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第一章

オーガ 契約する

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「……………ここは?」

 気が付けば、俺は、真っ暗な空間の中をただ立っていた
 いや、自分の姿が見えているから、ただの暗闇では、無いと分かる

 周りを見渡したが、コレと言っていい程、何も無く、ただ真っ暗な暗闇だけが広がっていた

「魔石に魔力を込めて、気が付けば、ここに居た……………
 どう言う事だ……………?」

「ほぉ……………、これは、面白い」

「っ!?」

 突然、声が聞こえ、振り返ったが、そこには、誰も居なかった
 警戒を厳にし、刀を呼び出した時に気付いた
 俺の前…………、何も見えない暗闇だが…………、目の前に何かが居る

「誰だ?」

「ふむっ、少し惜しいな
 上を見上げよ」
  
 声に従い、上を見上げた
 相変わらずそこに暗闇が広がっているが、そこを蠢く影を捉える事には成功した

(影は、見えるが…………、スキルに見えるのあったか?)

 目を凝らしても、何も見えない為、スキルの欄を確認する

 《スキル・暗視 発動》

 そうディスプレイに出てから、一気に昼のように明るくなったと、思えば、俺は、目の前のソレを見、言葉を失った
 ソレは、喉を鳴らし、顔を下げれば、俺を瞳に捉えた

「どうやらこの暗闇を見れるようになったようだな」

「…………黒龍、だと」

 そう…………、俺の目の前に居た巨大な影は、黒い鱗に覆われたドラゴンであった
 その大きさは、およそ数十…………、いや、正確なのが分からないから、考えるのは、よそう…………

「うむっ……………、お主、この世界のモノでは、無いな」

「なっ!?」

 黒龍は、淡々とした口調で、俺を眺めているが、言った言葉に、思わず反応してしまった
 明らかに……………、いや、確実にこの黒龍は、普通じゃない…………

「ふむっ、驚く事でもなかろう、っと、そうか…………
 お主は、我を知らぬか、なら、無理も無しか」

 黒龍は、俺の様子を見ながら、顔を近づかせてくれば、喉を一回、鳴らした

「我は、【ヌーヴェルク】
 この世界の知識で言えば、邪龍……….と言うべきか」

「邪!?」

 黒龍の言葉に、驚き、思わず、黒龍を見た
 邪龍と言えば、そのままの意味で捉えれば、完全に敵キャラのラスボス級の扱いだ

 だが、目の前の黒龍を見て、邪龍と言う言葉に、違和感を感じた
 確かに目の前に居るのは、黒龍で間違いないだろうが、その眼は、何処か、誠実で、邪龍と呼ぶには、真逆の眼をしていた

「……………冗談か?」「残念ながらそう呼ばれておるのぉ」

 俺が聞き返せば、どこか面白そうに黒龍は、答えた
 その対応から見て、邪龍とは、違う存在と理解した

「で、本当は、何て呼ばれてるんだ?」

「ほぉ、我をそう見るとは…………
 お主、なかなか見る目は、あるようじゃな」

 ヌーヴェルクは、俺にそう聞かれ、驚いた素振りをすれば、面白そうに笑った
 その瞬間、突如、凄まじい殺気を感じ、飛び退けば、足元から、巨大な氷の棘が生えてきた

「我を知りたければ、我と一戦、交えて、お主の口から聞きたいのぉ」

「…………そうかよ」

 ヌーヴェルクは、面白そうに笑っているのを見ながら、俺も、戦闘態勢に入った途端、右から殺気を感じ、上へ跳べば、今度は、雷の光線が、俺の真下を通り抜けた

「っ!? おいおいおい!!?
 とんだデタラメじゃねぇか!!!?」

 そして前を向いた時、俺は、あまりの光景に思わず叫んでいた
 ヌーヴェルクの前に、パッと見ても数えきれない程の魔法陣が展開されていたからだ

 そしてそれらが、光ったと思えば、俺目掛けて、光線を放ってきた
 光線のスピード、数から避けるのは、不可能…………

ましてヌーヴェルクの事だ…………
避けても第二、第三の手を考えてるはず…………

(なら、あえて避けずに受け流す!!)

俺は、全魔力を前方に集め、防壁を張れば、それに緩やかな曲線を作った

そしてその瞬間、光線が防壁にぶち合った
俺の考えの通り、光線は、防壁に作った曲線をなぞり、外側へと受け流している
だが、それは長くは、続かなかった

「っ!? 一瞬で!?」

すぐに防壁にヒビが入れば、すぐにでも砕け散った
転移し、避けたが…………

着地した瞬間、足元に魔法陣が展開されていた

「なっ!?」

そして次の瞬間、俺は、魔法陣から出てきた鎖に、縛られ、拘束された

(くっ!?この鎖、砕けねえ!?)

