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高良の宝石
5☆重なる美しさ
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「ご、ごめんなさい。あなただと思わないで、怖くて逃げちゃって……」
彼女は、うるうるしながら、戸惑う。
はーはー…と息切れするオレを心配する。
「い、いや、オレも悪かった…追いかけて来れば、誰でも、怖いよ……」
オレはなんとか息を整えながら謝った。
なんだか朝から勘違いをさせて謝ってばかりだ。
晴綛様は『女難の相』が出ていると言っていたけれど、これも女難の相の一つかもしれないと思った。
「今更だけど…送らせてください、お願いします」
オレは丁寧にお辞儀をし願いこう。
仕事上の癖で仰々しい仕草でドン引きしたかもしれない……
「は、はいっ」
彼女は顔を真っ赤にしながらも真剣な瞳でこちらを見て承諾してくれた。
オレは彼女の隣に並んで歩いた。
かすかに小指同士が触れそうな距離でドキドキしながら、触れないように気をつけながら彼女の家路近くまで送るつもりだ。
戦後から二十年、開発中の都市とは言えど、駅まで少し遠く明かりも少なく地元の女性ではなくては危険な夜道だが、夏至を少しすぎた夜は、十九時と言えど、夜空は明るく三日月が幻想的に輝いている。
星々も煌めいて幻想的である。
互いに何か話すことが見つからなくて、オレは彼女の考えていることを能力で覗こうと必死だった。
だが、どうしても覗けない……思念すら伝わらない。
そういうタイプの特殊な人間なのだろうと察する。
学校生活の中でも、そういう特殊な人がいることに気がついた。
大抵、裏がなく明るい性格をした素直な人格だ。
それを踏まえた上で無性に彼女が何を考えているか知りたい…けど、反対に知ってしまうのが怖い。
落ち着かない気持ちに悶々と悩んでいたら……
「綺麗ですね…」
不意に彼女は美しい声音で言霊を発した。
オレはドキリとして思わず彼女を見る。
「………君のこと?」
「…えっ?」
目があってしばらく固まる。
考えるより先に言葉が出てしまってオレは顔を真っ赤にして口を押さえる。
彼女もカーッとまた顔を赤くして俯いて、
「わ、私は綺麗じゃないです…純粋な日和人じゃないですし……」
彼女は少し暗い雰囲気でそう言った。
そのことがコンプレックスらしい……
(ん…?まさかお見合い相手も外国の血が混ざっているとか言ってたような…)
薄暗い中まじまじと見ても見た目一見日和人にしか見えないけれど、甘栗色の髪と瞳の大きさは外国の血が混ざっているように見える。だが、そこが美しさを引き立てていると思う……
「そんなこと関係ない。君はとても美しい人だよ」
心を覗かなくても良い人間にはオレは素直な気持ちになってさらに口に出してしまう…いや、彼女だからこそ素直になれている…不思議と素直になれると初対面なのに不思議に感じる。
「わ、私が綺麗だと言ったのは、お星さまです……」
そう言って、星を指差す。
夜と夕日が混在する夜空に星空が広がっていた。
時折雲が煌めきを隠すがその美しさは誰のものでなく見つめるより星に見つめられている。
「キラキラ光って、綺麗ですよね。お月様も幻想的で……」
そう彼女は瞳をキラキラ星のように煌めいてそう同意を求める。
「確かに…美しい、綺麗だ…」
オレは同意しながらも、心を覗けない彼女の本心はとても美しく純粋な人なのだと確信した。
「でも、目の前にいる君の方が、綺麗なのは本当のことだ……」
オレは真剣にそう告げた。
彼女は、言われた事が本心で言ったことが伝わると顔を真っ赤にして鯉のように、口をぱくぱくさせた。
