"Welcome, Another World Traveler!”

温州ミカン

文字の大きさ
上 下
24 / 40

part[23-?]

しおりを挟む


title #3
"Welcome, Mr. Another World!OYOYO ”

part[23-?]



シーン
(なんか静かね?)
教室の皆を見ると押し黙りコチラを時折チラと見ている、その瞳は暗く沈んでいた。
(えっ まさか本気で怯えてるの?冗談に決まってるでしょう。でも冗談ってのは相手が笑ってくれる事で成立するんだから、笑ってくれないってことは単なる悪ふざけになってるな。空気悪くしたことで謝っとこう。一人称限定で精神的にだけ)
本気で殺す気ならあんなにわかりやすくお前ら殲滅するって態度で示すか。幸せならついでに手を叩いてもいいが«*»。
謀は密なるを持って成せ って誰の言葉か知らんが、新劇の舞台や、間抜けな物書きが書いた妄想おとぎ話じゃないんだから、分かりやすく宣言なんかどんなアマチアだ。
(まあ、戦争や人殺しを商売にしてる連中からすれば、あたしらなんてアマチア。ウチの在学でももう戦場で仕事はしたってヤツもいたが、まだやってないから、面接じゃまだと答えると区分はひよっこ[セミプロ]と言われるらしい。セミプロなんてどこの業界でもアマチアと見なされる«*»)。
一人殺せば殺人者だが、百万殺せば英雄。 殺した数によって英雄とか勇者に祭り上げられるなら、そんな称号なんぞ犬にでもくれてやる«*»。
そんな称号を戴くと、履歴書か成績表か内申書かステータス画面に、大変良く殺しましたと💮ハナマルでもくれるんかな?。いらん。称号なんて過度に盛られるから実像と乖離が生じて邪魔になる。
(良い刀は鞘に入ってるもんらしいから、一生鞘に入っていたいな«*»じゃあ今の進路考えもんだな。とびきりな身体能力に魔力持ちだと、セカンドキャリアは物騒な仕事が多いらしいもんな)
英雄に慣れなかった人間もいるが、人間になれなかった英雄もいるから、死ぬなら人として、畳の上で死にたい«*»。
以前は蟹工船みたいに死ぬほど扱き使われて、眠ると言うより失神・気絶で畳に行き倒れ状態のとき、地面や板縁や石畳よりはなんと心地よい仮死?だったことか。それに畳なら、仕事だ起きろって、バケツで冷水をかけられて叩き起こされる事ないからやっぱり畳が良い。
それなら滴化は考えないと駄目かな。多分それやると人として死ねない。終の時間ぐらいは普通でいたい。
(資格取れたら職業選択の幅が広がると思ったけど、あんまりメリットばかりじゃないらしいもんな)
力ってのは金と同じで持っても困らないって言うらしいが、弊害もある。力を持ってるやつはどんな職種でも持たない者より求人に苦労しないが、一見いいようであるが両刃な面もある。
それの最たるものが私達に適職とされる派遣型の傭兵。
(傭兵っての誰でも良いってことじゃない。まず死なないように訓練がいるが、素人を一応足手まといにならんまで鍛えるのも金がかかる。訓練の弾代も装備代も食費に健康診断に身体検査[過去・イデオロギー等]、交通費に生命保険代もただじゃない。それでとっとと死なれちゃ丸損だって、役立たずは雇ってさえくれない。弾除けや地雷処理犬なら現地のガキを攫えば済むかららしい)
「まあ~外道だな。お前らの血は何色だ。てめえら人間じゃねえたたっ斬ってやる«*»」
傭兵って危ない仕事に力を持ってるから従事出来るが、ヒョロでガリだと雇う前からお払い箱に比べて死亡の確率は給料と比例して跳ね上がる。
決まっちゃいない未来だが最悪有能だから死に、無能だから生き残るって事もある。
傭兵としては雇われないので高給が取れないが、生存率に関しては無能で良かった事例だ。
(人間万事塞翁が馬もそうだったよな。落馬で脚を折ったので戦時赤紙を免れ、元気だからと向かわされた戦争で部隊全滅の激戦だったんで、結果不具者故に死ななくて済んだ)
不味いし、後で死ぬほど気持ちが悪くなる火薬や醤油飲まなくて不適正者になれるのは嬉しいような悲しいような。
(そういえば、力ある故に面倒事背負い込むのは魔王と戦わされる勇者とやらもそうだよな。力持たぬモノは雑魚に蹂躙されるかもしれんがラスボスとは戦わされたり、厳しいジャラン旅をしなくてすむ)
漫研の異世界マニア共から、追放ざまあに悪役令嬢ネタの後は勇者は味方から猜疑心で背中撃たれるのが、今の流行りだって言っていたな。やなトレンドだな。
Old Soldiers Never Die, They Just Fade Away は許されなくて、Kill the useless hero, don't allow leave って言っていたな?。無能ならほっとけばその内くたばるだろうが、有能故に忌み嫌われる牙を剝かれる前に始末する。
(そういえばあたしに生き延び方教えてくれたあの爺さん昔どっかの寒い国に抑留されていたけど、捕虜が条約で帰国が許された時に、帰国する尉官とか有能なのは濡れ衣着せて皆殺しになっていたって言っていたな)
有能なのを生かして母国に返すと将来自国の敵になると厄介だし、コチラの手の内も知ってるからと、普通執行は横に並べて射殺するが、弾が勿体ないって3人縦に並ばせてライフル一発で心臓を撃ち抜き殺したらしい。
捕虜の生命なんぞあの国にとってはライフル弾三分の一の重さ 枯れ葉1枚程度の物らしい。流石自国民を益なく1000万殺した国は違うな。
(爺さんは尉官だったから、それを予想して軍服を一兵卒のヤツとっ替えて馬鹿のフリをしたらしい。お陰で収容所じゃ形見は狭かったけど生きて帰れたとか)
どう生きるかは人ぞれぞで勝手だが、自分を有能だって思われたいってのは馬鹿のやることってのが彼の人生訓であったようだ。
まだ、多分生きてるらしいので?彼に関しては正しい教訓だな。

