あやかしと神様の子供たち

花咲蝶ちょ

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桂と薫と野薔薇の異界探検

1☆親戚集まるお正月

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 お正月の一月三日に香茂と阿部野の親戚みんなが集まる。
 空気は一月なので寒いが晴れやかで健やかな新年だ。
「野薔薇ちゃん!あけましておめでとう!今年もよろしく!」
 桂と薫は同時に声も高らかに挨拶をした。
 二人とも日和のお正月らしく紋付袴だった。
「あけましておめでとうでつ!桂くん!薫くん」
 野薔薇もお正月用の艶やかな振袖の着物と花の豪華な髪飾りをしてお辞儀をする。
「野薔薇ちゃんすごい!今年も綺麗だね!」
「えへへへっ、ありがとうでつ。真陽叔母さんがデザインして作らせて送ってくれたんでつよ!」
「僕たちのもだよ。香茂の家紋と名前が刺繍されてるんだ、狐の刺繍付きなんだ!」
 紺色の羽織に小狐ぽい白狐刺繍がされていた。
「すごいかっこいいでつ!まるで総長みたいでつ!」
 可愛い狐の刺繍もすごいが、野薔薇は今流行ってる暴走族のアニメを思いつきコスプレみたいだと思って興奮しているのが心を覗かなくてもわかった。
「総長って…」
 野薔薇は手を前に伸ばしてバイクのハンドルをにぎるジェスチャーをする。
「あ、ありがとう…」
 暴力的な不良が嫌いな桂は軽く凹んだ。

 お正月お盆は盛大に盛り上げると言うのが決まったのは桂が生まれてからのことだった。

 本来なら今や香茂家の資産家で本家と言えるお金持ちの兼頼大叔父さんの立派な家ではなく香茂瑠香と葛葉子の家で叔父さん達の生まれた屋敷で新年会を行うのだ。

 桂が生まれる十年前までは仲の良かった阿部野家と香茂家は絶縁状態だったらしい。

 それは祖父である威津那が皇室を呪っていたからだ。
 陰の気を溜め込み、宮中に九尾の狐を仕掛けて反旗を翻すが、それは新たな帝の陽の気を安定させるために必要な行為だった。
 心を闇に沈めてしまったのは確かだが、平和の時代を気づくために必要な宿命だったとジジ様は語った。
 そして、祖父の威津那は、妻である橘と黄泉にいかず陰陽の均衡を保つために特別な異界で神の魂として、鎮まり皇室と一族の安寧を願っているのだと言う。
 そんな二人のためにも陽の気が高まるお正月に最高に盛り上げて目には見えない異界にとどまる阿倍野の二人にも楽しんでもらいたいと言う思いがあるのだという。
 それは桂がもの心着く頃はお正月もお盆もみんな集まってわいわいがやがやと忙しい。

 家主の瑠香と葛葉子は毎年大変だけれど親戚みんな元気で仲良いことは新年早々嬉しいことであり、国歌斉唱して新年を祝うことも楽しみなのだ。
 父の瑠香の叔父五人と母の葛葉子の叔母三人とても元気だ。
 
 香茂の三男の叔父と阿倍野の三女の叔母はかなりの歳の差結婚し、その孫が阿部野野薔薇だった。
 桂と薫と野薔薇は血筋も年も近くお正月だけではなく小学校も一緒で喧嘩もせず仲良しなので姉弟のような関係なのだ。
 もし、桂と野薔薇が結婚するようなことがあったら阿部野家復活と思いきや二人とも好きなタイプじゃないという。
 阿倍野の家の再興はまだまだ、先送りになりそうなことを母の葛葉子は心配しているようだったが、曾祖父のジジ様は「なるようになるしかないの。」とのほほんと構えていた。
 阿倍野の本家再興ということは…

 娘はいつかまた白狐の化身を受け継ぐ器になる事を意味している。
 さらに、危険な運命も伴う…事になる。
 野薔薇の両親はそれは勘弁ということで、本家を継がないのだ。
 まだ幼い薫にいつか再興を願うしかない。
 母の葛葉子がそこをこだわっているのは、生まれ変わった時、また阿部野家と香茂家に生まれ変わり陛下をお支えして、父の瑠香とまた巡り会いたいという壮大でささやかな計画なのだ。
 母の寿命が短いからこその転生へのこだわりだとジジ様は悲しげに桂に諭した。

(気持ちはわかるけど、今を一番に大切にしてほしいな…してるけどさ…亡くなった後の事は考えないでほしい…)
 とモヤモヤする気持ちを桂は抱えるのだった。
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