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第一章 眠り姫は子作りしたい
29 嫉妬
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温かく心地良い魔力に包まれる。
あの時の目覚めもそうだった。
とてつもない寒気に襲われて、このまま死ぬんだとすら思った。
でも温かい体温と魔力に包まれて、目覚めたことを知った。
そっと瞼を持ち上げる。
そこには頬をくすぐるアイスブルーのサラサラの髪の毛と、青い瞳を持つ整った顔立ち。
シャルロッテを起こしてくれた、訪れし者の一人。
「おはよう、リュクス。」
シャルロッテを横抱きにし、どうやら歩いていたらしいリュクスはその表情にちらりと驚きを覗かせた。
お昼寝中は身体を揺さぶりながら声を掛けることでようやく目覚めるので、まさか声を掛けられるとは思ってなかったのだ。
歩く振動が伝わり過ぎたのだろうか。
「もう花街に居なくて良いの?一か月も遠征に行ってたんだもの。落ち着くまで、もっと長くかかると思っていたわ。」
いつものように頭をすりすりと擦りつけて、その体温と匂いを堪能する。
目覚める度にやっているが飽きることは無い。
生きていると。一人じゃないと実感できる。
でもいつもと変わらないその行動は、リュクスを苛つかせた。
所詮リュクスはルークの代わりだ。
そう思うと、今までは懐いているだけだと思っていたその行動が、途端に憎らしく思えた。
「俺もグラスも。普段から自制できるようになれば戻ってきている。」
「そういえばテッサが、騎士団と合同クエストだって言ってたわね。人が多かったから、一人当たりの戦闘量が少なかったのね。」
約束の地へ来た時でさえ、リュクスは四日かそこらで戻ってきたのだ。
もしかしたら強き者であるがゆえに、そんじょそこらの魔物相手では反動が起きにくいのかもしれない。
魔物を倒せば反動が起きて子作りしたくなるのだと思っていたが、どうやら強度があるのだなと一人納得した。
自制できるという事は、反動はあるが花街を利用するほどではないという事だろう。
でも子作りをしたいと思う気持ちの強度とは、一体どういうものなのだろうか。
それが分かれば、リュクス達が反動でどうしても我慢できない時を見極めて、子作りしてもらえるだろうか。
昨日は心が折れて泣いてしまったが、夢を見て思い出した。
忘れていた訳では無いのだが、子作りを急がなくてはと焦る必要は無かったことに気付いた。
まだ最終手段は残っているのだから、どうしてもだめだったらセイラムとミルラムに。ルークと神官長に相談すればいい。
彼らならきっといい助言をくれるに違いない。
どさりと。寝台の上に落とされた。
今までそんな乱暴なことをされたことが無く。
ふかふかの寝台なため全く痛みは無いのだが、シャルロッテは意識を思考から現実に戻す。
「どうしたの?添い寝は嬉しいけれど、まだ早いわ。夕食をいただいてからでないと、ビオラに怒られちゃうもの。」
ギシリと寝台が音を立て、リュクスが寝台に上がったのが分かった。
そのまま覆いかぶさるようにリュクスが顔の横に両手をついたのを見て、添い寝にしてはおかしいなと思いつつも、まだそんな時間じゃないと断りを入れた。
そのままリュクスは動かない。
何か悪いことをして叱られてしまうのだろうかと思ったが、リュクスの眉間はいつも通りだ。
怒ったり嫌なことがあると、あそこにぎゅっと皺が寄るのである。
その露骨な変化は、さすがのシャルロッテでも分かるようになったのだ。
ゆっくりとリュクスの身体と顔が近づいてきて、やっぱり添い寝をするつもりだったんだなと思った。
