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第三章 王立学院中等部二年生
154 中等部二年の野外実習日①
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Side:アシェル13歳 夏
アシェルは最上級生の野外実習の日から毎週、救助班として二の森に訪れていた。
週をまたぐほどに救難信号は一つずつ増えていった。
魔物の数や強さもだが、これには実習生の練度も関係しているのだろう。
今日はアシェル達の実習日で、7月の初週に見慣れたキャンプ地へと足を運ぶ。
皆出発地点は一緒で、キャンプ地で集合と解散だ。
そのため幼馴染達とイザベルと集まって、のんびりと歩いて門を出て、早めにキャンプ地へとやってきた。
馬車で門までやこの近くまでくる生徒もいるが、大所帯なら話しながら歩けばあっという間だった。
「良い?救難信号が出ても、ノアとトワは無理しなくて良いからね。ヴェイン君がテイル領出身、フランソワ嬢がシルコット領出身で、二人とも森に慣れてるから。距離とか状況で、二人にも意見を求めて行けそうだったら、で良いからね。」
救助班で一番森慣れしていないのがアスノームの双子だ。
エトワールは武術枠で、いつもの長槍ではなく短槍だ。
長槍だと森の中では取り回しが難しいからだろう。
ノアールは魔術枠なので、スタッフと呼ばれる両手杖だ。
端に石突が付いているので、咄嗟の時には槍のようにして武器にすることも考慮されていそうだ。
「うん、一応僕らは救助班だけど、あまり役には立てないだろうから。」
「方向感覚とかも狂いやすいもんな。歩きにくいし、槍は使いにくいし。」
「森は……みたいな言い方してるけど、海だって大概よ?むしろ海の方が同じ景色ばっかりで、方向感覚が狂いそうな気がするわ。」
「海は常に空が見えるからな。時間見て、昼間は太陽の位置で、夜は月の位置で方角なんて分かるからさ。あ、夜の月は日によって出方が変わるから、覚えてないのに参考にしようとするなよ。余計に迷う原因になるからな。」
リリアーデの突っ込みに、エトワールが海での方角の知り方を教えてくれる。
エトワールは将来漁師(という名の魔物討伐で食料を確保する職業)になる予定だというので、勉強は苦手でも航海に必要なことは覚えているのだろう。
「そもそも海に行かないわよ。海水浴できるわけでもないんでしょう?」
「リリィの言ってるカイスイヨクが分からないけど、多分海に入るとか、海水で何かするんだよね?港はあるけど、海水に直接触れることってないよ。浜辺でも気を付けてないと、小型の魔物が流れ着いたりするしね。」
「やっぱりないのね。それに、想像以上に危険みたいだわ。……っていうことは、こっちの人って泳げる人居ないの?川とかに落ちたらどうするのかしら?」
ノアールの答えに納得しかけたリリアーデだが、新たな疑問が浮かんだようだ。
そう言われると、確かに気になる。
「そういえば……海や川で泳いだり、プールの授業がないんじゃ誰も泳げないよね……。川とかに落ちたら大変だねって思ったけど、鎧付けたまま落ちたら、泳げる人でも危ないから一緒か。」
「それもそうね。ローブだって水を吸うし、鎧だって重たいものね。そうなると別に訓練が必要だから、泳げてもあんまり意味がないかもしれないわね。大きな川があるようなところって、何故か魔素溜まりが近いから、水着で来るわけにもいかないものね。」
「そもそも水着ってこっちの人の感覚では、はしたない格好になっちゃうんじゃないかな?それに水着の生地ってちょっと特殊な感じだったよね。こっちでは見たことない生地だし、どういう生地なのか僕も知らないんだよね。」
「うーん……確かに、デュークにすっごく怒られそうだわ。まぁ、こっちの夏って日本みたいに蒸し暑くないから、そこまで泳ぎたいって思わないのだけれどね。四季はあるけれど、夏にジメジメするのは本当に嫌いだわ。」
湿度の高い蒸し暑さを思い出したのか、リリアーデの表情がげんなりとする。
アシェルにもその気持ちはよく分かる。
「確かにカラッとしてるから、それなりに気温が高くても、汗をかく程度で済むよね。湿度が高いと汗をかいても揮発しないから、身体に熱が籠ったままになっちゃってたよね。汗をかく意味がないし、水分やミネラルが体外に出て行くだけになるよね。」
