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2017年〜2020年 出逢いの場所から
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パパとママの出逢いの場所は、大きな河川の上流域にある大きな盆地だ。大きな河川を長江に喩えるなら四川省成都のような街だ。そんな街にある由緒ある神社近くのシャッター通りばかりの寂れた旧市街地にあるマンションに互いに住んでいたことで2人は知り合った。
パパの転勤と共にパパとママは結婚する決意をした。パパの新しい勤務地は長江の喩えで言えばちょっど武漢あたりとなる大きな街だ。そのウォーターフロントにある赤い家を買った。2020年4月の頃だ。直ぐに結婚式を挙げる予定だったが、2019年12月に起きた小さなK騒動は遠い対岸の火事にしか思えなかったが、2020年2月に迄には、あっという間に世界中に飛び火した。
日本でも屋形船から豪華客船からと火の手が上がり、その頃には僕の長江喩えの武漢もどきである田舎の地方都市にも広がり始め、長年勤め上げたジィージの会社でもジィージの送別会は中止を余儀なくされた。
(それでも中止になったのは半分の7回。残り7回ギリギリ開催されジィージの家の玄関は貰ってきた花束で埋め尽くされた。)
2020年の3月から4月に掛けて、有名すぎるコメディアンと有名過ぎる女優のがKフィバーの犠牲となり、日本中に大きな衝撃が走った。病院に入院すれば親族でも面会は出来ない。面会ができてもアクリル板越しだ。火葬も立ち会えない。遺族の元に帰ってくる時は骨となって骨壷に入ってからだ。
このKフィバーに対する恐怖を感じるのには十分過ぎる出来事だった。
ワクチン接種が奨励され、春から2回接種するようにと通知が来た。Dフィバーも怖いがワクチンの副反応もそれぞれの個人によってバラバラだ。ワクチン開発した責任者の一人は自分は接種しないと発言したりと、打つべきかの判断すら個人責任だ。メッセンジャーワクチンて言われてもよく分かるはずはない。ジィージはワクチンを2回とも打ったらしい。打てば旅行割引と地域買い物クーポンの特典有りだとか。ジィージはそれを上手く使ってあちこちと泊まって遊んでいる。
パパとママの2020年5月の結婚式は延期された。
直ぐにこんなKフィーバーは収まるとの楽観とスペイン風邪との比較による悲観とで入り乱れた。
未知の出来事に対して、情報化社会も真贋あいまみれとなった。黒にんにくでスタミナを付ければ予防になるとのデマですら、またたく間に広がり、スーパーでは黒にんにくが無くなった。
長江喩えの武漢のこの街でも罹患者が出始め、死者がでる。プライバシーに配慮されているはずか、市井には情報が出回る。駅前の風俗店でうつされた、無くなった人は高齢者であり、あの店にいつも出入りしていた。あの人の行く店は他にもどこそこだ、と噂は肥大し広まり続ける。
長江喩えの南京では帰省した学生がKフィバーを上海から持ち込んだ。おかげて介護施設にクラスターが生じたと責められた。さらには、街に入れなくなり夜逃げしたとのデマはまことしやかに信じられた。
Kフィーバーにより、人の移動も経済活動も制限され、体力削がれた飲食店や旅館業も出始めたのはこの頃だ。
大学でもリモート授業が取り入れられた。叔父のリューはそれから2年間、全授業をリモートで受ける羽目となる。リューは早々に長江喩えの上海にあるアパートを引き払い、長江喩えの武漢の実家に戻って来た。
会社も地方自治体の呼びかけもあり、県外には移動しないように指示された。皆、登山もゴルフも自粛して県内の狭い範囲で細々と遊ぶしかなかった。
夏に少しは下火になったKフィーバーを機会に、経済回復策が取られた。海外渡航、海外からの観光旅行も制限されたが、国内では旅行に行こう、美味しいものを食べよう、と国も自治体も応援した。
けれど、お盆で帰省する車のナンバーが県外である自動車は敵意の目で見られるた。わざわざフロントガラスに〈県外ナンバーですが県内に住んでる者です〉と張り出す人もいた。
マスクをしていないとコンビニではトラブルも起きた。
一方で、医療崩壊が叫ばれる。経済再生との間で政府も市民も揺れた。
Kフィーバー対策のための時短営業等への協力店への所得補償もアルコール提供の有無等による不公感でもめた。
あれだけ待ち遠しかったおもてなしの2020年東京オリンピックは延期された。
2020年10月、Kフィバーの少し落ち着いた頃合いで、パパとママは地中海を思わせる小さな結婚式場で、延期していた小さなナイトウェディングを挙げた。東京からは呼ぶことは出来ないから、親戚を中心としたこじんまりとした結婚式だ。けど、尚更それ故に品のある素敵な結婚式になった。あのKフィバーの状況下で唯一やれる最高の式だ。