でも抱きしめられるのではなく、片手はシャルロッテの顎に添えられて、唇に柔らかいものが触れる。
ぬるりと舌が入り込んできて、受け入れたシャルロッテは首を傾げた。
唇が重ねられた時。てっきり神官長がリュクスに水を飲ませるよう頼んだと思っていた。
リュクスの魔力が籠った水はとても美味しい上に、持病にも効果があるのだ。
「……ま……って、水っ……は?」
当然口移しではないので、シャルロッテは舌を絡め返さなかった。
舌を絡め吸われるのは口移しだ。
でもその反応は、リュクスをイラつかせただけだった。
やはりディープキスのことを口移しだと思っている。
だったら昨日は何故。
知らないふりなのか。相手がルークではないから唇を重ねることに意味を見出してないのか。
それともお前相手では意味がない行為だと突き付けてきているのか。
「じゃあ昨日は、ルークに水を飲ませてもらったのか?違うんだろう?」
「昨日?そもそもルークに、お水を飲ませてもらったことは無いわよ。だって、リュクスのお水が美味しいんだもの。」
一体なぜそんな質問をされるのか分からないまま、それでもシャルロッテは事実を述べた。
リュクスが聞いてくるという事は、何か必要な事なのだろうと思ったのだ。
「口移しなら、ルークに言い訳が出来るって訳か。」
「言い訳?ねぇ、リュクス。なんのことだかっ、んん!」
リュクスが何を言いたいのか分からず問おうと思った唇は、再びリュクスの唇によって塞がれた。
顎に添えられた手の平が濡れているので、先程リュクスが口を覆った時に水を含んだのだろう。
今度は熱い舌と共に、冷たい魔力の籠った水も流れてくる。
それは口移しなので、シャルロッテも舌を絡め返した。
そのことが余計にリュクスをイラつかせたことにも気付かない。
風邪を引いた時にじっくりと仕込まれた口移しは、互いの唾液が混じり合い、息を乱し、淫らな水音を響かせる。
酸素が薄くなり、思考に霞がかかる。
身体が熱を持ち、じっとりと汗をかく。
そんな変化でさえも口移しの副産物だと思っているシャルロッテは、与えられるがままに水を飲み、舌を絡め返した。
ぎらぎらと劣情の炎を宿した青い瞳は、その快楽に浸り甘い声を溢すシャルロッテを見て、さらにどす黒い感情を瞳に宿す。
所詮ルークの身代わりだったのだとしても、仕込んでシャルロッテの女を開花させたのは俺だ。
あいつの手が届かない内にもっと淫らに仕込めば、あいつは悔しがるだろうか。
惚れた女を俺達に託そうとしたことを後悔するだろうか。
そんな歪んだ劣情を、下半身に集まる熱と共にシャルロッテに擦り付ける。
もう既に水が無くなってしばらく経つのに唇が離れることは無く、されるがままに無自覚の情欲に溺れるシャルロッテは。
その熱く押し付けられているものが、子作りに必要な硬くなった棒だという事には気付かなかった。
女性の股にある穴に入れるものなので、それなりに長さのある棒が飛び出ていると子作りが出来ると思っているのだ。その見た目は全く理解していなかった。
脱いでいなければ、シャルロッテにはそれが子作りに必要な棒だと分からず。
脱いでいたとしても、腹につくほど硬さを保ち天を向くそれを、シャルロッテがそうだと認識できるかは怪しかった。
それでも女としての本能が。
快楽で身体が溶けてしまいそうになることへの不安が。
熱を押し付けるリュクスの腰に白くて細い両脚を絡めさせた。
リュクスの首に腕を回し、さらにキスをねだるようにしがみつかせた。
「っ、はふ……っ、ん……あ、あぁっ!?」
ぐりっと、滾る熱が刺激を受けたことのない花芽を押し潰した。
キスで火照り、その熱を持て余していた身体は、その強すぎるまでの刺激であっという間に絶頂を迎える。
「っ、は……どうした。これは口移しなんだろ?」
今すぐにでも熱い杭を穿ちたい。
