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あやかしと神様と子供たちの海水浴
11☆想い人?
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瑠香と桂は人魚を連れて真夏の炎天下の砂浜に出た途端、人魚は気絶した。
時計を見ると時刻は十五時をまわっていた。
昼の時間で一番熱い時間帯だ。
日が沈むまで三時間はある。
人魚の異界に来たのは十三時だ。
それほど時間はたっていないのにあっという間に二時間は経過している。
人間界と異界では時間の流れが違う。
「おい、大丈夫か?」
桂は倒れた人魚を心配する。
「人の世界はこんなに暑いのか?よく生きていけるなお主ら……化物か?」
(化物に化物って言われちゃったよ)
瑠香と桂は同時に苦笑した。
「今日はとく暑いよね。とーさん」
「そうだな……」
ジリジリと肌を焼く暑さで桂も瑠香も汗が滲むし体力が奪われる。
葛葉子の足を借りただけの人魚には辛いだろう。
(綺麗な足が焼けるだろうが……)
瑠香は桂に人魚をみはらせてパラソルとレジャーシートを急いで持ってきた。
人魚をとりあえず休ませる。
一緒に探すつもりだったが、葛葉子の足を使わせて無理させるなんて瑠香にはとんでもないことだ。
「すまぬ……」
ポツリと人魚は言った。
足を借りてまで惚れた男を探しに来たのに足手まといになることに申し訳無さを感じて、しゅんとしている。
「ふーん…可愛いところもあるじゃないか…」
「とーさん、浮気はダメだよ?」
「浮気なんてしない。ちょっと見直しただけだ。」
すこし、ドジっ子な所が出会ったときの葛葉子に似ていると思っただけだ。
今でも葛葉子の性格は変わらない。
そこがまた愛おしくてたまらない。
人魚の恋なんか興味がなかったが成立させてやりたくなってきた。
「で、どんな雰囲気の男なんだ?
看病してたんだから顔くらい覚えてるだろ。」
「月の光のように輝く髪に独特な雰囲気した……美しい男だった。瞳が星の形に輝いていてな……」
人魚は思い人を思い浮かぶと顔を赤らめて夢心地のようだった。
(目を閉じているはずなのに瞳の輝きがわかるのか?)
と疑問を思いながら、
「いや、雰囲気は曖昧すぎるし、顔教えてくれなきゃ、探せないだろ。」
人魚はうむーと唸って、困った顔をして、
「事故の衝撃が酷かったのか、半分の後頭部と口元が裂けたような傷をしておったから本当の顔は正直わからん。」
桂は眉をひそめて、
「それって自分の好みに整形したって事?」
「人魚はイケメンだから助けたのではなかったのか?」
と瑠香は話の矛盾に人魚が足がほしいだけの口車に騙されているだけなのでは?とイラッとする。
「傷口以外は美男に思われる顔を治して更に惚れたのだ!」
人魚は疑われたことに憤って言う。
「恋をすると何も悪いところは見えなくなるだろ?それと同じだ!」
と矛盾と疑われれて喚く。
瑠香と桂はため息を吐く。
さっさと事件解決してめんどくさいことをなくしたいと同時に同じ事を思って黙る。
これ以上人魚の矛盾をつくのは時間の無駄だ。
「金髪に似合う西洋風の美男なんだろ?」
「それって、翠おばさんの言ってたおばけのことだよね?その人をつかまえれば事件解決だよね!」
「ああ!そうだな。さっさと捕まえて事件解決しよう」
「うん!」
