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第一章
オークとオーガ エルフの里を満喫する
しおりを挟むさて…………
あれから数分が過ぎ、俺とツッキーは、エルフの里の城を出た
従者の方から、エルフの里には、宿はない事から、城に泊まるよう促され、城に泊まる事となった
俺とツッキーは、お互いに向かい部屋のような形で案内され、部屋に入って、のんびり…………、するわけでもなく、こうして里を見て回ることとした
「しっかし…………、いいのかな?
俺達が出歩いて」
「いいんじゃね?
と、いうか、部屋に居たら居たで、問題があるだろう」
後ろを歩くツッキーが、そんな疑問を言えば、俺は、適当に返事をした
だが、俺も同じことを考えていた
流石に俺達が、招かれたって言っても、この里の住民からは、よそ者だし、それに俺達は、オーガとオークだ………
(まぁ、危なくなったら、城へ、帰ればいいか…………
転移で帰ったら、あの王妃………、いや、リリ達が怖い………)
そう思いながら城の坂を下り終え、街へ、出た
「そう…………、思ってたんだけどなぁ…………」
街に来て、早、三分程………
俺は、今の現状に思わず心の内を呟いていた
街に入り、すぐさま街の顔とも言える大通りに行けば、モノの数秒でエルフに囲まれ、おもてなしを受けている
しかも中には、街を救ったからではなく、王妃を救ったことも知っている者が居た
「ほぉ、エルフって、器用なんだな」
「は、はい/////」
ツッキーに至っては、偶々、居たであろうエルフの職人に商品を見せてもらいながら、説明を受けている始末…………
(大体、何で王妃を救った事を知っている?
王妃が救われてから、まだ数時間しか、経ってないと思うが…………、ここまで広がるのは、おかしすぎないか?)
「エルフ族は、皆、魔力の念話を使えます
それで情報を共有して、敵に備えたりしているのです」
俺が考えに更けていれば、突然、声がし、声のする方を見れば、若いエルフの騎士が立っていた
「失礼、貴方は?」
「私は、このフォレスティア騎士団、副長を務めます
【アント・ファーキンス】と申します
失礼ですが、ユーマ様でございますね?」
「あぁ、俺がユーマだ」
「この里には、不慣れでございましょうし、僭越ながら私が案内をさせていただきます」
「それは助かるが………、良いのか?
副長自らが案内などして?」
そう尋ねるとアントは、クスッと笑ってから城の方を見た
「今は、他の騎士達も休まれて、動ける者で警備などに回っております
それに騎士団長は、王妃様の傍におられますので」
「騎士団長…………、ネネの事か?」
俺が尋ねれば、アントは、頷いた
それにしても念話で状況を共有するって、言ってもこの信頼のされ方は、どうかと思うぞ?
まぁ、それは置いておいて、アントのご厚意に素直に甘えよう
「それじゃあ頼む」
「はい、それではユーマ様、それにアカツキ様
まずは、フォレスティアの産地をご紹介しましょう」
そう言い、アントが先導すれば、俺たちは、その後ろについて行く事にした
移動して行く中、すれ違うエルフの女性達が俺達を見てくるが………、気にしないでおこう………
「ふふふ、里の女性の皆さんは、ユーマ様達の事を気にしてるみたいですね」
「そりゃあ、オーガとオークだからな
警戒はするさ」
「そういう意味では、無いのですが
まぁ、いいでしょう」
俺の言葉に、やや意味深な事を言うアントに、首を傾げながら進めば、ある店舗に着いた
「ここがこの里で、一番、取ってきた薬草等を、加工、精錬している所です」
そう言い、中に入れば、数十人のエルフがカウンターらしい所に居たり、奥で作業していたりしている
そしてカウンターには、瓶などに入った品が置いてある
「ここでは、こうして皆が集めた鉄や薬草、食料を加工したりしております」
「中は、意外と広いんだな」
「こう見えて、中は、職人達の作業場などもありますので」
アントがそう言えば、ツッキーがカウンターの瓶を一つ、取れば、その瓶に入っている緑色の液体を見ていた
「これは、回復のポーションか?
しかもコレは、回復ハイポーションってところか」
「お目が鋭い、その通りです
そちらに置いてある物は、全て回復ハイポーションでございます」
ツッキーがその瓶を元に戻せば、隣を見た
俺も釣られて、そっちを見れば、箱が重なっていた
「まさかその箱、全てがそうなのか?」
「その通りでございます」
そう言い、アントは、瓶を一つ、取れば、懐からコインを出せば、カウンターに居るエルフに渡した
「このハイポーションは、こうして皆が狩りに行く前などにここで買われます
基本的には、カウンターに置かれている物が、商品ですね」
そう言われ、カウンターを改めて見れば、回復のハイポーションと状態異常を治すポーション…………
あとは砥石などが売られている
その奥の方では、カウンターに大きな箱が置かれ、エルフ達が何か話している
どうやらここでは、頼めば加工などはしてくれるみたいだ
「このフォレスティアには、エルフの他に旅人が来るのか?」
「いいえ、この国に来るのは、ほぼ帝都の方です
フォレスティアは、帝都としか、交友がないので」
俺が聞けば、アントは、腕を組み、首を傾げながら答えてきた
どうやら、その事は、王妃とかでないと、分からんと言うことか…………
「ところでツッキー、オメェは何やってんだ?」
考えていた思考を一旦、片隅に置いて、振り返り、ツッキーを見た
先程からカウンターの品を物色していたが、今は、動きを止めていた
「おい? どうした?」
声をかけても反応が返ってこない為、ツッキーに近づいて、顔を覗き込んだ
「って!? 何、いい歳してガチ泣きしてんだ!?
