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part【1/5】
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title #3
"Welcome, Another World Traveler!OYOYO ”
(異世界さん いらっしゃ~い!)
part[1/5]
「異世界旅行業務取扱の管理士研修センター及び就職斡旋所はここでいいんですか?」
手にしたメモを殆ど読み上げるように、ユニクロか、しまむらの新作ファッションを頑張って着ましたって感じの女の子がおずおずと声を掛ける。
「はい、そうだよ。ここだよ」
旅行業務研修センター恐山営業所前と書かれたバス亭を降りた場所にいた警備のおじいさんが優しそうにそういった。
キョロ キョロ
「ここが、異世界好きがあつまるメッカですか」
周囲を見渡して合点がいかないって顔をしていたので、話しかけられた警備おじいさんはさもありなんって顔で返す。
「うん。一部じゃそう言われてるね」
そんな関係者が多いとうなずく。
「すいません。とてもそうは見えないもので」
「みんなそう言うよ」
イデオンモールの様に広いアスファルト駐車場ではあるが、巨大な建物は無い。
「駐車場に一面に印幡物置がずっとあるだけなんですけど」
中世の欧州的町並みを想像していたので、戦争難民の押し寄せた砂漠のテントのスラム状態にプレハブ乱立に、期待していた風景と違いあてが外れた。まあこれならボットン便所じゃないだろうと良かったとも思った。
「確かにそうみたいで間違いないのかな?」
プレハブ街に一般人?に混じって体が緑色 赤色 青色 の色とりどりな二足歩行のヒト?が見える。
耳が異様に長いヒト 小さな背丈なのにボディビルダーかくもってヒト 子供サイズな体躯なのに喫煙所でタバコを吸っているのに誰にもみとがれないヒト 頭からツノの生えてるヒト 背中からなんか生えてるようなヒト その他、ここは夏冬の東京ビッグサイトか、テーマパークのハロイン仮装大会ですかって聞きたいような人々が跳梁跋扈していた。
「コミケのプレ販売では無いですよね」
「ここコスプレ会場じゃないよ。それにカメラ小僧いないでしょう」
「確かにまだコミケには日がありますね」
学校側からの部費がほしいと頼まれ、幽霊部員として入っている学校の漫研は今頃徹夜作業中だろう。BLの・・・・。
(来てよかった。あんな場所に原稿手伝わされて、販売の売り子の手伝いで来いって言われたら地獄だもんね)
郷里にいたら締め切り前の修羅場に突き合わされていたので、あんなケツが痛そうな原稿のベタなんか塗りたくないので、それもここの来た理由であった。おまけに交通費とホテル代は出すからって嘘で連れて行かれて、うだるような有明の公園で蚊に刺されながら開場を待って、世にも珍しい臭い雲の下で売り子なんて気が狂う。
(一般人もいるけど、誰も気にしてないわね)
コーディネイター?とナチュラル?、少し変わった特徴を有しているのとノーマルがとすれ違ってもドチラも気にかけた様子は無い。どこの魔国だと、キョロキョロと見回してもスライムはいないようだ。
「魔国じゃないとすると、有明や幕張やジャパンエキスポ会場じゃないですよね」
青い住所プレートは確かに日本の青森であると2度見た。
「プレハブだけなんですね」
「茶色いラミエルの団体みたいなのが立ってないのはここ元々霊場で聖域で、今地元と景観条例で揉めてるんで永続的なビルとか建てられないんだよな。いつでも撤去出来るようなもんしか建てられないの」
壊れるかららしいが、台風は来そうにないしこの地は地震も無いし、内海沿いだから津波もこないのに何故壊れる事を前提に考えているのかと首をひねる。
異世界だろう系小説とかでネタが無い時に使うスタンピード(狂騒)とかドラゴン襲撃でもあるのかな。
「なるほど、そうだったんですか」
納得出来ないが納得することにした。
不安が少し緩んた表情を浮かべる少女に追加報告する。
「いくら立派に作ってもあの連中が暴れりゃ例えアヴァロン要塞だってウォールマリアだって紙装甲だからね」
「?今なんか不穏な事言いました」
「あ~。まあスクラップアンドビルドがここのモットーだからってことだよ」
事故があったらどっかの国の列車事故みたいに埋めやすいしとも言う。
「はあ、そうですか」
よくわからんが、そうなんだと納得した。
「お嬢ちゃんどっから来たの」
「ああ。はい。沖縄からです」
「沖縄からその格好で青森にかい」
これから北海道に渡っても暑いだろうって格好だ。
「はい」
「君トランスファー希望者だよね」
「はい、そうです。トランスファーって言うのかわかりませんが、イタコ希望です」
「! イタコとはちょっと違うんだけど、まあいいや。それならなんで地元にいかなかったの」
「え・・・・・・・・・だって」
「沖縄にはユタの関係でヤンバル近くにここの支社と研修センターあるよ」
「そんな。青春18じゃ本土までフェリー乗れないって、苦労して貯金したのに」
眼の前の少女が何か理由があるのは表情で分かったが、貧乏も追加だとわかった。
「話していいなら聞くけど、いいかい?君は不思議な夢を見たんだよね」
「は はい。わたしあんまり夢を見ないんですけど、ある時期から同じような夢を見るようになったんですよ」
「はい。なるほどね はい」
「知り合いに占いとか夢判断が好きな子がいたんで相談したんですけど・・・呆れてます?」
「いえいえ。ここはそんな人が来るための場所だから間違っていないよ」
「ああ、よかった」
