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第一章

オーガ オークに出会う

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俺は、目の前のオークが言った言葉に頭が追いついてなかった
急に言われた事で頭がフリーズ状態になっていたが、徐々に落ち着いてきた

(今…………、コイツ、何ていいやがった?
『転生者か』、だと…………、何でコイツがその単語を知っている?)

頭を働かせ、思考をまとめていくと、ふと、シェアの言葉を思い出した

『《この世界の住民は、この通信機を認識されません
もし認識されたのならば、それは貴方以外の転生者です》』

(もしかして…………)

ゆっくりと手を伸ばし、腰のケースからスマホを取り出せば、それをオークに見えるように前に出した

「お前は、コレが見えてるのか?」

「っ、やっぱり!!」

スマホを見れば、オークは、嬉しそうな顔をし、腰に手を回せば、俺と同じようにスマホを見せてきた

「よかったぁ~…………
もし違ってたらと思ったら、すげえビビったぜ……………」

そして安堵したように笑えば、こちらに近づいて来た
近付いてくれば、ようやく容姿が詳しく見えた
確かに黒い毛に覆われてるが、見たところ、簡単な鎧を作っていたのか、腰と手に木の簡単な防具が付いていた

「まさか俺以外の転生者に会えるとはな…………」

「それは俺のセリフだっての
ここに来て、三日でようやく人に会えた」

ボソッと呟いた言葉を聞かれ、オークはそう言いながら俺を見下ろしていた
実際、俺も今は180ぐらいあるだろうが、オークの身長はそれ以上に大きかった

「三日前だと?」

「あぁ、丁度、三日前だな」

そのオークの話だと、オークもシェアに転生してもらって、この世界に来たらしい
初めは困惑したが、スキルなどを駆使して、ここまで生活をしてきたとの事だ
そしてその防具は、やはり自分で作って装備したらしい

(それにしても………)

オークの話を聞きながら、不謹慎だが、安心感が俺を満たしていた
見知らぬ世界…………、見知らぬ場所…………、そして知り合いが誰も居ない…………
そんな中、同じ境遇の奴に出会えて、ホッとしてしまったのだろう

「あっと、自己紹介がまだだったな」

一頻り、オークが話終えれば、ふと、思い出したようにそう言って、手を差し出してきた

「【アカツキ・ロータス】だ
まぁ、日本では【藤崎暁[ふじさきあかつき]】って、名だ」

手を取ろうとした俺だったが、オークの名を聞いた瞬間、完全に動きが止まった

「………藤崎………、暁…………?」

「ん? そうだが」

「○○高校で女達にチョコをねだり、パンイチにされ、部屋で落ち込んでいた?」


「ちょっ!? 何でそれ………を………、まさか…………」

まさかと思い、聞けば、そのオークは、一瞬にして驚きの表情をした

「お前、悠馬ぁぁぁぁあ!?」

「ツッキーぃぃいぃぃぃ!?」

しばらくの静寂の後、洞窟内では、俺達の驚愕の叫び声が響き渡った
驚くのも無理も無い…………
今、目の前にいるこのオーク………….、いや、アカツキは…………
俺の友人であり、ギャルゲーである【プリンセス・セレナーデ】を薦めてきた張本人だからだ


あの後、とりあえず落ち着いた俺は、アカツキを連れ、拠点である家に帰ってきていた
あのまま、あそこで話すのは危険だと判断したからだ

「まさかお前までも死んで、ここに転生してるとはな」

「それはこっちのセリフだ
出張で他県に行ってるお前がまさか死んでるとは、夢にも思っていなかったからな」

そう言いながら錬金術で作ったコップに水を入れ、アカツキの前に置き、椅子に座れば、アカツキを見た

「でだ…………、お前、何で死んだんだよ?
まぁ、シェアに転生させてもらったとは聞いたけど」

「聞いてくれよ!!
ひどいんだぜ!! 仕事先に向かおうとしたら、頭の上に看板が落ちてきて、それでポックリだぜ!!」

アカツキは、そう愚痴りながらテーブルに項垂れた
まぁ、コイツの死に方も酷いもんだな………

(俺と違って即死だけどな…………)

俺はあの浮遊感を味わってから死んだから、実感が凄まじかったんだがよ……………
そう思っていたが、首を左右に振り、息を吐いた

「ツッキー、ここが何処だかは知ってるだろ?」

「あぁ、まさか俺が夢中になってたギャルゲーに転生されるってのは、嬉しいがオークって所がな…………
モブでもないし………」

「それなら俺もだろ…………
で、もう一つの方はプレイは?」

「一応、一通りはしたぜ
薦められたもんだからやってみたが、意外と乙女ゲームも悪くねえな」

水を飲みながらツッキーがそう言えば、俺はガッツポーズをした
少なくとも、俺はまだその両方を遊び尽くしてないし、そもそも攻略サイトを見ながらやっていたから、知識は、薄っぺらいモノばかりだ
そんな中、ツッキーの知識は、今の俺にとって、大事な攻略本と言えるだろう
そうしないともしもの場合があるかもしれないからな……………

「ツッキー、俺が言いたい事…………、分かってるな?」

「あたぼうよ
何年、てめえと連んだと思ってんだ」

聞けば、ツッキーは、ニヤリと笑い、どちらかも問わず、ガッチリ腕を交わした

「「一緒にこの世界を楽しむぞ」」


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