あやかしと神様の子供たち

花咲蝶ちょ

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桜姫と狐姫

9☆左近の桜、右近の橘の縁結び☆エンド☆

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「咲羅子、探したんだぞ!狐に神隠しされたのかと思ったぞ!」
 季節は晴綛が張った結界が解けてやっと神社に入れたようだ。
 咲羅子の姿を見つけると、声を荒げて怒ったように言いながら、しゃがんで怪我がないか無事か確かめた後、ほっとして、小さな咲羅子の体を抱きしめて安心した。
 咲羅子は季節が心配してくれた事にすごく嬉しくなる。
「ごめんなさい…父様に逢いに行ってたの」
「は?」
 季節は咲羅子の言葉に訝しむ。
「わしがちょちょいとな、合わせてやったのよ。」
 橘を腕に抱えた晴綛はニヤッと笑って言う。
「あなたは…陰陽寮の大妖狐……阿倍野殿…?」
「やっぱり知っておったか。まぁ,わしは有名人だからの」
 晴綛はわざと尻尾を揺らす。
「咲羅子の母が仕留め損ねたとか、昔、冗談混じりに言ってましたしね。」
「そうか、冗談でよかった」
 晴綛はわざとらしく胸を撫で下ろす仕草をした。
 晴綛は咲羅子の母のことをよく知っているのかもと季節は思う。
「それに俺も伝統衛士なので宮中の不思議現象は把握してます。」
 季節は晴綛にかしこまる。
 その様子に宮中では地位の高い職についているのだろうと咲羅子は幼いながら察した。
「まあ、当然か。お前らの仕事内容も人員もこちらで管理しているしな…お前は新人の割にはよく知っていて良いことだ。桜姫がなにも知らんのは仕方ないが、宮中に出仕する前にも、教えておいてくれ!」
 晴綛は季節の肩力強く掴み真剣に伝えた。
「じゃ、咲羅子姐さんも、宮中で働くの?」
「十歳になったらね!橘も?」
「うん!女おんみょうどうじとしてしゅぎょうするの。」
「橘ももう少し大きくなったらな」
 晴綛は橘の頭をポンポンと撫でる。
「宮中で女官以外の職業で女性が活躍する事は稀だが、その稀なる存在になれ。お前たち二人ならできるからなっ」
 咲羅子の頭も撫でる。
「はい!頑張ります!」
 それは咲羅子が魂から目指していた使命を改めて認めてもらって嬉しくて瞳を輝かしながら言った。
「左近の桜、右近の橘…そう言うことか……」
 季節は思いついて笑う。
「まぁ、桜庭の宮とは古い付き合いだからの」
 そう言って晴綛はニヤリと笑った。


★★★


「確かに、二人は左近の桜、右近の橘…だったね。」
 威津那は二人のなり染めを聞き終わり苦笑してそう言った。

 平安宮内裏の紫宸殿の前庭に植えられていた桜と橘の木があり、左近・右近は左近衛府・右近衛府の陣頭の由来だった。
 威津那は宮中に呪詛を送るがことごとく、阻止されたことを思う。
「そして、今でもすごく仲良しなのよ!」
「威津那!あんたよりも私と橘の縁はスッーーーっごく強く深いんだからね!そこのところ忘れないでよね!」
 びしっと、指を差し宣言する。
「ふ、男女の仲より深いものはないと思うけどね」
 そっと、橘の小指に威津那は自分の小指をかける。
 橘は頬を染め瞳を輝かせて威津那を見る。
「ね?」
 わざと色っぽく小指に口付けして、答えを促す。
 その行為はあまりに色っぽく艶っぽく季節も咲羅子も目を見張る。
「うんっ…」
 橘はあっさり陥落した。
「橘のうらぎりものーーーーーーー!」
 咲羅子は本気で泣き叫ぶ声を出した。
「咲羅子姐さんには季節さんがいるじゃないっ!」
「友情と恋愛は別物なのーーーーっ!」
「それじゃ、さっきの言葉と矛盾してるぞ。」
 季節は苦笑する。
「隊長も僕との友情の縁を深めてくれると言うなら、君と橘の縁の深さを僕は認めるよ」
 それもなんだか嫌な咲羅子は頬を膨らませ怒る。
 咲羅子は幼い時よりも、子供っぽくなったな…と季節は思って苦笑する。
 宮家から本格的に外れて一般人になり姫宮として楚々として気の抜けない事がなくなったせいだと思う。
「まだ、貴様とは友とも言えるほど、親密ではないがな……」
 正直なところを季節は言うと、威津那は少ししょんぼりしていると橘は察し悲しくなる。
 季節は威津那の隣に周り、肩を組み。
「ま、今後は付き合いは長くなるだろうからな、よろしく頼むぞ、威津那」
 季節は戦で命の危機を掻い潜り帰還した男の笑顔を季節は向けて、豪快に笑って照れ隠ししながら背中をバンバン叩く。
 誰もがそんな季節に信頼して付いて行きたくなる特別な雰囲気に呪詛に心闇落ちする威津那さえも惚れた。
「隊長……ありがとうございます!この縁、孫子の代の末まで大事にします!」
 威津那は本心で感動して涙まで流して言い切った。
「…親友というよりか、上司と部下って感じね…」
 咲羅子は呆れてため息をついた。
「みんな家族ぐるみで縁を深めていけるのっていいと私は思うわ!」
 橘は耳と尻尾をだして興奮気味に言った。
「そうね、互いに子供ができて忙しくても仲良くしていきましょうね!」
「うんっ!」
 四人はそれぞれ硬い約束をしあった。

 そして、それは百年先まで続く縁になるのだった。
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