(手の内からほどけるモノは始末する。抜けたいけど抜けられないって、異世界だろう系って任侠もののヤクザ映画だったのかね)
アッチの業界は一度犯罪に手を染めるとカタギになろうとしても悪い仲間から飴と鞭な誘惑が絶えないとか聞く«*»。カタギに戻った元ヤクザに世間は冷たいので、仲間?の元に戻るヤツも多いらしい。
(センパイとかセンセイもよく考えろって言ってたしな。あんまり自分の経験は話に絡ましてくれないから何があったか知らんが、二人共に日々酒に逃げてるから何あったんだろう。まあ毎日が日曜日な酒カスじゃなくて、仕事上がって飲んでるだけだから誰にもメーワクかけてないからどうでもいいけど、でも古参の知り合いからそこいらは踏み込むなって言われたな)
なんか知らんが、触れてはいけない、触れたものは火傷を追うって«*» …… 何があったんだろう … まあいいか。
今は立てこもり犯の出待ちで立て込んでるんで、今日は多分疲れで無理そうだらか明日にでも考えよう。
明日以降に。
(あしたねえ … この頃あの二人の口癖が感染ってきたな。面倒くさい事は全部後回しにするようになった。あたしあの二人ほど悠久に ……、長生き出来そうに無いから、そんなに悠長に事を構えてはいられないんだけど … まあ、どうせ極楽往生の大団円で終われるとは思ってないから、やり残しいっぱいの残念無念を背負って、くたばろう。できれば今日じゃないほうがありがたいが)
あした あした あした そして明日«*»ずっと明日がいいが。
「あたしにしては前向きで、なんかスカーレット小原だな。そういえばあの話は少し前に流行っていた悪役令嬢の元祖じゃないかな?原初にして最強にして完成形のざまあ展開って昔からあったんだな。あの話に勝てる悪役令嬢モノってあるのかな? …… まあ読んでないから知らんが」
今のはいつもの、誰かの記憶であろう。
後憶えているのは南部アメリカ人も海産魚食うんだと思ったぐらい。
小原さんの最後のセリフは、鱈[タラ]を食べながら考えようだ?«*»だったからな。
どうやって内地奈良県みたく海なしジョージアまで海産魚を冷凍冷蔵宅配便も無いのに運んだのかな?ぐらいであった。多分アメリカ人も干物食うんだと一つ賢くなった。
(あたしは鱈よりホッケの方がいいんだけど)
陸奥湾[青森]名物なんで、二人が酒のつまみでホッケを焼いてくれって持ってくる。同じ様に小原さんも飲まなきゃやっていけないと鱈を肴に晩酌していたのだろう。少し貰っておかずにしている内に好きになって弁当には欠かせないようになった。
(戻れたら途中市場か鮮魚店に寄れるかな。バイト代はニコニコ現金払いだといいんだけど)
酒のつまみで白米食うなんて、クラスの連中に将来酒飲み決定と言われて、あの二人みたく成りたくないので忌みようとしたが、もうあの味が習慣性あったらしく逃れられないの。
(特車二課のハゼの粗汁漬けみたい«*»ってヤバいんじゃねえ。あれ中毒者続出したとか聞いたから、包丁人味平のブラックカレーみたく麻薬入ってないよな«*»蘇る金狼や黒澤明の天国と地獄エンドは嫌だな«*»)

