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第一章
18話
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目まぐるしかった春が過ぎて夏がやって来た。お散歩のお供に大きな真っ白の日傘が加わったり、お兄様がお父様の補佐として王宮に通うようになったり、ラナとジェイくんがお友達らしい関係になったりという変化もあるなか、何よりも大きな変化は私の体調だったりする。そう、なんと簡単なことでは倒れなくなったのだ!(簡単なことというのは主に貧血とか過労とか過労とか……)まだ安定はしないけれど体力もだいぶついたし、真っ白だった肌の色も少しは人間味を帯びてきたと思う。そんな私は今日も今日とてお散歩へと繰り出した。
いつも通りお庭のお花を眺めながらゆっくりと歩いていると珍しくいつも忙しくしている老紳士の執事、シャーマンがこちらへ向かって歩いてきた。
「お嬢様、お散歩中申し訳ございません。お客様がいらしております」
「あら、どなたかしら?」
「第二王子殿下とそのご友人方でございます」
「……そう。分かったわ、すぐに向かいましょう」
私は油断していた。ルカルド様は「またね」とおっしゃったもののあれから一度も我が家を訪れることはなかったのだ。お兄様が王宮に通うようになるまでは、お兄様が「その時は私も必ず立ち会おう」と少し怖い顔でおっしゃってくださっていたのでいつでも大丈夫だと構えていたのだけれど、あまりにもいらっしゃらないものだからあれは冗談だったのだと流してしまっていた。そしてお兄様が王宮に通うようになってもまさかいらっしゃることはあるまいと安心しきっていたらここでまさかの唐突な来訪。うん、心臓に悪いわね。
「こんにちは、フィリア嬢」
「お久しぶりでございます、ルカルド様」
お待ちいただいていたサロンに向かうと私が視界に入った瞬間にルカルド様は素晴らしく爽やかな笑顔をこちらにくださった。こちらもできる限りの爽やかな笑顔を作って対応する。
「うん、今回はちゃんと『お久しぶり』だね」
「……ええ」
前回の失敗を掘り返されて精神的なダメージを負った私は一生懸命笑顔を保つことだけに神経を使った。こんなところで簡単に感情を漏らしてはいけない。
「あぁ、そうそう。今日は僕の友人達を連れてきたんだ」
そういえばシャーマンにもご友人方がご一緒とは聞いたわね……。そう思ってルカルド様の方を見るとその一歩下がったくらいの両隣に一人ずつ私と同世代に見える少年がいた。今まで気づかなかった私は相当視野が狭いらしい。きっとルカルド様への対応に完全に気を取られていたのだろう。……それにしてもこのお二人、どこかで見たことのあるお顔だわ。片方は天使のように可愛らしい顔立ちで、片方は少し大人びた顔立ちだ。
「こちらがレオン。それからこちらはカイ。それぞれクライン家とアルブラン家のご子息だよ」
「こんにちは……」
「は、はじめまして」
どちらも小さな声ではあるがちゃんと私の方を見て挨拶をしてくれた。それならば私もできる限りの礼を尽くさなくては。
「ようこそお越しくださいました。私はフィリア・ラインホルトと申します。どうぞよろしくお願いいたしします」
何度も練習し体に染み付いているカーテシーを何とかやり遂げた。ところがどこかおかしかったのかカイ様もレオン様も何もおっしゃらずに目を見開いたままだった。
ん?カイ様とレオン様?……ってどちらもラブリリの攻略対象のお名前と同じよね?そういえばよく見てみると……この世の煌めきを集めたかのように美しく輝く金髪と優しさを感じるオレンジ色の瞳、少し硬そうな赤茶色の髪とお日様のような温かい黄色の瞳……ビジュアルも全く一緒ね。あぁ、そう、そうなのね……。春に驚くことが多過ぎたのでもう大袈裟に驚こうとは思わない。ただ、二人同時に来た上にルカルド様のお友達というのはさすがに情報量が多すぎる気がする。
「あれ?三人ともどうしたの?カイとレオンはまだ分かるけどフィリア嬢まで……」
それからカイ様とレオン様も目を見開いたまま動かないし私も結局目を見開いてしまったまま動かなかったので少しの間沈黙の時間が続いた。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
余談①
フィリアさんが春の間に大袈裟に驚いた回数は
⑴前世を思い出して自分の立場が分かったとき
⑵ルーク様が突然訪問してきたとき
⑶自分の兄がラブリリのロナン先生だと分かったとき
⑷ルカルド様が突然訪問してきたとき
