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桜姫と狐姫
7☆親子
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「……うそ、ついたの?橘………」
咲羅子は般若の表情で橘をにらむ。
橘はその恐ろしさに耳を伏せて瞳に涙をためて怯える。
咲羅子は騙されたことと、もう橘と友達になれない事に般若の顔が泣き顔になる。
けれど涙を堪えてそんなみっともない顔を見せたくなくて無言で神社から出ていこうとした。
(それから思いっきり泣けばいい……)
「行っちゃヤダ!」
橘は咲羅子の手を必死で掴んで逃さない。
「ごめんなさい!嘘ついて!でも、この姿は生まれつきなの!夜になると狐耳と尻尾が出ちゃうのは、とーさまの血筋といえば呪いみたいなものだって、とーさまがいうからぁぁあ!わぁーんっ!」
橘は早口で泣きながら謝り理由を言う。
「でも、こんな姿の私の事なんかみんな怖がるからぁっ!嘘ついたのーっ!だから、行かないで!咲羅子姐さんとずっと、ずっと、友達でいたいのぉ!だから、泣かせてごめんなさぁああいぃぃィー!」
オンオン泣きながら橘は咲羅子の手を引っ張って抱きしめて泣き続ける。
「もう、嘘なんかつきません!だから友達やめないでっ!うわあぁーーん!」
あまりの橘の泣きっぷりに咲羅子は涙も引っ込んで呆れて二人地面にしゃがみこむ。
咲羅子は橘を宥めるために背中をポンポンと叩きながら、
「………もう、正直に言ってくれたから許してあげるわよ」
「ほんと!ありがとうーーー!うわーーーーーんっ!咲羅子姐さんだいすきー!わーん!」
「結局泣くのね…‥」
咲羅子は呆れたのと、ホッとして、胸が暖かくなるのを感じた。
「ふーやれやれ、嘘をつくとこんな大ごとになる事わかったなら良いわ。」
晴綛は橘の頭をゴシゴシと撫でる。
「橘のお父さんも、嘘つきましたよね?」
「わしのは演出だ。嘘なんかついておらんもん。あやかしの棟梁というのは本当だしの。」
子供みたいに腰に手を当ててえばる。
人を和ませ子供っぽいところは、やはり橘と父子だと確信する。
狐耳と尻尾もお揃いである。
どこをどう見ても親子だった。
それに仲が良い雰囲気もあり、季節が言うような使役でもなかった。
(季節兄も紛らわしいこと言うから……もう)
咲羅子は季節にも文句を言わなくちゃ気がすまないと思う。
晴綛は橘の鼻水と涙で汚れている顔を優しく拭う。
そして、拭いお終わるとおでこにキスをして、橘もお礼とばかりに晴綛の頬にキスをする。
晴綛は蕩けそうなうれしい表情だ。
そんな仲よい親子関係を見ると、
(私もお父様に会いたい…頭、なでてもらいたい…橘が、羨ましいなぁ…)
引っ込んだはずの違う感情の涙が湧き出そうになる時、晴綛は橘と咲羅子を両腕に抱き上げた。
そして、咲羅子に、
「借りにもわしを倒したお主に一つ願いを叶えてやろう。」
「えっ!叶えられるの?」
「曲がりなりにも、妖怪の棟梁であり、神の声を聞く審神者であり、神の仮の依代だ。できないと思うか?」
「橘のお父様はすごいあやかしなのね。」
「うん、かーさまのお尻に毎日しかれてるけど」
橘のお母さんのほうが強いのか…と咲羅子は考える。
自分も刀に止められなかったら、晴綛に勝てたはずだが、上には上がいるようだ。
「そうだな、橘に弟か妹つくろうとがんばってるんだけどなぁと…ルカの神!今のは内緒だからな!」
子供にはわからない冗談を言ったが、突然焦ったように顔を真っ赤にして頭上に向かって叫ぶ。
橘も咲羅子も首を傾げる。
コホンと咳ばらいして仕切り直し、
「桜姫よ遠慮なく何でも申してみよ、まぁ、何でもと言ってもとんでもないものは無理だけどな」
晴綛は一応願い事の範囲の釘をさし、優しく安心させる笑顔で言う。
