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桜姫と狐姫
8☆桜庭の宮
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「私のお父様は海軍に所属していていつも帰ってこれないの……」
咲羅子は瞳に涙を溜めて願いの理由を告げる。
「桜庭の宮は艦隊率いる軍の将でもあるからの。」
晴綛は咲羅子の父のことをよく知っているようだ。
「一週間後くらいに日和の港に帰ってくるとお手紙を頂いたわ」
その手紙を咲羅子は毎日読み返し、心待ちにしている。
「わかった、その願い叶えることは簡単じゃ」
晴綛はニヤリと笑う。
「ほんと!」
咲羅子の瞳はキラキラ輝いて晴綛を見る。
その様子は年相応の子供で可愛らしいと晴綛は思いヨシヨシと橘にするように頭を撫でる。
「海外ではなく、日和の海上にいるのならば、今すぐ連れてってやる。」
そういうと、晴綛は神社の社の中に咲羅子と橘の手を引いて入っていった。
桜庭の宮は艦内にある神棚に祈りを捧げていた。
無事帰還できますように、愛おしい我が子が健やかに成長しますようにと…
毎日、日和国と陛下、咲羅子、家族の健やかなることを祈ることを忘れない。
手を合わせ念を込めるように目を瞑り祈りを終えた瞬間、
「お父様!」
愛おしい娘の声が神棚から聞こえて目を開けると、咲羅子が空間に開いた穴から桜庭の宮に抱きつくように降りてきた。
咄嗟のことに桜庭の宮は咲羅子を抱きとめ抱きしめる。
夢かと思ったが、成長した娘の実体があった。
「咲羅子…どうして、ここに?」
非現実なことを改めて思うと頭が混乱する。
「わしが姫君の願いを叶えてやったのじゃ、桜庭の宮さま、ご無沙汰しております」
晴綛は橘を肩車しながら床に着地すると一礼をする。
橘は突然のことに慌てて父の頭に抱きつく。
「毎日の桜庭の宮の願いを神の力を借りて時空を歪めて時空を渡ってまいりました。
数分で時空は閉じてしまうので短い時間ですが姫君と抱擁なさってくだされ」
「お父様!会いたかった!会いたかったですうう!」
ぎゅーっ!と子供らしからぬ力で父宮の体を抱きしめる。
少し困った宮は娘の頭を撫でながら困った顔してさりげなく腕を緩めさせる。
「もう少しで帰って来れたのに…こんなに早く会えるなんてね…」
桜庭の宮は咲羅子の溢れる涙をやさしく拭う。
「だって、だって、会いたくなっちゃたんだもん!うわぁぁん。」
優しくされると我慢していた心が決壊して尚更泣いてしまうし感情的になってしまった。
いつもならば、気位高くて、涙なんか流さず大人顔負けな態度を装っているのだが、橘と晴綛の親子仲に触発され我慢していたものができなくなってしまったせいでもあった。
「咲羅子姐さんも赤ちゃんだったんだね。」
橘は素で感想を言う。
よく甘えん坊の橘は赤ちゃん扱いされるので友達も一緒なのは嬉しいのでつい口にだしてしまった。
咲羅子は橘に言われて、ハっ!として慌てて桜庭の宮から慌てて離れて、
「は、早く帰ってきてくださいよね。私も季節兄も待ってるんだからね!」
顔を真っ赤にして照れる。
「こら、橘、余計なこと言うな。」
晴綛は軽く頭を叩く。
「えーっ!赤ちゃんの何が悪いの?」
甘えん坊の橘はいつまでも赤ちゃんでいたいらしい。
「私は、赤ちゃんじゃないもん!」
「ふふ、いつまで経っても私に取って赤ちゃんだけどね」
桜庭の宮はわざと煽る。
「お父様まで!」
むうっ!と咲羅子はほっぺたを膨らませて怒るふりをする。
「もう、そろそろ時間だ。元の場所に戻りますぞ」
晴綛は促す。
促されると、再び切なくなって
「はやく、無事に帰ってきてね…父様…」
「ああ、必ず帰ってくるよ…」
そう言って宮から咲羅子を抱きしめてくれて、