馬鹿にされると思っていたのに、真剣に聞いてくれているので安心した。
「それでどうしたの」
「そうしたら、あんた選ばれたんだって、オメデトウ詐欺みたいな事を言われました」
ぶっ
思わず笑う。
「確かにそれはオメデトウ詐欺だ」
歩いているだけで買い物もしていないのに福引を引いてくれと言われてひくと100%何かがあたる。あたったモノはタダだが、契約金がいくらだ 代引き手数料がいくらだ 宝石の原石があたったら研磨料と指輪への加工料がいくらって言われる。
「わたし知らなかったんですけど、そんな夢を見る人はイタコトランスファーとか言う・・超能力者だって言われました」
「イタコも超能力者ってのもちょっと違うような気がするけど、まあ続けて」
「それでドリームキャッチャー(夢選別アイテム)って夢判断の電話番号を教えてもらったんですよ」
「したんだ。うん、それで良かったと思うよ」
ウンウンとうなずく。
「そのお友達なんか他に言ってなかった?」
「いいな~って羨ましがっていましたね。あと、あたしたち友達よねって・・」
「友達なの?」
「そんなに親しくは無かったんですけど、それからよく声をかけられるようになりました。なんだろう?」
「今の子はちゃっかりしてるな」
おかしそうに笑う。
「それでどんな“夢”を見たのか教えてくれるかい」
「ああ、でもテレオペの方に夢の内容は誰にも言わないようにと言われましたから」
「あ~。なるほどね。テレオに夢の内容を話したら他の誰にも言うなと言われたんだね・・・・・・あ~、はいはい」
「何かわかったんですか」
その情報がネットでは売られているので、言わないようにいわれたんでは無いかと。
「そんな夢を集めて公開しているサイトがあるんだけど見た事無い?」
「見てはいませんが、それも聞きました」
「それで問題になってるんだよな。サイトに夢の内容が乗ってるからら、それをテレオペに申告して脈があると思われたら研修センターまで来てくれって言われる」
講習には交通費出るからただで旅行が出来るってセコいのが騙ってくるとか。
「興味だけの人間も、ネットチューバーがネタ欲しさにも、なんかの間違いでトランスファーになれるかなと騙ってやってくるんだよね。どうせ直ぐバレるのに」
今不景気だから旅費が出ればいいやって馬鹿が騙るとか。
「そんなサイトがあるのでしたら、なんでわたしだけ話しちゃいけないって言われたんですか?」
「多分なんだけど、君の見た夢がそんなサイトに乗ったのとは違うって思ったんじゃないかな」
「他の人が見たのと違う、おかしい夢だったんですか」
「そうとも限らないよ。例え同じものを見ても感じる事は人それぞれだから、公開?されてるとは違うからこれは別口だと交換手は思ったんで喋っちゃだめだっていったのかもね」
「どういう事ですか」
「新しい夢だったんで、それを広められるとまた騙る連中を見分ける事が難しくなると思ったんじゃない。話すなって言ったのは、今ネットでも携帯でもWiFiとかでも盗聴が凄いからどこからバレるかわからないから用心したんだと思うよ」
「なるほど、そうだったんですね」
「それで沖縄の方だと君にあってるカリキュラムが無いと思ったんじゃないかな。だからコッチに行ってくれと言われたんじゃないかな」
「だからコッチに行ってくれってことだったんですか?あ~、じゃあ交通費でますよね」
良かったと安堵した彼女を見て微笑む。どうやら不安はこれからのカリキュラムどうこうじゃなくて、財布の方だったようだ。
「じゃあ夢の事は専門に任せて、後、何か言われたかい」
「そうですね。ここじゃ無闇に名前を聞かない 呼ばない 名乗らないって ちょっとまってください」
ちょっとまってくださいとメモを再び取る。
「ネームプレートに名前がない人に名前を聞かない・・・・・どうしてかはしりませんが・・・ わかっても呼ばない そして自分の名前も教えてはいけない。担当官一人が専任につくと思うけど、その人以外は誰に何を聞かれても住所氏名年齢職業を言わないように。家を出る時は名前と身元がわかるのものは肌身離さない身分証だけにして」
なんで服に名前を書いているって知っていたんだと不思議がった。
「よくメモ取れたね。速記者になったほうがいいかも」
それかその記憶能力ならどっかの探偵助手になったほうが将来有望かもと笑いを誘う。
「他には何か言っていたかい」
「・・出来ればらしいんですが、上着に帽子手袋と眼鏡をつけて、監視カメラを避けて恐山まで来てくださいと」
夏で暑いので出来れば断りたかったが、言われたとおりに着てきたと暑そうにしていた。
「だからか・・・・そのオペレーターなんか変なスパイ映画でも見たのか?よしんば他はいいとして、一般の女の子が監視カメラ避けて九州・本州縦断しろって無理に決まってるだろう」
リチャード・キンブルだってイーサン・ハントだって今の時代は無理だろとうと呆れた。
「?」
「ごめん ごめん 他には」
「交通費は往復でますから、嫌いでなければ飛行機で来てくれといわれました」
不安そうな口調であったので。どうやらそれが気になっていたらしい。確かに高校生ぐらいでは飛行機代は痛手だろう。
「青春18で来たって言わなかった?」
「ドッキリだったら困るし、そんなお金無かったんで18シーズンまで待ってました」
出した金が戻ってくると思わない、疑り深い性分だと自分は簡単には騙されないぞとムフってみせる。
「そ (ぷふ) そうだね」
それをどやって公言するのがまだ若く可愛いと言わずにはおいた。
「・・・・賢い選択だね。僕でも疑うよ」
「そ そうですよね。チケット代無いし、乗り換えがわからないって言ったら、なんならホンダジェットをコッチで貸し切りると言われました」
