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第一章

オーガとオーク エルフの里を去る

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あれから城の客室で一眠りした後、日の出と共に俺達は、リリに謁見の間に案内されていた

正直、リリが部屋を訪ねてきた時、あまりにも早い時間帯なので驚いたが、リリの話だと、エルフ族は、皆、日の出と共に起きるらしい…………

謁見の間に入れば、ネネが煌びやかなドレスを着ていた
恐らく、騎士団長としてでは無く、第二皇女という事だろう
そして前を向けば、玉座に座り、俺たちを見ては、微笑む王妃が居た
昨日、ベットで安静にしていたにしろ、回復が早く、顔色も良く、実に健康的だ

「改めて、名乗らせていただきます
私がここ、フォレスティアの王妃、【リーフ・フォレスティア】と申します
ユーマ様、アカツキ様、このように早い時間にお呼びして、申し訳ございませんね」

リーフ王妃は、そう言って申し訳なさそうにしている
俺はツッキーと目配せしてから改めて、姿勢を正した

「いえ、我々も早起きの為、既に起きていたので問題はございません
リーフ王妃様」

「そう畏まらなくてよろしいですよ?
娘達と同じように、接していただけると、私も嬉しいので」

リーフ王妃は、そう言うが…………、正直、困惑している
リリやネネもだけど、何故、こうも軽く接して貰いたがる?

「…………わかった
アンタがそう言うのなら、敬語は無しだ」

「えぇ、ありがとうございます
貴方様方は、私の恩人………、いえ、この里の恩人なので」

リーフ王妃は、そう言いながら従者の方を呼べば、何かを持ってこさせた
ソレは、何処か、小さく細長い箱であったが、箱の表面には、この里のモノと思われる国印が刻まれてあった

「それは、この里に伝わる秘宝…………
それを貴方様方に授けます」

箱の蓋を取れば、中には、縦笛が入っていた
しかしその縦笛は、普通のとは、違い………、透き通っていて、鮮やかな青色をしていた

「ぶっ!?」

それを見たツッキーが思いっきり吹き出した
そんなツッキーを見れば、あえてこちらから耳を近づけた

「どうした?」

「ば!?コレ、よくみろ!?
これは【祝福の笛】だぞ!?」

ツッキーに囁かれて、改めて笛を見れば、確かにその笛は、【貴方に届ける幸福の光】で物語の最終章………
ヒロインが、エルフから授けられる秘宝として、この笛を受け取る、と言う話だったな………

(ってか、その笛をくれるってどんだけ俺たちを信用してんだよ…………)

チラッとリーフ王妃を見れば、見て、分かるくらいにニコニコしている

「ありがたく頂きます」

「えぇ、その笛、私のお母様が代々、嫁入り道具の一つとして、くれたモノだけど、私やネネ達は、笛を吹く才能が無くてね
だから、貴方様のような方が持っていてくれた方が役に立つと思うの」

「いや、嫁入り道具をさも、当たり前のように渡さないでもらえるか!?」

リーフ王妃の言葉につい、ツッコミを入れれば、リーフ王妃は、不思議そうな顔をした
それを見て、今度は、ネネ達に近付いた

「なぁ、聞きたいんだが…………
お前らの母親、天然混ざってないか?」

「天然?
そうでしょうか…………、確かによく夕食の際に箸を使わず、手を使ったりしてましたが…………」

「いや、姉様………、それを天然と言うのよ…………」

「ってか、ネネもその片鱗、見えてるんだけどな」

四人でヒソヒソと話して、ふと、リーフ王妃を見れば、何だか体がプルプルと震えていた

「もーー!! 四人で何、話してるの!?
私も混ぜてぇ!!」

「「ちょっ!?落ち着けぇえぇ!!」」

我慢の限界か、リーフ王妃がこっちに走って突っ込んでくるのが見え、慌ててツッキーと止めたが、既に遅く………
俺とツッキー…………、そして傍に居たリリとネネの四人は、呆気なく、リーフ王妃の突進で吹き飛んだ

「申し訳ございません…………」

「いや、お気になさらず…………」

「元気でなによりです…………」

食事の間で、リーフ王妃が申し訳なさそうに頭を下げてくれば、俺達は、平然としながら空笑いを浮かべていた
実際、リーフ王妃に突進された際、俺とツッキーは、リリ、ネネを庇い、壁に激突した
そこまでならいいが、俺は壁にめり込み、ツッキーに関しては、上半身が壁に突き刺さってて、ギャグアニメみたいな感じになっていた

「いえ、私も気をつけなければ…………、はぅ…………
何で私はいつもこうなのかしら……」

手を合わせ、指をクルクルとさせながらリーフ王妃が落ち込んでる様子を見て、俺は、ネネを見た

「お母様は、昔っから寂しがりな所があってね
お父様が居た時は、お父様が何度も壁に突き刺さってるのを見たわ」

「そうね、あの頃は、お母様も私達もお父様に突進してたわね」

ネネが目の前の木の実を齧りながら思い出してれば、リリも懐かしそうに笑っていた

(この内容からして………、父親はもう………)


「なぁ? お前らの父親って何処ブベラァぁ!?」

話の内容から暗い話になるからと、俺が避けようとしたら、ものの見事にツッキーが踏み抜いたので、全部、言い終わる前に俺はツッキーの顔面に空気砲を食らわせていた
まぁ、仰け反る程度の威力だけどな……