親子は投げやりにそうわざと言って探しに行った。
「事件じゃなくて、私の縁結びだろ…」
と、人魚は言った。
人魚には人間には見えない力を使わせて縄張りの岩場の近くの水場にパラソルを立たせて待たせる。
☆
「噂の幽霊男って夕方に現れるんだよね?」
桂は可愛らしく首をかしげて父に確認する。
「なんか妖怪じみた名前になってるぞ。」
子どもの素直な発想力に瑠香は笑う。
「その男の人をとーさんが見えたら幽霊じゃないって事だよね?」
「そうだな。オレが見えなかったら、人魚の想い人は死んでるってことか……」
その場合は幽霊が見える桂が案内するしかない。
恋は叶えられないかもしれないが、引き会わせるのが条件だから葛葉子の足はもとに戻るだろう。
瑠香は葛葉子がもとに戻ることしか考えていなかった。
☆
夕日が地平線に沈みオレンジに染まる空が星を引き連れた紺の空に広がる時刻、翠の情報通り人通りの少ない岬の道で青年が現れて海を遠くで眺める。
「あの人じゃない?とーさん見える?」
「見える。生きてるな。早速とっかまえるか。」
瑠香は体から煙を具現化させようとする。
「だめだよ、それ犯罪だし、僕が声をかけてみるよ。」
そう言って桂は男のものに駆け寄った。
「ねえ、お兄さんいつもここで海を見てるって噂になってるよ?知ってる?」
子供の無邪気さを装って聞いてみる。
「こんにちは……」
外国人なのに日和語を悠長に操ると不思議な感じがする。
そして桂を見る瞳が不思議なひし形の星の形をしている。
桂も普段は黒目で見えないが、瞳に祖父譲りの赤い瞳と父譲りの青い瞳を、宿してるから、人の瞳を無意識に確認してしまう。
ひし形のキラキラ光る不思議な瞳に魅入られてしまう危険を桂は感じた。
「……もうすぐこんばんはだけど…」
「こんにちは、僕の口知らない?」
「は?」
瞳を閉じないで、桂に顔を近づけ迫るように訊いてきた。
「僕の口、知らない?」
閉じない瞳がキラリと光って桂は背筋がゾクリと寒くなる。
(まじで変質者かもしれない…いや、寧ろ、人間じゃない?)
と桂はたじろぎ、今すぐ逃げ出したい衝動にかられる。
更に、もう一つの噂を思い出す。
(口を探す妖怪か、幽霊がうろついてるって噂になってた……)
外人は真剣な目で桂を捉えて同じことを同じ口調で言い、日を影にしていて瞳だけ光ってるからなおさら不気味さが増す。
父に任せるより自分で解決してやろうと思っていたけど、それは無理だと思って悔しいけれど、怖さが勝る。
「と、とうさん!たすけて!」
「うおぉぉりゃ!」
瑠香は荒御魂を吹き出してその男を黒い煙で巻きつけて桂から引き剥がした。
瑠香も桂の自主的行動を見守っていたが危険を察した。
「うちの可愛い息子に何する!やはり妖怪のたぐいか?」
瑠香は桂の肩を抱き寄せてぎゅっと守るように片手で抱きしめる。
桂を父の頼もしさに抱きついて安心する。
普通の人には見えない煙で簀巻にして捕える。
このまま人魚にさしだして煮るなり何なりすればいいと思う。
「この人本当に人間なのかな?」
「さあな。人間じゃなかったら好都合だが……」
「頭ぶつけたショックで喋れない人とか……」
人間じゃないと思っていても一応希望を口にしてみる。
その時、介護服を着た男性が慌てた様子でかけてきた。
「あ~この時間になると抜け出しちゃうんですよ、この人。」
「そうなのですか……」
(やっぱり人なのかな?)