「アシェ、待ってちょうだい。わたくしは元看護師だったから、言いたい意味は分かるけど。普通は汗をかく意味とか、どうやって体温を下げるとか、そこまで考えないからね??」
「そうなんだ。次からは言っちゃわないように気を付けるね。伝わらないこと言っても意味ないし。」
「そうね。それが良いと思うわ。」
アシェルとリリアーデ双方が納得したところで、意味の分からない会話を聞いていたデュークが口を挟んでくる。
「ねぇ、リリィ。僕達には、全く意味の分からない会話をしてるって気付いてる?」
「あら。アシェと話してたし、アシェには伝わってるから良いでしょう?」
「僕にも分かるように説明して。」
「嫌よ。面倒くさいもの。」
「リリィはめんどくさがりすぎるんだよ。分からない話をされるのは、嫌だって言ってるだろ。」
「だって面倒なものは面倒なんだもの。百合にとって当たり前の概念でも、こっちで分かるように説明するのは難しいのよ。気になるんだったら“授け子”の文献で、海水浴、プール、水着で調べてみるといいわ。水着のイメージ画像みたいなのがあるんだったら、デュークは観ない方が良いわよ?まぁ見ても良いんだけど、人前で大勢の人が同じような恰好をする、とだけ言っておくわね。」
「すっごく嫌な予感だけするよ。」
リリアーデが言う通り、貴族の感性の——いや、こちらの男性にはイラストの水着だったとしても、少しばかり刺激が強すぎるだろう。
きっと下着と混同されそうな気がする。
「アシェル様、皆様、おはようございます。イザベル様、今日はよろしくお願いしますね。」
元気なシオンの声が聞こえ、ぺこりと頭を下げられる。
「おはよう、シオン君。ベルのことよろしくね。」
シオンは武術枠の男子と、魔術枠のイザベルと、クラスのラビちゃんこと兎獣人とハーフのリュエンが一緒のパーティーだ。
イザークは既にパーティーで集まっているようで、執事喫茶で執事をしていたイシズもそこにいる。
テストでは常に学年一位のカナリアも、魔術枠でキャンプ地に来ている。
基本的に顔見知りの彼らは、高位貴族だったり成績が良かったりで、救助班以外に組み込まれている。
救助班はある程度戦えることと、最悪川沿いに一緒のメンバーを避難させることを考慮しているので、今回の選抜メンバーの中では下から数えたほうが早い人と組んでいる。
4組の中でノアールとエトワールの相手だけが、実地訓練の経験者だ。
「僕の方がお世話になるほうかもしれませんよ。だってイザベル様の魔法は、メイディー公爵家仕込みでしょう?伯爵家で今回の実習に来れたのは、魔術枠でイザベル様とリュエン君とイシズ君の三人だけですからね。残りの二人はアシェル様たちが武術枠だったからで、イザベル様は三人の中では突出してますから。頼りにしてますね、イザベル様。」
このパーティーメンバーを決めたのは生徒会なので、シオンは順位表を見ている。
確かにシオンの言う通り、もしアシェルとアークエイドが魔術枠だったら、リュエンとイシズは今回の遠征には来れなかっただろう。
「あまり期待しないで下さいませ。わたくしはアシェル様達ほど上手く魔法を扱えませんので。」
「逆にアシェル様達みたいに、物凄く上手に魔法を使えたらビックリですよ。イザベル様の探査魔法は敵の数は分かりますか?」
「こまかな種類までは確定できませんけれど、方角と数、大まかな予想種族、エンカウントまでの予想時間は分かりますわ。」
イザベルには遠くで引っかかった相手を魔力で包み込むのは難しかったようで、一直線に伸ばした魔力を、対象の近くでまた波状に広げて感知している。
少し変わっているのかもしれないが、魔力で包めなかったイザベルなりの、魔力消費量と無駄を省くための策のようだ。
「それだけ分かれば十分すぎるくらいです。後衛を守るのは、前衛の僕らの役目ですから。」
相変わらず可愛らしい笑顔だが、シオンの剣術は割と強いほうだ。
恐らく、少し硬くなっている二の森の魔物相手なら、魔物の動きに慣れさえすれば倒すことは問題ないだろう。
特にスピードで翻弄して攻撃を加えていくスタイルのシオンは、大振りなフォレストベアと相性が良さそうだ。
「アシェル様。わたくしはこのままシオン様と一緒に、パーティーメンバーを待ちます。打ち合わせも必要でしょうから。」
