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第二章

17話

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 お昼休みの時間。私はラズリアさんやメルル、そしてメルルに誘われてやってきたリリーちゃんと食事を共にしていた。調査を通して二人は少しずつ話をするようになったらしく、リリーちゃんがいつも一人でお昼を食べているというのを知ってメルルが捕まえてきたのだ。

「ところで、調査は今のところどうなっているの?」

「……それが、ラズリアさんの記憶が操作されているかもしれないというところで止まってしまっていて……」

 何気なく聞いただけだったのだけれどメルルはとても深刻そうに俯いて教えてくれた。その隣でリリーちゃんも項垂れている。記憶の改変があるならどの情報も信用できなくなってくるし、仕方のないことだと思うのだけれど、それにしてもひどい落ち込みようだ。

「そんなに気落ちしないで!みんな頑張っているじゃない!」

「ラインホルト様のおっしゃる通りですよ!」

 ラズリアさんと懸命に励ましてみても効果はないようで二人とも視線は下を向いている。この雰囲気で言ってもいいのか、それともこの雰囲気だからこそなのか、迷いながら両手を合わせてパンッと音を鳴らした。それに反応して二人の頭が持ち上がる。

「私たちもね、調査に参加しようと思うの」

 事前に話し合っていたラズリアさんも私の隣で力強く頷いてくれた。にっこりと二人を見つめてみるとメルルが目を見開いたあと千切れそうなほどに勢いよく首を横に振った。

「ダメですよ!お二人とも危険な目に遭われたのですから!調査なんてしたら何が起こるか分かりません!」

「私も同じ意見です。それにラインホルト先生もお許しにならないでしょう」

 ここで初めてメルルに同調してリリーちゃんが口を開いた。メルルが「断固反対!」という感じなのに対し、彼女は冷静かつ諭すようにこちらを見る。さすが次席と言うべきか状況をちゃんと分析した上での言葉なのだとわかる。でも……

「あら、大丈夫よ。お兄様ならもう説得済みだもの」

「ええ?!あのロナン様がですか?」

 メルルは彼女にしては大きな声を出し、すぐに口元を押さえて顔を真っ赤に染めた。それから縮こまって小声でもう一度「本当ですか?」と聞いてきた。

 私が「お兄様」と言ったのもメルルが「ロナン様」と言ったのもあくまでうっかりではない。私のことに関しては、お兄様は先生としてではなく私の兄として調査に加わることを反対していた部分が大きかったのだ。実際説得に言ってみてそう感じたし、メルルもメルルで調査関連を仕切っているお兄様からそういうものを感じていたのだろう。もちろんお兄様が私に非常に過保護なことを知らないリリーちゃんとラズリアさんはキョトンとしているけれど。

「本当よ。苦労はしたけれど一生懸命説得したら渋々頷いてくださったわ。ラズリアさんならまだしも私は自分から足を突っ込んであんな目にあっただけだもの。大した危険はないわ」

「でも、ラズリアさんの方はさすがに……」

「私も参加します!私も先生の許可をいただきました。もちろん、ラインホルト様とペアであることが前提ですが」

 リリーちゃんの声にラズリアさんは食い気味で反応した。そう。ラズリアさんもちゃんとお兄様、いや、先生の許可をもらっているのだ。事件が起きてから特に何も起きていないことを主張し、また必ず私と一緒に行動すると約束をして強く訴えてみると意外にあっさり許してもらえたらしい。いつかこうなることをお兄様も予測していたのかもしれない。

「だから、一緒に頑張りましょう?きっと力になってみせるわ!ね?」

「はい!尽力させていただきます!」

 私とラズリアさんが目を合わせた後に向き直って向かい側の二人に微笑んで見せるとメルルは諦めたように小さくため息をついた。リリーちゃんは困ったように笑って視線を逸らしてしまった。




○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

少しだけ裏設定を……。

 ロナン様はフィリアが危険な目にあったことから何が何でもという感じで執念で調査に当たっていたので、それを目の当たりにしたフィリアの幼馴染みたちは彼が先生というよりも兄として動いているということをひしひしと感じていました。

 またロナン様は、兄、そして教師として、いつも活発に動きたがる妹(フィリア)と明るく快活でまっすぐな生徒(ラズリアさん)がいつまでも大人しくしていてくれるとはあまり考えていなかったみたいです……。
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