「クラスの連中の進路希望第一が職業軍人や傭兵って、ここは陸軍中野学校か中野予備校かな«*»」
職業選択の自由であたしらの場合は軍人や傭兵もリスト上位に入ってるな。まあその前に前借りした滴化分の奉公期間は勤めんと駄目だけど。
(滴化先輩らによると、収入は高校生にしては実入りが良いって言っていたな。まあ未成年だし高校生だから本人所には入ってないみたいだけど)


§


ポンポン
「ん?お前か」
色々考え過ぎて知恵熱でボーっとしてるとクラスの女子から肩を叩かれていた。なんだとはご挨拶だといつものどうでもいい女子トークをする彼女はもう滴化も済みの獣人種である。
戦場じゃないが憑依されてトランスファーのお仕事をしているネコ娘。猫に詳しくないが、その肢体に色合いはブルーティッシュアメリカンショートヘアとか言うのが近いらしい。
もっとも今は一般人ぶりっ子なんで光学魔法で変装して、人間であったときの姿に戻って見える。
ウチのクラスは獣化種が多いので変装してない本校じゃ、移動動物園が出張で幼稚園の校庭全部放し飼いしてる中に紛れてる数少ない飼育員状態であるが、今は皆人間状態であるので普段の移動動物園状態に慣れているので、少し座りが悪い。いつのまにか動物に囲まれていないと落ち着かないって、あたしはどこのムツゴロウさんだと思った。職業病で労災金が取れるかと労基に行ったが、就業上じゃないの無理らしい。
「こんなにみんなのんびりしてていいんかいな?雲雀がピーチク鳴いてるぞ」
早弁してるやつもいれば、教科書にパラパラ漫画を書いているやつも持ち込んだジャンプを読んでるやつもいれば、今どき交換日記を書いてるやつも居る。普段ならスマホや携帯を触っているだろうが、余計な情報を入れたくないし、後でGPSで証拠が残るといけないって取り上げられているので暇そうだ。
「もう少しでこの教室テロリストの占拠されるんだろう。予め攻撃される事が分かってる奇襲待ちって、どんな真珠湾だ」
確か今はテロ活動に怯える一般生徒を演じなければいけないから、勝手に動き回って談笑していいのかと思ってしまうが、机を振り回して教室中を田町駅から日比谷通りを北上して外堀から銀座通りから晴海通りを破壊した怪獣王が今更何をと言われては、そりゃそうだ。
「よく見りゃ机も椅子も窓ガラスももう買い取り不可レベルだな。これ請求されたら今年いっぱいタダ働きだよ」
学校の備品は結構高い。泣き言を言うと、襲撃してくれるテロリストが手榴弾か設置型指向性爆弾でも爆発させてくれたら誤魔化せると笑う。魔法防御も身体能力も可能なお前らと違ってあたしは死ぬ。
それなら、それまでの人生だったのさとあたしの口癖を知っているので笑う。
「そうだな」