「帰ったら内緒でもっと咲羅子を抱っこしてあげるからね」
と、耳元で約束してくれて満足だった。
咲羅子は瞳に涙を溜めて願いの理由を告げる。
「桜庭の宮は艦隊率いる軍の将でもあるからの。」
晴綛は咲羅子の父のことをよく知っているようだ。
「一週間後くらいに日和の港に帰ってくるとお手紙を頂いたわ」
その手紙を咲羅子は毎日読み返し、心待ちにしている。
「わかった、その願い叶えることは簡単じゃ」
晴綛はニヤリと笑う。
「ほんと!」
咲羅子の瞳はキラキラ輝いて晴綛を見る。
その様子は年相応の子供で可愛らしいと晴綛は思いヨシヨシと橘にするように頭を撫でる。
「海外ではなく、日和の海上にいるのならば、今すぐ連れてってやる。」
そういうと、晴綛は神社の社の中に咲羅子と橘の手を引いて入っていった。
桜庭の宮は艦内にある神棚に祈りを捧げていた。
無事帰還できますように、愛おしい我が子が健やかに成長しますようにと…
毎日、日和国と陛下、咲羅子、家族の健やかなることを祈ることを忘れない。
手を合わせ念を込めるように目を瞑り祈りを終えた瞬間、
「お父様!」
愛おしい娘の声が神棚から聞こえて目を開けると、咲羅子が空間に開いた穴から桜庭の宮に抱きつくように降りてきた。
咄嗟のことに桜庭の宮は咲羅子を抱きとめ抱きしめる。
夢かと思ったが、成長した娘の実体があった。
「咲羅子…どうして、ここに?」
非現実なことを改めて思うと頭が混乱する。
「わしが姫君の願いを叶えてやったのじゃ、桜庭の宮さま、ご無沙汰しております」
晴綛は橘を肩車しながら床に着地すると一礼をする。
橘は突然のことに慌てて父の頭に抱きつく。
「毎日の桜庭の宮の願いを神の力を借りて時空を歪めて時空を渡ってまいりました。
数分で時空は閉じてしまうので短い時間ですが姫君と抱擁なさってくだされ」
「お父様!会いたかった!会いたかったですうう!」
ぎゅーっ!と子供らしからぬ力で父宮の体を抱きしめる。
少し困った宮は娘の頭を撫でながら困った顔してさりげなく腕を緩めさせる。
「もう少しで帰って来れたのに…こんなに早く会えるなんてね…」
桜庭の宮は咲羅子の溢れる涙をやさしく拭う。
「だって、だって、会いたくなっちゃたんだもん!うわぁぁん。」
優しくされると我慢していた心が決壊して尚更泣いてしまうし感情的になってしまった。
いつもならば、気位高くて、涙なんか流さず大人顔負けな態度を装っているのだが、橘と晴綛の親子仲に触発され我慢していたものができなくなってしまったせいでもあった。
「咲羅子姐さんも赤ちゃんだったんだね。」
橘は素で感想を言う。
よく甘えん坊の橘は赤ちゃん扱いされるので友達も一緒なのは嬉しいのでつい口にだしてしまった。
咲羅子は橘に言われて、ハっ!として慌てて桜庭の宮から慌てて離れて、
「は、早く帰ってきてくださいよね。私も季節兄も待ってるんだからね!」
顔を真っ赤にして照れる。
「こら、橘、余計なこと言うな。」
晴綛は軽く頭を叩く。
「えーっ!赤ちゃんの何が悪いの?」
甘えん坊の橘はいつまでも赤ちゃんでいたいらしい。
「私は、赤ちゃんじゃないもん!」
「ふふ、いつまで経っても私に取って赤ちゃんだけどね」
桜庭の宮はわざと煽る。
「お父様まで!」
むうっ!と咲羅子はほっぺたを膨らませて怒るふりをする。
「もう、そろそろ時間だ。元の場所に戻りますぞ」
晴綛は促す。
促されると、再び切なくなって
「はやく、無事に帰ってきてね…父様…」
「ああ、必ず帰ってくるよ…」
そう言って宮から咲羅子を抱きしめてくれて、
「帰ったら内緒でもっと咲羅子を抱っこしてあげるからね」
と、耳元で約束してくれて満足だった。
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