11月、Kフィバーは変容する。Dフィバーだ。
そしてこの時期、点として僕も、この世の片隅に存在し始めたのだ。
パパの転勤と共にパパとママは結婚する決意をした。パパの新しい勤務地は長江の喩えで言えばちょっど武漢あたりとなる大きな街だ。そのウォーターフロントにある赤い家を買った。2020年4月の頃だ。直ぐに結婚式を挙げる予定だったが、2019年12月に起きた小さなK騒動は遠い対岸の火事にしか思えなかったが、2020年2月に迄には、あっという間に世界中に飛び火した。
日本でも屋形船から豪華客船からと火の手が上がり、その頃には僕の長江喩えの武漢もどきである田舎の地方都市にも広がり始め、長年勤め上げたジィージの会社でもジィージの送別会は中止を余儀なくされた。
(それでも中止になったのは半分の7回。残り7回ギリギリ開催されジィージの家の玄関は貰ってきた花束で埋め尽くされた。)
2020年の3月から4月に掛けて、有名すぎるコメディアンと有名過ぎる女優のがKフィバーの犠牲となり、日本中に大きな衝撃が走った。病院に入院すれば親族でも面会は出来ない。面会ができてもアクリル板越しだ。火葬も立ち会えない。遺族の元に帰ってくる時は骨となって骨壷に入ってからだ。
このKフィバーに対する恐怖を感じるのには十分過ぎる出来事だった。
ワクチン接種が奨励され、春から2回接種するようにと通知が来た。Dフィバーも怖いがワクチンの副反応もそれぞれの個人によってバラバラだ。ワクチン開発した責任者の一人は自分は接種しないと発言したりと、打つべきかの判断すら個人責任だ。メッセンジャーワクチンて言われてもよく分かるはずはない。ジィージはワクチンを2回とも打ったらしい。打てば旅行割引と地域買い物クーポンの特典有りだとか。ジィージはそれを上手く使ってあちこちと泊まって遊んでいる。
パパとママの2020年5月の結婚式は延期された。
直ぐにこんなKフィーバーは収まるとの楽観とスペイン風邪との比較による悲観とで入り乱れた。
未知の出来事に対して、情報化社会も真贋あいまみれとなった。黒にんにくでスタミナを付ければ予防になるとのデマですら、またたく間に広がり、スーパーでは黒にんにくが無くなった。
長江喩えの武漢のこの街でも罹患者が出始め、死者がでる。プライバシーに配慮されているはずか、市井には情報が出回る。駅前の風俗店でうつされた、無くなった人は高齢者であり、あの店にいつも出入りしていた。あの人の行く店は他にもどこそこだ、と噂は肥大し広まり続ける。
長江喩えの南京では帰省した学生がKフィバーを上海から持ち込んだ。おかげて介護施設にクラスターが生じたと責められた。さらには、街に入れなくなり夜逃げしたとのデマはまことしやかに信じられた。
Kフィーバーにより、人の移動も経済活動も制限され、体力削がれた飲食店や旅館業も出始めたのはこの頃だ。
大学でもリモート授業が取り入れられた。叔父のリューはそれから2年間、全授業をリモートで受ける羽目となる。リューは早々に長江喩えの上海にあるアパートを引き払い、長江喩えの武漢の実家に戻って来た。
会社も地方自治体の呼びかけもあり、県外には移動しないように指示された。皆、登山もゴルフも自粛して県内の狭い範囲で細々と遊ぶしかなかった。
夏に少しは下火になったKフィーバーを機会に、経済回復策が取られた。海外渡航、海外からの観光旅行も制限されたが、国内では旅行に行こう、美味しいものを食べよう、と国も自治体も応援した。
けれど、お盆で帰省する車のナンバーが県外である自動車は敵意の目で見られるた。わざわざフロントガラスに〈県外ナンバーですが県内に住んでる者です〉と張り出す人もいた。
マスクをしていないとコンビニではトラブルも起きた。
一方で、医療崩壊が叫ばれる。経済再生との間で政府も市民も揺れた。
Kフィーバー対策のための時短営業等への協力店への所得補償もアルコール提供の有無等による不公感でもめた。
あれだけ待ち遠しかったおもてなしの2020年東京オリンピックは延期された。
2020年10月、Kフィバーの少し落ち着いた頃合いで、パパとママは地中海を思わせる小さな結婚式場で、延期していた小さなナイトウェディングを挙げた。東京からは呼ぶことは出来ないから、親戚を中心としたこじんまりとした結婚式だ。けど、尚更それ故に品のある素敵な結婚式になった。あのKフィバーの状況下で唯一やれる最高の式だ。
11月、Kフィバーは変容する。Dフィバーだ。
そしてこの時期、点として僕も、この世の片隅に存在し始めたのだ。
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