の四回です。(お兄様の行動に驚いたこともありますがそれは比較的小さめの驚きなので除外しました)
余談②
フィリアさんに関する情報を留学中のお兄様に流していたのは今回も登場した執事のシャーマンさんです。シャーマンさんは公爵家に仕えて四十五年の大ベテランで、フィリアさんのことは実の孫のように愛しく思っています(^^)
いつも通りお庭のお花を眺めながらゆっくりと歩いていると珍しくいつも忙しくしている老紳士の執事、シャーマンがこちらへ向かって歩いてきた。
「お嬢様、お散歩中申し訳ございません。お客様がいらしております」
「あら、どなたかしら?」
「第二王子殿下とそのご友人方でございます」
「……そう。分かったわ、すぐに向かいましょう」
私は油断していた。ルカルド様は「またね」とおっしゃったもののあれから一度も我が家を訪れることはなかったのだ。お兄様が王宮に通うようになるまでは、お兄様が「その時は私も必ず立ち会おう」と少し怖い顔でおっしゃってくださっていたのでいつでも大丈夫だと構えていたのだけれど、あまりにもいらっしゃらないものだからあれは冗談だったのだと流してしまっていた。そしてお兄様が王宮に通うようになってもまさかいらっしゃることはあるまいと安心しきっていたらここでまさかの唐突な来訪。うん、心臓に悪いわね。
「こんにちは、フィリア嬢」
「お久しぶりでございます、ルカルド様」
お待ちいただいていたサロンに向かうと私が視界に入った瞬間にルカルド様は素晴らしく爽やかな笑顔をこちらにくださった。こちらもできる限りの爽やかな笑顔を作って対応する。
「うん、今回はちゃんと『お久しぶり』だね」
「……ええ」
前回の失敗を掘り返されて精神的なダメージを負った私は一生懸命笑顔を保つことだけに神経を使った。こんなところで簡単に感情を漏らしてはいけない。
「あぁ、そうそう。今日は僕の友人達を連れてきたんだ」
そういえばシャーマンにもご友人方がご一緒とは聞いたわね……。そう思ってルカルド様の方を見るとその一歩下がったくらいの両隣に一人ずつ私と同世代に見える少年がいた。今まで気づかなかった私は相当視野が狭いらしい。きっとルカルド様への対応に完全に気を取られていたのだろう。……それにしてもこのお二人、どこかで見たことのあるお顔だわ。片方は天使のように可愛らしい顔立ちで、片方は少し大人びた顔立ちだ。
「こちらがレオン。それからこちらはカイ。それぞれクライン家とアルブラン家のご子息だよ」
「こんにちは……」
「は、はじめまして」
どちらも小さな声ではあるがちゃんと私の方を見て挨拶をしてくれた。それならば私もできる限りの礼を尽くさなくては。
「ようこそお越しくださいました。私はフィリア・ラインホルトと申します。どうぞよろしくお願いいたしします」
何度も練習し体に染み付いているカーテシーを何とかやり遂げた。ところがどこかおかしかったのかカイ様もレオン様も何もおっしゃらずに目を見開いたままだった。
ん?カイ様とレオン様?……ってどちらもラブリリの攻略対象のお名前と同じよね?そういえばよく見てみると……この世の煌めきを集めたかのように美しく輝く金髪と優しさを感じるオレンジ色の瞳、少し硬そうな赤茶色の髪とお日様のような温かい黄色の瞳……ビジュアルも全く一緒ね。あぁ、そう、そうなのね……。春に驚くことが多過ぎたのでもう大袈裟に驚こうとは思わない。ただ、二人同時に来た上にルカルド様のお友達というのはさすがに情報量が多すぎる気がする。
「あれ?三人ともどうしたの?カイとレオンはまだ分かるけどフィリア嬢まで……」
それからカイ様とレオン様も目を見開いたまま動かないし私も結局目を見開いてしまったまま動かなかったので少しの間沈黙の時間が続いた。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
余談①
フィリアさんが春の間に大袈裟に驚いた回数は
⑴前世を思い出して自分の立場が分かったとき
⑵ルーク様が突然訪問してきたとき
⑶自分の兄がラブリリのロナン先生だと分かったとき
⑷ルカルド様が突然訪問してきたとき
の四回です。(お兄様の行動に驚いたこともありますがそれは比較的小さめの驚きなので除外しました)
余談②
フィリアさんに関する情報を留学中のお兄様に流していたのは今回も登場した執事のシャーマンさんです。シャーマンさんは公爵家に仕えて四十五年の大ベテランで、フィリアさんのことは実の孫のように愛しく思っています(^^)
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