そんな衝動を抑え込みながらリュクスは吐き捨てた。
これだけ乱れ、甘い声で鳴き、男を受け入れるかのようにその肢体を絡ませた。
これでもまだ、そう言い張るつもりかと言ったのだ。
「んぅ……そう、なのに。っふ、身体、変なの……。なん、でぇ……わかんなっ、こわい……。あふ、んんぅ。」
真っ赤な瞳からぼろぼろと涙が溢れ出てくる。
でもそんな言葉とは裏腹に。
シャルロッテの腰は艶めかしく揺れ、更なる快楽を得ようとその秘部を押し付けてくる。
「分からないだと?自分がナニをしているのか。」
自分から腰を振り、絶頂を迎えてもなお男を誘っておいて何を言っているのかと、リュクスの声は冷たく言葉を返す。
「わかっ、なっ、あぁん。……らめぇ、へんなのっ。あっ、はぁんっ。にゃんでぇ、うごかっ、なぃれぇ……。へんっ、こわいっ。りゅくす、りゅくすっ、たすけてぇっ。」
揺れる腰は貪欲に覚えたばかりの快楽を貪ろうとしていた。
しかしその感覚はシャルロッテの知らないものであり、未知のものへの恐怖が。手綱の離れた身体の動きが。幼いままの情緒が。
快楽に溺れる女の本能に恐怖を抱いた。
自分が自分ではなくなっていく。
そんな恐怖が、大粒の涙を溢れさせた。
煮えたぎるような嫉妬と、反動の余韻に突き動かされ。
安易に手を出し、シャルロッテの女を開花させようとしたリュクスは。混乱して泣きじゃくるシャルロッテを見て、流石に冷静さを取り戻す。
どれだけ身体が大人で、どれだけ快楽を拾って女の表情を見せても。
シャルロッテの心はまだ子供のまま。
その情緒は。特に性欲に関する情緒は育ち切っていないと分っていたはずだ。
時折見せる大人の彼女の姿が。
昨日見たあの理知的な姿が。
あの姿の情緒であれば、きっと問題なかった。問題ないだろうと思っていた。
目の前の大人の身体を持つ少女は。
どこまでも無垢で、どこまでも歪な存在だった。
「……悪かった。泣くな。まだシャルには早いのに、俺が急ぎ過ぎただけだ。」
「なに、を?わかんないっ。こわいの、へんなのっ。りゅくすぅ。」
ぎゅっと体重をかけるようにして抱きしめるが、身体の下で細い腰は動きを止めなかった。
それでも少し安心したのだろう。
シャルロッテから抱きしめられる力も強くなる。
「もっと、もっとギュッてしてっ。ふわふわで、へんなの。」
「あぁ、俺のせいだからな。だが……ソレは変になったわけじゃない。今は分からなくても、いつか分かる日がくる。」
「へん、じゃ……ないの?っん、だって、かってに。おかしいのっ。」
「おかしくなんかない。ただ、シャルにはまだ早かっただけだ。……そのままじゃ辛いだろ。もう一度イかせてやる。」
「いかせ……?ひゃうん!?やらやらぁ!それ、やぁん。びりびりしてっ、ふわふわするのっ。おなかが、ギュッて。あ、あんっ。なに?これ、なんなのっ。」
身体の間に滑り込ませた指で、じっとりと湿った布越しに秘部を擦り上げる。
それだけでシャルロッテはびくりと身体を強張らせ、その快感に恐怖する。
その中に小さくも硬く主張する花芽を見つけ、相変わらずがっつりスリットの入っていたスカートの隙間から手を滑り込ませる。
じゅくじゅくで手触りの良い布地ごと優しく花芽を扱き、ゆっくりと、だが着実にシャルロッテを絶頂へと追いつめた。
「それは気持ち良いというんだ。拒絶せずに、その感覚を受け入れろ。大丈夫だ。おかしいことは一つもない。それは身体の正しい反応だ。俺に委ねろ。そうすれば、気持ち良くなっておしまいだ。何度かイってしまえば、シャルが変だという状態も落ち着く。」
「ぅんっ、ほん、とに……?」
「あぁ、だから怖がらなくて良い。」
「あふっ、んっ、でも……っん。びりびり、するのっ。」