と桂もわからなくなってきた。
「何かきっかけがあればおもいだしてくれるかもなんですが……うっ!」
看護師は一瞬雷に打たれたように痙攣したかと思うと、
「あなた達がこの人を預かってください……」
発する言葉が神秘を不思議と帯びている。そして、人間らしからぬ神々しさを感じる。
「互いに探している者同士を会わせれば縁が繋がるきっと良きご縁になりますよ……」
そういうと、ハッ!正気に戻った介護服の男は頭を掻いて、瑠香に一応お辞儀をするとふらふらと施設に戻っていった。
瑠香は介護士に何かの神が宿ったのを審神者の力で視て、なんとなくルカの神が人魚の手助けをするために降りてきたのは何か後々の事に関わる神のみぞ知る未来があるからなのだと察した。
そして、この男が確実に人魚の探している運命の人(?)なのだ。
瑠香は式神うさぎを使って葛葉子に連絡した。
時計を見ると時刻は十五時をまわっていた。
昼の時間で一番熱い時間帯だ。
日が沈むまで三時間はある。
人魚の異界に来たのは十三時だ。
それほど時間はたっていないのにあっという間に二時間は経過している。
人間界と異界では時間の流れが違う。
「おい、大丈夫か?」
桂は倒れた人魚を心配する。
「人の世界はこんなに暑いのか?よく生きていけるなお主ら……化物か?」
(化物に化物って言われちゃったよ)
瑠香と桂は同時に苦笑した。
「今日はとく暑いよね。とーさん」
「そうだな……」
ジリジリと肌を焼く暑さで桂も瑠香も汗が滲むし体力が奪われる。
葛葉子の足を借りただけの人魚には辛いだろう。
(綺麗な足が焼けるだろうが……)
瑠香は桂に人魚をみはらせてパラソルとレジャーシートを急いで持ってきた。
人魚をとりあえず休ませる。
一緒に探すつもりだったが、葛葉子の足を使わせて無理させるなんて瑠香にはとんでもないことだ。
「すまぬ……」
ポツリと人魚は言った。
足を借りてまで惚れた男を探しに来たのに足手まといになることに申し訳無さを感じて、しゅんとしている。
「ふーん…可愛いところもあるじゃないか…」
「とーさん、浮気はダメだよ?」
「浮気なんてしない。ちょっと見直しただけだ。」
すこし、ドジっ子な所が出会ったときの葛葉子に似ていると思っただけだ。
今でも葛葉子の性格は変わらない。
そこがまた愛おしくてたまらない。
人魚の恋なんか興味がなかったが成立させてやりたくなってきた。
「で、どんな雰囲気の男なんだ?
看病してたんだから顔くらい覚えてるだろ。」
「月の光のように輝く髪に独特な雰囲気した……美しい男だった。瞳が星の形に輝いていてな……」
人魚は思い人を思い浮かぶと顔を赤らめて夢心地のようだった。
(目を閉じているはずなのに瞳の輝きがわかるのか?)
と疑問を思いながら、
「いや、雰囲気は曖昧すぎるし、顔教えてくれなきゃ、探せないだろ。」
人魚はうむーと唸って、困った顔をして、
「事故の衝撃が酷かったのか、半分の後頭部と口元が裂けたような傷をしておったから本当の顔は正直わからん。」
桂は眉をひそめて、
「それって自分の好みに整形したって事?」
「人魚はイケメンだから助けたのではなかったのか?」
と瑠香は話の矛盾に人魚が足がほしいだけの口車に騙されているだけなのでは?とイラッとする。
「傷口以外は美男に思われる顔を治して更に惚れたのだ!」
人魚は疑われたことに憤って言う。
「恋をすると何も悪いところは見えなくなるだろ?それと同じだ!」
と矛盾と疑われれて喚く。
瑠香と桂はため息を吐く。
さっさと事件解決してめんどくさいことをなくしたいと同時に同じ事を思って黙る。
これ以上人魚の矛盾をつくのは時間の無駄だ。
「金髪に似合う西洋風の美男なんだろ?」
「それって、翠おばさんの言ってたおばけのことだよね?その人をつかまえれば事件解決だよね!」
「ああ!そうだな。さっさと捕まえて事件解決しよう」
「うん!」
親子は投げやりにそうわざと言って探しに行った。
「事件じゃなくて、私の縁結びだろ…」
と、人魚は言った。
人魚には人間には見えない力を使わせて縄張りの岩場の近くの水場にパラソルを立たせて待たせる。
☆
