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第一章
36.5話①
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(レイチェル視点)
ここはどこ?少しずつ目も耳も利くようにはなってきたけど自分のいる場所は皆目見当がつかない。
「こんにちは、レイチェル!私があなたのお母さんよ。あなたの名前はレイチェル・アルブラン。可愛い可愛い私の娘。よろしくね、レイチェル」
とても優しげで美人な女性がそうこちらに語りかけてくる。アルブラン?その名前はどこかで……。
「母上、レイチェルの様子はどうですか?」
「あら、カイ。来てくれたのね」
カイ?
「カイはあなたのお兄ちゃんなのよ」
まるで私の心の中を読んだかのようにその女性は教えてくれた。お兄ちゃん?ってことは名前はカイ・アルブラン。それって……
「この子が俺の妹ですか……可愛いですね」
こちらを覗き込んできたその顔にはものすごく見覚えがある。赤茶色の髪に金色の瞳。カイ・アルブラン。……すごく類似している。ラブリリのカイくんに。今目の前にいる少年が乙女ゲームの中のキャラクターを五年ほど若返らせた姿に見えてならない。でも、まさかね。
それから少しして、家族ではない人がよく覗きに来るようになった。
「この子がレイチェルちゃんですね!思った通り可愛い!」
「レオン様、落ち着いてください」
これまたそっくりさんの登場。今回はラブリリのレオちゃんらしき少年がやってきた。金髪にオレンジの瞳。私が喋れるなら「あんたの方がよっぽど可愛いわ」と言ってやりたい。
あ、なんか目が痒いな。そう思って手を目元に持ってきて驚いた。え、手ちっさ。いや、待て待て待て待て。さっきから夢見てるんじゃないの?誰も見ていないのを確認してちっさい手で自分のほっぺを出来る限りの力で叩く。と言ってもすごく弱い力だけど。それでも多少の痛みは感じた。ゆ、夢じゃないの?だとしたら多分今私赤ちゃんだし、何?転生?いや無い無い無い。…………え、まじで?
私がずっと悶々としているといつのまにか時間は経っていて、別の客がやってきた。女の子だ。
なんかじっと見てくるんだけど。藍色の髪に空色の瞳。肌はめっちゃ白い。何か聞いたことある特徴だな。
「か、か、可愛いぃ」
それはどうも。にしても気になるなこの人。名前なんて言うんだろ?そういえばお兄ちゃんが案内してきた時、確か……「フィリア嬢、こちらです」って言ってた気がする。フィリアって言うのか。可愛い名前だな。ん?
『フィリアちゃん可哀想すぎて泣けてくる!』
不意にその言葉が頭をよぎった。その瞬間にその少女と目が合う。藍色の髪に空色の瞳。真っ白な肌。フィリアという名前。もし、ここが、本当にラブリリの世界なら。
「うっ、うっ、うああああああぁ」
私は号泣した。この子がきっとそうなんだ。死んでしまうあの少女なんだ。そう思うと涙が止まらなかった。生きているその子に会えたことが嬉しくて、でももうすぐ死んでしまうかもしれなくて。もし私が本当に転生したのなら、きっとこの子を助けるために転生したんだ。なのに何で私赤ちゃんなのよ!嬉しさ、悔しさ、虚しさが涙になって溢れた。
次の瞬間。
ボンッと音が鳴ったのが聞こえた。まだ聞き取りにくいこの耳でも分かるほど鋭い音だった。それを聞くとお兄ちゃんはいなくなってしまった。……待てよ?フィリアちゃんの死因は確か……。
ここはどこ?少しずつ目も耳も利くようにはなってきたけど自分のいる場所は皆目見当がつかない。
「こんにちは、レイチェル!私があなたのお母さんよ。あなたの名前はレイチェル・アルブラン。可愛い可愛い私の娘。よろしくね、レイチェル」
とても優しげで美人な女性がそうこちらに語りかけてくる。アルブラン?その名前はどこかで……。
「母上、レイチェルの様子はどうですか?」
「あら、カイ。来てくれたのね」
カイ?
「カイはあなたのお兄ちゃんなのよ」
まるで私の心の中を読んだかのようにその女性は教えてくれた。お兄ちゃん?ってことは名前はカイ・アルブラン。それって……
「この子が俺の妹ですか……可愛いですね」
こちらを覗き込んできたその顔にはものすごく見覚えがある。赤茶色の髪に金色の瞳。カイ・アルブラン。……すごく類似している。ラブリリのカイくんに。今目の前にいる少年が乙女ゲームの中のキャラクターを五年ほど若返らせた姿に見えてならない。でも、まさかね。
それから少しして、家族ではない人がよく覗きに来るようになった。
「この子がレイチェルちゃんですね!思った通り可愛い!」
「レオン様、落ち着いてください」
これまたそっくりさんの登場。今回はラブリリのレオちゃんらしき少年がやってきた。金髪にオレンジの瞳。私が喋れるなら「あんたの方がよっぽど可愛いわ」と言ってやりたい。
あ、なんか目が痒いな。そう思って手を目元に持ってきて驚いた。え、手ちっさ。いや、待て待て待て待て。さっきから夢見てるんじゃないの?誰も見ていないのを確認してちっさい手で自分のほっぺを出来る限りの力で叩く。と言ってもすごく弱い力だけど。それでも多少の痛みは感じた。ゆ、夢じゃないの?だとしたら多分今私赤ちゃんだし、何?転生?いや無い無い無い。…………え、まじで?
私がずっと悶々としているといつのまにか時間は経っていて、別の客がやってきた。女の子だ。
なんかじっと見てくるんだけど。藍色の髪に空色の瞳。肌はめっちゃ白い。何か聞いたことある特徴だな。
「か、か、可愛いぃ」
それはどうも。にしても気になるなこの人。名前なんて言うんだろ?そういえばお兄ちゃんが案内してきた時、確か……「フィリア嬢、こちらです」って言ってた気がする。フィリアって言うのか。可愛い名前だな。ん?
『フィリアちゃん可哀想すぎて泣けてくる!』
不意にその言葉が頭をよぎった。その瞬間にその少女と目が合う。藍色の髪に空色の瞳。真っ白な肌。フィリアという名前。もし、ここが、本当にラブリリの世界なら。
「うっ、うっ、うああああああぁ」
私は号泣した。この子がきっとそうなんだ。死んでしまうあの少女なんだ。そう思うと涙が止まらなかった。生きているその子に会えたことが嬉しくて、でももうすぐ死んでしまうかもしれなくて。もし私が本当に転生したのなら、きっとこの子を助けるために転生したんだ。なのに何で私赤ちゃんなのよ!嬉しさ、悔しさ、虚しさが涙になって溢れた。
次の瞬間。
ボンッと音が鳴ったのが聞こえた。まだ聞き取りにくいこの耳でも分かるほど鋭い音だった。それを聞くとお兄ちゃんはいなくなってしまった。……待てよ?フィリアちゃんの死因は確か……。
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