身体はもっとと求めるようにその腰を揺らし指に秘部を押し付けているのに、シャルロッテ自身は刺激が強すぎると感じているようだった。
その甘い声を漏らす唇に口付けし、舌を滑り込ませる。
そこまでして、しまったと思った。
水を含むのを忘れていたのだ。
だがシャルロッテはそれどころではないのだろう。
リュクスの舌を受け入れ、積極的に舌を絡め返してくる。
それはゾクゾクするような劣情に再び火を点けるが、リュクスは無視した。
まだシャルロッテには早い。
欲望のままに。
独占欲のままにシャルロッテを抱いてしまえば。
またこうやって泣かせてしまうだろう。
もしかしたら心と身体のバランスが取れず、心が壊れてしまうかもしれない。
それだけは絶対にダメだ。
そう。
これはリュクスの独占欲が原因だ。
シャルロッテの相手は自分だけでいい。
他の男を相手にするところなんて、見たくも聞きたくもない。
どうすれば。
俺のことだけを見て貰える。
どうすれば。
ルークを忘れさせられる。
どうすれば。
俺だけを求めてくれる。
自覚した恋心は物語に出てくるような甘い物ではなく、激しい独占欲を伴ったものだった。
コンラッドに執着するローレンの気持ちが、少しだけ分かった気がする。
今日だって怒りに任せてエリスを抱いてきたが、一度欲を吐き出してしまうとそれ以上抱く気にはなれず。
シャルロッテの姿を見に帰ってきたと言っても過言ではない。
まぁ様子がおかしいからと話を聞いてくれたそのエリスに指摘されなければ、昨日の怒りが何によるものか気付けなかった可能性は高いが。
じっくりと時間をかけ、その身に快楽を与え。深い絶頂を迎えたシャルロッテは腕の中で意識を手放した。
その身体を見ながら一人で抜いて。覚えたての『クリーン』を小声で使って綺麗にしてやる。
急いではいけない。
大切に扱わなくてはいけない。
傷つけないように、ゆっくりとでいい。
いつか理解してくれれば。
そしてこの手を取ってくれれば。
そんな淡い願望を抱いたまま、シャルロッテを抱きしめて眠りについた。
あの時の目覚めもそうだった。
とてつもない寒気に襲われて、このまま死ぬんだとすら思った。
でも温かい体温と魔力に包まれて、目覚めたことを知った。
そっと瞼を持ち上げる。
そこには頬をくすぐるアイスブルーのサラサラの髪の毛と、青い瞳を持つ整った顔立ち。
シャルロッテを起こしてくれた、訪れし者の一人。
「おはよう、リュクス。」
シャルロッテを横抱きにし、どうやら歩いていたらしいリュクスはその表情にちらりと驚きを覗かせた。
お昼寝中は身体を揺さぶりながら声を掛けることでようやく目覚めるので、まさか声を掛けられるとは思ってなかったのだ。
歩く振動が伝わり過ぎたのだろうか。
「もう花街に居なくて良いの?一か月も遠征に行ってたんだもの。落ち着くまで、もっと長くかかると思っていたわ。」
いつものように頭をすりすりと擦りつけて、その体温と匂いを堪能する。
目覚める度にやっているが飽きることは無い。
生きていると。一人じゃないと実感できる。
でもいつもと変わらないその行動は、リュクスを苛つかせた。
所詮リュクスはルークの代わりだ。
そう思うと、今までは懐いているだけだと思っていたその行動が、途端に憎らしく思えた。
「俺もグラスも。普段から自制できるようになれば戻ってきている。」
「そういえばテッサが、騎士団と合同クエストだって言ってたわね。人が多かったから、一人当たりの戦闘量が少なかったのね。」
約束の地へ来た時でさえ、リュクスは四日かそこらで戻ってきたのだ。
もしかしたら強き者であるがゆえに、そんじょそこらの魔物相手では反動が起きにくいのかもしれない。
魔物を倒せば反動が起きて子作りしたくなるのだと思っていたが、どうやら強度があるのだなと一人納得した。
