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第一章
オーガとオーク 公爵家を訪れる
しおりを挟む昼も過ぎ、心地よい風が森から抜けて、頬を撫でるのを感じながら俺とツッキーは、準備をしていた
今日の朝方、エルミナからの手紙で、誕生日パーティーの招待状を受け取ったから、ぜひ来てほしいと察した
と、言うか、手紙にも『来て』と圧を感じるくらい強く書かれていた
そして会って無いが、何かしらの殺気のようなモノを感じた為、一応、エルミナの部屋に転移すると、返事した
そして今日が当日だが、俺とツッキーは、即席で作ったスーツを着れば、外に出た
「久しぶりのスーツだな」
「だなぁ………、なんかあの頃に戻った感じだぜ」
俺がボソッと呟けば、ツッキーが伸びをしながら懐かしむようにそう言ってきた
まぁ、確かにツッキーの言う通り、あの頃は、スーツで過ごす日々が日常だったからな…………
懐かしむも無理はないな…………
「じゃあ、留守は任せたぞ」
「はい!! お任せください!!」
俺達が転移する前にそう言えば、近くで見送りに来ていたゴブ助が、元気よく返事をした
ゴブ助達をこの拠点に迎え入れ、全員に名前を付けてやった二日後………、ゴブ助達が成長した
いや、成長と言うより進化………、と言うべきだろう…………
初めて会った時は、人の子供の背丈しか、無かったが、今では、成人の大人の身長になっている
初めて見た瞬間、死ぬほど驚いたが、後で調べてみると、ゴブ助のような男のゴブリンは、【ボブゴブリン】………
女のゴブリンは、【ゴブリンレデュー】と種族が変わっていた
何故、彼らが進化を遂げたのかは、俺達が原因だと分かった…………
彼らを呼ぶ時に不便だからと、名前を付けた事が、進化への鍵だったらしく、名前を持つ事で、魔物のクラスが上がるらしい………
知らずにつけた俺達も、俺達だが……………
それ以来、彼らは、俺達の事を【主人】と呼ぶようになってしまったが…………
まぁ、進化したお陰で、家とかの建築等は、みるみる上達していったがな…………
ゴブ助の他に数名に剣を教えたりして、腕前は荒削りだが、戦えるようになっているから、留守を任せても大丈夫になったから、安心だ
そして噂が広がり、無害の魔物や魔族、更には、難民もここに集まってきて、すっかり村のようになってしまっている
そんな事を思い出しつつ、俺とツッキーは、拠点から少し離れた所で、転移をした
そして視界が変わり、とある一室に転移し終われば、周りを見た
「随分と早い到着だな」
「そう言うお前も俺達が着くのに気付いてたみたいだな」
見渡してれば、後ろから声をかけられ、振り返れば、ゾールスが椅子に座って、そこに居た
「姉さんからここで待ってるようにと言われてたんでな」
「なるほど、転移陣を拠点外にこっそり書いてたのは、そう言うことか」
「アレって一回きりだろ?
よく分かったな」
ツッキーがそう言うと、ゾールスは、鼻で笑えば、クルクルと手にした枝を回した
「俺は、こう見えて、RPG系は、結構、やってたんでな
姉さんほどでは、無いけど理解できるって事だ」
ゾールスは、面白そうにそう言っているが、前世では、かなりのゲーマーだったのだと理解できた
ふと、気づいて、周りを見渡した
「ところで、エルミナは何処だ?
さっきから姿が無いんだが」
「姉さんなら、十歳になった恒例行事のボード作成に行ってる
多分、そろそろ終わる頃だと思うよ」
「ボード?」
俺が尋ねると、ゾールスは、簡潔にそう言ったが、聞きなれない単語が含まれていた為、後ろのツッキーが聞き返した
「この国の身分証明みたいなモノで、十歳になったら全員が作る義務があるみたいだ」
「そうか、ならもうしばらくかかりそうだな」
「どうだろうな、魔水晶に魔力を流して、ボードを作るからそんなにかかんねぇとは」
ゾールスがそう話していると突然、黙り、姿勢を正した
その意味を理解すれば、俺達もゾールスの傍に行き、扉を見た
先程、こちらに向かってくる足音が聞こえてきたからだ
そしてこの足音の主が誰なのか、理解した時、扉が開いた
「ただいまぁ~、あっ、ユーマにアカツキ
来てたのね」
部屋に入ってきたのは、エルミナだった
その服装は、毎日、会っていた時のような軽装なドレスではなく、煌びやかなドレスを見に纏い、薄くだが、化粧を施されている
そして後ろには、エルミナの父が立っていた
「やぁ、ユーマ、アカツキ
エルミナから話は聞いていたが、随分と早く到着していたんだね」
「えぇ、招待された身ですので、遅れるのは失礼に当たりますので」
「いや、その心意気は良い
だが、まだパーティの準備が終わってないのでな
エルミナ達と待っていてくれ」
そう言い、カーラス様は、部屋を後にすると、すぐにエルミナが結界を張った
「ふぅ…………、やっと落ち着けるわ」
「お疲れ、ってか、今更だが、パーティとは言え、俺達が出るのは、不味くないか?」
「いいのよ、今日は、お父様が信頼に置ける人たちを呼んだパーティで、本格的なのは、明日やるから
今日は、前座って、ところかしらね」
エルミナは、椅子に座り、落ち着けば、俺達も椅子に座った
すると、エルミナが思い出したかの如く、急に板をテーブルに置いた
「危うく忘れるところだったわ…………
これを見て」
「これは…………、ゾールスが言ってたボードか」
そのボードを確認すれば、俺達は、すぐに虚無の表情になったのは、言うまでも無い…………
「……………忍って」
「急に和だな…………」
「もぉ~!! そこじゃ無いでしょ!!」
虚無になってる俺達にエルミナが地団駄を踏むようにジタバタしてから、テーブルを叩いた
「忍って事は、ストーリー通りでは、無くなったって事なのよ!!
しかもコレは、お父様達には、見えてないって事だから、職を決める際に魔術師を選ぶ際に誤魔化さないといけなくなったのよ!!」
「それの何処が問題なんだ?」
「ボードの職業は、書き換え不能なのよ!!
どう誤魔化せばいいのよ……………」
聞けば、どんどんとエルミナの声が小さくなり、本格的に頭を抱え込んでしまった
そんな中、ボードを見つめているツッキーがエルミナを見た
「だったら、上書きしてしまえばどうだ?」
「上書き?」
頭を抱え込んでいたエルミナが、ゆっくりとツッキーをみれば、ツッキーがボードを指差した
「コレは、俺達しか見えねえんだろ?
だったら、コレの上に魔力で上書きして、隠しちまうんだよ
幸い、お前は、忍と言っても、魔法の際も原作以上
だったらそれくらい出来るだろ?」
「……………すっかり頭から抜けてたわ」
ツッキーがサラリとそう言えば、エルミナは、ガックシと椅子に深く座り、力が抜けていっている
まぁ…………、あの状況でなら、その考えに行き着かなくても分かるけどな…………
「はぁ…………、これから私………
上手くやれるのかな…………」
「「「それはコッチのセリフ」」」
天井を見上げ、ボソッと呟いたエルミナの言葉に思わず三人でツッコミを入れた
悩む種は、まだまだ増えそうだ………
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