「そうだね。ベルも魔の森は初めてなんだから、気を付けてね。毒持ちは居ないから、ヒールポーションとマナポーションがあれば事足りるとは思うけど。もしあまりにも多勢に無勢とか、重傷者が出るようなら魔道具を使うんだよ。」
「アシェル様のお薬は効果抜群ですから、きっと大丈夫ですわ。アシェル様もお気を付けくださいね。」
「うん。じゃあまた明日ね。」
「イザベル様にご迷惑をおかけしないように、僕も頑張りますね。では、また明日。」
ペコリと頭を下げたシオンとイザベルを見送る。
それぞれ到着し始めたクラスメイト達を捕まえて、最終の打ち合わせだ。
アシェルと無言のままだったアークエイドと二人だけになる。
「俺達のメンバーは、まだ来てないようだ。」
「ふふ、のんびりさんなのか、門から出るのに手間取ってるんじゃないかな。森歩きに慣れてないから、体力を温存するためにも近くまで馬車で来るって言ってたから。」
「なるほどな。」
馬車を使うのは単純に歩きたくない場合もあるが、今回のような実習の場合、体力温存の意味もある。
アシェルとアークエイドのパートナーは、イルマ・マートルというアスノーム地方の侯爵家出身と、ディアナ・ファーレンというフレイム地方の侯爵家出身だ。
二人とも森には慣れていないので、アシェル達のパーティーメンバーとなった。
「三の森程の差はなかったんだけど、それでも二の森もちょっぴり敵が硬くなってるから気を付けてね。いつも通りの力加減だと殺り損ねちゃうかも。今日は僕の強化魔法もないしね。あとひと群れあたりの個体数は、確実に増えてるから。大丈夫だとは思うけど、もしもの時は僕が後衛二人にバフかけて逃げる方向指示するから……その間だけ持ちこたえてね。」
「分かってる。しかし、先週で半数は脱落だろう?教師たちは、よく今日決行する気になったな。」
「一学年上より、僕らの世代には戦い慣れてる生徒が多いからじゃない?ギルドからも、可能なら実習はやってくれって頼まれてるみたいだし。」
「スタンピード対策か。」
「うん。それを懸念してるみたい。」
「アシェルさん、アークさん、おはようございます。」
のんびりアークエイドと打ち合わせをしていると、毎週聞きなれた挨拶が耳に入ってくる。
「おはよう、トーマ。……今日はトーマ一人?」
いつもならガルド達四人も一緒なのに、今日はトーマ一人だ。
「はい。この後ビースノートに向かうので、皆は最終チェック中です。僕の脚が一番早いので、伝言役を請け負ってきました。」
「久しぶりだな、トーマ。その感じだと、斥候として活躍できているんだな。」
アークエイドはトーマの恰好を見て、しっかりと役割を把握したようだ。
「はい。それもこれも、色々教えて頂いたお陰です。二の森は変わりなしです。といっても、最近は個体数が多いのと、前より少し強いのが普通になっちゃってるんですけどね。一応緊急クエストの可能性もあるし、僕ら【朱の渡り鳥】もランクアップだけしたら、早めに王都に帰ってくる予定です。ギルドからも、行っても良いけどなるべく早く帰ってきてくれって言われちゃいました。」
それでも【朱の渡り鳥】に許可が出たということは、すぐにでもスタンピードが起こるかもしれない兆候はないということだ。
「そっか。長旅になるし、ビースノートは寒いらしいから気を付けてね。素材は出来たらで良いから。あと緊急クエストがでたら、僕らは一旦冒険者ギルド前で5分だけ待つから。もし帰ってきてて一緒に組めそうなら組もうね。」
「はいっ。緊急クエストが出るような時は、もう魔の森には入れなくなっていて、冒険者たちは冒険者エリアで待ってる状態でしょうから。もし帰るのが間に合ってなかったらすみません。」
「それは仕方ないよ。予定を決めて起こるわけでも、本当に起こるかも分からないしね。トーマ、今日まで毎週ありがとう。ガルド達にもお礼言っておいて。」
「はいっ。では、失礼しますね。アシェルさん、アークさん、実習頑張ってくださいね。」
元気よくぺこりと頭を下げたトーマが去っていく。
ついでに離れた位置に居た、エラートとマリクにも挨拶してから帰っていった。
そんなトーマと入れ違いに、アシェル達のパーティーメンバーであるイルマとディアナがやってくる。
「お待たせしました、アークエイド様、アシェル様。」
「お待たせしてしまって申し訳ありません。おはようございます。」