自制できるという事は、反動はあるが花街を利用するほどではないという事だろう。
でも子作りをしたいと思う気持ちの強度とは、一体どういうものなのだろうか。
それが分かれば、リュクス達が反動でどうしても我慢できない時を見極めて、子作りしてもらえるだろうか。
昨日は心が折れて泣いてしまったが、夢を見て思い出した。
忘れていた訳では無いのだが、子作りを急がなくてはと焦る必要は無かったことに気付いた。
まだ最終手段は残っているのだから、どうしてもだめだったらセイラムとミルラムに。ルークと神官長に相談すればいい。
彼らならきっといい助言をくれるに違いない。
どさりと。寝台の上に落とされた。
今までそんな乱暴なことをされたことが無く。
ふかふかの寝台なため全く痛みは無いのだが、シャルロッテは意識を思考から現実に戻す。
「どうしたの?添い寝は嬉しいけれど、まだ早いわ。夕食をいただいてからでないと、ビオラに怒られちゃうもの。」
ギシリと寝台が音を立て、リュクスが寝台に上がったのが分かった。
そのまま覆いかぶさるようにリュクスが顔の横に両手をついたのを見て、添い寝にしてはおかしいなと思いつつも、まだそんな時間じゃないと断りを入れた。
そのままリュクスは動かない。
何か悪いことをして叱られてしまうのだろうかと思ったが、リュクスの眉間はいつも通りだ。
怒ったり嫌なことがあると、あそこにぎゅっと皺が寄るのである。
その露骨な変化は、さすがのシャルロッテでも分かるようになったのだ。
ゆっくりとリュクスの身体と顔が近づいてきて、やっぱり添い寝をするつもりだったんだなと思った。
でも抱きしめられるのではなく、片手はシャルロッテの顎に添えられて、唇に柔らかいものが触れる。
ぬるりと舌が入り込んできて、受け入れたシャルロッテは首を傾げた。
唇が重ねられた時。てっきり神官長がリュクスに水を飲ませるよう頼んだと思っていた。
リュクスの魔力が籠った水はとても美味しい上に、持病にも効果があるのだ。
「……ま……って、水っ……は?」
当然口移しではないので、シャルロッテは舌を絡め返さなかった。
舌を絡め吸われるのは口移しだ。
でもその反応は、リュクスをイラつかせただけだった。
やはりディープキスのことを口移しだと思っている。
だったら昨日は何故。
知らないふりなのか。相手がルークではないから唇を重ねることに意味を見出してないのか。
それともお前相手では意味がない行為だと突き付けてきているのか。
「じゃあ昨日は、ルークに水を飲ませてもらったのか?違うんだろう?」
「昨日?そもそもルークに、お水を飲ませてもらったことは無いわよ。だって、リュクスのお水が美味しいんだもの。」
一体なぜそんな質問をされるのか分からないまま、それでもシャルロッテは事実を述べた。
リュクスが聞いてくるという事は、何か必要な事なのだろうと思ったのだ。
「口移しなら、ルークに言い訳が出来るって訳か。」
「言い訳?ねぇ、リュクス。なんのことだかっ、んん!」
リュクスが何を言いたいのか分からず問おうと思った唇は、再びリュクスの唇によって塞がれた。
顎に添えられた手の平が濡れているので、先程リュクスが口を覆った時に水を含んだのだろう。
今度は熱い舌と共に、冷たい魔力の籠った水も流れてくる。
それは口移しなので、シャルロッテも舌を絡め返した。
そのことが余計にリュクスをイラつかせたことにも気付かない。
風邪を引いた時にじっくりと仕込まれた口移しは、互いの唾液が混じり合い、息を乱し、淫らな水音を響かせる。
酸素が薄くなり、思考に霞がかかる。
身体が熱を持ち、じっとりと汗をかく。
そんな変化でさえも口移しの副産物だと思っているシャルロッテは、与えられるがままに水を飲み、舌を絡め返した。
