あやかしと神様の子供たち

花咲蝶ちょ

文字の大きさ
上 下
29 / 56
高良の宝石

6♡お見合い

しおりを挟む
 お見合いは七夕の日になった。
 運命的な出会いをし彼女を美しいと言ってしまった日から数日間、この日を待ち侘びていた。
 お見合い直前まで清く正しい逢引をしていた。
 その間どんどんお互いに惹かれていった。
 橘が彼女のことを『ルーちゃん』と言うように、オレもルーちゃんと言う名前しか知らずそう呼んでいた。

 今日、初めて彼女、ルーちゃんの名前を知った。
 名前は祭宮瑠陽衣まつりみやルビィ

 七月生まれなので、誕生日石のルビーの当て字で、恥ずかしくて嫌いらしい。
「すごい、名前でしょ?私恥ずかしくて名乗れなかったんです…」
 そういって顔を赤らめて少し涙目だった。
 本気で名前を嫌がっているようだ。
 だけど、オレはルビーの由来は美しいし気に入った。
「オレの名前は高良……は宝の言霊に通じてるんだ。
 キミの名前は宝石のルビー……
 その名前はこの縁を繋いだ素敵な名前だ」
 オレはそう言霊を紡いでルビィの名前を嫌う気持ちを和らげたかったし、恥ずかしいキザな言霊をルーちゃんの前だと素直に口に出してしまって困る。
 ルーちゃんもそんな素のオレを受け入れてくれた。
「そんなふうに初めてですしすごく嬉しいです!」
 ルーちゃんは瞳をキラキラと輝きオレを見つめる。
 その表情が一番好きだ…出会った日のことを思い出す。
 あの時すでに告白をしてしまったのだと…
 そして、後悔はない、今ここでお見合いという形で出会えたことに感謝する。
《なんじゃなんじゃ、お前らそこまでの仲だったかー?》
 一通り互いを紹介した晴綛様は後は若い二人だけでと言いながら襖の隙間から二人の様子を覗き見てニコニコ顔だった。
 それは晴綛様と犬猿の仲の掌典長も同じだった。
 だが、掌典長は複雑な表情だった。
(実はこの二人、仲が良かったのでは……)
 幼馴染だったとも聞いている……
 隠居したら仲良くなっていたらいいなと思う。
 二人に監視されて居た堪れなくて、日本庭園を散歩しようと言うことになった。
 庭は前日の雨で滑りやすくなっていた。
「わー、鯉も綺麗ですね…」
 危険だろうと手を取ろうとしたら、池の石に足をルーちゃんは引っ掛けて池に転びそうになった!
「きゃっ!」
「!」
 咄嗟のことにオレはルーちゃんを支え抱いた。
「危なかった……」
「あの……手が…っ!」
「なっ!」
 オレの手はルーちゃんの懐に突っ込んでた。
 華奢な体の脇下まで手が入っていて支えていて単の上で生肌ではなかったが焦る。

「ご、ごめん!」
 事故で突っ込んでしまった手を見ながら、安心させるように微笑んだと思う。
「ペチャパイでわかんなかったから大丈夫だ」
 頭で思うよりも口が先走ってしまった。
 オレはとんでもないことを言った気づきサーと青ざめる。
「な、な、しつれいなっ!高良さんのバカっ!」
 ルーちゃんは胸元を隠して威嚇するように怒る。
 これは百年の恋も冷められたかもしれない!でも確認したいけどルーちゃんの心は特殊能力で覗けなかった!