「噂の幽霊男って夕方に現れるんだよね?」
桂は可愛らしく首をかしげて父に確認する。
「なんか妖怪じみた名前になってるぞ。」
子どもの素直な発想力に瑠香は笑う。
「その男の人をとーさんが見えたら幽霊じゃないって事だよね?」
「そうだな。オレが見えなかったら、人魚の想い人は死んでるってことか……」
その場合は幽霊が見える桂が案内するしかない。
恋は叶えられないかもしれないが、引き会わせるのが条件だから葛葉子の足はもとに戻るだろう。
瑠香は葛葉子がもとに戻ることしか考えていなかった。
☆
夕日が地平線に沈みオレンジに染まる空が星を引き連れた紺の空に広がる時刻、翠の情報通り人通りの少ない岬の道で青年が現れて海を遠くで眺める。
「あの人じゃない?とーさん見える?」
「見える。生きてるな。早速とっかまえるか。」
瑠香は体から煙を具現化させようとする。
「だめだよ、それ犯罪だし、僕が声をかけてみるよ。」
そう言って桂は男のものに駆け寄った。
「ねえ、お兄さんいつもここで海を見てるって噂になってるよ?知ってる?」
子供の無邪気さを装って聞いてみる。
「こんにちは……」
外国人なのに日和語を悠長に操ると不思議な感じがする。
そして桂を見る瞳が不思議なひし形の星の形をしている。
桂も普段は黒目で見えないが、瞳に祖父譲りの赤い瞳と父譲りの青い瞳を、宿してるから、人の瞳を無意識に確認してしまう。
ひし形のキラキラ光る不思議な瞳に魅入られてしまう危険を桂は感じた。
「……もうすぐこんばんはだけど…」
「こんにちは、僕の口知らない?」
「は?」
瞳を閉じないで、桂に顔を近づけ迫るように訊いてきた。
「僕の口、知らない?」
閉じない瞳がキラリと光って桂は背筋がゾクリと寒くなる。
(まじで変質者かもしれない…いや、寧ろ、人間じゃない?)
と桂はたじろぎ、今すぐ逃げ出したい衝動にかられる。
更に、もう一つの噂を思い出す。
(口を探す妖怪か、幽霊がうろついてるって噂になってた……)
外人は真剣な目で桂を捉えて同じことを同じ口調で言い、日を影にしていて瞳だけ光ってるからなおさら不気味さが増す。
父に任せるより自分で解決してやろうと思っていたけど、それは無理だと思って悔しいけれど、怖さが勝る。
「と、とうさん!たすけて!」
「うおぉぉりゃ!」
瑠香は荒御魂を吹き出してその男を黒い煙で巻きつけて桂から引き剥がした。
瑠香も桂の自主的行動を見守っていたが危険を察した。
「うちの可愛い息子に何する!やはり妖怪のたぐいか?」
瑠香は桂の肩を抱き寄せてぎゅっと守るように片手で抱きしめる。
桂を父の頼もしさに抱きついて安心する。
普通の人には見えない煙で簀巻にして捕える。
このまま人魚にさしだして煮るなり何なりすればいいと思う。
「この人本当に人間なのかな?」
「さあな。人間じゃなかったら好都合だが……」
「頭ぶつけたショックで喋れない人とか……」
人間じゃないと思っていても一応希望を口にしてみる。
その時、介護服を着た男性が慌てた様子でかけてきた。
「あ~この時間になると抜け出しちゃうんですよ、この人。」
「そうなのですか……」
(やっぱり人なのかな?)
と桂もわからなくなってきた。
「何かきっかけがあればおもいだしてくれるかもなんですが……うっ!」
看護師は一瞬雷に打たれたように痙攣したかと思うと、
「あなた達がこの人を預かってください……」
発する言葉が神秘を不思議と帯びている。そして、人間らしからぬ神々しさを感じる。
「互いに探している者同士を会わせれば縁が繋がるきっと良きご縁になりますよ……」
そういうと、ハッ!正気に戻った介護服の男は頭を掻いて、瑠香に一応お辞儀をするとふらふらと施設に戻っていった。
瑠香は介護士に何かの神が宿ったのを審神者の力で視て、なんとなくルカの神が人魚の手助けをするために降りてきたのは何か後々の事に関わる神のみぞ知る未来があるからなのだと察した。
そして、この男が確実に人魚の探している運命の人(?)なのだ。
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