「な、何でも叶えてくれると言うなら、お父様に会いたい!どうしても!今すぐにっ!」
咲羅子のねがいは迷いがなかった。
咲羅子は般若の表情で橘をにらむ。
橘はその恐ろしさに耳を伏せて瞳に涙をためて怯える。
咲羅子は騙されたことと、もう橘と友達になれない事に般若の顔が泣き顔になる。
けれど涙を堪えてそんなみっともない顔を見せたくなくて無言で神社から出ていこうとした。
(それから思いっきり泣けばいい……)
「行っちゃヤダ!」
橘は咲羅子の手を必死で掴んで逃さない。
「ごめんなさい!嘘ついて!でも、この姿は生まれつきなの!夜になると狐耳と尻尾が出ちゃうのは、とーさまの血筋といえば呪いみたいなものだって、とーさまがいうからぁぁあ!わぁーんっ!」
橘は早口で泣きながら謝り理由を言う。
「でも、こんな姿の私の事なんかみんな怖がるからぁっ!嘘ついたのーっ!だから、行かないで!咲羅子姐さんとずっと、ずっと、友達でいたいのぉ!だから、泣かせてごめんなさぁああいぃぃィー!」
オンオン泣きながら橘は咲羅子の手を引っ張って抱きしめて泣き続ける。
「もう、嘘なんかつきません!だから友達やめないでっ!うわあぁーーん!」
あまりの橘の泣きっぷりに咲羅子は涙も引っ込んで呆れて二人地面にしゃがみこむ。
咲羅子は橘を宥めるために背中をポンポンと叩きながら、
「………もう、正直に言ってくれたから許してあげるわよ」
「ほんと!ありがとうーーー!うわーーーーーんっ!咲羅子姐さんだいすきー!わーん!」
「結局泣くのね…‥」
咲羅子は呆れたのと、ホッとして、胸が暖かくなるのを感じた。
「ふーやれやれ、嘘をつくとこんな大ごとになる事わかったなら良いわ。」
晴綛は橘の頭をゴシゴシと撫でる。
「橘のお父さんも、嘘つきましたよね?」
「わしのは演出だ。嘘なんかついておらんもん。あやかしの棟梁というのは本当だしの。」
子供みたいに腰に手を当ててえばる。
人を和ませ子供っぽいところは、やはり橘と父子だと確信する。
狐耳と尻尾もお揃いである。
どこをどう見ても親子だった。
それに仲が良い雰囲気もあり、季節が言うような使役でもなかった。
(季節兄も紛らわしいこと言うから……もう)
咲羅子は季節にも文句を言わなくちゃ気がすまないと思う。
晴綛は橘の鼻水と涙で汚れている顔を優しく拭う。
そして、拭いお終わるとおでこにキスをして、橘もお礼とばかりに晴綛の頬にキスをする。
晴綛は蕩けそうなうれしい表情だ。
そんな仲よい親子関係を見ると、
(私もお父様に会いたい…頭、なでてもらいたい…橘が、羨ましいなぁ…)
引っ込んだはずの違う感情の涙が湧き出そうになる時、晴綛は橘と咲羅子を両腕に抱き上げた。
そして、咲羅子に、
「借りにもわしを倒したお主に一つ願いを叶えてやろう。」
「えっ!叶えられるの?」
「曲がりなりにも、妖怪の棟梁であり、神の声を聞く審神者であり、神の仮の依代だ。できないと思うか?」
「橘のお父様はすごいあやかしなのね。」
「うん、かーさまのお尻に毎日しかれてるけど」
橘のお母さんのほうが強いのか…と咲羅子は考える。
自分も刀に止められなかったら、晴綛に勝てたはずだが、上には上がいるようだ。
「そうだな、橘に弟か妹つくろうとがんばってるんだけどなぁと…ルカの神!今のは内緒だからな!」
子供にはわからない冗談を言ったが、突然焦ったように顔を真っ赤にして頭上に向かって叫ぶ。
橘も咲羅子も首を傾げる。
コホンと咳ばらいして仕切り直し、
「桜姫よ遠慮なく何でも申してみよ、まぁ、何でもと言ってもとんでもないものは無理だけどな」
晴綛は一応願い事の範囲の釘をさし、優しく安心させる笑顔で言う。
「な、何でも叶えてくれると言うなら、お父様に会いたい!どうしても!今すぐにっ!」
咲羅子のねがいは迷いがなかった。
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