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第一章

オーガとオーク エルフの里防衛戦

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猛スピードで樹海の上を飛んでいけば、視界の先に黒煙が見えた
ツッキーに見えるように合図を出した後、高度を下げていき、更にスピードを上げた

視界の端では、右側からツッキーが俺以上のスピードを上げて、エルフの里を超える勢いで飛んでいく

確認終えて、前を見れば、視界の先にボロボロになった結界が見えた
エルフの里は、普段は不可視の結界に包まれていて、上空からでも見えないようになっている
ゲームの設定では、古代から引き継いでいっている結界を姫が引き継ぎ、里を守っているって事になっていて、本来ならドルゼザード樹海の暗号を解いてから、初めて里が見える様になっている

そして視界の先のエルフの里は、里と言うより、もう一つの国だ

里の門の方を見れば、大勢のエルフの兵士達が傷だらけで倒れているが、まだ息はあるみたいだ
そして少し離れた所では、女性のエルフがオークに襲われて、服を破られている

インベントリホールから獲物を取り出せば、それを体を回転させ、遠心力を利用し、投擲すれば、僅か五秒ぐらいであろうか…………
そのオークの首を捉え、断ち斬った
女性のエルフは、目の前の事に驚いてる様子が見えるが、そんなのをお構いなしに首を失ったオークの体を蹴り飛ばした
蹴り飛ばしたオークの体は、樹海を抉りながら吹き飛び、見えなくなった

それを確認すれば、またインベントリホールを開いて、布を取り出せばすぐ後ろにいる女性のエルフに羽織らせた

「な、何を」

「さっさと下がれ!!」

女性のエルフが何か言いそうになってるのを遮り、右手を翳せば、投擲した獲物を呼び寄せた
右手にズシっと重みを感じ、見れば、それは紅く脈打つ、躍動している大きな大剣だった

「たまたま出来た品物だが、悪くねえ斬れ味だな………
そうだな…………、名前はつけないつもりだったが、付けるとしたら………、【暴食・グラゴリー】………
我ながら厨二病満載だな」

呟きながら笑えば、いつの間に接近してきたのだろうか、オークの兵士、六匹が俺目掛けて、剣を振り下ろそうとしていた
だが、軽くグラゴリーを振り抜けば、一瞬にしてオーク達、六匹全員が細切れになった

《スキル・微塵斬 発動》

(改めて思うが、攻撃スキルがエグすぎる…………
雑魚なら一瞬じゃねえか)

改めて、攻撃スキルの凄さに圧巻されながらふと、オーク兵士の残骸を見れば、その残骸から何か赤いモノが出て、それがグラゴリーに吸い取られている感じがした
他の残骸を見ても、同じ事が起きていて、やがてその残骸は、赤い粒子になって消え去り、グラゴリーに吸収された

(は? 何だこりゃ!?
あまりに現実味がなさすぎて、言葉に出なかったが、こんなことは今までなかったぞ!!)

あまりの衝撃的な光景に言葉を失っていれば、目の前にウィンドウが現れた

《暴食・グラゴリーの固有スキル 【暴食】 発動
スキル説明・斬り伏せた相手を喰らう》

その説明を見て、俺は思わず言葉を失った
どうやら俺が今、持ってるグラゴリーの固有スキルみたいだ
そしてその固有スキルは、恐らくこの世界では、最も恐れられるスキルでもある

(俺は、なんつうバケモノを打ったんだ…………
この固有のスキル………、簡単に言えば、斬り殺せば、その死骸も、残骸もグラゴリーが食って、無くなるって事だろ?
………………食料集めには、向かんな)

俺が苦笑いを浮かべていれば、今度は、オークの軍勢に混じり、魔物の群れが俺目掛けて突っ込んでくるが、突然、空から重力の槍達が降り注ぎ、魔物の群れが次々に倒れていく
そして振り終えれば、そこには魔物の死骸の山が出来ていた