「そのオペレーターは上司に褒められるかクビかのドッチかだな。窓口に預けておけば・・・・・それも名前言わないと駄目だな」
結構有能だったんだと、そのオペは部下にほしいと思った。
「後はなんか言っていた」
「よくわかりませんが、公衆電話からだったのがバレてて、受話器とか電話の指紋を消して直ぐにその場からは離れてくれと」
「そんな不穏を感じさせる事言われてよくここに来たね。小さい割に肝っ玉太いのかな。君学校の友達から一目置かれてない」
「?」
「ごめん ごめん。僕もなんかおかしな映画に引っ張られているみたい」
他にもなんかと聞いたら、次の日学校で聞いたらしいが、電話をかけてきた駄菓子屋の近所、普段は飛ばない空域なのに米軍のUH-60が飛んできて、近所の広域避難場に空挺降下の訓練していたとか。
「あらら。危機一髪か。ソイツ有能だったわ」
「はい?」
「米軍とか警察は家に来た?変な電話なかった」
どうやらそれは無かったらしい。無かったらしいが、ここに来る車中に先程例の夢の事を話した友人?が例の夢サイトに夢の内容を書き込んでいたら、ネットへの偽計業務妨害罪みたいなもんで警察に連行されたとか漫研の仲間から回覧板が来たとか。
「危機一髪だったんだ。君一級サスペンスドラマに出れるよ」
「何かあったんですかね?何か自分が見たって事にしていたようなんで詐欺罪ですかね」
「盛り上がる演出だね。どこ連れて行かれたかしらんけど、今頃泣いてないといいけど。米軍に女子高生が拉致られたっていうとあの馬鹿知事が騒ぎそうだから・・・・・し~らない」
そのうちほっときゃ人権派弁護士ってのが騒いで不起訴でデてくるだろうから、今は眼の前の方に注力しよう。
周囲をそれとなく見ると目立たない業務なのに普段より多くに視線を感じた。
「今日連中もコッチもいつもより少し忙しい事になりそうだな」
「なんですか?」
「どうやら今日から繁忙期に入ったんで忙しくなりそうだから、今日はもうすぐ上がりだと思っていたんだけど、残業になるかな。約束していた孫娘から怒られ「じいじ 嫌い」とか言われたらどうしよう」
「すいません。何の話をされてるんですか?」
「あ~ ゴメンなさい。えっと・・」
彼女の後ろに施設の私服警備が来ていたのを確認出来たので安心した。
首をひねる女の子にここで怪しまれて帰られでもしたら狼の巣に子羊を送るような事だと、私事を忘れて真面目な施設だと思って欲しいので厳に業務に戻る。
「じゃあ取り敢えず総合案内所に行ってくれる【ようこそ 異世界旅行公社に】ってノボリが出てるからそこに行ってください」
登りの上がってる玄関の左に“00”って玄関に書いてあるプレハブだよ。窓口っていうか建物は19棟あるけど・・・君なら “00ー19”がいいと勧められる。
「あそこは若い子向けだから慣れてるからね」
「わかりました。ありがとうございます」
「頭から対のツノ生やした髪が真っ赤なプランナー兼アドバイザーがいるはずだ。ちょっと外見怖くて馬鹿っぽいけど良い子だから何でも聞くといい。かったるそうにすると思うけど、じっと真摯に聞けば断れない娘だから・・・・・・まあ面白いと思うよ」
「? なんかその人の事よく知りませんが、警備さんがその人を好きなんだか嫌いなんだから悩む評価ですね」
上げて落として又上げてって三流映画の主役みたいな扱いに苦笑した。
「あ あの ごめんください」
恐る恐るプレハブに入るとだだっ広い事務所には誰もいなかった。
「暑い。ここでも省エネ28℃設定なのかな?」
政府の出向施設か何かでクーラーの室温は28度だと書かれていた。
「プレハブなんだから断熱してないんでしょう。輻射熱きっつううう。せめて25℃にしてくれないかな」
ムワッとして中には入りたくないのでまだ涼しい玄関脇でもう一度不在を聞く。
「どなたかいらっしゃいませんか~」
やっぱり誰もいない。仕方なく中に入ると接客テーブルに【只今外出しております。ベルを鳴らしてしばらくお待ちください】と書かれていたので意を決して押すが、何も起こらない。
「・・・・・」
しばらく経ったが何も無いので、ここだとは言われたが他を当たることにしようとした。
「いらっしゃい」
「!」
戻ろうとしていた玄関を振り向くと、どうみてもモグバーガーの店員さんがいた。
(入ってきた方の挨拶じゃないでしょう)
その格好なら店内にいろって思った。ハンバーガーは売ってなさそうだが。
「お邪魔してます」
今度は他人の民家じゃないって、間抜けな挨拶の応酬は二人してわかったので少し苦笑する。
あ~、ちょっとまってと事務所奥の衝立に入ってしばらくすると上着だけモグバーガーの店員から、政府施設の職員って感じの薄緑のジャケットになっていた。
(あ あかい)
ついたてから出てきた彼女はモグバーダーの髪の毛落下帽子を取ったので今まで隠れていた緋色というほど鮮烈の赤のミドルボブが現れていた。
普通ならチャラいヤンキーかなと思うのだが、出てきた彼女は何故かシックリと、それがまるで生まれたままの姿のように景色に収まっていた。
(ツノ?だよね。メイククリップじゃなくて)
両の額にメイクアップクリップを取り忘れていますよと思ったモノがあった。
(まあこれぐらいだと普通に生活出来そうね)
異世界だろう系小説にあるような、京都の古い佇まいの暖簾があるような店なら入るのは躊躇われるような無駄に長いモノじゃなく、本当にメイクに邪魔だって髪を止めるメイククリップみたいな控えめなモノであった。
(バビルサじゃないんだから、あんなんじゃ生きるの大変だよね)
