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桜姫と狐姫
5☆退魔の刀
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翌日の昼、橘は待っていた。
今日の空は夏の空で白い雲が近く蒸し暑いが、神社の空気はそれを吹き気消すほど冷たく感じた。
それは、橘の監視役をしている大狐が見張っているからだと咲羅子は確信する。
なぜなら、季節はこの神社に入れなかった。
咲羅子だけ入れるように術がかけられていると季節は今までの勘で言い、
「気をつけろよ?無理するな?」
と心配していた。
橘は社の階段で暗い表情で空を見上げていた。
「橘!」
「咲羅子姐さん!来てくれたの?」
橘は、にぱぁーと表情を綻ばさせ駆け寄ってきた。
その様子は子犬のようだと咲羅子は思う。
それは狐のあやかしだと知ってしまった所以だろうか……
ついつい頭をヨシヨシして、咲羅子も微笑む。
「当たり前じゃない!大丈夫?イジワルされなかった?」
咲羅子は橘の心配をする。
怪我とかしてないか確認もする。
咲羅子の本当に心配する様子を見て橘は困惑しながら、
「ちょっと叱られたけど……夕方までなら遊べるよ!」
「……うん、私も…橘と遊びたいけど……」
咲羅子は言い淀む。
「やっぱり…もうやだ?《あやかし》な私はいや?」
今にも泣きそうに瞳を潤ませる橘を安心させるように手をぎゅっと握って真摯な瞳で見つめ合う。
「今日はあなたに狐の呪いをかけた、妖怪を倒したいのっ!」
咲羅子は正直瞳を輝かせてとびっきりの笑顔だった。
「う………でも……」
橘は咲羅子と真逆に青ざめて下を向く。
季節の話だと下級のあやかしはご主人のあやかしに駒使いにされて逆らえないらしいと言う話を聞いた。
なので一刻も早く橘を救いたい気持ちが強かった。
「大丈夫!安心して!私が必ず、あなたの呪いを解いてあげるから!」
握る両手が強く、咲羅子の真摯な気持ちが橘に伝わってきた。
「う……うん…」
伝わっても、橘は困惑するばかりだった……
それは、大妖怪に、十歳にも満た無い咲羅子は勝つ事はでき無いと思っているのだと咲羅子は思われていることに、ふっと笑う。
「私、負ける気し無いから!安心してよ」
咲羅子の表情には一片の曇りもなく自信に満ちていた。
「………ふふ、橘の呪いを解こうとは…粋な小娘じゃナァ!皆の衆⁉︎」
「⁉︎」
森が急に暗くなり、瘴気が二人を囲む。
周りから異形のものが現れる。
「な、何あれ!あんなにたくさん!」
百鬼夜行のあやかしが二人を囲むように黒い影をゆらめかし不気味さを演出する。
だが、橘に呪いをかけた大狐のあやかしは現れていない。
「妖怪ちゃんたちだよ…やっぱり、怖い?」
異形な姿には怖いとは思うが負ける気は全くし無い。
「橘は怖くないの?」
「怖くないよ…怖いのは人間の方…私の姿を見ていつもいじめるの……怖いっていって、石を投げられたこともあるの……」
橘はその時のことを思い出して泣きそうになる。
「橘……」
その話を聞いて咲羅子も橘と同じ気持ちになる。
橘は妖怪の方にタタっと駆け寄り咲羅子の方を向き直り泣きそうな笑顔で、
「咲羅子姐さんは私と仲良くしてくれた初めての家族以外の人間…ありがとう……楽しかったよ。」
橘はあやかしの方に、人間をやめようとしていると咲羅子は思い素早く駆け寄り橘を引き止める。
「だめっ!橘は友達なんだから!ずっとこれからもっ!」
だから!鞘のついた刀を向けて妖たちを威嚇する。
「あなたは私が守る!」
「咲羅子姐さん……」
咲羅子は退魔の刀を抜くと眩しい光が刃に煌めく。
その、光に容赦ない殺気を感じ、あやかしたちはどよめく。
《ふふ、ひさびさに腕を振るうかな……》
咲羅子の口から出た言霊は幼女のものではなかった。
そして、咲羅子の構える様は幼いながらも百戦錬磨の武士のようだった。
《そちらから、かかってこ無いならば我からいくぞ!》
咲羅子は一歩踏み込んだと思ったら、極悪な顔をした鬼の首を瞬時に払い落とす。
切られたあやかしや鬼は黒い霧となって消えた。
久々の手応えに咲羅子はニヤリと笑うと刃に残る瘴気をひと祓いする。
その様子を見た小鬼や小物の妖怪たちはゾッとしてのけぞり散り散りに霧散しながら
「ハルカセさまーっ!阿倍野殿!お助けください~!」
と情けない声を出しながら神社の影の中に消えていった。