お互い暇だったのでどうでもいいくだらない話をしていると、滴化して憑依された仕事に話が及ぶ。
「あんたこの間欧州に旅行言ったらしいけど、行きたかったとか言っていたけど、あんたからあんまりどこぞに行ってきたって話しないよね」
その仕事で外国に旅行に行ったらしい。GWと言わずにちょっと週末旅行したときは道中膝栗毛でもあるまいに、小旅行でも起こったことを楽しげに喋るやつなので楽しみにはしてないが聞けると思ったがあまり話したりはしなかった。
どうも普通自分の意志で行く旅行と違い、異世界人に体をレンタル中意識はオーバーライドで半覚醒状態か、寝惚け状態で起きたらそれが見ていた夢か実際自分が経験した事かの区別もつかない状態で、殆ど憶えていないのが本当の所らしい。
「映画とか見てる状態で寝てしまって、いつのまにか自分が登場人物になった夢を見たみたいな感覚ね。そりゃ話せないわ」
ただ夢では無いと、、自分じゃ使った憶えがない真っ白だったパスポートに行ったこと無い国の入出国のハンコがベタベタ押されていて、アッチの人も記念写真を取るらしく、自分の貯金ではとても買えないような高級スマホをいつの間にか持っていていて、スマホには外国の有名観光名所にいる自分?が写っていた。
サンジェルマンでマカロン食って、トラファルガーで紅茶飲んで、マウントラシュモア名物チスリックドッグを食べ、ミュンヘンでビールを飲む姿が入っていた。
「これは何かの事件で捜査機関に嫌疑かけられた時に、私はそこにいた記憶に無いって、ロッキード事件の児島よしおみたいに証言して偽証になるんかな?記憶は無かったのは本当だけど、体はいたかもしれん。なんかテセウスの船みたいだな」
知らぬ間に行きたかった観光旅行をしたと知った当人は相当悔しかったらしい。
将来金稼いだら自分“で”行こうと思っていた場所であったらしいが、知らぬ間に訪れた事がなんかやるせないらしい。
「親とドライブ旅行の途中訪れたかった観光地に着いたが、後部座席でよく寝ていたので起こしちゃ可哀想だって、起きたらもう目的地だったってみたいなもんかな?自分を気遣って寝かせてくれたのだし、寝ていた自分が悪いといえば悪いので癇癪も起こせずまんじりと出来ないって状態かな?体は行ったけど、心は行ってないって哲学かな」
また行けば良いだろうと言ったら、旅行に趣味のないあたしには分からん気持ちだと言いやがるので、少し意地悪して分からんと言うと、あたしに分かるように言ったら、あたしが楽しみにしていたコンビニ新メニューのカップパフェの一口目を食べようとスプーンですくったら木のスプーンが折れて一口目が床に落ちたようなもんだと言う。
それは確かにショックだな。
「気持ちは少し パフェの事は凄く分かるが、そこまでの事か?誰かで予行練習出来たと思えば失敗しないでいいんじゃない?」
旅行は趣味じゃ無いので、なんか適当なお題で慰めようとする。
「初めて行く土地とかやることって結構失敗して心に傷を負ったりすると後で黒歴史になるっていうから、一度行って慣れたからよかったと思ったら。例えばアレとかだったら、男の子のお初は慣れたお姉さんが手ほどき足ほどき真ん中ほどきがいいっていうじゃない。手慣れたお姉さんに筆おろしして貰ったほうが女の扱いはうまくなるって言うからそれと同じなんじゃない。 …… あたしなんでシモな話してるんだ?」
普段あんまりシモの話は乗り気じゃないので考えると思い当たる。
(そうだ、ここに来る前日センパイとセンセイが本来政府広報とか税金やマイナンバーのお知らせを放送する庁舎のテレビで夜の診察室って懐メロ映画[コメディポルノ]を見てゲラゲラ笑って、酒も入っていたんでコッチが聞きもしないのに医学的見地からシモの話を説明してくれたんだっけ)
それによると若くて経験少ない男女がナニで上手くいかずに気まずくなって別れたとか、中にはショックで勃たなくなるやつも、どっかのタレント事務所の男性タレントみたく男になる前に女にされて、おかしな趣味になるやつもいるとか。
(ナントカ事務所のタレントなら仕事干されて放り出されるレベルな暴露話を一般JKにするな。大体医者の守秘義務はどこいった)
これでもお年頃だから … 笑うんじゃない … 嫌がる素振りをして聞き入ってしまった。
折角聞いたのであたしは健忘の毛があるので、いつまで憶えているか分からんのだから、誰かにこの叡智を憶えてほしくてその受け売りを勿体ないからリユースしておこう。
「あんたこの前郷里で将来結婚しようって誓いあった幼馴染の男子が嫌いだったヤリマンセンパイといつの間にかネンゴロになって、私のだと思っていたけど、初めての彼女ってのを奪われたって悔しがっていたけど、まあ彼もヤリマンで経験積んで女の扱い方上手くなったと思えば、江ノ島の絵島神社にした願掛けが上手く行って、あんたが付き合う時は事がスンナリや …… えっ? 」
ゆらっ ゆらっ ブンっ
彼女の姿が蜃気楼なような揺らぎに包まれていたらと思ったら、人間モードの姿にブロックノイズな走査線が走ったと思ったら、本来?の獣人モードに代わっていた。
(おろ、聴衆の面前で変装を解くって、多羅尾伴内«*»それとも遠山金四郎かな。変装魔法が解けてケモケットなどら猫モードになってる?魔力切れかな。魔力節電スリープタイマー機能でもあるのかな)
お陰で控えめであったブレザーの胸元とお尻がパッツンパッツンになり、馬鹿男子共が おお~ って歓声をあげる。
普段本校で見てるだろうに、はち切れんばかりにセーラーとブレザーは又違うらしい。
男って馬鹿だなと思ってると、当のどら猫が うがああああ って」いきなり飛びかかって来た。
ドサ バン ギリギリギリギリ
「待て、俺はジュリーでも、ハムチュンチョンでも、トォイーテェーでもねえぞ」
猫化しているだけに怒ったら爪が出てきた手でネックハンギングルリーを掛けられ フ~~~~~ って怒気をはらんだ鼻息と縦に割れた瞳孔が細待っていて怖い。
「わ 悪かった なんだか分からん私が悪かった ……… だから、その日人類は思い出したみたいな怖い顔をしないでくれ«*»」