ケモナー好きの漫研部員が本人の気持ちになってキャラデザインしろって怒っていた。
(そういえば冬はおまねこの同人誌作るんで頼むって言っていたな。あの娘もようやくBLの深淵から抜けさせたんだったら手伝ってあげようかな)
その娘はまだ闇の中に蠢いているとわかったのはまた別の話。
(JDぐらい、いや大人っぽいけどJK三年生ぐらいかな。背は高い 胸は・・・負けてない ウエストは・・・・・・負けてる ヒップは勝ってる 目は縦に割れてる 爬虫類みたい 人はよさそう 髪は真っ赤 まるで紅月カレンか遊佐恵美かムサシみたい・・・・大丈夫かな?前はいいけど、後ろの二人に似てるって思うと一気にポンコツ感が)
警備のおじいさんもよれば信用出来るって感じだったのでやってきたが、評価が別れたのはなんか分かるような気がした。
「ここ00-19でいいんですよね」
「そうだよ~。よく来れたね。迷わなかった?」
「探しました」
プレハブ街は碁番の碁石みたく順整列していたので 00-01から順に探せば 00-19 にあると思っていたが、将棋盤の外れにあったのは 00-18 であった。
順路が繰り上がって戻ったが 00-01の上は 01-01。
散々迷っていると 00-18 から森丘を超えたはるか彼方の向こう側と言われた。
(隔離?ここ新型武漢ビールスの発祥地じゃないでしょうね)
00-18の隣のスペースは十分開いているのに離れているって、どっかの戯言都知事みたく三密でも避けているのかと思ったが、新型呼吸系疾病どころか10トン爆弾の爆風でも大丈夫なほど離れていた。
(あれっ そう言えば)
おかしな事に気がつく。ここでは接客業務に必須のマスク着用者が極めて少ない。確か民間以上に公務員の施設では着用は厳命であったはずだ。
「あの、マスクしなくてもいいんですか?」
「したほうが落ち着くならするよ。でもどうせあたし達は伝染さないし伝染らないから大丈夫なんだけど」
「え?」
少しパニックになる。つまり今世界中を震撼させているパンデミックなど知ったことじゃないって事らしい。
それが彼女だけの事ならまだしも、思い返せばすれ違っていたちょっと変わった外見のヒト、コーディネーター?らしいのは全員していなかった。
(なんなの、ここは)
コスプレ?なら趣味だが、組織絡みで容認されている日常の違和感に戦慄が走った。
「駐車場の警備の爺さんから連絡入ってる。よく入ってこれたわね。あの人は相変わらず隻眼ね」
「あ あの・・・・」
「どうしました。あらっ、汗スゴ」
エアコンの設定温度が政府の建物らしく28度と暑いのに、ジェケットを羽織って暑くないかと思ってしまった。
「ああ、ゴメンゴメン。暑かったわね。もちろん脱いでもいいわよ」
壁のエアコンスイッチを付けしばらくすると冷気が出て来た。その間に暑いでしょうと、氷たっぷりの林檎ジュースを出してくれる。
(そうじゃないんだけど、マスクを・・・まあいいわ。意外と気が利くいい人だ)
警備のお爺さんの評価はいい方に当たっていたのできっと嘘でなく、新型武漢には伝染らないだろう。
「ゴメンなさいね。基本ここ誰も来ないからエアコン禁止なのよ。あたしがいる時はいらないからって電気代が勿体ないって電源オフが基本。ひどい社畜 ならぬ 国畜でしょう。どうなってんのこの国。国民はどっかみたいに畑掘ってれば出てくるくるって思ってるんじゃないでしょうね。この国の宝は資源とかじゃなくて人材はなんだから、あの増税眼鏡の所為でみんな外国で税金おとすようになってしまう」
「あの、初対面の学生にそんな政権への主張みたいなボヤキを言われても困ります」
「あ~、ゴメンゴメン」
「あの、えっと アドバイザーさんがいない時はエアコンいらないって事は、暑いの平気なんですね」
暑さ平気で目も縦に割れてるのでゲームとかに出てくるサラマンダー(炎蛇)かなと思った。あれで暑がりだったら大変だろうなとも。
「ああ。そういうわけじゃない・・・・冷えが足りないね。もう少し冷やしていい」
「出来れば28℃より下げてくれたほうがいいです。出来ればう~んと う~~~~~んと」
ダラダラと流れる頬の汗を指さして抗議する。
「ほい、了解」
「え?」
何故か脱いで手にしていたジャケットを着るように言って、? と思っている前で両手を天を抱くように何事かとつぶやくと。
ビュウうううううう ゴオオオオオ
という轟音の風切り音と共にエアコンの冷房モード 強 設定14℃よりキンキンに冷やした冷気が建物全体を木星の大赤斑みたく満たして、暴風雨が収まった時は部屋はピキーンって擬音が似合う風景になっった。
「よし、これで涼しくなったでしょう ・・・・って何してるの?」
見ると凍りついた部屋の真ん中で彼女はガタガタと歯の根が合わずに体を縮こまららせ行き倒れていた。
「だからジェケット着ろって言ったのに。低体温症か?」
アンコの入ったチョコレートが食べたくなったとつぶやく。
「あががががが さむいです」
「ん?なんか言った」
「こ これは着たぐらいじゃなんとかなる冷気じゃないですよ」
あんたは冷凍怪獣のペギラか雪女怪獣スノーゴンか海王星の女王お雪様かと突っ込もうとしたが眠くなってそれどころじゃ無かった。
「寝るな 寝ると死ぬぞ」ってボケが聞こえた。
夏の恐山で凍死なんて、気の毒がられる前に、こいつなんで死んだんだって笑われて死ぬのは嫌だと死の誘惑をパーンみたく振り払っていた。
title #3
"Welcome, Mr. Another World!OYOYO ”
part[1/5]
end
"Welcome, Another World Traveler!OYOYO ”
(異世界さん いらっしゃ~い!)