二人の女生徒は魔法使いらしいローブに、ロッドを装備している。
慌てて駆け寄ってきた二人に、アシェルは微笑みを向ける。
「おはよう、イルマ嬢、ディアナ嬢。時間には余裕があるから大丈夫だよ。全員揃ったし、一応最終確認だけしておこうか。」
待たせて怒っているとでも思っていたのだろうか。
明らかに二人がほっと胸を撫で下ろした。
アシェル達は遅刻でない限り、自分達が先に着いたからと怒るような貴族ではないのだが。
「イルマ嬢が探査魔法で常に周囲の状況を確認。何か居たら、数とか種類とかは良いから、方角だけ教えてね。戦闘中も探査魔法は維持してもらって、戦闘には参加できそうなら、僕の受け持っている魔物に魔法を飛ばしてね。」
今回アシェルは武術枠なので、使っていいのは身体強化のみだ。
緊急時のみ、その制限が外れる。のだが、監視があるわけでもなんでもない。
実習という形式上、そう決まっているというだけだ。
「ディアナ嬢はエンカウントした魔物に、アークの受け持った魔物から攻撃魔法を飛ばしてね。お勧めはウィンドカッターとライトアローだね。なるべく首を、無理なら相手の顔を狙ってね。間違ってもアークに当てちゃダメだよ?それと二人とも、頭痛や倦怠感が出たら早めに教えてね。マナポーションを配るから。」
事前に教室でも打ち合わせしていた内容だが、確認の為にもう一度伝えれば二人とも頷いてくれる。
「僕とアークはエンカウントした魔物を大体半分ずつ、注意を引き付けながら対処。間引くのは良いけど、ある程度は後衛の実習の為に残しておいてあげてね。そうだね……アークが半分、その半分をディアナ嬢で良いんじゃないかな。アークは自分の分が終わったら、首狙いじゃなくて脚とか狙って動きを悪くしてあげて。僕も今日は、敵の後ろには周らないから。間違っても後ろに流れたら大変だしね。僕はアークが倒し終わった時点で半分まで、ディアナ嬢が倒し終わったら、全部対応するね。イルマ嬢はそれまでに魔法を使えそうなら使って、魔物に当ててみてね。」
「注文が増えたな。数によっては、エトのように上手く捌けないぞ?半分はさっさと殺っても良いんだな?」
「安全のためにはさっさと頭数を減らした方が良いから、さすがに粘れとは言わないよ。かといって、いつもの調子でやっちゃうと実習にならないしね。で、僕らが緊急時の対応は、僕がイルマ嬢とディアナ嬢に攻撃力向上と防御力向上をいっぺんに無詠唱でかけて、探査魔法で魔物が居ないか少なくて、川か小道に出れる方向を伝えるから。そっちへ真っすぐ走って逃げてね。僕らが緊急って判断した時は、レディ達を守りながら戦うのは難しいから。出来るだけ川への経路を教えるからね。川は王都に向かって流れているし、川沿いはエンカウントしにくいから。もし他のパーティーが居たら、そこに一緒に混ぜて貰うと良いかな。もし混ぜて貰ったら、イルマ嬢の#探査魔法_サーチ__#は使っておいてね。まだ居るのか帰っているのかの目印にするから。生徒以外のパーティーが居ても、そこには加わらずにキャンプまでとにかく走ること。良い?キャンプについても僕らの救難信号が出たままなら、状況を先生に説明してね。」
しっかり全員が頷いたのを確認する。
「次に他のパーティーから救難信号が出た場合だね。この場合も僕が二人に強化魔法をかけて、川沿いへ向かうように指示するよ。この時は探査魔法を使ったまま川沿いで待機してもらえたら、救助後に迎えに行くからね。もし赤じゃなくて青の信号が出た時には、僕らを待たずにキャンプに戻ってもらえる?青が僕らの救助困難を示す光だから。」
また全員が頷いた。
どれも再確認しているだけの内容だ。
アシェルがイルマ達を探すために探査魔法の魔力を辿ると言って驚かれたが、事前に一度見せて貰ったし、識別は簡単にできるようになる。
魔力にも人によって個性があって、色や出している魔力自体の形がそれぞれ違うのだ。
アシェル達が最終確認を終えたころ。
教師たちに呼ばれ、小道沿いの何処から森に入るのかの指示を受ける。
これは全員が固まらないための措置で、中に入れば二の森内ならどこへ向かっても問題はない。
救助班はアシェル達が一番三の森に近く、次にリリアーデ達、エラートたち、ノアールたちとキャンプ地に近づいていくように満遍なく配置されているはずだ。
アシェル達は小道の最後の分岐である立札を目印に、森の中に入るように伝えられた。