「ナイスタイミングだ ツッキー」

「うっせぇよ テメェは」

笑いながら言えば、俺の隣にツッキーが降りてきた
実は、右側から向かったツッキーは、エルフの里を超えれば、すぐに上空に向かえば、魔力を溜め、上から攻撃する計画だった
そしてそれはうまく噛み合い、こうなったわけだが…………

インベントリホールにグラゴリーをしまえば、代わりに二本の刀を取り出した
この二本の刀は、俺が作った中でも結構、出来の良い2本だ
そして前を向けば、まだ魔物の群れがこちら目掛けて、突っ込んできていた

「《二刀流 次元斬り》」

刀をクロスに構え、ソレを大きく振りかぶれば、一気に振り下ろした
すると、X型に次元が歪んだと思えば、次の瞬間、魔物の群れは、一斉に斬り刻まれ、地面に転がった

「キリがねえな」

「あぁ、流石にジリ貧が過ぎるから、さっさと親玉を討伐したいが」

さっきの一撃でかなりの数は、始末した
が、まだ魔物の群れがいる様子だ…………
親玉を探してるのには、理由がある
【プリンセス・セレナーデ】では、無闇に戦うより、その群れのボスを倒せば、戦闘を簡単に終われる仕様になっていた

だからツッキーは、周りを見渡しながら親玉を探していた

「ん?」

俺も目を凝らし、探してれば、樹海の少し入った所に不自然なモノが見えた
それは空中に描かれている魔法陣の様だが、禍々しい雰囲気を醸し出していた

「何だありゃ?」

「アレは、【魔獣巣の穴】…………、だ………」

ソレを見ながら首を傾げれば、突然、後ろから声がして、見れば、先ほどオークに襲われかけていたエルフがそこに立っていた

「何だそれ?」

「魔物供の巣穴と通じている転移陣だ…………
アレを破壊しない限り、魔物は、絶えず増え続ける………」

ツッキーが聞けば、エルフは少し怯えながらも答えてくれた

(まぁ、オークに襲われかけてたんだから仕方ねえな…………)

エルフの心境を理解しつつ、俺はツッキーを見た

「ツッキー、ここからあの転移陣、破壊してくれ」

「あいよ テメェこそ、ライン維持しろよ?」

「誰に言ってやがる」

ツッキーのつまらない言葉をあしらいつつ、魔物の群れに突っ込んでいく
ツッキーは、左足を前に出せば、槍を引き、集中していく

「さーて、仕事は、果たさせてもらうぜ」

魔物の群れに十分、近付いた事を確認すれば、一気に踏み込み、跳び上がった
そして魔物の群れの上まで来れば、二刀を逆手に持ち、構えた

《スキル  烈風圧 発動》

スキルが発動すれば、俺は思いっきり二刀を振り上げれば、魔物の群れが一斉に上空に打ち上げられれば、その後、突然、圧死していく
上空に打ち上げられた瞬間、風の壁が生成され、それが暴風の如く、魔物を挟み、圧死させたのだ
地面に降り、俺はツッキーを見れば、一気に右へ、跳んだ

《スキル トップガン 発動》

その瞬間、ツッキーが槍を思いっきり突けば、風の衝撃槍が一直線に放たれ、地面を削りながら進み、転移陣を捉えた
その瞬間、半円状に風のドームが作られ、その後に衝撃が遅れて、やってきた

咄嗟にエルフの元へ、戻り、彼女を抱き寄せ、庇いながら、風のドームを見れば、魔物の群れが次々に風のドームに巻き込まれ、刻まれているのがよく見えた

そしてドームが消えれば、そこには、クレーターしか残されてなかった

「お前…………、威力強すぎだろ…………」

「わ、悪りぃ
抑えめに放ったんだけど…………」

ジトーと、ツッキーを見れば、ツッキーもその威力に唖然としていた
どうやらツッキー自身も相当、抑えて、スキルを放ったんだが、想定外の威力をしていたのだろう…………

そんなのを考えながら、前を向けば、魔物の群れは、全滅………、増える様子も見て取れない

「……………ツッキー」

「あぁ、分かってる」

ゆっくりとエルフを離して、呟けば、二人同時に武器を上へ、振り抜く
すると火花と同時に槍と衝突し、弾けば、槍は、地面に転がっていった
その槍を投げた張本人と見られる方を見れば、そこに居たのは、先程までのオークよりも一回り大きなオークがそこに居た