part[1/5]
「異世界旅行業務取扱の管理士研修センター及び就職斡旋所はここでいいんですか?」
手にしたメモを殆ど読み上げるように、ユニクロか、しまむらの新作ファッションを頑張って着ましたって感じの女の子がおずおずと声を掛ける。
「はい、そうだよ。ここだよ」
旅行業務研修センター恐山営業所前と書かれたバス亭を降りた場所にいた警備のおじいさんが優しそうにそういった。
キョロ キョロ
「ここが、異世界好きがあつまるメッカですか」
周囲を見渡して合点がいかないって顔をしていたので、話しかけられた警備おじいさんはさもありなんって顔で返す。
「うん。一部じゃそう言われてるね」
そんな関係者が多いとうなずく。
「すいません。とてもそうは見えないもので」
「みんなそう言うよ」
イデオンモールの様に広いアスファルト駐車場ではあるが、巨大な建物は無い。
「駐車場に一面に印幡物置がずっとあるだけなんですけど」
中世の欧州的町並みを想像していたので、戦争難民の押し寄せた砂漠のテントのスラム状態にプレハブ乱立に、期待していた風景と違いあてが外れた。まあこれならボットン便所じゃないだろうと良かったとも思った。
「確かにそうみたいで間違いないのかな?」
プレハブ街に一般人?に混じって体が緑色 赤色 青色 の色とりどりな二足歩行のヒト?が見える。
耳が異様に長いヒト 小さな背丈なのにボディビルダーかくもってヒト 子供サイズな体躯なのに喫煙所でタバコを吸っているのに誰にもみとがれないヒト 頭からツノの生えてるヒト 背中からなんか生えてるようなヒト その他、ここは夏冬の東京ビッグサイトか、テーマパークのハロイン仮装大会ですかって聞きたいような人々が跳梁跋扈していた。
「コミケのプレ販売では無いですよね」
「ここコスプレ会場じゃないよ。それにカメラ小僧いないでしょう」
「確かにまだコミケには日がありますね」
学校側からの部費がほしいと頼まれ、幽霊部員として入っている学校の漫研は今頃徹夜作業中だろう。BLの・・・・。
(来てよかった。あんな場所に原稿手伝わされて、販売の売り子の手伝いで来いって言われたら地獄だもんね)
郷里にいたら締め切り前の修羅場に突き合わされていたので、あんなケツが痛そうな原稿のベタなんか塗りたくないので、それもここの来た理由であった。おまけに交通費とホテル代は出すからって嘘で連れて行かれて、うだるような有明の公園で蚊に刺されながら開場を待って、世にも珍しい臭い雲の下で売り子なんて気が狂う。
(一般人もいるけど、誰も気にしてないわね)
コーディネイター?とナチュラル?、少し変わった特徴を有しているのとノーマルがとすれ違ってもドチラも気にかけた様子は無い。どこの魔国だと、キョロキョロと見回してもスライムはいないようだ。
「魔国じゃないとすると、有明や幕張やジャパンエキスポ会場じゃないですよね」
青い住所プレートは確かに日本の青森であると2度見た。
「プレハブだけなんですね」
「茶色いラミエルの団体みたいなのが立ってないのはここ元々霊場で聖域で、今地元と景観条例で揉めてるんで永続的なビルとか建てられないんだよな。いつでも撤去出来るようなもんしか建てられないの」
壊れるかららしいが、台風は来そうにないしこの地は地震も無いし、内海沿いだから津波もこないのに何故壊れる事を前提に考えているのかと首をひねる。
異世界だろう系小説とかでネタが無い時に使うスタンピード(狂騒)とかドラゴン襲撃でもあるのかな。
「なるほど、そうだったんですか」
納得出来ないが納得することにした。
不安が少し緩んた表情を浮かべる少女に追加報告する。
「いくら立派に作ってもあの連中が暴れりゃ例えアヴァロン要塞だってウォールマリアだって紙装甲だからね」
「?今なんか不穏な事言いました」
「あ~。まあスクラップアンドビルドがここのモットーだからってことだよ」
事故があったらどっかの国の列車事故みたいに埋めやすいしとも言う。
「はあ、そうですか」
よくわからんが、そうなんだと納得した。
「お嬢ちゃんどっから来たの」
「ああ。はい。沖縄からです」
「沖縄からその格好で青森にかい」
これから北海道に渡っても暑いだろうって格好だ。
「はい」
「君トランスファー希望者だよね」
「はい、そうです。トランスファーって言うのかわかりませんが、イタコ希望です」
「! イタコとはちょっと違うんだけど、まあいいや。それならなんで地元にいかなかったの」
「え・・・・・・・・・だって」
「沖縄にはユタの関係でヤンバル近くにここの支社と研修センターあるよ」
「そんな。青春18じゃ本土までフェリー乗れないって、苦労して貯金したのに」
眼の前の少女が何か理由があるのは表情で分かったが、貧乏も追加だとわかった。
「話していいなら聞くけど、いいかい?君は不思議な夢を見たんだよね」
「は はい。わたしあんまり夢を見ないんですけど、ある時期から同じような夢を見るようになったんですよ」
「はい。なるほどね はい」
「知り合いに占いとか夢判断が好きな子がいたんで相談したんですけど・・・呆れてます?」
「いえいえ。ここはそんな人が来るための場所だから間違っていないよ」
「ああ、よかった」
馬鹿にされると思っていたのに、真剣に聞いてくれているので安心した。
「それでどうしたの」
「そうしたら、あんた選ばれたんだって、オメデトウ詐欺みたいな事を言われました」
ぶっ
思わず笑う。
「確かにそれはオメデトウ詐欺だ」