アークエイドを先頭にアシェル後衛二人を挟み、二の森へと出発した。
アシェルは最上級生の野外実習の日から毎週、救助班として二の森に訪れていた。
週をまたぐほどに救難信号は一つずつ増えていった。
魔物の数や強さもだが、これには実習生の練度も関係しているのだろう。
今日はアシェル達の実習日で、7月の初週に見慣れたキャンプ地へと足を運ぶ。
皆出発地点は一緒で、キャンプ地で集合と解散だ。
そのため幼馴染達とイザベルと集まって、のんびりと歩いて門を出て、早めにキャンプ地へとやってきた。
馬車で門までやこの近くまでくる生徒もいるが、大所帯なら話しながら歩けばあっという間だった。
「良い?救難信号が出ても、ノアとトワは無理しなくて良いからね。ヴェイン君がテイル領出身、フランソワ嬢がシルコット領出身で、二人とも森に慣れてるから。距離とか状況で、二人にも意見を求めて行けそうだったら、で良いからね。」
救助班で一番森慣れしていないのがアスノームの双子だ。
エトワールは武術枠で、いつもの長槍ではなく短槍だ。
長槍だと森の中では取り回しが難しいからだろう。
ノアールは魔術枠なので、スタッフと呼ばれる両手杖だ。
端に石突が付いているので、咄嗟の時には槍のようにして武器にすることも考慮されていそうだ。
「うん、一応僕らは救助班だけど、あまり役には立てないだろうから。」
「方向感覚とかも狂いやすいもんな。歩きにくいし、槍は使いにくいし。」
「森は……みたいな言い方してるけど、海だって大概よ?むしろ海の方が同じ景色ばっかりで、方向感覚が狂いそうな気がするわ。」
「海は常に空が見えるからな。時間見て、昼間は太陽の位置で、夜は月の位置で方角なんて分かるからさ。あ、夜の月は日によって出方が変わるから、覚えてないのに参考にしようとするなよ。余計に迷う原因になるからな。」
リリアーデの突っ込みに、エトワールが海での方角の知り方を教えてくれる。
エトワールは将来漁師(という名の魔物討伐で食料を確保する職業)になる予定だというので、勉強は苦手でも航海に必要なことは覚えているのだろう。
「そもそも海に行かないわよ。海水浴できるわけでもないんでしょう?」
「リリィの言ってるカイスイヨクが分からないけど、多分海に入るとか、海水で何かするんだよね?港はあるけど、海水に直接触れることってないよ。浜辺でも気を付けてないと、小型の魔物が流れ着いたりするしね。」
「やっぱりないのね。それに、想像以上に危険みたいだわ。……っていうことは、こっちの人って泳げる人居ないの?川とかに落ちたらどうするのかしら?」
ノアールの答えに納得しかけたリリアーデだが、新たな疑問が浮かんだようだ。
そう言われると、確かに気になる。
「そういえば……海や川で泳いだり、プールの授業がないんじゃ誰も泳げないよね……。川とかに落ちたら大変だねって思ったけど、鎧付けたまま落ちたら、泳げる人でも危ないから一緒か。」
「それもそうね。ローブだって水を吸うし、鎧だって重たいものね。そうなると別に訓練が必要だから、泳げてもあんまり意味がないかもしれないわね。大きな川があるようなところって、何故か魔素溜まりが近いから、水着で来るわけにもいかないものね。」
「そもそも水着ってこっちの人の感覚では、はしたない格好になっちゃうんじゃないかな?それに水着の生地ってちょっと特殊な感じだったよね。こっちでは見たことない生地だし、どういう生地なのか僕も知らないんだよね。」
「うーん……確かに、デュークにすっごく怒られそうだわ。まぁ、こっちの夏って日本みたいに蒸し暑くないから、そこまで泳ぎたいって思わないのだけれどね。四季はあるけれど、夏にジメジメするのは本当に嫌いだわ。」
湿度の高い蒸し暑さを思い出したのか、リリアーデの表情がげんなりとする。
アシェルにもその気持ちはよく分かる。
「確かにカラッとしてるから、それなりに気温が高くても、汗をかく程度で済むよね。湿度が高いと汗をかいても揮発しないから、身体に熱が籠ったままになっちゃってたよね。汗をかく意味がないし、水分やミネラルが体外に出て行くだけになるよね。」
「アシェ、待ってちょうだい。わたくしは元看護師だったから、言いたい意味は分かるけど。普通は汗をかく意味とか、どうやって体温を下げるとか、そこまで考えないからね??」