ぎらぎらと劣情の炎を宿した青い瞳は、その快楽に浸り甘い声を溢すシャルロッテを見て、さらにどす黒い感情を瞳に宿す。
所詮ルークの身代わりだったのだとしても、仕込んでシャルロッテの女を開花させたのは俺だ。
あいつの手が届かない内にもっと淫らに仕込めば、あいつは悔しがるだろうか。
惚れた女を俺達に託そうとしたことを後悔するだろうか。
そんな歪んだ劣情を、下半身に集まる熱と共にシャルロッテに擦り付ける。
もう既に水が無くなってしばらく経つのに唇が離れることは無く、されるがままに無自覚の情欲に溺れるシャルロッテは。
その熱く押し付けられているものが、子作りに必要な硬くなった棒だという事には気付かなかった。
女性の股にある穴に入れるものなので、それなりに長さのある棒が飛び出ていると子作りが出来ると思っているのだ。その見た目は全く理解していなかった。
脱いでいなければ、シャルロッテにはそれが子作りに必要な棒だと分からず。
脱いでいたとしても、腹につくほど硬さを保ち天を向くそれを、シャルロッテがそうだと認識できるかは怪しかった。
それでも女としての本能が。
快楽で身体が溶けてしまいそうになることへの不安が。
熱を押し付けるリュクスの腰に白くて細い両脚を絡めさせた。
リュクスの首に腕を回し、さらにキスをねだるようにしがみつかせた。
「っ、はふ……っ、ん……あ、あぁっ!?」
ぐりっと、滾る熱が刺激を受けたことのない花芽を押し潰した。
キスで火照り、その熱を持て余していた身体は、その強すぎるまでの刺激であっという間に絶頂を迎える。
「っ、は……どうした。これは口移しなんだろ?」
今すぐにでも熱い杭を穿ちたい。
そんな衝動を抑え込みながらリュクスは吐き捨てた。
これだけ乱れ、甘い声で鳴き、男を受け入れるかのようにその肢体を絡ませた。
これでもまだ、そう言い張るつもりかと言ったのだ。
「んぅ……そう、なのに。っふ、身体、変なの……。なん、でぇ……わかんなっ、こわい……。あふ、んんぅ。」
真っ赤な瞳からぼろぼろと涙が溢れ出てくる。
でもそんな言葉とは裏腹に。
シャルロッテの腰は艶めかしく揺れ、更なる快楽を得ようとその秘部を押し付けてくる。
「分からないだと?自分がナニをしているのか。」
自分から腰を振り、絶頂を迎えてもなお男を誘っておいて何を言っているのかと、リュクスの声は冷たく言葉を返す。
「わかっ、なっ、あぁん。……らめぇ、へんなのっ。あっ、はぁんっ。にゃんでぇ、うごかっ、なぃれぇ……。へんっ、こわいっ。りゅくす、りゅくすっ、たすけてぇっ。」
揺れる腰は貪欲に覚えたばかりの快楽を貪ろうとしていた。
しかしその感覚はシャルロッテの知らないものであり、未知のものへの恐怖が。手綱の離れた身体の動きが。幼いままの情緒が。
快楽に溺れる女の本能に恐怖を抱いた。
自分が自分ではなくなっていく。
そんな恐怖が、大粒の涙を溢れさせた。
煮えたぎるような嫉妬と、反動の余韻に突き動かされ。
安易に手を出し、シャルロッテの女を開花させようとしたリュクスは。混乱して泣きじゃくるシャルロッテを見て、流石に冷静さを取り戻す。
どれだけ身体が大人で、どれだけ快楽を拾って女の表情を見せても。
シャルロッテの心はまだ子供のまま。
その情緒は。特に性欲に関する情緒は育ち切っていないと分っていたはずだ。
時折見せる大人の彼女の姿が。
昨日見たあの理知的な姿が。
あの姿の情緒であれば、きっと問題なかった。問題ないだろうと思っていた。
目の前の大人の身体を持つ少女は。
どこまでも無垢で、どこまでも歪な存在だった。
「……悪かった。泣くな。まだシャルには早いのに、俺が急ぎ過ぎただけだ。」
「なに、を?わかんないっ。こわいの、へんなのっ。りゅくすぅ。」
ぎゅっと体重をかけるようにして抱きしめるが、身体の下で細い腰は動きを止めなかった。