「【オークキング】…………、いや、デザイン的に【オークナイト】か?」

そのオークは、何処かの死体から剥ぎ取ったのであろうか、所々に違うデザインの鎧を着、背中には、先ほど投げてきた二つの槍と同じやつが二本…………、そして大きな大剣が背負われていた
その姿に隣のツッキーが顎に手をやり、ブツブツと呟いていれば、オークナイトは、素早く槍を一本、背中から取れば、ツッキー目掛けて、投擲してきた
だが、飛んできた槍は、ツッキーを突き刺す前に人差し指で止められた

「………へぇ、結構いい槍だな」

槍を掴み、観察するツッキーを尻目にまたオークナイトが槍を投擲しようとしてきた
それを見れば、俺が斬撃を飛ばせば、オークナイトは、その巨体とは違い、素早い動きで駆け出せば、斬撃をかわした

「なるほど…………、結構、素早いな」

「どうする? ユーマ
二人で攻めるか?」

「いいや、ちょっと試したい事があるから俺一人でいい」

オークナイトの素早い動きにツッキーが槍を構えながら聞いてくれば、それを静止しながら前へ、出た
俺の様子を見て、ツッキーがこれから俺が何をするのか、察したのか、ニヤリと笑えば、エルフの元へ駆けていき、更に下がらせた

(分かってるじゃねえか)

ツッキーの行動を見て、ニヤリと笑えば、俺は、歩きながらスキル欄を開く
そして…………


「スキル使用」

《攻撃、防御、スピード等の強化スキル 連続発動》

スキルが発動していく度、体に力が湧き上がっていくのを感じていく
その度にワクワク感が溢れていき、笑みが溢れる
そして最後のスキルが発動すれば、目の前が暗くなった
見ればオークナイトが背中の大剣を振り翳し、俺目掛けて、振り下ろしてきていた

(さっきまで離れてたけど、どうやら強化スキルを使ったのか)

振り下ろされた大剣を指で挟むと、余程、凄い衝撃だったのだろうか…………
足元の地面にヒビが走った
オークナイトを見れば、俺に大剣を防がれた事に驚いている様子だったが、そんなのはお構いなしに俺は、拳を握れば、オークナイトの顔面をぶん殴った
その瞬間、オークナイトの顔面は一瞬の内に跡形もなく消え去った

「……………うわぁ、試しに全ステータス上げたらコレかよ…………」

その有り様に物凄く引きながらオークナイトだった体を地面に置けば、周りを見渡した

「終わったな」

「そのようだな」

気配察知で、気配0と確認し、小さく呟けば、ツッキーが話しかけてきた
振り返って見れば、ツッキーが魔物の亡骸を既に一箇所に集め終えていて、俺の方に近付いてきた

「オークは、大量
これで一年分は保つな」

「一年かよ…………
まぁいい、さっさと入れろ」

ツッキーが笑いながら言ってるのを聞き流しながら俺はオークの亡骸をインベントリホールに転移で入れていく

(こういう時、インベントリホールが助かる
中は時間停止状態だから賞味期限を気にせずにいつでも食えるしな)

「あ、あの」

インベントリホールの便利さに改めて感動していれば、後ろから声をかけられた
見れば、先ほどのエルフがそこに居た
いや、後ろには大勢のエルフ達が居るが…………

「助けていただき、ありがとうございます」

「いや、俺達は、偶々、この場面に遭遇しただけだ
感謝は要らん」

「いや!! そうは行かん!!
ぜひ、私達の里に来てくれ!!
里長が会いたがっております!!」

「「えぇ~……………」」

エルフが勢いよく迫ってきて、早口で喋ってくれば、唖然としながら俺達は、そのエルフに引っ張られていった
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