「そうなんだ。次からは言っちゃわないように気を付けるね。伝わらないこと言っても意味ないし。」
「そうね。それが良いと思うわ。」
アシェルとリリアーデ双方が納得したところで、意味の分からない会話を聞いていたデュークが口を挟んでくる。
「ねぇ、リリィ。僕達には、全く意味の分からない会話をしてるって気付いてる?」
「あら。アシェと話してたし、アシェには伝わってるから良いでしょう?」
「僕にも分かるように説明して。」
「嫌よ。面倒くさいもの。」
「リリィはめんどくさがりすぎるんだよ。分からない話をされるのは、嫌だって言ってるだろ。」
「だって面倒なものは面倒なんだもの。百合にとって当たり前の概念でも、こっちで分かるように説明するのは難しいのよ。気になるんだったら“授け子”の文献で、海水浴、プール、水着で調べてみるといいわ。水着のイメージ画像みたいなのがあるんだったら、デュークは観ない方が良いわよ?まぁ見ても良いんだけど、人前で大勢の人が同じような恰好をする、とだけ言っておくわね。」
「すっごく嫌な予感だけするよ。」
リリアーデが言う通り、貴族の感性の——いや、こちらの男性にはイラストの水着だったとしても、少しばかり刺激が強すぎるだろう。
きっと下着と混同されそうな気がする。
「アシェル様、皆様、おはようございます。イザベル様、今日はよろしくお願いしますね。」
元気なシオンの声が聞こえ、ぺこりと頭を下げられる。
「おはよう、シオン君。ベルのことよろしくね。」
シオンは武術枠の男子と、魔術枠のイザベルと、クラスのラビちゃんこと兎獣人とハーフのリュエンが一緒のパーティーだ。
イザークは既にパーティーで集まっているようで、執事喫茶で執事をしていたイシズもそこにいる。
テストでは常に学年一位のカナリアも、魔術枠でキャンプ地に来ている。
基本的に顔見知りの彼らは、高位貴族だったり成績が良かったりで、救助班以外に組み込まれている。
救助班はある程度戦えることと、最悪川沿いに一緒のメンバーを避難させることを考慮しているので、今回の選抜メンバーの中では下から数えたほうが早い人と組んでいる。
4組の中でノアールとエトワールの相手だけが、実地訓練の経験者だ。
「僕の方がお世話になるほうかもしれませんよ。だってイザベル様の魔法は、メイディー公爵家仕込みでしょう?伯爵家で今回の実習に来れたのは、魔術枠でイザベル様とリュエン君とイシズ君の三人だけですからね。残りの二人はアシェル様たちが武術枠だったからで、イザベル様は三人の中では突出してますから。頼りにしてますね、イザベル様。」
このパーティーメンバーを決めたのは生徒会なので、シオンは順位表を見ている。
確かにシオンの言う通り、もしアシェルとアークエイドが魔術枠だったら、リュエンとイシズは今回の遠征には来れなかっただろう。
「あまり期待しないで下さいませ。わたくしはアシェル様達ほど上手く魔法を扱えませんので。」
「逆にアシェル様達みたいに、物凄く上手に魔法を使えたらビックリですよ。イザベル様の探査魔法は敵の数は分かりますか?」
「こまかな種類までは確定できませんけれど、方角と数、大まかな予想種族、エンカウントまでの予想時間は分かりますわ。」
イザベルには遠くで引っかかった相手を魔力で包み込むのは難しかったようで、一直線に伸ばした魔力を、対象の近くでまた波状に広げて感知している。
少し変わっているのかもしれないが、魔力で包めなかったイザベルなりの、魔力消費量と無駄を省くための策のようだ。
「それだけ分かれば十分すぎるくらいです。後衛を守るのは、前衛の僕らの役目ですから。」
相変わらず可愛らしい笑顔だが、シオンの剣術は割と強いほうだ。
恐らく、少し硬くなっている二の森の魔物相手なら、魔物の動きに慣れさえすれば倒すことは問題ないだろう。
特にスピードで翻弄して攻撃を加えていくスタイルのシオンは、大振りなフォレストベアと相性が良さそうだ。
「アシェル様。わたくしはこのままシオン様と一緒に、パーティーメンバーを待ちます。打ち合わせも必要でしょうから。」
「そうだね。ベルも魔の森は初めてなんだから、気を付けてね。毒持ちは居ないから、ヒールポーションとマナポーションがあれば事足りるとは思うけど。もしあまりにも多勢に無勢とか、重傷者が出るようなら魔道具を使うんだよ。」