パタパタ
キラッ
みぎゃあああ
相方のキツネ娘が猫じゃらしを振ってくれて、動くものに目が向くと、怒りを忘れて猫じゃらしに興味を惹かれて近づいていく。
「た たすかった」
あと少し遅ければ首を掻き切られる所であった。
猫は家猫でも凶暴だ。本気で殺意の破動を抱いた成猫は大の男だって手の負えないでマジ殺される。
「君子豹変すってこういうのを言うんだろうな。丁度まだらな毛並みだし」
普段借りてきた猫状態で温厚なヤツだけにこの豹変が怖かった。いつまでも猫じゃらしで気逸しが通用するとは思えないので尻に帆かけてスタコラサッサと逃げようとすると、アタメ八目ズバリでコッチを再び睨む。
ジャキン
って擬音が聞こえそうに、肉球のある手からバルログかくもって爪が飛び出す。
「カリオストロの城の安宿での影襲撃パートで見たし、聞いた音だぞ」
救いは団体さんじゃない事ぐらいであった。もっとも今の自分には一人でも手に余るが。
「すんまへん。何がなんやらよく分かりませんが、私がわるうございました」
話せば分かる、なんて説得を心みたが決起した青年将校みたく、問答無用とばかりに全く意に介してない。
「あっ!こりゃ死んだな」
猫と言うより獲物に飛びかかるヘビだった。
ヘビに近い人たちは知ってるし、家に似たようなのが一匹いるが、アレは怖いに見えて優しいが、コイツは怖そうでいて怖い。ヘビに睨まれたカエル状態じゃ、窮鼠猫を噛む事もできそうにない。