「すまん、デリカシーのない事を」

「いいえ、もう数十年も前のことですから」

俺がツッキーの代わりに謝れば、リーフ王妃は、微笑ましそうにそう言ってくれた

「私の夫…………、この子達の父は、私がエルフなのにも関わらず、熱心に里に通い、私を口説いて下さった人間で………、本当に変わった人でしたわ」

そう言いながらリーフ王妃は、果物を齧れば、口元を拭き、俺を見た

「それに夫は、この子達の他にも色々なモノを残してくれましたから」

そう言った瞬間、扉が外れる勢いで開いた
そして一人の黒肌のエルフが入ってきた
俺とツッキーが咄嗟に立ち上がり、武器を構えようとした
だが、リリとネネが慌てて俺達を止めてきた

「【リーシャ】」

「っ…………、姉さん………
本当に助かったのですね」

リーフ王妃が、黒肌のエルフをやや驚きながら見てれば、リーシャと呼ばれた黒肌のエルフは、リーフに近付けば、抱きついた
そして啜り泣いているのが聞こえてきた
どうにも状況が分からなくて、そっとネネに近付いた

「ネネ、この状況は、なんだ?」

「あぁ、あの人は、【リーシャ・フルボルト】さん…………
お母様の妹でダークエルフの方よ」

「お前らの叔母ってところか」

ネネと話して、ダークエルフが彼女らの叔母とわかったが…………
一つだけ分からないことがある…………
明らかに種族が違うのだ…………
エルフとダークエルフの違いが未だ分からないが、肌の色、耳の形が異なることだけは、分かる

「えぇ、叔母様…………
まぁ、叔母様もお父様のお嫁さんだったからね」

「「……………は?」」

ネネが腕を組み、ウンウンと頷いていたが、とある一点で俺とツッキーが一斉にネネを見た

「……………お前の親父さん、多妻だったのか?」

「多妻って言うか、これはエルフ族の決まり事みたいな感じかな?
お母様と叔母様もお婆様は、違ってもお祖父様は、同じ人だし」

それを聞けば、俺とツッキーは、思わず額を押さえた
正直な話だと、この話こそが異世界だからあり得る話だろうが、俺たちにとっては、あまりに現実味が無い…………

そんな事を話していれば、落ち着いたのか、リーフ王妃とリーシャさんがこちらに歩いてきていた

「お見苦しい所をすみません」

「いえいえ、貴女の姉君が無事と聞かされれば、それだけ心配だったのでしょう
取り乱しても無理もない
気になされることはありません」

「そう、ネネから聞いてるかもだけど改めて名乗らせて頂くわ
私は、リーシャ・フルボルト
姉さんの妹で、同じ夫を愛したダークエルフの王妃よ」

リーシャ王妃は、乱れた服装を正せば、礼儀よくお辞儀をしてきた
釣られて、俺たちもお辞儀をした
チラッとリーシャ王妃を見れば、確かに肌色、髪の色は違うが、リーフ王妃と瓜二つな姿をしている
まるで双子だと言われても疑わないくらいにそっくりだ

「貴方達の事は、姉さんと従者が教えてくれたわ
本来なら、里が襲われたと聞いた時に私一人でも来るつもりだったのだけれど…………、兵士を集める前に貴方達が救ってくれたから、感謝しかないわ」

そう言えば、リーシャは、胸元のポケットから、何かを取り出せば、俺に渡してきた

「これは?」

「私達、ダークエルフの王家に伝わる御守りよ
これを貴方達にあげるわ
これが私なりの感謝の証としてね」

そう言われ、手元を見れば、それは黒い宝石が埋め込まれた耳飾りだ
そしてそれを見たツッキーがまた吹き出した
……………そのリアクション、前に見たぞ

「コレは何だ?」

「それは【黒色ダイヤのイヤリング】…………
【貴方に届ける祝福の光】の裏シナリオで手に入れるヤツだ…………」

「裏シナリオ?」

ツッキーの説明を受けながら聞きなれない単語が聞こえてきて、聞き返せば、ツッキーは黙って頷いた
そしてその視線は、リーフ王妃達をチラッと見た

(なるほど…………、確かにここで話す訳にはいかんな)

ツッキーの考えが分かると、俺は、そのイヤリングをインベントリホールに入れた

「感謝する」

「えぇ、それで貴方達はこれからどうするの?」

「そろそろ拠点としてるところに帰るつもりだ
戻らないと、荒らされる可能性があるのでな」

リーシャ王妃に聞かれて、そう答えれば、リリが俺に近づいてきた

「あの、その場所は、どちらですか?
出来るなら、教えてもらいたいのですが」

「あぁ、それならここだな」

聞いてくれば、すぐさまツッキーが地図を出して、印を付ければ、リリ達に渡した
何故、そんな事を聞いてくるかは、分からんが…………
恐らく俺達に渡したあの笛とイヤリングの心配だろうな
それを受け取る俺たちもだが……………

「ユーマ様、アカツキ様
此度は本当にありがとうございました」

「また里に来なさいよ」

「今度は、ダークエルフの里にも案内するわ」

「あぁ、世話になった」

「そんじゃあな」

リーフ王妃達に簡単な挨拶だけ済ませると、俺達は、ディスプレイを展開し、マップを出せば、拠点を指定し、トラベルジャンプをして、帰った
その後…………、リーフ王妃達が何を話し合ったのかは、不明であるが…………
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