あやかしと神様の子供たち

花咲蝶ちょ

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曽祖父祖父母の話

橘と威津那の秘め事☆2

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(晴綛様に、聞くか?いや、娘の初夜での手ほどきをしてくれるか?)
 威津那は悶々と闇堕ちするほど悩んでいた。
 今この場でいる経験ある同僚に聞くのも恥ずかしいが、思い浮かんだ顔が…
(紺太は…絶対嫌だ!)
 まだ年端も、行かないのに経験豊富だし、威津那が童貞だという事を馬鹿にして、さらに弱みを握らせるようなものだ……
(そうだ、高良くん!)
 威津那は目をキラキラさせて一番信頼できる人物を想像する。
(あの子は意地悪だけど口が硬い。他言無用にしてくれる!)
 そう思った時、高良は威津那の部屋の襖を開けて、
「あ、オレもよくわからないんですよね。」
 テレパシーで筒抜けだったために先に断られた。
「だよねぇぇぇ…」
 威津那はその場に崩れ落ちた。
「十五近くも年下に聞いた僕が馬鹿だった……」
 威津那は真の男になる事に焦りすぎて混乱して思考がまとまらないらしいと高良は見かねて、少し顔を赤らめてコホンと咳払いをして、
「……むつみごとのプロフェッショナルなら、陰陽寮職員にいますよ。」
「ぷろふえっしょなる?」
 聞いたことのない単語に威津那は首を傾げる。
「代々房術を得意としている、房良さんです。陰陽寮の長老と言えるお方です。威津那殿もよく知ってるはず」
 やんごとなきの方々の初夜のイロハを密かに指導していた一族という。
「あの、房良さんってヨボヨボの、おじいさん?」
 長老と聞くと想像するのはいつも縁側で花の水やりをしているお爺ちゃん職員だ。
 威津那はしばらく考えて……
「マジかっ?」
 威津那は高良の肩をガシっと抱き瞳をきらめかした。

「一緒に勉強を頼みに行こう!」
「え?なんでオレも?」
「一人じゃ恥ずかしいしっ!」
「大人になれっ!」




 威津那の頼みに房良は快く引き受けてくれた。
「オ、オレはのちのち陰陽寮長になる者として房良さんの能力見にきただけだから……」
「ぼ、僕もそうです!」
「うそつけっ!」
 歳の離れた二人の漫才にフォッフォっと房良は笑い。
「陰陽寮も安泰だノォ。よし、陰陽師の子孫を絶やすわけにはいかんからノォ。」
 と、白い顎髭を撫でながら、
「ひさびさに、純粋な若人の脳内を煩悩で犯してやるかの……」
 いつもの穏やかさとは違い、その意地悪気な表情に二人は息を呑んだ。

 陰陽寮にある塗籠に三人は入った。
 物置小屋として使うものだが、緊急に物忌用として陰陽寮では使っている。
 今日は物忌をするものはいなかった。
 暗がりの部屋に、蝋燭一本を房良は明かりにして、気合いを込めると、壁に映写機の如く植物が映し出された。

 初め、雄しべと雌しべから始まり動物の後尾の巻物を用意された。
で?
(流石に知ってる…)
 と純粋な二人は思うが、次に映されたのは男女の絵だった。
 浮世絵のような顔をした絵だが体つきは生々しかった。
 房良さんが気合を入れると絵は動き出し行為が始まる。
 雄しべと雌しべの違いのように人間の体の基礎から行為まで事細かだった。
 温泉旅行で季節に女性経験の話を聞いただけではない現実があった。
 実際に自分に重ねて、その絵を見ていると己がしているような奇妙な感覚になり純粋な二人は釘付けになって手に汗まで握る。

(さすがはやんごとなき方に指導する術者だっ!)
 と威津那と高良は興奮する。
 まるで同い年みたいだ。
 そして、房良さまご自慢のエロ浮世で神秘を見た若者は頭がクラクラしながら帰路につく。
 高良は明日は物忌をすると自宅に帰った。
 母の牡丹にニヤニヤされて居た堪れなかったという。
 威津那はそのまま塗籠に籠ることにした。
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