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あやかしと神様と子供たちの海水浴
6☆人魚の恋
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「人間に恋をしたのだ。」
人魚は顔を赤らめてそう呟くように言った。
それは三年前、船幽霊と人魚のチームで力ずくで船を難破させることが出来るか勝負をしていたのだ。
(なんて、迷惑なことしてるんだよ……)
香茂夫婦は呆れた。
「確か、ちょうど三年前くらいに大ニュースになってたよね?不備もないのに難破したって……」
近年、大型船が難破することなど稀のことで、久々に人間の獲物が手に入る機会だった。
助かる人間は助かり、死する運命の人間をあやかし達は捉えて好きにする。
私は海を血で汚す人間が海底へ吸い込まれていくのを救った。
彼は船のどこかに当たったらしく頭から流れる血が海に滲んでいた。
そのまま見殺しにして死ぬ直前にその人間を食ってしまってもよかったのだが……
「な、なんとっ……!?」
その人間の男はとても見目が整った美しい人間だった。
その人間は色気とふうつの人間にはないオーラを感じた。
まだ死ぬべきではない人間だと思った。
だから、助けた。
人間の手の救いよりも自分自ら彼を救いたかった。
人間が作り出した人魚姫の物語の一説そのもののような運命を感じだのだ。
生きていて欲しいと強く思い、傷を妖力で癒し海岸にあげた。
意識が混濁して眠っているだけの人形のような彼に何時間も見とれてしまう程だった。
だが、私が目を離しているうちに男は消えてしまったのだ。
私に恋心を残して……
童話の人魚姫のように人間になって、人間の足が欲しい……
人間に恋をしたという己が恨めしい……
この恋心を終わらせるためには、その人間を殺してしまえばこの苦しさは終わると思う……
だけども、あの物語のように泡にならずとも王子と共に人として生きられたなら幸せな事だと強く憧れていた……
そう強く思っていた。
「人魚姫の童話に憧れて、足が欲しかったんだね……」
葛葉子は納得する。気持ちが共感する。
会いたい人を強く思う気持ちを何度も体験したから気持ちが分かる……
「葛葉子!ダメだ!つけ込まれるぞ!」
瑠香は葛葉子を叱り警戒する。
人魚はニヤリと笑った。
もうなにか仕掛けてくるかもしれない。
瑠香は煙の手を緩めない。
「足を短なる霊力も少ない人間と足を取り替えると、一日もしない間に腐ってしまう……」
既に望みを叶えるために行動をした……そして諦めかけていたが……
「だけど、お前の足なら何日持つだろうなぁ」
人魚はニタァと笑い瞳を煌めかす。
「きゃっ!」
「葛葉子!?」
葛葉子の足は人魚のしっぽに変えられていた。
突然立てなくなった葛葉子は砂浜でビチビチと人魚の足をばたつかせた。
「る、瑠香ゴメンっ!もう足が!」
あやかしに容赦ない阿倍野殿と言えど、異界では作ったものの領域は主の思うがままなのだ。
「貴様ァァァァ!」
瑠香は殺気を込めた鋭い青い瞳で人魚を睨む。
煙で人魚を締めあげ消そうとすると
「我を殺せば、妻はそのままぞ!この滑らかの足は戻らぬぞ……」
人魚は葛葉子のとり変えた足を確かめるように、足首から太腿をなめらかに撫でた。
「私は運がいい……わだつみの神のお恵みだな。ふふふ」
人魚は新底嬉しそうに微笑んだ。
人魚は顔を赤らめてそう呟くように言った。
それは三年前、船幽霊と人魚のチームで力ずくで船を難破させることが出来るか勝負をしていたのだ。
(なんて、迷惑なことしてるんだよ……)
香茂夫婦は呆れた。
「確か、ちょうど三年前くらいに大ニュースになってたよね?不備もないのに難破したって……」
近年、大型船が難破することなど稀のことで、久々に人間の獲物が手に入る機会だった。
助かる人間は助かり、死する運命の人間をあやかし達は捉えて好きにする。
私は海を血で汚す人間が海底へ吸い込まれていくのを救った。
彼は船のどこかに当たったらしく頭から流れる血が海に滲んでいた。
そのまま見殺しにして死ぬ直前にその人間を食ってしまってもよかったのだが……
「な、なんとっ……!?」
その人間の男はとても見目が整った美しい人間だった。
その人間は色気とふうつの人間にはないオーラを感じた。
まだ死ぬべきではない人間だと思った。
だから、助けた。
人間の手の救いよりも自分自ら彼を救いたかった。
人間が作り出した人魚姫の物語の一説そのもののような運命を感じだのだ。
生きていて欲しいと強く思い、傷を妖力で癒し海岸にあげた。
意識が混濁して眠っているだけの人形のような彼に何時間も見とれてしまう程だった。
だが、私が目を離しているうちに男は消えてしまったのだ。
私に恋心を残して……
童話の人魚姫のように人間になって、人間の足が欲しい……
人間に恋をしたという己が恨めしい……
この恋心を終わらせるためには、その人間を殺してしまえばこの苦しさは終わると思う……
だけども、あの物語のように泡にならずとも王子と共に人として生きられたなら幸せな事だと強く憧れていた……
そう強く思っていた。
「人魚姫の童話に憧れて、足が欲しかったんだね……」
葛葉子は納得する。気持ちが共感する。
会いたい人を強く思う気持ちを何度も体験したから気持ちが分かる……
「葛葉子!ダメだ!つけ込まれるぞ!」
瑠香は葛葉子を叱り警戒する。
人魚はニヤリと笑った。
もうなにか仕掛けてくるかもしれない。
瑠香は煙の手を緩めない。
「足を短なる霊力も少ない人間と足を取り替えると、一日もしない間に腐ってしまう……」
既に望みを叶えるために行動をした……そして諦めかけていたが……
「だけど、お前の足なら何日持つだろうなぁ」
人魚はニタァと笑い瞳を煌めかす。
「きゃっ!」
「葛葉子!?」
葛葉子の足は人魚のしっぽに変えられていた。
突然立てなくなった葛葉子は砂浜でビチビチと人魚の足をばたつかせた。
「る、瑠香ゴメンっ!もう足が!」
あやかしに容赦ない阿倍野殿と言えど、異界では作ったものの領域は主の思うがままなのだ。
「貴様ァァァァ!」
瑠香は殺気を込めた鋭い青い瞳で人魚を睨む。
煙で人魚を締めあげ消そうとすると
「我を殺せば、妻はそのままぞ!この滑らかの足は戻らぬぞ……」
人魚は葛葉子のとり変えた足を確かめるように、足首から太腿をなめらかに撫でた。
「私は運がいい……わだつみの神のお恵みだな。ふふふ」
人魚は新底嬉しそうに微笑んだ。
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