それでも少し安心したのだろう。
シャルロッテから抱きしめられる力も強くなる。
「もっと、もっとギュッてしてっ。ふわふわで、へんなの。」
「あぁ、俺のせいだからな。だが……ソレは変になったわけじゃない。今は分からなくても、いつか分かる日がくる。」
「へん、じゃ……ないの?っん、だって、かってに。おかしいのっ。」
「おかしくなんかない。ただ、シャルにはまだ早かっただけだ。……そのままじゃ辛いだろ。もう一度イかせてやる。」
「いかせ……?ひゃうん!?やらやらぁ!それ、やぁん。びりびりしてっ、ふわふわするのっ。おなかが、ギュッて。あ、あんっ。なに?これ、なんなのっ。」
身体の間に滑り込ませた指で、じっとりと湿った布越しに秘部を擦り上げる。
それだけでシャルロッテはびくりと身体を強張らせ、その快感に恐怖する。
その中に小さくも硬く主張する花芽を見つけ、相変わらずがっつりスリットの入っていたスカートの隙間から手を滑り込ませる。
じゅくじゅくで手触りの良い布地ごと優しく花芽を扱き、ゆっくりと、だが着実にシャルロッテを絶頂へと追いつめた。
「それは気持ち良いというんだ。拒絶せずに、その感覚を受け入れろ。大丈夫だ。おかしいことは一つもない。それは身体の正しい反応だ。俺に委ねろ。そうすれば、気持ち良くなっておしまいだ。何度かイってしまえば、シャルが変だという状態も落ち着く。」
「ぅんっ、ほん、とに……?」
「あぁ、だから怖がらなくて良い。」
「あふっ、んっ、でも……っん。びりびり、するのっ。」
身体はもっとと求めるようにその腰を揺らし指に秘部を押し付けているのに、シャルロッテ自身は刺激が強すぎると感じているようだった。
その甘い声を漏らす唇に口付けし、舌を滑り込ませる。
そこまでして、しまったと思った。
水を含むのを忘れていたのだ。
だがシャルロッテはそれどころではないのだろう。
リュクスの舌を受け入れ、積極的に舌を絡め返してくる。
それはゾクゾクするような劣情に再び火を点けるが、リュクスは無視した。
まだシャルロッテには早い。
欲望のままに。
独占欲のままにシャルロッテを抱いてしまえば。
またこうやって泣かせてしまうだろう。
もしかしたら心と身体のバランスが取れず、心が壊れてしまうかもしれない。
それだけは絶対にダメだ。
そう。
これはリュクスの独占欲が原因だ。
シャルロッテの相手は自分だけでいい。
他の男を相手にするところなんて、見たくも聞きたくもない。
どうすれば。
俺のことだけを見て貰える。
どうすれば。
ルークを忘れさせられる。
どうすれば。
俺だけを求めてくれる。
自覚した恋心は物語に出てくるような甘い物ではなく、激しい独占欲を伴ったものだった。
コンラッドに執着するローレンの気持ちが、少しだけ分かった気がする。
今日だって怒りに任せてエリスを抱いてきたが、一度欲を吐き出してしまうとそれ以上抱く気にはなれず。
シャルロッテの姿を見に帰ってきたと言っても過言ではない。
まぁ様子がおかしいからと話を聞いてくれたそのエリスに指摘されなければ、昨日の怒りが何によるものか気付けなかった可能性は高いが。
じっくりと時間をかけ、その身に快楽を与え。深い絶頂を迎えたシャルロッテは腕の中で意識を手放した。
その身体を見ながら一人で抜いて。覚えたての『クリーン』を小声で使って綺麗にしてやる。
急いではいけない。
大切に扱わなくてはいけない。
傷つけないように、ゆっくりとでいい。
いつか理解してくれれば。
そしてこの手を取ってくれれば。
そんな淡い願望を抱いたまま、シャルロッテを抱きしめて眠りについた。
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