鎖を砕いて、抜け出そうとするが、力を込めてもこの鎖は、ヒビすら入らず、更によく見れば、魔力が流れているが、その魔力は、様々な色が流れていた

「全属性、かよ!!」

スキルを探し、その鎖を無力化させようとしたが、その複雑な構造に俺は、文句を言えば、ヌーヴェルクは、面白そうに笑った

「はははwww
すぐに気付くとは、面白い奴よのぉ」

ヌーヴェルクの言葉に、俺は、抵抗をやめて、顔を上げて、ヌーヴェルクを見れば、じっと観察し、頭を加速させた

ヌーヴェルクの魔法は、全ての属性が入っている…………
ましてや、ヌーヴェルク本人は、それ程、疲労があるとは、思えない………
いや、少したりとも疲労していないと見て、間違いないだろう…………

(と、なると…………
ヤツのスペックは、全てがチートクラスだ…………
そういや、そう言うヤツ………、やってたゲームでも居たな…………
マジで歯が立たなくて、調べれば、強アイテムを付けて、ステータス等の底上げとか、チート級のアイテムとかもしていたな…………
そういう奴を王として、【魔法帝】と、言われていたな…………)

考えが纏まれば、俺は、ヌーヴェルクを見た

「お前の正体が、分かった」

「ほぉ…………」

俺の言葉に、ヌーヴェルクがピクっと瞼が動いたが、俺は、気にせず、口を開いた

「お前の魔法から見て、お前は全ての魔法が使え全ての属性が扱える
それを踏まえ、お前の正体は…………、【魔帝龍】…………」

「………………」

俺の言葉に、ヌーヴェルクは、ジッと俺を見、しばらくして、「ガハハハハ!!www」と、大声で笑った

そして次の瞬間、周りの空間が光り輝き、一瞬にして、魔法陣が周りに漂う幻想的な空間が広がった
そしてヌーヴェルクの黒い鱗が今は、純白のような白銀になった

「お主、面白いのぉ
まさか我の真名を当てるとはな」

嬉しそうであり、楽しそうな声を弾ませながらヌーヴェルクが、俺の顔の傍まで顔を下げてきた

「お主なら、使い魔として、契約しても良いじゃろう
我が命尽きるその時まで、いや、お主の命が消えるその時まで永劫の誓いを此処に誓おう」

そう言い、ヌーヴェルクが俺の額にそのデカい額を押し付けてきた
その瞬間、夥しい程の知識が俺の頭に入ってきて、凄まじい激痛で、言葉をあげる事なく、俺は、気を失ってしまった

それからどのくらいの時間が経っただろうか…………
意識が覚醒していくのを感じ、自分が気絶した事は、理解できた

(っ、頭、痛ぁぁ……………、二日酔いでもこんなに頭が痛くなんねぇぞ…………
ってか、何だか頭の下が柔けえ?)

ゆっくりと目を開けて、霞む視界の中、状況を確認していく

「ん?
なんじゃ、もう起きてしもうたか」

「……………………なぁぁぁぁぁぁ!!?」

視界がはっきりとした瞬間、俺は、慌てて飛び起き、無様に後退りした
目の前に居たのは、ヌーヴェルクではなく、服を着ずに居る一人の女性だった

「だ、誰だ!?」

「はははwww
想像した通りのリアクションじゃな
ほれ、我じゃよ」

女性は、そう言うと、指を鳴らした
すると、その女性の背に、見覚えのある翼が現れた

「っ!? ヌーヴェルク!?」

「そうじゃwww」

「お前!! 雌だったのか!?」

とりあえず俺は、直視せず問えば、ヌーヴェルクの気配が消えたかと思えば、いつのまにか、俺の前に来て、真正面から抱きついてきた

「~~~~~!?!?」

俺が声にならない叫びをあげる中、ヌーヴェルクは、そっと耳元に口を近づけてきた

「そうじゃ♪
本当にお主が主人でよかった♪
我をここまで気に入らせたんじゃ♪
これから楽しませてもらうぞ♪」

(あっ、コレ、死亡フラグだ)


この空間内で、数時間、現実では、一分も経ってない………
ただ言えるのは……………
ツッキーによれば、気づいたら俺がガリガリに痩せこけてたと言う事………

それだけだ……………
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