歩いているだけで買い物もしていないのに福引を引いてくれと言われてひくと100%何かがあたる。あたったモノはタダだが、契約金がいくらだ 代引き手数料がいくらだ 宝石の原石があたったら研磨料と指輪への加工料がいくらって言われる。
「わたし知らなかったんですけど、そんな夢を見る人はイタコトランスファーとか言う・・超能力者だって言われました」
「イタコも超能力者ってのもちょっと違うような気がするけど、まあ続けて」
「それでドリームキャッチャー(夢選別アイテム)って夢判断の電話番号を教えてもらったんですよ」
「したんだ。うん、それで良かったと思うよ」
ウンウンとうなずく。
「そのお友達なんか他に言ってなかった?」
「いいな~って羨ましがっていましたね。あと、あたしたち友達よねって・・」
「友達なの?」
「そんなに親しくは無かったんですけど、それからよく声をかけられるようになりました。なんだろう?」
「今の子はちゃっかりしてるな」
おかしそうに笑う。
「それでどんな“夢”を見たのか教えてくれるかい」
「ああ、でもテレオペの方に夢の内容は誰にも言わないようにと言われましたから」
「あ~。なるほどね。テレオに夢の内容を話したら他の誰にも言うなと言われたんだね・・・・・・あ~、はいはい」
「何かわかったんですか」
その情報がネットでは売られているので、言わないようにいわれたんでは無いかと。
「そんな夢を集めて公開しているサイトがあるんだけど見た事無い?」
「見てはいませんが、それも聞きました」
「それで問題になってるんだよな。サイトに夢の内容が乗ってるからら、それをテレオペに申告して脈があると思われたら研修センターまで来てくれって言われる」
講習には交通費出るからただで旅行が出来るってセコいのが騙ってくるとか。
「興味だけの人間も、ネットチューバーがネタ欲しさにも、なんかの間違いでトランスファーになれるかなと騙ってやってくるんだよね。どうせ直ぐバレるのに」
今不景気だから旅費が出ればいいやって馬鹿が騙るとか。
「そんなサイトがあるのでしたら、なんでわたしだけ話しちゃいけないって言われたんですか?」
「多分なんだけど、君の見た夢がそんなサイトに乗ったのとは違うって思ったんじゃないかな」
「他の人が見たのと違う、おかしい夢だったんですか」
「そうとも限らないよ。例え同じものを見ても感じる事は人それぞれだから、公開?されてるとは違うからこれは別口だと交換手は思ったんで喋っちゃだめだっていったのかもね」
「どういう事ですか」
「新しい夢だったんで、それを広められるとまた騙る連中を見分ける事が難しくなると思ったんじゃない。話すなって言ったのは、今ネットでも携帯でもWiFiとかでも盗聴が凄いからどこからバレるかわからないから用心したんだと思うよ」
「なるほど、そうだったんですね」
「それで沖縄の方だと君にあってるカリキュラムが無いと思ったんじゃないかな。だからコッチに行ってくれと言われたんじゃないかな」
「だからコッチに行ってくれってことだったんですか?あ~、じゃあ交通費でますよね」
良かったと安堵した彼女を見て微笑む。どうやら不安はこれからのカリキュラムどうこうじゃなくて、財布の方だったようだ。
「じゃあ夢の事は専門に任せて、後、何か言われたかい」
「そうですね。ここじゃ無闇に名前を聞かない 呼ばない 名乗らないって ちょっとまってください」
ちょっとまってくださいとメモを再び取る。
「ネームプレートに名前がない人に名前を聞かない・・・・・どうしてかはしりませんが・・・ わかっても呼ばない そして自分の名前も教えてはいけない。担当官一人が専任につくと思うけど、その人以外は誰に何を聞かれても住所氏名年齢職業を言わないように。家を出る時は名前と身元がわかるのものは肌身離さない身分証だけにして」
なんで服に名前を書いているって知っていたんだと不思議がった。
「よくメモ取れたね。速記者になったほうがいいかも」
それかその記憶能力ならどっかの探偵助手になったほうが将来有望かもと笑いを誘う。
「他には何か言っていたかい」
「・・出来ればらしいんですが、上着に帽子手袋と眼鏡をつけて、監視カメラを避けて恐山まで来てくださいと」
夏で暑いので出来れば断りたかったが、言われたとおりに着てきたと暑そうにしていた。
「だからか・・・・そのオペレーターなんか変なスパイ映画でも見たのか?よしんば他はいいとして、一般の女の子が監視カメラ避けて九州・本州縦断しろって無理に決まってるだろう」
リチャード・キンブルだってイーサン・ハントだって今の時代は無理だろとうと呆れた。
「?」
「ごめん ごめん 他には」
「交通費は往復でますから、嫌いでなければ飛行機で来てくれといわれました」
不安そうな口調であったので。どうやらそれが気になっていたらしい。確かに高校生ぐらいでは飛行機代は痛手だろう。
「青春18で来たって言わなかった?」
「ドッキリだったら困るし、そんなお金無かったんで18シーズンまで待ってました」
出した金が戻ってくると思わない、疑り深い性分だと自分は簡単には騙されないぞとムフってみせる。
「そ (ぷふ) そうだね」
それをどやって公言するのがまだ若く可愛いと言わずにはおいた。
「・・・・賢い選択だね。僕でも疑うよ」
「そ そうですよね。チケット代無いし、乗り換えがわからないって言ったら、なんならホンダジェットをコッチで貸し切りると言われました」
「そのオペレーターは上司に褒められるかクビかのドッチかだな。窓口に預けておけば・・・・・それも名前言わないと駄目だな」
