上 下
11 / 33
第一章

悪役令嬢 友の母を救う

しおりを挟む

善草を探し、盗賊に襲われた所をオーガとオークに救われ、街に戻ってきた私は、オーガに渡された薬を持ち、街を駆けていた
馬車を用意したかったのだけれども、騎士の皆様は、盗賊を騎士団本部に連行するのに忙しいと考え、騎士達を待たずに屋敷を飛び出していた
街中を屋根伝いに駆けて行き、たどり着いた場所は、街の西区にある屋敷だった
その屋敷の扉を叩き、出てきたメイドに事情を説明し、中へ入れば、一目散に私は、ある一室に飛び込んだ

「【ユリア】!!」

「っ、エルミナ!?」

中に入れば、ベットを囲む様に大人達と医師と看護婦が居て、その輪から一人の少女が私を見れば、駆け寄ってきた

少女の名は、【ユリア・パフェット】
この屋敷の伯爵の一人娘で、私の親友の一人よ
乱れた呼吸を整えつつ、私は、ユリアに手に持った薬の入った袋を押し付けた

「これは?」

「これ………、飲ま、せて……   はぁ、スゥー   
薬、だか、ら」

言葉が途切れ途切れになりながら私が説明すれば、薬と言う単語が聞こえたからか、医師がユリアに駆け寄り、袋を受け取り、薬を確認している

「こ、これは!? 伝承に書かれていた秘薬!!
これならば!!」

医師は驚きの声を上げているが、すぐにベットに寝かされている女性に駆け寄り、薬をその女性の口に流し込み、水を含ませ、飲み込ませた
すると、一瞬、女性が苦しそうにしたと思えば、女性から黒い霧が出たと思えば、空中に球となれば、消滅した

「…………………ん」

「お母様!?」

先ほどの光景に静まり返る部屋だったけど、その静寂を破る様に女性の声がすれば、ユリアが女性に駆け寄った
すると、ゆっくりとその女性の瞼が開き、動けば、ユリアをしっかりと見た

「ユリ、ア?」

「っ!! お母様ぁぁ!!」

口を開き、掠れた声だが、ユリアの名前を呼んだ瞬間、ユリアは大粒の涙を流しながらユリアの母様に抱きついた
そして周りの人達も喜び合い、メイド達は嬉し泣き、様々だ

そして私もようやく息を整え終えれば、一人の男の人が私の前に来て、膝を付けば、頭を下げてきた

「ユリアの親友よ
改めて礼を言わせてくれ ありがとう…………
君のお陰で私は【アリフィ】を………、妻を失わずに済んだ」

「いえ、私はユリアの為にできる事をやっただけですので、パフェット伯爵様が頭を下げる事はありませんわ」

「いや、それでも下げさせてくれ
ここで下げなければ、私、【アズリエル・パフェット】の名が許さないのでな」

そう話してれば、ユリアが私に抱きついてきた

「ありがとう、ありがとう………
エルミナぁぁ………」

「いいのよ、ユリア
よかったわね」

泣きじゃくるユリアの頭を撫でながら心からホッとして、私は安心感に満ち溢れていた
それからしばらくしてユリアは、ユリアの母様に添い寝する様に泣きつかれて、眠ってしまった
私は、パフェット伯爵に礼を言われつつ、すぐさまその場を後にした
あのままあそこに居たら、色々と質問攻めにあってたと思うし…………

屋根を駆け、自分の屋敷に戻り、扉を開ければ一人の男の人が立っていた

「おかえり、エルミナ」

「はい、只今、戻りました
お父様」

そう言い、私は、姿勢を正せば、お父様に礼をすれば、お父様は、声を出して、笑った

「全く、父親なのだからそう畏まらなくていいのに…………、エルミナは律儀だな」

そうしてお父様は、私の頭を撫でれば、抱っこしてくださり、歩き出した
そうして来た場所は、家族が集い、食事を取る部屋だった

お父様が部屋に入れば、風が過ぎたと思えるくらい一瞬にして、私は、お父様から女性に抱き抱えられ、頬ずりされていた

「エルミナぁぁ、怖かったわよねぇ?」

「お、お母様、私は大丈夫ですので」

私はあまりに一瞬のことだったので驚きながらもお母様を見ながら言ったが、お母様はやめてくれなかった

「オホン、【アルミナ】
エルミナが困っておるだろ?」

「そうは言っても、【カーラス】
盗賊に襲われたって、報告を聞いて、貴方も慌ててたじゃない」

「む、それは仕方ないだろ」

お父様がお母様を落ち着かせようと、言ってくれたが、お母様の返り討ちで、頭を掻きながら何も言えなくなっていた
昔からお父様は、お母様に弱いところがあるから…………
そんな二人を見て、私はクスッと笑えば、お母様は私を椅子に座らせてくれた

「しかしパフェット伯爵の奥方を治す為とは言え、まさかあの古文書を解読するとは…………
流石は、私の娘だな」

「いえ、お父様
そんな大層な事はしておりません」

「いや、お前がした事は、歴史的快挙なのだ
これは誇ってもいいのだよ」

そう言いながらお父様は、私の頭を撫でてくれてるが、私は困っていた

(言えない…………
本当は、スキルの《翻訳》を使って、解読したって…………)


そう…………     私は、この世界……………、乙女ゲームとギャルゲーの世界で、エルミナ・カタストロフィーと言う悪役令嬢に転生した転生者なのです

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

悪役令嬢が死んだ後

ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。 被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢 男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。 公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。 殺害理由はなんなのか? 視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は? *一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...