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番外編
天使と天使②
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(メルル視点)
「ねぇ、メルル。私のお友達に会ってみない?」
そもそものきっかけはフィリア様のこのお言葉でした。
「え?……む、無理ですよ……」
「無理?どうして?」
「私、初対面の人と上手く喋ることなんてできませんし、きっとフィリア様のお友達に不愉快な思いをさせてしまいます」
そう、私は人と話すことが壊滅的に下手なのです。会ったことのある人ですらダメなのに初対面の人なんてきっと大変なことに……。
「私はそんなことないと思うけれど」
「でも……」
「一度だけでもいいから、会ってみましょう?とっても優しい方々だから!」
「……わ、わかり、ました」
言われるがままに約束の日時を迎え、ラインホルト公爵邸に到着。ですが馬車から降りた瞬間一気に緊張が押し寄せてきました。
「メルル、いらっしゃい……ってどうしたの?そんな赤い顔をして」
「フィリア様、やっぱり無理ですよ!私にはとても……」
「大丈夫よ!私たちだってお友達になれたでしょう?」
それはあなたが女神のように寛容で素晴らしい人だからです!私は思わず心の中で反論しましたが口には出せませんでした。そうしているうちに私はフィリア様に手を引かれてお庭の方へと連れて行かれてしまいました。
そしていつの間にか現在に至るのです……。
「このスコーン美味しいですよ!」
満面の笑みでそうお声をかけてくださるのはレオン・クライン様。輝く金髪と宝石のようなオレンジ色の瞳が美しくてまるで天使のよう。その上ラインホルト家とほぼ同等の力を持つクライン家のご子息。私は当然緊張で胸がいっぱいでした。
「……どうかしたんですか?」
「い、いえ、ど、どうかお気になさらず」
「……?」
レオン様が心配そうにこちらを気にしてくださっていますが私は何も言葉を返せません。やっぱり私はダメなんです。こうやってまた人を不快にさせてフィリア様にも迷惑をかけてしまって……頑張りたいと思うのに上手く呼吸もできません。
「……あの、メルルさん。このティーカップ、可愛らしいと思いませんか?」
「え?……あ、とても可愛らしいと思います。小さなお花の柄が特に……」
「ですよね!僕、大好きなんです!メルルさんは他にどんなものがお好きですか?」
「好き……歌と、あとお花と本の挿絵……です」
「本の挿絵?」
「はい……。物語が綴られた本の中にたまに描かれている絵を見るのが好きで……特に『魔法使いと小さな女の子』という物語の挿絵はとっても綺麗で可愛らしくて……」
「可愛らしい……ですか?」
「は、はい……?」
「その本、僕に見せてもらえませんか!」
「え?」
突然ずいっとこちらに体を寄せてそうおっしゃるレオン様の勢いに私は思わず身を引いてしまいました。
「僕、可愛らしいものが大好きなんです!良かったら今度その本、見せてもらえませんか!」
「か、構いませんけど……」
「けど?」
「お嫌ではないのですか?本のために私なんかと会うなんて」
「そんなわけないじゃないですか!僕はメルルさんと仲良くなりたいですよ!」
「で、でも、私、上手くお話しできませんし……」
「そこも含めてメルルさんの可愛らしいところですよ!」
「か、かわ……?!」
満面の笑みのレオン様から思いがけないお言葉が降ってきたので私は一瞬頭が真っ白になってしまいました。ですがその後すぐに、後日レオン様が私のお家にいらっしゃるということで話がまとまりました。気づけばレオン様と普通にお話ができていたのです。もしかしたらレオン様はこのために私の好きなものの話を聞いてくださったのかもしれません。
それから少ししてフィリア様とカイ様が戻っていらっしゃいました。その後も少しお話をしましたが私は最初の時ほど緊張せずにお話ができました。それがとても嬉しくて楽しくて仕方がありませんでした。
「メルル、今日はどうだった?」
お家に帰るとお母様が優しいお顔でそう聞いてくださりました。
「とっても楽しかったです!」
私は今日一日を思い出して自信を持ってそう答えるとすぐに書庫に向かって「魔法使いと小さな女の子」を開きました。このお話の中ではお友達のいない小さな女の子に魔法使いがたくさんの夢を見せてくれます。楽しい気持ちでいっぱいになる女の子でしたがその魔法はすぐに溶けてしまうのです。なぜなら女の子のために魔法を使いすぎて魔法使いが命を落としてしまったから。でも、今日の思い出は消えてしまいませんように。私は目を閉じて静かに祈りました。
******************
二人が戻ってくるまでに
「フィリア嬢、そろそろ戻りませんか?」
「も、もう少しだけ……!か、かわいい~~~~」