結構有能だったんだと、そのオペは部下にほしいと思った。
「後はなんか言っていた」
「よくわかりませんが、公衆電話からだったのがバレてて、受話器とか電話の指紋を消して直ぐにその場からは離れてくれと」
「そんな不穏を感じさせる事言われてよくここに来たね。小さい割に肝っ玉太いのかな。君学校の友達から一目置かれてない」
「?」
「ごめん ごめん。僕もなんかおかしな映画に引っ張られているみたい」
他にもなんかと聞いたら、次の日学校で聞いたらしいが、電話をかけてきた駄菓子屋の近所、普段は飛ばない空域なのに米軍のUH-60が飛んできて、近所の広域避難場に空挺降下の訓練していたとか。
「あらら。危機一髪か。ソイツ有能だったわ」
「はい?」
「米軍とか警察は家に来た?変な電話なかった」
どうやらそれは無かったらしい。無かったらしいが、ここに来る車中に先程例の夢の事を話した友人?が例の夢サイトに夢の内容を書き込んでいたら、ネットへの偽計業務妨害罪みたいなもんで警察に連行されたとか漫研の仲間から回覧板が来たとか。
「危機一髪だったんだ。君一級サスペンスドラマに出れるよ」
「何かあったんですかね?何か自分が見たって事にしていたようなんで詐欺罪ですかね」
「盛り上がる演出だね。どこ連れて行かれたかしらんけど、今頃泣いてないといいけど。米軍に女子高生が拉致られたっていうとあの馬鹿知事が騒ぎそうだから・・・・・し~らない」
そのうちほっときゃ人権派弁護士ってのが騒いで不起訴でデてくるだろうから、今は眼の前の方に注力しよう。
周囲をそれとなく見ると目立たない業務なのに普段より多くに視線を感じた。
「今日連中もコッチもいつもより少し忙しい事になりそうだな」
「なんですか?」
「どうやら今日から繁忙期に入ったんで忙しくなりそうだから、今日はもうすぐ上がりだと思っていたんだけど、残業になるかな。約束していた孫娘から怒られ「じいじ 嫌い」とか言われたらどうしよう」
「すいません。何の話をされてるんですか?」
「あ~ ゴメンなさい。えっと・・」
彼女の後ろに施設の私服警備が来ていたのを確認出来たので安心した。
首をひねる女の子にここで怪しまれて帰られでもしたら狼の巣に子羊を送るような事だと、私事を忘れて真面目な施設だと思って欲しいので厳に業務に戻る。
「じゃあ取り敢えず総合案内所に行ってくれる【ようこそ 異世界旅行公社に】ってノボリが出てるからそこに行ってください」
登りの上がってる玄関の左に“00”って玄関に書いてあるプレハブだよ。窓口っていうか建物は19棟あるけど・・・君なら “00ー19”がいいと勧められる。
「あそこは若い子向けだから慣れてるからね」
「わかりました。ありがとうございます」
「頭から対のツノ生やした髪が真っ赤なプランナー兼アドバイザーがいるはずだ。ちょっと外見怖くて馬鹿っぽいけど良い子だから何でも聞くといい。かったるそうにすると思うけど、じっと真摯に聞けば断れない娘だから・・・・・・まあ面白いと思うよ」
「? なんかその人の事よく知りませんが、警備さんがその人を好きなんだか嫌いなんだから悩む評価ですね」
上げて落として又上げてって三流映画の主役みたいな扱いに苦笑した。
「あ あの ごめんください」
恐る恐るプレハブに入るとだだっ広い事務所には誰もいなかった。
「暑い。ここでも省エネ28℃設定なのかな?」
政府の出向施設か何かでクーラーの室温は28度だと書かれていた。
「プレハブなんだから断熱してないんでしょう。輻射熱きっつううう。せめて25℃にしてくれないかな」
ムワッとして中には入りたくないのでまだ涼しい玄関脇でもう一度不在を聞く。
「どなたかいらっしゃいませんか~」
やっぱり誰もいない。仕方なく中に入ると接客テーブルに【只今外出しております。ベルを鳴らしてしばらくお待ちください】と書かれていたので意を決して押すが、何も起こらない。
「・・・・・」
しばらく経ったが何も無いので、ここだとは言われたが他を当たることにしようとした。
「いらっしゃい」
「!」
戻ろうとしていた玄関を振り向くと、どうみてもモグバーガーの店員さんがいた。
(入ってきた方の挨拶じゃないでしょう)
その格好なら店内にいろって思った。ハンバーガーは売ってなさそうだが。
「お邪魔してます」
今度は他人の民家じゃないって、間抜けな挨拶の応酬は二人してわかったので少し苦笑する。
あ~、ちょっとまってと事務所奥の衝立に入ってしばらくすると上着だけモグバーガーの店員から、政府施設の職員って感じの薄緑のジャケットになっていた。
(あ あかい)
ついたてから出てきた彼女はモグバーダーの髪の毛落下帽子を取ったので今まで隠れていた緋色というほど鮮烈の赤のミドルボブが現れていた。
普通ならチャラいヤンキーかなと思うのだが、出てきた彼女は何故かシックリと、それがまるで生まれたままの姿のように景色に収まっていた。
(ツノ?だよね。メイククリップじゃなくて)
両の額にメイクアップクリップを取り忘れていますよと思ったモノがあった。
(まあこれぐらいだと普通に生活出来そうね)
異世界だろう系小説にあるような、京都の古い佇まいの暖簾があるような店なら入るのは躊躇われるような無駄に長いモノじゃなく、本当にメイクに邪魔だって髪を止めるメイククリップみたいな控えめなモノであった。
(バビルサじゃないんだから、あんなんじゃ生きるの大変だよね)
ケモナー好きの漫研部員が本人の気持ちになってキャラデザインしろって怒っていた。
