あやかしと神様の子供たち

花咲蝶ちょ

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桜姫と狐姫

4☆ワクワクと、悲しみ

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 橘が消えた空は星空が煌めき始めていた。
 神社の暗闇から見る空は天の川がよく見えていた。
 遊んでばかりいた彦星と織姫は天帝によって縁を引き裂かれたという物語を思い出す。
「明日は橘を救い出さなきゃだめよね!」
 夜空を見上げて尚更決意を固くする咲羅子の頭に、季節の大きな手がポンポンと落ち着かせるように撫でる。
「正直なところ、退魔の刀を使いたいんだろ?」
 と、咲羅子が毎日のように憧れるように宣言していた事を苦笑して言う。

「……と、友達を救うために使いたいのよっ!」
 と言いながら瞳はワクワクという気持ちが抑えられないほどキラキラしていた。
 そんな咲羅子に季節は苦笑し、またポンポンと頭を優しく撫でる。
「ほんと、義母さん似だな」
 季節は懐かしい思い出を思い出した瞳をする。
「もっと、あやかし退治を上手くなりたいから、もっとお話聞かせて!」
「ああ、いいぞ。」
 そう言って、咲羅子を抱き上げて顔を合わせ、互いに微笑む。
(季節兄の優しい笑顔が大好き……)
 そしてそのまま帰路に着く。
 咲羅子はいつも季節に対して胸がドキドキする。
 血のつながりがない、大好きなお兄さんは心強くいつも守ってくれる存在……
 そう思うとぎゅっと季節の首を抱きしめて首を絞めてしまった。
「ぐぇ…っ」
 カエルを握り締めたような声はわざとではない。
「咲羅子…ほんと、強くなったな……刀の力だけじゃ無いな…まったく…」
 子供の腕を侮ってはいけないと改めて思う。
 いや、咲羅子に限りだが……
「ご、ごめんなさい!季節兄大丈夫?」
「まぁな、みんなお前のこと心配してたんだから明日は程々にしろよ?まぁ、俺もついて行ってやるけどな」
 季節も瞳が輝きワクワクしていることが咲羅子にはわかった。
「季節兄はお化けとかそういうの大好きだもんね!」
「ふ、バレてたか」
 そう言って二人笑い合った。
 そして、天の川の夜空を見上げながら仲良く屋敷に帰り使用人たちを安堵させた。
 咲羅子は、興奮してなかなか眠れなかった。
 橘との出会いと、不思議な出来事…そして橘を救う決意。
 肌身は出さぬ退魔の刀は明日のことが楽しくて笑っている。
 退魔の太刀の声は後継者である者にしか聞こえず、結婚したら聞こえなくなるらしい。
 まだ幼い咲羅子は最初不気味に感じたが、今は季節に次ぐ心強い存在だ。
 本来ならば、唯一の肉親である父の桜庭の宮を心強い存在で甘える存在なのだが、海外に軍を率い派遣しているので、しばらく帰ってこれない……いや、一ヶ月後には帰ってくるのだが…待ち遠しさを思い出せば,涙が出てきた。
「お父様…会いたいです…お父様……お母様…」
 咲羅子は急に胸が締め付けられて涙が溢れて止まらない。
 咲羅子はしっかりしているが,寂しがりやでそのことを隠すために気位が高い。
 まだ甘えたい盛りなのに母を亡くし父まで亡くなることが一番怖い…
《大丈夫だ、咲羅子には私がいる。結婚する年齢には季節がお前を守る、大丈夫だ…今は落ち着いて眠れ……》
 あまりにも寂しく悲しく泣く咲羅子に退魔の太刀は優しく子守唄のように語りかけ、咲羅子は眠りについた。
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