「アシェル様のお薬は効果抜群ですから、きっと大丈夫ですわ。アシェル様もお気を付けくださいね。」
「うん。じゃあまた明日ね。」
「イザベル様にご迷惑をおかけしないように、僕も頑張りますね。では、また明日。」
ペコリと頭を下げたシオンとイザベルを見送る。
それぞれ到着し始めたクラスメイト達を捕まえて、最終の打ち合わせだ。
アシェルと無言のままだったアークエイドと二人だけになる。
「俺達のメンバーは、まだ来てないようだ。」
「ふふ、のんびりさんなのか、門から出るのに手間取ってるんじゃないかな。森歩きに慣れてないから、体力を温存するためにも近くまで馬車で来るって言ってたから。」
「なるほどな。」
馬車を使うのは単純に歩きたくない場合もあるが、今回のような実習の場合、体力温存の意味もある。
アシェルとアークエイドのパートナーは、イルマ・マートルというアスノーム地方の侯爵家出身と、ディアナ・ファーレンというフレイム地方の侯爵家出身だ。
二人とも森には慣れていないので、アシェル達のパーティーメンバーとなった。
「三の森程の差はなかったんだけど、それでも二の森もちょっぴり敵が硬くなってるから気を付けてね。いつも通りの力加減だと殺り損ねちゃうかも。今日は僕の強化魔法もないしね。あとひと群れあたりの個体数は、確実に増えてるから。大丈夫だとは思うけど、もしもの時は僕が後衛二人にバフかけて逃げる方向指示するから……その間だけ持ちこたえてね。」
「分かってる。しかし、先週で半数は脱落だろう?教師たちは、よく今日決行する気になったな。」
「一学年上より、僕らの世代には戦い慣れてる生徒が多いからじゃない?ギルドからも、可能なら実習はやってくれって頼まれてるみたいだし。」
「スタンピード対策か。」
「うん。それを懸念してるみたい。」
「アシェルさん、アークさん、おはようございます。」
のんびりアークエイドと打ち合わせをしていると、毎週聞きなれた挨拶が耳に入ってくる。
「おはよう、トーマ。……今日はトーマ一人?」
いつもならガルド達四人も一緒なのに、今日はトーマ一人だ。
「はい。この後ビースノートに向かうので、皆は最終チェック中です。僕の脚が一番早いので、伝言役を請け負ってきました。」
「久しぶりだな、トーマ。その感じだと、斥候として活躍できているんだな。」
アークエイドはトーマの恰好を見て、しっかりと役割を把握したようだ。
「はい。それもこれも、色々教えて頂いたお陰です。二の森は変わりなしです。といっても、最近は個体数が多いのと、前より少し強いのが普通になっちゃってるんですけどね。一応緊急クエストの可能性もあるし、僕ら【朱の渡り鳥】もランクアップだけしたら、早めに王都に帰ってくる予定です。ギルドからも、行っても良いけどなるべく早く帰ってきてくれって言われちゃいました。」
それでも【朱の渡り鳥】に許可が出たということは、すぐにでもスタンピードが起こるかもしれない兆候はないということだ。
「そっか。長旅になるし、ビースノートは寒いらしいから気を付けてね。素材は出来たらで良いから。あと緊急クエストがでたら、僕らは一旦冒険者ギルド前で5分だけ待つから。もし帰ってきてて一緒に組めそうなら組もうね。」
「はいっ。緊急クエストが出るような時は、もう魔の森には入れなくなっていて、冒険者たちは冒険者エリアで待ってる状態でしょうから。もし帰るのが間に合ってなかったらすみません。」
「それは仕方ないよ。予定を決めて起こるわけでも、本当に起こるかも分からないしね。トーマ、今日まで毎週ありがとう。ガルド達にもお礼言っておいて。」
「はいっ。では、失礼しますね。アシェルさん、アークさん、実習頑張ってくださいね。」
元気よくぺこりと頭を下げたトーマが去っていく。
ついでに離れた位置に居た、エラートとマリクにも挨拶してから帰っていった。
そんなトーマと入れ違いに、アシェル達のパーティーメンバーであるイルマとディアナがやってくる。
「お待たせしました、アークエイド様、アシェル様。」
「お待たせしてしまって申し訳ありません。おはようございます。」
二人の女生徒は魔法使いらしいローブに、ロッドを装備している。
慌てて駆け寄ってきた二人に、アシェルは微笑みを向ける。
「おはよう、イルマ嬢、ディアナ嬢。時間には余裕があるから大丈夫だよ。全員揃ったし、一応最終確認だけしておこうか。」