《それは、早すぎるぞ!高良よ!》
《さすがは安倍野の親戚じゃ!手を出すの早すぎだっ。》
 晴綛様と掌典長の興奮した同じことを考えがこちらまで響いてくる。

 互いに微妙な雰囲気が流れる。
 オレはフラれると思うと絶壁に立たされた気分だ。
「ペチャパイは…ダメですか……?」
「ダメじゃない!胸が大きいのより良い…」
 言霊を吐くのではなく、テレパシーで伝えた。
「胸の大きい人と付き合ったことあるんですか…?」
 なおさら不審な目で見られた。
 胸が大きいのが苦手なのは、タヌさんにされたトラウマがある。
 おっぱいが嫌いではないが、デカ過ぎに恐怖を感じる。
 あ、だから、色気で押してくる女たちに嫌悪を湧いていたのか……
 その時のことお思い出し笑いをしてしまった。
「亡くなった友達に悪戯されたんだ…その時に苦手になったんだ。」
 紺太の事をルーちゃんに話したことがある。
「どんな悪戯ですか?」
「狐と狸に化かされた悪戯だよ」
「面白い話は好きですよ?いつか聞かせてくださいね?」
 ルーちゃんは瞳を輝かせた。
 ギクシャクした雰囲気が解けて良かったと思う。
 オレは改めてルーちゃんと向き合う。
 瞳が合う。
 ルーちゃんの瞳は星のように煌めいていて美しい。
 蝉の声は聞こえないが、今日羽化した蝶が数匹オレたちの周りを舞っている。
 オレは覚悟を決めて
「ルビィさん!好きだ…結婚して、家族になってほしい。」
「は、はいっ!よろしくお願いします!私も……っ」
 ルーちゃんは煌めく瞳から涙を落としてオレに抱きついた。
 そんなスキンシップされたら思わず、
《そして…子供作りたい…!》
 と強く思ってしまう。
ルビィは顔を真っ赤にする。
「なっ!直接的すぎます。こんな公の場所で…」
「言葉に出してないけど……」
「んん?どこから?」
 オレはその疑問気にづき焦り伝えてない事を伝える。
《香茂家の家系の能力でテレパシーも使えるんだ…人の心も覗くこともできる。なぜだかわからないが…》
「えっ…」
 ルーちゃんは青ざめる。
 怖いと思われただろうか?
 告白する前に香茂家の血筋の能力を伝えておけば良かったとこうかいするが、ルーちゃんは頬を子供のようにわざと膨らませて、

「私はそんなの使えないのでずるいです。」
ということは、能力を肯定されている。
「能力持ってんだから仕方ない、オレの溢れる思いが、届いてしまうのは許してくれ…」
 普段なら人の心を覗いて楽しむ事をしていたのに、好きな人に自分の心が聞かれてしまうのはとても恥ずかしいと感じて顔が赤い。
 これはオレの心を一方的に伝えるのは自分の本心を伝えているものだと思うと、他人の心を楽しく覗いていた事を反省する。
 そして、この思いをどう抑えて聞かれないようにすればいいのか考えものだと悩む。
「私の考えてることずっと…覗いてたり…してましたか?」
 ルーちゃんは顔を真っ赤にして聞く。
 女子が考えるような考えをバレるのはまずいだろう……
「安心して、君の心を読むことはできないんだ……」
 天然で能力で心を覗けない稀の人間は多々いる中にルーちゃんも入っていると、説明も付け加えた。
「それもずるいです…他の女性の気持ちはわかって、私の気持ちがわからないなんて…私の気持ち高良さんに伝われば良いのに……」
 うるうるした瞳でこちらを見つめられて、
 思考より本能が反応が早かった。
「んんっ…!」
 思わず彼女の唇を奪ってしまった……
 
 ルビィが、愛おしすぎて……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

京都かくりよあやかし書房

西門 檀
キャラ文芸
迷い込んだ世界は、かつて現世の世界にあったという。 時が止まった明治の世界。 そこには、あやかしたちの営みが栄えていた。 人間の世界からこちらへと来てしまった、春しおりはあやかし書房でお世話になる。 イケメン店主と双子のおきつね書店員、ふしぎな町で出会うあやかしたちとのハートフルなお話。 ※2025年1月1日より本編start! だいたい毎日更新の予定です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...