい頃見た化け物だと桂は思った。
《小狐がおるようだなぁ…大きいやつに力を削がれたがこいつを食べれば我らは実態を持てるかも知れぬナァ!》
そういって半透明で白い線だけの不気味な化け物は再び子供達を飲み込めるほどの大きな口を開けて襲いかかってきた。
桂は人差し指と中指をくっつけて、
「ヒカリハナテキュウキュウニョリツリョウ」
と唱えると五芒星を素早く描くと光り輝きあやかしを消滅させた。
「ふう、久しぶりだったけど、上手く力使えたかな?」
桂は余裕だったが、大変な仕事をしたように額の汗を拭く仕草をした。
普段は使わない内に秘めた力を上手く使えるようにジジ様に教わった。
更にカッコよく見える能力の使い方をやってみた。
桂は香茂と阿部野と黒御足の血筋をうまく混ざった桂にジジ様直伝を教わっている。
能力も申し分ないほど三家の力を受け継いでいる未知の力を桂は秘めていた。
「にーちゃんずるい!俺もやっつけたかった!」
薫は兄を尊敬するも自分もそのくらいできると自負している。
薫は生まれながらにジジ様と同じ半妖だ。
桂のように内に秘めるちからではなく、外見、能力そのもの妖狐である力を秘めている。
桂もジジ様に能力の使い方そのものを伝授されている。
『わしの伝授したことが形見になってくれたら嬉しいの…そうしたら一生ワシのことを覚えていてくれるじゃろ?』
と言っている。
「薫は狐火で辺りを照らしてくれてるからね、余計に力を使わせるわけにはいかないよ。でもいざってなったら助けてくれるよね?」
「うん!当たり前だよ!」
優しい兄の言葉に満面の笑みだ。
「早く野薔薇ちゃんを探そう!」
兄弟は手を強く繋いで、暗闇の中を歩き出した。
「野薔薇ちゃん!いる⁉︎」
薫の手は引いているので無事なのはわかるが、野薔薇が見えない。
気配もない。
「にーちゃん!野薔薇とはぐれたみたいだ!」
「ええええっ!」
桂は青ざめ叫ぶ。
こんな真っ暗闇で異界で野薔薇一人逸れてしまうなんてとんでもないことが起きてしまったと卒倒しそうになる。
ジジ様曰く迷子になると一生出れなくなるかも知れないと言っていた。
異界は薫くらいの時にジジ様に連れられウカ様の宴に招待された時以来だった。
あまり記憶にはないけれど、夜だと異界は月の光が優しく異界を照らし、さらに浮遊する霊のようなものが通り過ぎたり、桂を脅そうと近づいたあやかし未満の存在がジジ様に瞬時に消されていたのを思い出す。
「とりあえず俺、狐火だして辺りを照らすっ!」
ぼっ!と小さな手のひらから狐火を出しあたりを照らした途端、二メートルあるだろう巨大な半透明のゆらゆらと実態の無いお化けが、歪んだ顔をしてこちらを飲み込もうと大きな口を広げて二人の子供を頭から飲み込もうとして気づかれてピタリと、止まったようだ。
「うわっ!スライムおばけだ!」
薫はゲームのモンスターを連想して叫ぶ。
それは小さい頃見た化け物だと桂は思った。
《小狐がおるようだなぁ…大きいやつに力を削がれたがこいつを食べれば我らは実態を持てるかも知れぬナァ!》
そういって半透明で白い線だけの不気味な化け物は再び子供達を飲み込めるほどの大きな口を開けて襲いかかってきた。
桂は人差し指と中指をくっつけて、
「ヒカリハナテキュウキュウニョリツリョウ」
と唱えると五芒星を素早く描くと光り輝きあやかしを消滅させた。
「ふう、久しぶりだったけど、上手く力使えたかな?」
桂は余裕だったが、大変な仕事をしたように額の汗を拭く仕草をした。
普段は使わない内に秘めた力を上手く使えるようにジジ様に教わった。
更にカッコよく見える能力の使い方をやってみた。
桂は香茂と阿部野と黒御足の血筋をうまく混ざった桂にジジ様直伝を教わっている。
能力も申し分ないほど三家の力を受け継いでいる未知の力を桂は秘めていた。
「にーちゃんずるい!俺もやっつけたかった!」
薫は兄を尊敬するも自分もそのくらいできると自負している。
薫は生まれながらにジジ様と同じ半妖だ。
桂のように内に秘めるちからではなく、外見、能力そのもの妖狐である力を秘めている。
桂もジジ様に能力の使い方そのものを伝授されている。
『わしの伝授したことが形見になってくれたら嬉しいの…そうしたら一生ワシのことを覚えていてくれるじゃろ?』
と言っている。
「薫は狐火で辺りを照らしてくれてるからね、余計に力を使わせるわけにはいかないよ。でもいざってなったら助けてくれるよね?」
「うん!当たり前だよ!」
優しい兄の言葉に満面の笑みだ。
「早く野薔薇ちゃんを探そう!」
兄弟は手を強く繋いで、暗闇の中を歩き出した。
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