その時猫とにらみ合った視界に何かが飛んできた。
コロン
男子が猫娘に持っていたマタタビとかチュールを投げたみたいだ。
クルン クンクン
流石に匂いは人間の数万倍敏感らしく直ぐに嗅ぎ取る。
ウロウロ
四つん這いで鼻を鳴らし、人間の尊厳などどこ吹く風で完全に猫である。どうやら狩りの本能が目覚めたらしく、人間としての意識はどこへやらで、いま憤怒の川を渡った事も忘れているらしい。
おおお~~~
切羽つまったコッチとは無縁に男子共の雄叫びが聞こえた。なんだと思ったら、結構短めにブレザーのスカートで女豹のポーズでマタタビの周りをウロウロだから当然後ろからみれば丸見えであろうが、当人は気にしてないようだが、見せられた男子は相当気にしていたらしく目が血走っていた。
トン トン トン
数人が上を向いて首筋を手刀で叩いているのでどうやら鼻血が出たらしい。
「あれ効くのかな?確かやっちゃいかん民間療法だと聞いたけど?」
コクン コク 
男子達が目配せてして。
ポイ ポイ ポイ ポイ ポイ コロ コロン コロ コロン
あらん限りのマタタビを投げると臭気に酔っ払って?床に体をくねらせて甘く熱い息を吐く。
(なんでお前ら全員マタタビ用意してやがる)
今度は女豹のポーズから服従ポーズで床を転げまくる。無論見える面積が増えて、甘えた表情も唆るものになっていた。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~~~
それを見ていたクラスの男子の息は更にむさ熱いモノになっていく。
「ケモナー性癖が増えるな。島の漫研とケモナー同人互助会から新刊[獣人薄い本]をちょっと多めに仕入れよう」
ズボンの前を両手で押さえて前かがみになる元気なヤツもいた。流石にやりたい盛りのDKはテントを貼るのが早い。
「ワンタッチテントだな」
教室を急いで出ていくやつもいた。多分トイレだろう。トイレが栗の花の匂いで臭くならんかと心配する。
中には何か更に投げようとしたがマタタビでは無く、小さなアルミ色の個別包装されたものだったので、これは違うってポッケに再び仕舞う。多分中身は世界一薄いゴム製品が入っているのだろう。可能性はゼロでも持ってるのが男子の嗜みって校医であるセンセイの教育が功をそうしているな。卸元はそのセンセイで、セールスからバックマージン貰ってるようだが。
目撃した女子らが、酔っ払った彼女を男子の視線から隠すように持っていく。確かに今男子の前にあの痴態で放置はやばそうであった。

