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桜姫と狐姫
2☆姐さん
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それは夏の暑い盛りの昼下がりだった。
桜庭の宮家の姫ならば召使いが、迎えに来てお車で邸に送り届けることは通常だろうが家訓で
《皇を守る宮の一族として常に気を張り自らの身はなるべく己で守れ!》
という教えがあり、咲羅子は幼いながらもその伝えを守っている。
桜庭の宮家と滝口家は古くから血が行き来していた。
母の実家である滝口家は代々宮中を守る武士の家系でその屋敷の、道場で毎日剣や武術を習得することを目指している。
なので、歩いて三十分の道のりを修行だと思い一生懸命あるいて帰るのだ。
そして、照りつける太陽を避けるために滝口家の道場帰りには、昼でもうすぐらい神社を通って家路に帰ることにしている。
人目のないところは危ないからと人通りの多い道を通って帰ってこいと季節にいわれているが、少しでも涼を感じたいし、もしかしたら腕試しになるかもしれないと思うと胸が高鳴るのは背中に背負った、桜庭家の血筋を引く代々女子にしか受け継がれない退魔の太刀を持っているからだ。
まだ見たこともない人に仇なす、あやかしをこの手で仕留めてやりたいと心躍らしている。
「でも、神社なんだから、現れるとしたら神様よね?でも…神社も異界の入り口だし、ここはおいなりさんの神社だから悪いお狐様もいるわよね!きっと!」
神社には咲羅子一人しか今の所いないみたいだから、心に溜まった思いをひでりごととして吐き出していたら……
「ねえっ!」
突然背後から、声をかけられて、
「ひっ!」
ビックリして鳥肌が立ったと同時に背中の刀の柄に手をかけ、振り向く。
「ねえ、いつもここ通ってるよね?」
甘栗色のようで黄色髪に巫女装束のような、狩衣に朱の袴を着た女の子がおずおずとした感じで、訪ねてきた。
(外人さんとの間の子なのかな?)
と、瞬時に思う。
今は海外とつながり外国の人のエライ人と結ばれて、この日和で骨を埋める人もいれば、その逆もしかり。
珍しいことではないと聞いていたが……目の前の女の子は日和人特有の黒髪ではないことに咲羅子は無意識に警戒してしまった。
「わ、私とお話はいや?私のこと怖い?」
咲羅子の思ったことを察したらしく、今にも泣きそうな女の子の手を急いで取り、
「ううん!怖くないわ!珍しいこと女の子と思っただけよ」
私は正直の気持ちを強く伝えて瞳を合わせる。
「ほんと?」
「ええ、怖くない証拠に私と遊んでくださる?」
「それ、私が言おうと思ってたのーっ!」
女の子は泣きそうな顔を頬を染めて微笑んだ。
その表情は今も変わらずかわいいと思う。
「私の名前は桜庭咲羅子、あなたは?」
「わたしは、阿倍野橘!よろしくね、咲羅子おねえちゃん!」
「ちょっとまって、あなた何歳?」
「七歳」
一歳違うと言えど咲羅子の方が年上のためお姉さんぶりたいが、対等の友達にもなりたい……
「私は八歳だからお姉さんで間違えないけど……咲羅子姐さんって呼んでいいわよ?」
「ねえさん?おねえちゃんじゃなく?」
「うん。《姐さん》という強い感じがかっこいいからね!」
「さきらこねえさん…!かっこいい!」
橘は瞳をキラキラさせてこちらをみて興奮する様も可愛くて、妹が欲しかった私は満足で橘の手をとって神社の境内で隠れんぼ、鬼ごっこ、などありとあらゆる遊びをした。
道場から帰るとお嬢様教育が待っていて,普通の遊びと,気負いなくおしゃべりがとても楽しかった。
橘と本物の姉妹以上の縁を感じた。
桜庭の宮家の姫ならば召使いが、迎えに来てお車で邸に送り届けることは通常だろうが家訓で
《皇を守る宮の一族として常に気を張り自らの身はなるべく己で守れ!》
という教えがあり、咲羅子は幼いながらもその伝えを守っている。
桜庭の宮家と滝口家は古くから血が行き来していた。
母の実家である滝口家は代々宮中を守る武士の家系でその屋敷の、道場で毎日剣や武術を習得することを目指している。
なので、歩いて三十分の道のりを修行だと思い一生懸命あるいて帰るのだ。
そして、照りつける太陽を避けるために滝口家の道場帰りには、昼でもうすぐらい神社を通って家路に帰ることにしている。
人目のないところは危ないからと人通りの多い道を通って帰ってこいと季節にいわれているが、少しでも涼を感じたいし、もしかしたら腕試しになるかもしれないと思うと胸が高鳴るのは背中に背負った、桜庭家の血筋を引く代々女子にしか受け継がれない退魔の太刀を持っているからだ。
まだ見たこともない人に仇なす、あやかしをこの手で仕留めてやりたいと心躍らしている。
「でも、神社なんだから、現れるとしたら神様よね?でも…神社も異界の入り口だし、ここはおいなりさんの神社だから悪いお狐様もいるわよね!きっと!」
神社には咲羅子一人しか今の所いないみたいだから、心に溜まった思いをひでりごととして吐き出していたら……
「ねえっ!」
突然背後から、声をかけられて、
「ひっ!」
ビックリして鳥肌が立ったと同時に背中の刀の柄に手をかけ、振り向く。
「ねえ、いつもここ通ってるよね?」
甘栗色のようで黄色髪に巫女装束のような、狩衣に朱の袴を着た女の子がおずおずとした感じで、訪ねてきた。
(外人さんとの間の子なのかな?)
と、瞬時に思う。
今は海外とつながり外国の人のエライ人と結ばれて、この日和で骨を埋める人もいれば、その逆もしかり。
珍しいことではないと聞いていたが……目の前の女の子は日和人特有の黒髪ではないことに咲羅子は無意識に警戒してしまった。
「わ、私とお話はいや?私のこと怖い?」
咲羅子の思ったことを察したらしく、今にも泣きそうな女の子の手を急いで取り、
「ううん!怖くないわ!珍しいこと女の子と思っただけよ」
私は正直の気持ちを強く伝えて瞳を合わせる。
「ほんと?」
「ええ、怖くない証拠に私と遊んでくださる?」
「それ、私が言おうと思ってたのーっ!」
女の子は泣きそうな顔を頬を染めて微笑んだ。
その表情は今も変わらずかわいいと思う。
「私の名前は桜庭咲羅子、あなたは?」
「わたしは、阿倍野橘!よろしくね、咲羅子おねえちゃん!」
「ちょっとまって、あなた何歳?」
「七歳」
一歳違うと言えど咲羅子の方が年上のためお姉さんぶりたいが、対等の友達にもなりたい……
「私は八歳だからお姉さんで間違えないけど……咲羅子姐さんって呼んでいいわよ?」
「ねえさん?おねえちゃんじゃなく?」
「うん。《姐さん》という強い感じがかっこいいからね!」
「さきらこねえさん…!かっこいい!」
橘は瞳をキラキラさせてこちらをみて興奮する様も可愛くて、妹が欲しかった私は満足で橘の手をとって神社の境内で隠れんぼ、鬼ごっこ、などありとあらゆる遊びをした。
道場から帰るとお嬢様教育が待っていて,普通の遊びと,気負いなくおしゃべりがとても楽しかった。
橘と本物の姉妹以上の縁を感じた。
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