待たせて怒っているとでも思っていたのだろうか。
明らかに二人がほっと胸を撫で下ろした。
アシェル達は遅刻でない限り、自分達が先に着いたからと怒るような貴族ではないのだが。
「イルマ嬢が探査魔法で常に周囲の状況を確認。何か居たら、数とか種類とかは良いから、方角だけ教えてね。戦闘中も探査魔法は維持してもらって、戦闘には参加できそうなら、僕の受け持っている魔物に魔法を飛ばしてね。」
今回アシェルは武術枠なので、使っていいのは身体強化のみだ。
緊急時のみ、その制限が外れる。のだが、監視があるわけでもなんでもない。
実習という形式上、そう決まっているというだけだ。
「ディアナ嬢はエンカウントした魔物に、アークの受け持った魔物から攻撃魔法を飛ばしてね。お勧めはウィンドカッターとライトアローだね。なるべく首を、無理なら相手の顔を狙ってね。間違ってもアークに当てちゃダメだよ?それと二人とも、頭痛や倦怠感が出たら早めに教えてね。マナポーションを配るから。」
事前に教室でも打ち合わせしていた内容だが、確認の為にもう一度伝えれば二人とも頷いてくれる。
「僕とアークはエンカウントした魔物を大体半分ずつ、注意を引き付けながら対処。間引くのは良いけど、ある程度は後衛の実習の為に残しておいてあげてね。そうだね……アークが半分、その半分をディアナ嬢で良いんじゃないかな。アークは自分の分が終わったら、首狙いじゃなくて脚とか狙って動きを悪くしてあげて。僕も今日は、敵の後ろには周らないから。間違っても後ろに流れたら大変だしね。僕はアークが倒し終わった時点で半分まで、ディアナ嬢が倒し終わったら、全部対応するね。イルマ嬢はそれまでに魔法を使えそうなら使って、魔物に当ててみてね。」
「注文が増えたな。数によっては、エトのように上手く捌けないぞ?半分はさっさと殺っても良いんだな?」
「安全のためにはさっさと頭数を減らした方が良いから、さすがに粘れとは言わないよ。かといって、いつもの調子でやっちゃうと実習にならないしね。で、僕らが緊急時の対応は、僕がイルマ嬢とディアナ嬢に攻撃力向上と防御力向上をいっぺんに無詠唱でかけて、探査魔法で魔物が居ないか少なくて、川か小道に出れる方向を伝えるから。そっちへ真っすぐ走って逃げてね。僕らが緊急って判断した時は、レディ達を守りながら戦うのは難しいから。出来るだけ川への経路を教えるからね。川は王都に向かって流れているし、川沿いはエンカウントしにくいから。もし他のパーティーが居たら、そこに一緒に混ぜて貰うと良いかな。もし混ぜて貰ったら、イルマ嬢の#探査魔法_サーチ__#は使っておいてね。まだ居るのか帰っているのかの目印にするから。生徒以外のパーティーが居ても、そこには加わらずにキャンプまでとにかく走ること。良い?キャンプについても僕らの救難信号が出たままなら、状況を先生に説明してね。」
しっかり全員が頷いたのを確認する。
「次に他のパーティーから救難信号が出た場合だね。この場合も僕が二人に強化魔法をかけて、川沿いへ向かうように指示するよ。この時は探査魔法を使ったまま川沿いで待機してもらえたら、救助後に迎えに行くからね。もし赤じゃなくて青の信号が出た時には、僕らを待たずにキャンプに戻ってもらえる?青が僕らの救助困難を示す光だから。」
また全員が頷いた。
どれも再確認しているだけの内容だ。
アシェルがイルマ達を探すために探査魔法の魔力を辿ると言って驚かれたが、事前に一度見せて貰ったし、識別は簡単にできるようになる。
魔力にも人によって個性があって、色や出している魔力自体の形がそれぞれ違うのだ。
アシェル達が最終確認を終えたころ。
教師たちに呼ばれ、小道沿いの何処から森に入るのかの指示を受ける。
これは全員が固まらないための措置で、中に入れば二の森内ならどこへ向かっても問題はない。
救助班はアシェル達が一番三の森に近く、次にリリアーデ達、エラートたち、ノアールたちとキャンプ地に近づいていくように満遍なく配置されているはずだ。
アシェル達は小道の最後の分岐である立札を目印に、森の中に入るように伝えられた。
アークエイドを先頭にアシェル後衛二人を挟み、二の森へと出発した。
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