あやかしと神様の子供たち

花咲蝶ちょ

文字の大きさ
上 下
45 / 56
桂と薫と野薔薇の異界探検

4☆桂の内なる力

しおりを挟む
 影の中に入ると、真っ暗闇だった。
「野薔薇ちゃん!いる⁉︎」
 薫の手は引いているので無事なのはわかるが、野薔薇が見えない。
 気配もない。
「にーちゃん!野薔薇とはぐれたみたいだ!」
「ええええっ!」
 桂は青ざめ叫ぶ。
 こんな真っ暗闇で異界で野薔薇一人逸れてしまうなんてとんでもないことが起きてしまったと卒倒しそうになる。
 ジジ様曰く迷子になると一生出れなくなるかも知れないと言っていた。
 異界は薫くらいの時にジジ様に連れられウカ様の宴に招待された時以来だった。
 あまり記憶にはないけれど、夜だと異界は月の光が優しく異界を照らし、さらに浮遊する霊のようなものが通り過ぎたり、桂を脅そうと近づいたあやかし未満の存在がジジ様に瞬時に消されていたのを思い出す。
「とりあえず俺、狐火だして辺りを照らすっ!」
 ぼっ!と小さな手のひらから狐火を出しあたりを照らした途端、二メートルあるだろう巨大な半透明のゆらゆらと実態の無いお化けが、歪んだ顔をしてこちらを飲み込もうと大きな口を広げて二人の子供を頭から飲み込もうとして気づかれてピタリと、止まったようだ。 
「うわっ!スライムおばけだ!」
 薫はゲームのモンスターを連想して叫ぶ。
 それは小さい頃見た化け物だと桂は思った。

《小狐がおるようだなぁ…大きいやつに力を削がれたがこいつを食べれば我らは実態を持てるかも知れぬナァ!》
 そういって半透明で白い線だけの不気味な化け物は再び子供達を飲み込めるほどの大きな口を開けて襲いかかってきた。
 桂は人差し指と中指をくっつけて、
「ヒカリハナテキュウキュウニョリツリョウ」
 と唱えると五芒星を素早く描くと光り輝きあやかしを消滅させた。
「ふう、久しぶりだったけど、上手く力使えたかな?」
 桂は余裕だったが、大変な仕事をしたように額の汗を拭く仕草をした。
 普段は使わない内に秘めた力を上手く使えるようにジジ様に教わった。
 更にカッコよく見える能力の使い方をやってみた。
 桂は香茂と阿部野と黒御足の血筋をうまく混ざった桂にジジ様直伝を教わっている。
 能力も申し分ないほど三家の力を受け継いでいる未知の力を桂は秘めていた。
「にーちゃんずるい!俺もやっつけたかった!」
 薫は兄を尊敬するも自分もそのくらいできると自負している。
 薫は生まれながらにジジ様と同じ半妖だ。
 桂のように内に秘めるちからではなく、外見、能力そのもの妖狐である力を秘めている。
 桂もジジ様に能力の使い方そのものを伝授されている。
『わしの伝授したことが形見になってくれたら嬉しいの…そうしたら一生ワシのことを覚えていてくれるじゃろ?』
 と言っている。
「薫は狐火で辺りを照らしてくれてるからね、余計に力を使わせるわけにはいかないよ。でもいざってなったら助けてくれるよね?」
「うん!当たり前だよ!」
 優しい兄の言葉に満面の笑みだ。
「早く野薔薇ちゃんを探そう!」
 兄弟は手を強く繋いで、暗闇の中を歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

京都かくりよあやかし書房

西門 檀
キャラ文芸
迷い込んだ世界は、かつて現世の世界にあったという。 時が止まった明治の世界。 そこには、あやかしたちの営みが栄えていた。 人間の世界からこちらへと来てしまった、春しおりはあやかし書房でお世話になる。 イケメン店主と双子のおきつね書店員、ふしぎな町で出会うあやかしたちとのハートフルなお話。 ※2025年1月1日より本編start! だいたい毎日更新の予定です。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

処理中です...