「…………はぁ」
このやりとりは20回ほど続いたのだとか……。
「ねぇ、メルル。私のお友達に会ってみない?」
そもそものきっかけはフィリア様のこのお言葉でした。
「え?……む、無理ですよ……」
「無理?どうして?」
「私、初対面の人と上手く喋ることなんてできませんし、きっとフィリア様のお友達に不愉快な思いをさせてしまいます」
そう、私は人と話すことが壊滅的に下手なのです。会ったことのある人ですらダメなのに初対面の人なんてきっと大変なことに……。
「私はそんなことないと思うけれど」
「でも……」
「一度だけでもいいから、会ってみましょう?とっても優しい方々だから!」
「……わ、わかり、ました」
言われるがままに約束の日時を迎え、ラインホルト公爵邸に到着。ですが馬車から降りた瞬間一気に緊張が押し寄せてきました。
「メルル、いらっしゃい……ってどうしたの?そんな赤い顔をして」
「フィリア様、やっぱり無理ですよ!私にはとても……」
「大丈夫よ!私たちだってお友達になれたでしょう?」
それはあなたが女神のように寛容で素晴らしい人だからです!私は思わず心の中で反論しましたが口には出せませんでした。そうしているうちに私はフィリア様に手を引かれてお庭の方へと連れて行かれてしまいました。
そしていつの間にか現在に至るのです……。
「このスコーン美味しいですよ!」
満面の笑みでそうお声をかけてくださるのはレオン・クライン様。輝く金髪と宝石のようなオレンジ色の瞳が美しくてまるで天使のよう。その上ラインホルト家とほぼ同等の力を持つクライン家のご子息。私は当然緊張で胸がいっぱいでした。
「……どうかしたんですか?」
「い、いえ、ど、どうかお気になさらず」
「……?」
レオン様が心配そうにこちらを気にしてくださっていますが私は何も言葉を返せません。やっぱり私はダメなんです。こうやってまた人を不快にさせてフィリア様にも迷惑をかけてしまって……頑張りたいと思うのに上手く呼吸もできません。
「……あの、メルルさん。このティーカップ、可愛らしいと思いませんか?」
「え?……あ、とても可愛らしいと思います。小さなお花の柄が特に……」
「ですよね!僕、大好きなんです!メルルさんは他にどんなものがお好きですか?」
「好き……歌と、あとお花と本の挿絵……です」
「本の挿絵?」
「はい……。物語が綴られた本の中にたまに描かれている絵を見るのが好きで……特に『魔法使いと小さな女の子』という物語の挿絵はとっても綺麗で可愛らしくて……」
「可愛らしい……ですか?」
「は、はい……?」
「その本、僕に見せてもらえませんか!」
「え?」
突然ずいっとこちらに体を寄せてそうおっしゃるレオン様の勢いに私は思わず身を引いてしまいました。
「僕、可愛らしいものが大好きなんです!良かったら今度その本、見せてもらえませんか!」
「か、構いませんけど……」
「けど?」
「お嫌ではないのですか?本のために私なんかと会うなんて」
「そんなわけないじゃないですか!僕はメルルさんと仲良くなりたいですよ!」
「で、でも、私、上手くお話しできませんし……」
「そこも含めてメルルさんの可愛らしいところですよ!」
「か、かわ……?!」
満面の笑みのレオン様から思いがけないお言葉が降ってきたので私は一瞬頭が真っ白になってしまいました。ですがその後すぐに、後日レオン様が私のお家にいらっしゃるということで話がまとまりました。気づけばレオン様と普通にお話ができていたのです。もしかしたらレオン様はこのために私の好きなものの話を聞いてくださったのかもしれません。
それから少ししてフィリア様とカイ様が戻っていらっしゃいました。その後も少しお話をしましたが私は最初の時ほど緊張せずにお話ができました。それがとても嬉しくて楽しくて仕方がありませんでした。
「メルル、今日はどうだった?」
お家に帰るとお母様が優しいお顔でそう聞いてくださりました。
「とっても楽しかったです!」
私は今日一日を思い出して自信を持ってそう答えるとすぐに書庫に向かって「魔法使いと小さな女の子」を開きました。このお話の中ではお友達のいない小さな女の子に魔法使いがたくさんの夢を見せてくれます。楽しい気持ちでいっぱいになる女の子でしたがその魔法はすぐに溶けてしまうのです。なぜなら女の子のために魔法を使いすぎて魔法使いが命を落としてしまったから。でも、今日の思い出は消えてしまいませんように。私は目を閉じて静かに祈りました。
******************
二人が戻ってくるまでに
「フィリア嬢、そろそろ戻りませんか?」
「も、もう少しだけ……!か、かわいい~~~~」
「…………はぁ」
このやりとりは20回ほど続いたのだとか……。
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