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第一章
悪役令嬢 友の母を救う
しおりを挟む善草を探し、盗賊に襲われた所をオーガとオークに救われ、街に戻ってきた私は、オーガに渡された薬を持ち、街を駆けていた
馬車を用意したかったのだけれども、騎士の皆様は、盗賊を騎士団本部に連行するのに忙しいと考え、騎士達を待たずに屋敷を飛び出していた
街中を屋根伝いに駆けて行き、たどり着いた場所は、街の西区にある屋敷だった
その屋敷の扉を叩き、出てきたメイドに事情を説明し、中へ入れば、一目散に私は、ある一室に飛び込んだ
「【ユリア】!!」
「っ、エルミナ!?」
中に入れば、ベットを囲む様に大人達と医師と看護婦が居て、その輪から一人の少女が私を見れば、駆け寄ってきた
少女の名は、【ユリア・パフェット】
この屋敷の伯爵の一人娘で、私の親友の一人よ
乱れた呼吸を整えつつ、私は、ユリアに手に持った薬の入った袋を押し付けた
「これは?」
「これ………、飲ま、せて…… はぁ、スゥー
薬、だか、ら」
言葉が途切れ途切れになりながら私が説明すれば、薬と言う単語が聞こえたからか、医師がユリアに駆け寄り、袋を受け取り、薬を確認している
「こ、これは!? 伝承に書かれていた秘薬!!
これならば!!」
医師は驚きの声を上げているが、すぐにベットに寝かされている女性に駆け寄り、薬をその女性の口に流し込み、水を含ませ、飲み込ませた
すると、一瞬、女性が苦しそうにしたと思えば、女性から黒い霧が出たと思えば、空中に球となれば、消滅した
「…………………ん」
「お母様!?」
先ほどの光景に静まり返る部屋だったけど、その静寂を破る様に女性の声がすれば、ユリアが女性に駆け寄った
すると、ゆっくりとその女性の瞼が開き、動けば、ユリアをしっかりと見た
「ユリ、ア?」
「っ!! お母様ぁぁ!!」
口を開き、掠れた声だが、ユリアの名前を呼んだ瞬間、ユリアは大粒の涙を流しながらユリアの母様に抱きついた
そして周りの人達も喜び合い、メイド達は嬉し泣き、様々だ
そして私もようやく息を整え終えれば、一人の男の人が私の前に来て、膝を付けば、頭を下げてきた
「ユリアの親友よ
改めて礼を言わせてくれ ありがとう…………
君のお陰で私は【アリフィ】を………、妻を失わずに済んだ」
「いえ、私はユリアの為にできる事をやっただけですので、パフェット伯爵様が頭を下げる事はありませんわ」
「いや、それでも下げさせてくれ
ここで下げなければ、私、【アズリエル・パフェット】の名が許さないのでな」
そう話してれば、ユリアが私に抱きついてきた
「ありがとう、ありがとう………
エルミナぁぁ………」
「いいのよ、ユリア
よかったわね」
泣きじゃくるユリアの頭を撫でながら心からホッとして、私は安心感に満ち溢れていた
それからしばらくしてユリアは、ユリアの母様に添い寝する様に泣きつかれて、眠ってしまった
私は、パフェット伯爵に礼を言われつつ、すぐさまその場を後にした
あのままあそこに居たら、色々と質問攻めにあってたと思うし…………
屋根を駆け、自分の屋敷に戻り、扉を開ければ一人の男の人が立っていた
「おかえり、エルミナ」
「はい、只今、戻りました
お父様」
そう言い、私は、姿勢を正せば、お父様に礼をすれば、お父様は、声を出して、笑った
「全く、父親なのだからそう畏まらなくていいのに…………、エルミナは律儀だな」
そうしてお父様は、私の頭を撫でれば、抱っこしてくださり、歩き出した
そうして来た場所は、家族が集い、食事を取る部屋だった
お父様が部屋に入れば、風が過ぎたと思えるくらい一瞬にして、私は、お父様から女性に抱き抱えられ、頬ずりされていた
「エルミナぁぁ、怖かったわよねぇ?」
「お、お母様、私は大丈夫ですので」
私はあまりに一瞬のことだったので驚きながらもお母様を見ながら言ったが、お母様はやめてくれなかった
「オホン、【アルミナ】
エルミナが困っておるだろ?」
「そうは言っても、【カーラス】
盗賊に襲われたって、報告を聞いて、貴方も慌ててたじゃない」
「む、それは仕方ないだろ」
お父様がお母様を落ち着かせようと、言ってくれたが、お母様の返り討ちで、頭を掻きながら何も言えなくなっていた
昔からお父様は、お母様に弱いところがあるから…………
そんな二人を見て、私はクスッと笑えば、お母様は私を椅子に座らせてくれた
「しかしパフェット伯爵の奥方を治す為とは言え、まさかあの古文書を解読するとは…………
流石は、私の娘だな」
「いえ、お父様
そんな大層な事はしておりません」
「いや、お前がした事は、歴史的快挙なのだ
これは誇ってもいいのだよ」
そう言いながらお父様は、私の頭を撫でてくれてるが、私は困っていた
(言えない…………
本当は、スキルの《翻訳》を使って、解読したって…………)
そう………… 私は、この世界……………、乙女ゲームとギャルゲーの世界で、エルミナ・カタストロフィーと言う悪役令嬢に転生した転生者なのです
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