消えていく影の代わりに金色の毛並みの耳と尻尾が生えた二メートル近くある橘に呪いをかけた大狐が不敵な笑みをわざとしながら現れた。
今日の空は夏の空で白い雲が近く蒸し暑いが、神社の空気はそれを吹き気消すほど冷たく感じた。
それは、橘の監視役をしている大狐が見張っているからだと咲羅子は確信する。
なぜなら、季節はこの神社に入れなかった。
咲羅子だけ入れるように術がかけられていると季節は今までの勘で言い、
「気をつけろよ?無理するな?」
と心配していた。
橘は社の階段で暗い表情で空を見上げていた。
「橘!」
「咲羅子姐さん!来てくれたの?」
橘は、にぱぁーと表情を綻ばさせ駆け寄ってきた。
その様子は子犬のようだと咲羅子は思う。
それは狐のあやかしだと知ってしまった所以だろうか……
ついつい頭をヨシヨシして、咲羅子も微笑む。
「当たり前じゃない!大丈夫?イジワルされなかった?」
咲羅子は橘の心配をする。
怪我とかしてないか確認もする。
咲羅子の本当に心配する様子を見て橘は困惑しながら、
「ちょっと叱られたけど……夕方までなら遊べるよ!」
「……うん、私も…橘と遊びたいけど……」
咲羅子は言い淀む。
「やっぱり…もうやだ?《あやかし》な私はいや?」
今にも泣きそうに瞳を潤ませる橘を安心させるように手をぎゅっと握って真摯な瞳で見つめ合う。
「今日はあなたに狐の呪いをかけた、妖怪を倒したいのっ!」
咲羅子は正直瞳を輝かせてとびっきりの笑顔だった。
「う………でも……」
橘は咲羅子と真逆に青ざめて下を向く。
季節の話だと下級のあやかしはご主人のあやかしに駒使いにされて逆らえないらしいと言う話を聞いた。
なので一刻も早く橘を救いたい気持ちが強かった。
「大丈夫!安心して!私が必ず、あなたの呪いを解いてあげるから!」
握る両手が強く、咲羅子の真摯な気持ちが橘に伝わってきた。
「う……うん…」
伝わっても、橘は困惑するばかりだった……
それは、大妖怪に、十歳にも満た無い咲羅子は勝つ事はでき無いと思っているのだと咲羅子は思われていることに、ふっと笑う。
「私、負ける気し無いから!安心してよ」
咲羅子の表情には一片の曇りもなく自信に満ちていた。
「………ふふ、橘の呪いを解こうとは…粋な小娘じゃナァ!皆の衆⁉︎」
「⁉︎」
森が急に暗くなり、瘴気が二人を囲む。
周りから異形のものが現れる。
「な、何あれ!あんなにたくさん!」
百鬼夜行のあやかしが二人を囲むように黒い影をゆらめかし不気味さを演出する。
だが、橘に呪いをかけた大狐のあやかしは現れていない。
「妖怪ちゃんたちだよ…やっぱり、怖い?」
異形な姿には怖いとは思うが負ける気は全くし無い。
「橘は怖くないの?」
「怖くないよ…怖いのは人間の方…私の姿を見ていつもいじめるの……怖いっていって、石を投げられたこともあるの……」
橘はその時のことを思い出して泣きそうになる。
「橘……」
その話を聞いて咲羅子も橘と同じ気持ちになる。
橘は妖怪の方にタタっと駆け寄り咲羅子の方を向き直り泣きそうな笑顔で、
「咲羅子姐さんは私と仲良くしてくれた初めての家族以外の人間…ありがとう……楽しかったよ。」
橘はあやかしの方に、人間をやめようとしていると咲羅子は思い素早く駆け寄り橘を引き止める。
「だめっ!橘は友達なんだから!ずっとこれからもっ!」
だから!鞘のついた刀を向けて妖たちを威嚇する。
「あなたは私が守る!」
「咲羅子姐さん……」
咲羅子は退魔の刀を抜くと眩しい光が刃に煌めく。
その、光に容赦ない殺気を感じ、あやかしたちはどよめく。
《ふふ、ひさびさに腕を振るうかな……》
咲羅子の口から出た言霊は幼女のものではなかった。
そして、咲羅子の構える様は幼いながらも百戦錬磨の武士のようだった。
《そちらから、かかってこ無いならば我からいくぞ!》
咲羅子は一歩踏み込んだと思ったら、極悪な顔をした鬼の首を瞬時に払い落とす。
切られたあやかしや鬼は黒い霧となって消えた。
久々の手応えに咲羅子はニヤリと笑うと刃に残る瘴気をひと祓いする。
その様子を見た小鬼や小物の妖怪たちはゾッとしてのけぞり散り散りに霧散しながら
「ハルカセさまーっ!阿倍野殿!お助けください~!」
と情けない声を出しながら神社の影の中に消えていった。
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