あやかしと神様の子供たち

花咲蝶ちょ

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高良の宝石

4☆橘の勘

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 今日からは物忌で陰陽寮に帰らず自宅で一ヶ月間過ごす。
 それがオレの物忌のルーティンになっている。
 その間、家族親戚近所付き合いや物忌中という自由な期間にできることを精一杯楽しむことを計画していた。
 そう計画を頭の中でたてながら、帰路に着くが隣の家の阿倍野屋敷に今朝会った白い服の彼女が来ていた。
 門の前で橘と彼女が親しげに話していた。
 屋敷が燃えた後、阿倍野屋敷と門を一緒にして宮中の鬼門の守りを強化するように建て直した。
 香茂と阿倍野の血筋がさらに近くなったので問題はない。
 弟の三鷹がまだ若いのにサキさんと子供をこさえてしまったのだ。
 まぁ、サキさんは歳だったけれど、四姉妹の中で突拍子もないのはサキさんだと親戚一同思っている。
 三鷹も、純愛で思われていることに嬉しさを感じ、前世は別れ離れになった夫婦だと言っていたことを思い出す。
 そのことを聞いた橘は、
「もしかしてウカ様に生まれ変わらされちゃった、老狐は三鷹ちゃんかもね。異界の、時空は多少歪んでるから少し前に魂は飛んで生まれ変わったのよ!」
 と力説した。
「そのときに紺太にもあったし、威津那さんが大変なことをしちゃったり大変だったわ~っ…」としみじみ思い出していた。
 紺太に対しては哀愁の気持ちがあった。
 威津那殿も「あのとき僕が助けなかったら房菊はいなかったよ。」
 運命宿命は所詮神ののみぞ知り得ることだと思いつつ……
 三鷹にもそんな宿命的縁で結ばれていたのかと思うと羨ましくもある。
 そんなこんなで阿倍野家と香茂家は縁が深まり門が一つの西洋と和風の大きな屋敷になっていた。
 阿倍野とは祖母と繋がり親戚なので構わないし、神の依代である威津那殿が酒を飲んでしまった時に
『この屋敷はどちらにしても重要な封印の場所だから僕たちの子孫がこの土地を守るよ』
 と目をキラキラさせて言った。
『僕と高良くんの血が混ざり合うなんて嬉しいね!』
 酔っ払いの戯言だと呆れたが、未来のことを隠して言わない威津那殿の予言は馬鹿にできないかもしれない。

 ちなみに、すぐ下の弟、兼頼は都内の中心に豪華な家を建てることを目標に父の跡を継ぐために商売に精をだし、実家に帰ってこない。
 まぁ、能力がからっきしないことがコンプレックスのせいもあるが……


「あら、高良、お帰りなさい。」
 橘はこちらに気づいて門のスペースを開ける。
 そのまま橘のお客さんに会釈して屋敷に帰るのはいつもだが、彼女の素性が気になる。
「ただいま。そちらの方は?」
「母様の親戚の娘さんよ?」
 橘はニヤニヤしながらこちらを見る。
(私が仲人してあげちゃおうかしら?)
 悪戯な笑みでこっちを見る。
《橘…思ってることバレバレだからな…?》
 とテレパシーで牽制してやった。
 橘はオレに舌をだしてバレたか…という仕草をした。
 年上なのに子供っぽいところは変わらない。
 流花叔母さんの親戚ということは…
 もしかして、オレのお見合い相手か?
 と、妙なドキドキ感をしてしまう。
 そんな彼女の方を改めて見ると、彼女の周りには霊の気配もないし、阿倍野から出てくる普通目に見えない小物の妖怪すら近づけずにいる。
(魂の品が高いんだな…)
 白い服のせいだけじゃなく清楚で美しい可憐な雰囲気と、美人なのに可愛らしい彼女に正直一目惚れをしてしまった……
 オレのことをどう思っているだろうと心を覗くのが怖くなってできなかった……
(どうでもいい相手の心は読めるのに…)
「高良、どうしたの?ボーッとしちゃって…やっぱ、ルーちゃんに惚れちゃった?」
 橘はまたニヤニヤしながらオレを嗜める。
 そんな露骨なことをいう橘にルーちゃんと言われた彼女は顔を真っ赤にする。

「あ、今朝はごめん、失礼なこと言って……」
「はい……」
 その時のことを彼女は思い出したのか瞳をそらして、眉根を寄せる。
 今朝おばさんと言われたことがまだゆるせないのだうろか?
 顔を真っ赤にして、涙目でチラッとこちらをまた見て瞳をそらす。
(怒ってる……?恥ずかしがっている?)
 やはり、心を覗いてやろうか?と思った時、橘はが笑顔で凄んできた。
「高良さん……?この子になにいったのよ…泣くほど嫌なこと言ったの?」
 橘は、彼女の様子を察して高良を疑う。
「いや、流花叔母さんに似てたから、おばさんと言ったんだ…」
 その時の失言の原因を素直に言う。
 叔母といっても大叔母だけれど。
「確かに、母様に少し似てるわよね…」
「え、それって…わ、私の勘違いでしたか?」
 やっとこっちを見て目をまん丸にして困惑した顔をした。

 その素直な表情がかわいい…どきっとする。

「オレも初対面の君に変なこと言ったのは確かだから…ごめん。」
「わ、私もごめんなさい」
「誤解が解けてよかった…」
 ほっと、安堵のため息と胸の支えが取れてオレは微笑むと、
 彼女はポーッと惚けてこちらを見る。
 大きく青い瞳がキラキラとなおさら輝く。
「うふふ、まさか、高良に惚れちゃった?ルーちゃん」
「た、橘さんっ!」
 橘の勘の良さは、テレパシーより的確だ。
 惚れられたと知るとオレも恥ずかしくなる。
 さらに、どう対処したら良いのかわからず固まる。
「わ、わたしは帰りますね!」
 彼女は急いでお辞儀をしてスカートを翻して走り出した。
 もう夕暮れで日も落ちる。
「高良、送ってあげなきゃ!女の子一人じゃ危ないでしょ!早くっ!」
 そう言って背を押す。
「ああっ!」
 そう言って彼女に追いつく。
 それは一キロ走ったところでやっと足を緩めてくれて追い付けた。
 彼女はメチャクチャ足が速いと言うことは理解した。
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