ザワ ザワ ザワ ザワ
ケダモノよ ケダモノよって、カイジみたいな擬音で女子らが、侮蔑の視線を前かがみの男子に向けるが、そんな事は気が付かない女子が一人だけいた。
「でも妙だな?なぜ罪も無いあたしがこんな目に合うんだ?」
ネックハンギングされた首を押さえながら、何故自分がかくもこのような目に合うんだと手形のアザがついた首を捻っていた。
しばらく考えた後とんでも無いことを言い出す。
「あ~、あの娘今お月のモノだったのかな?」
普段の彼女は役職が副委員長って事もあるので?理知的でフザけた誰かが猫じゃらしを出しても少し付き合いで戯れるぐらい、出されたマタタビにも場を白けさせない様に仕方ないニャアと一言付き合う程度である心使いが出来る女子なのに今は本息な興奮した、普段従順な犬や可愛い猫が突然激烈な牙を剥く、いわゆる遠い野生が蘇った状態。
「狼は満月を見ると血がたぎって吠えるっていうから、あの娘もお月で野生の王国に目覚めたのかな。怖いね~」
飼いならされたと思っていた動物の野生は何がきっかけかで蘇るかはプロの飼育員でも見誤り、長年の付き合いがある虎やライオンやクマに食い殺されるんだら、素人の自分が分からなくても仕方ない。
「まあ、こんな境遇じゃ仕方ないか」
いきなり拉致?で空調も雑な貨物機で夜間フライト。ほぼ貫徹でこんなバイトをやらされて、お月の諸症状の苛立ちと相まって自分に八つ当たりをしたのだろう。
「まあ、あたしは気遣いの人で、優しいから慈愛と寛容の心で気にしないけど」
八つ当たりで殴りかかってくるって、惑星Eから追放されたから目についたから八当たりに侵略する事にした通り魔の宇宙猿人みたいだなと思った。あれも野生だったのかな。妄想小説の追放ネタの元祖はあのゴリラだったのかね«*»

「でもなんでアタシが標的になったんだ?あたし何も悪いことしてないのに」
被害者が良く言うように、あたし何も悪いことしていないのに状態で、通りすがりの通り魔にあったようなものだと嘆いてみた。
可哀想なアタシだけど、加害者を批難もしないで健気に耐える姿に皆が感動で滂沱の涙を流しているだろうと思ったが、何故か皆の視線が刺すようにキツい。
「ん? 変だな。なぜ罪の無いあたしが皆にまで責められているんだ」
咎なくして死す所であった、可哀想な自分をなぜそのような目で見るんだと首を捻ったが、皆の目と心は冷めていた。そして口々につぶやく。
アホかお前は とか
人の心とか無いんか って声が聞こえた。
「??」




title #3
"Welcome, Mr. Another World!OYOYO ”

part[23-?]
end



#######注釈#########

* 「セミプロなんてアマチアと同じだ」 ロンゲストヤード 1974年 米
* 悪い仲間からの誘い ルパン三世 1st #21  ジャジャ馬娘を助け出せ!
*  「お前らの血は何色だ」 北斗の拳 1983年- /「てめえら人間じゃねえたたっ斬ってやる」 破れ傘刀舟悪人狩り 1974年
 * 夜の診察室  エロチックコメディ映画  1971年 松坂慶子
* 多羅尾伴内 7つの顔の男だぜ 1960年 片岡千恵蔵
* 「一人殺せば殺人者だが、百万殺せば英雄  殺人は数によって神聖化させられる。」 チャップリンの殺人狂時代 1947年 米
* 「幸せなら手を叩こう 幸せなら態度で示そう」 幸せなら手をたたこう 1964年
* 「良い刀は鞘に入ってもんですよ」  椿三十郎 1962年 黒澤明 
* 「その日人類は思い出した」 進撃の巨人 2009年-
* 「惑星Eから追放された ♪」 宇宙猿人ゴリ 1971年
* 「暗黒面は入りやすいし 抜けれない」 スターウォーズシリーズ 1977年-
* 「触れてはならぬ 触れては我らが火傷を追う」 装甲騎兵ボトムズ 赫灼たる異端 1994年-
* 「あした、あした、そして、あしただ」 シェイクスピア マクベス5幕5場
* 「タラに帰って考えよう」 風と共に去りぬ 1940年 米 出演者は勘違いしてますが、米ジョージア州の地名です。鱈ではありません。
* ハゼの粗汁漬け  機動警察パトレイバー ミニパトパート3  2005年 
* 陸軍中野予備校 安永航一郎 1985年



 
title #3
"Welcome, Mr. Another World!OYOYO ”

part[23-?]
end

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

END-GAME【日常生活編】

孤高
ファンタジー
この作品は本編の中に書かれていない日常を書いてみました。どうぞご覧ください 本編もよろしくです! 毎日朝7時 夜7時に投稿

処理中です...