(そういえば冬はおまねこの同人誌作るんで頼むって言っていたな。あの娘もようやくBLの深淵から抜けさせたんだったら手伝ってあげようかな)
その娘はまだ闇の中に蠢いているとわかったのはまた別の話。
(JDぐらい、いや大人っぽいけどJK三年生ぐらいかな。背は高い 胸は・・・負けてない ウエストは・・・・・・負けてる ヒップは勝ってる 目は縦に割れてる 爬虫類みたい 人はよさそう 髪は真っ赤 まるで紅月カレンか遊佐恵美かムサシみたい・・・・大丈夫かな?前はいいけど、後ろの二人に似てるって思うと一気にポンコツ感が)
警備のおじいさんもよれば信用出来るって感じだったのでやってきたが、評価が別れたのはなんか分かるような気がした。
「ここ00-19でいいんですよね」
「そうだよ~。よく来れたね。迷わなかった?」
「探しました」
プレハブ街は碁番の碁石みたく順整列していたので 00-01から順に探せば 00-19 にあると思っていたが、将棋盤の外れにあったのは 00-18 であった。
順路が繰り上がって戻ったが 00-01の上は 01-01。
散々迷っていると 00-18 から森丘を超えたはるか彼方の向こう側と言われた。
(隔離?ここ新型武漢ビールスの発祥地じゃないでしょうね)
00-18の隣のスペースは十分開いているのに離れているって、どっかの戯言都知事みたく三密でも避けているのかと思ったが、新型呼吸系疾病どころか10トン爆弾の爆風でも大丈夫なほど離れていた。
(あれっ そう言えば)
おかしな事に気がつく。ここでは接客業務に必須のマスク着用者が極めて少ない。確か民間以上に公務員の施設では着用は厳命であったはずだ。
「あの、マスクしなくてもいいんですか?」
「したほうが落ち着くならするよ。でもどうせあたし達は伝染さないし伝染らないから大丈夫なんだけど」
「え?」
少しパニックになる。つまり今世界中を震撼させているパンデミックなど知ったことじゃないって事らしい。
それが彼女だけの事ならまだしも、思い返せばすれ違っていたちょっと変わった外見のヒト、コーディネーター?らしいのは全員していなかった。
(なんなの、ここは)
コスプレ?なら趣味だが、組織絡みで容認されている日常の違和感に戦慄が走った。
「駐車場の警備の爺さんから連絡入ってる。よく入ってこれたわね。あの人は相変わらず隻眼ね」
「あ あの・・・・」
「どうしました。あらっ、汗スゴ」
エアコンの設定温度が政府の建物らしく28度と暑いのに、ジェケットを羽織って暑くないかと思ってしまった。
「ああ、ゴメンゴメン。暑かったわね。もちろん脱いでもいいわよ」
壁のエアコンスイッチを付けしばらくすると冷気が出て来た。その間に暑いでしょうと、氷たっぷりの林檎ジュースを出してくれる。
(そうじゃないんだけど、マスクを・・・まあいいわ。意外と気が利くいい人だ)
警備のお爺さんの評価はいい方に当たっていたのできっと嘘でなく、新型武漢には伝染らないだろう。
「ゴメンなさいね。基本ここ誰も来ないからエアコン禁止なのよ。あたしがいる時はいらないからって電気代が勿体ないって電源オフが基本。ひどい社畜 ならぬ 国畜でしょう。どうなってんのこの国。国民はどっかみたいに畑掘ってれば出てくるくるって思ってるんじゃないでしょうね。この国の宝は資源とかじゃなくて人材はなんだから、あの増税眼鏡の所為でみんな外国で税金おとすようになってしまう」
「あの、初対面の学生にそんな政権への主張みたいなボヤキを言われても困ります」
「あ~、ゴメンゴメン」
「あの、えっと アドバイザーさんがいない時はエアコンいらないって事は、暑いの平気なんですね」
暑さ平気で目も縦に割れてるのでゲームとかに出てくるサラマンダー(炎蛇)かなと思った。あれで暑がりだったら大変だろうなとも。
「ああ。そういうわけじゃない・・・・冷えが足りないね。もう少し冷やしていい」
「出来れば28℃より下げてくれたほうがいいです。出来ればう~んと う~~~~~んと」
ダラダラと流れる頬の汗を指さして抗議する。
「ほい、了解」
「え?」
何故か脱いで手にしていたジャケットを着るように言って、? と思っている前で両手を天を抱くように何事かとつぶやくと。
ビュウうううううう ゴオオオオオ
という轟音の風切り音と共にエアコンの冷房モード 強 設定14℃よりキンキンに冷やした冷気が建物全体を木星の大赤斑みたく満たして、暴風雨が収まった時は部屋はピキーンって擬音が似合う風景になっった。
「よし、これで涼しくなったでしょう ・・・・って何してるの?」
見ると凍りついた部屋の真ん中で彼女はガタガタと歯の根が合わずに体を縮こまららせ行き倒れていた。
「だからジェケット着ろって言ったのに。低体温症か?」
アンコの入ったチョコレートが食べたくなったとつぶやく。
「あががががが さむいです」
「ん?なんか言った」
「こ これは着たぐらいじゃなんとかなる冷気じゃないですよ」
あんたは冷凍怪獣のペギラか雪女怪獣スノーゴンか海王星の女王お雪様かと突っ込もうとしたが眠くなってそれどころじゃ無かった。
「寝るな 寝ると死ぬぞ」ってボケが聞こえた。
夏の恐山で凍死なんて、気の毒がられる前に、こいつなんで死んだんだって笑われて死ぬのは嫌だと死の誘惑をパーンみたく振り払っていた。
title #3
"Welcome, Mr. Another World!OYOYO ”
part[1/5]
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