のちに彼女は遊びの口説き文句ではなく、真剣すぎて、どう反応したら良いのかわからなかったけど、あの風景の美しい夜空と告白を一生その言葉を忘れないと思い出しては常々伝えてくるのだった。
彼女は、うるうるしながら、戸惑う。
はーはー…と息切れするオレを心配する。
「い、いや、オレも悪かった…追いかけて来れば、誰でも、怖いよ……」
オレはなんとか息を整えながら謝った。
なんだか朝から勘違いをさせて謝ってばかりだ。
晴綛様は『女難の相』が出ていると言っていたけれど、これも女難の相の一つかもしれないと思った。
「今更だけど…送らせてください、お願いします」
オレは丁寧にお辞儀をし願いこう。
仕事上の癖で仰々しい仕草でドン引きしたかもしれない……
「は、はいっ」
彼女は顔を真っ赤にしながらも真剣な瞳でこちらを見て承諾してくれた。
オレは彼女の隣に並んで歩いた。
かすかに小指同士が触れそうな距離でドキドキしながら、触れないように気をつけながら彼女の家路近くまで送るつもりだ。
戦後から二十年、開発中の都市とは言えど、駅まで少し遠く明かりも少なく地元の女性ではなくては危険な夜道だが、夏至を少しすぎた夜は、十九時と言えど、夜空は明るく三日月が幻想的に輝いている。
星々も煌めいて幻想的である。
互いに何か話すことが見つからなくて、オレは彼女の考えていることを能力で覗こうと必死だった。
だが、どうしても覗けない……思念すら伝わらない。
そういうタイプの特殊な人間なのだろうと察する。
学校生活の中でも、そういう特殊な人がいることに気がついた。
大抵、裏がなく明るい性格をした素直な人格だ。
それを踏まえた上で無性に彼女が何を考えているか知りたい…けど、反対に知ってしまうのが怖い。
落ち着かない気持ちに悶々と悩んでいたら……
「綺麗ですね…」
不意に彼女は美しい声音で言霊を発した。
オレはドキリとして思わず彼女を見る。
「………君のこと?」
「…えっ?」
目があってしばらく固まる。
考えるより先に言葉が出てしまってオレは顔を真っ赤にして口を押さえる。
彼女もカーッとまた顔を赤くして俯いて、
「わ、私は綺麗じゃないです…純粋な日和人じゃないですし……」
彼女は少し暗い雰囲気でそう言った。
そのことがコンプレックスらしい……
(ん…?まさかお見合い相手も外国の血が混ざっているとか言ってたような…)
薄暗い中まじまじと見ても見た目一見日和人にしか見えないけれど、甘栗色の髪と瞳の大きさは外国の血が混ざっているように見える。だが、そこが美しさを引き立てていると思う……
「そんなこと関係ない。君はとても美しい人だよ」
心を覗かなくても良い人間にはオレは素直な気持ちになってさらに口に出してしまう…いや、彼女だからこそ素直になれている…不思議と素直になれると初対面なのに不思議に感じる。
「わ、私が綺麗だと言ったのは、お星さまです……」
そう言って、星を指差す。
夜と夕日が混在する夜空に星空が広がっていた。
時折雲が煌めきを隠すがその美しさは誰のものでなく見つめるより星に見つめられている。
「キラキラ光って、綺麗ですよね。お月様も幻想的で……」
そう彼女は瞳をキラキラ星のように煌めいてそう同意を求める。
「確かに…美しい、綺麗だ…」
オレは同意しながらも、心を覗けない彼女の本心はとても美しく純粋な人なのだと確信した。
「でも、目の前にいる君の方が、綺麗なのは本当のことだ……」
オレは真剣にそう告げた。
彼女は、言われた事が本心で言ったことが伝わると顔を真っ赤にして鯉のように、口をぱくぱくさせた。
のちに彼女は遊びの口説き文句ではなく、真剣すぎて、どう反応したら良いのかわからなかったけど、あの風景の美しい夜空と告白を一生その言葉を忘れないと思い出しては常々伝えてくるのだった。
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