しかも大号泣じゃねぇか!?」
顔を覗き込めば、ツッキーがめちゃくちゃに泣いていた
いや、泣いてるというよりも、まるで前世で一緒に動物モノの映画を偶々、見た時と同じ様に大号泣していた
…………俺は、ツッキーを見て、泣けなかったけどな
「おまっ………、これが泣かずにいられるか…………
お前もコレを食ってみろ?」
そう言って、俺に木の実を渡してきた
その実は、手のひらサイズの少し大きな木の実で、外は硬い殻に覆われている
カウンターのエルフを見れば、「どうぞ」、と笑っていたので、感謝しつつ、殻を割ってみた
割ってみれば、中に少し黒い液体が入っていた
それを指に付け、匂いを嗅いでみると、それは何処となく懐かしい匂いがしていた
(この匂い………、まさか………)
匂いでもしかしてと思い、液体を舐めてみた
「っ、これ………、醤油だ………」
それは、日本人なら馴染みのある醤油の味をしていた
スーパーで売られてる物より、少ししょっぱくないが、何処となくコクはこっちの方が深いように感じた
「如何ですか?」
「あ、あぁ……….、俺達の故郷に似たような味があるから………、懐かしく感じていた」
エルフの女性が話しかけてきて、俺は咄嗟に答えたが、視線は、木の実から離れなかった
「ふふふ♪
そちらの【ショーの実】がお気に召したようでよかったです♪」
「あぁ、この味…………、間違うはずがねぇ………」
「ショーの実がお気に召したのでしたら、こちらの実も気に入ると思いますよ」
カウンターのエルフが、ショーの実とは、違う実を渡してきた
こちらも固い殻に覆われてるから、割ってみれば、中に茶色の果肉とは、言えないが柔らかそうな実がある
指につけて、舐めてみる………
「っ、味噌だ………、あぁ、味噌の味だ……」
ソレは、味噌の味がした
少し赤味噌に近い味がしているように思えたが、やっぱり日本人だからか、俺は無意識に頬を緩めていた
「ユーマ様、そちらもお気に召したようですね」
「なぁ、この二つの実、少し多めに欲しいんだが、拾えるところはあるか?」
「あっ、よろしければどうぞ、お持ちになってください」
アントに尋ねると、カウンターのエルフがカウンター奥にあった箱を持ってくれば、そう言ってきた
「いいのか?」
「はい、ぜひ、どうぞ」
「そうか………、ありがとう」
是非と言われ、ご厚意にありがたく思いながら礼を言えば、カウンターのエルフが微笑んだ
(…………何か顔が赤いがどうしてた?)
そう思いながらも箱をインベントリホールに入れると、ツッキーが近づいてきた
「ユーマ、さっきエルフからその実の苗木を貰ったから、拠点で育てられるぞ」
「分かった、でもここには何度か、来ることになりそうだな」
「だな!! 何か掘り出し物を探す気分だ!!」
ツッキーは、ワクワクしながらそう言う…………、そんなツッキーを見て、俺は若干、呆れていると、アントが俺を見てきた
「それでは、次に案内しますね」
そうしてアントの案内で里のあらゆる所を巡った
里の教会やら、騎士の鍛錬場………
更には、農林場や子供の保育所まで………
本当に様々な場所に案内された
「つっかれたー…………」
テーブルに前のめりに体を倒し、ツッキーが呟いた
気付いた時には、空は、オレンジ色に染まり、夕暮れになっていた
時刻に気付けば、アントが一休みを提案してきて、今は、小さなカフェで一休みをしていた
小さなカフェだが、自然が豊かで、大木を利用して、経営している所とか、何処となく、俺の好きだった店に似ている気がした
そしてここでエルフがよく飲んでいるハーブティーと、クッキーを頂けば、アントが俺たちを見て、微笑んでいた
「今日は、充実した一日になりました」
「俺達もだ、このフォレスティアのいい所を見させてもらった」
「そう言ってもらえて、嬉しいです」
俺が素直にそう言えば、アントは、嬉しそうに笑った
ふと、ずっと気になっていた事を思い出せば、アントに聞いてみようと思った
「アント、ずっと気になっていたんだが」
「何故、男のエルフが見当たらないのか………、ですね」
聞く前にアントがそう言ってきて、俺は驚愕の表情をし、アントを見た
アントは、笑みを浮かべながら顔色も変わっていないから、その内心が読み取れなかった
「あぁ、答えにくかったらすまん」
「いいえ、単純な答えです
エルフ族は、男が産まれにくいんですよ
もちろん私のように男のエルフも居ますが、比率が女性の方が多いのです」
アントは、そう言いながら里を眺めている
その横顔は、自分の種族に誇りを持っている一人のエルフ族だった
「ただエルフ族での婚約の際にここ、フォレスティアより更に行った所に祠があるのですが、そこで祈りを捧げると、出産の比率が同じになるのです
だから、婚約をしたエルフ族は、その祠に行って、初めて夫婦になると言われています」
「なるほどなぁ、その祠には、何らかの逸話があるんだな」
アントの話が終わると、いつの間にか、復活したツッキーが腕を組みながら呟いた
(しかし祠か………、子宝の加護とかあるのかもな………)
そんな事を思っていれば、アントが立ち上がった
「そろそろ日が落ちますので、城へ、戻りましょう
ここでは、すぐに日が沈みますので」
支払いを済ませて、アントと共に城へ、戻った
フォレスティアを見て、歩いたから疲労があるが、フォレスティアの良いところを見て回れたから、いい一日だったと感じる
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