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本編
イグニスの訪問
しおりを挟むハーピィの国から帰ってきて、数日………
ようやくのんびりとした日常を噛み締めていた今日この頃…………
俺は、自室にて、ローブを着れば、机に置いてある手紙に目をやった
これは、イグニスからの手紙でハーピィの国から帰ってくる前日に届いたモノらしい………
内容を確認すれば、今日、イグニスがここに来るとの事、ファンナとオシュアの事を確認する事も書かれていた
確かに…………、ファンナ達の事は、後先に問題になるかも知れない………
その事を予知したイグニスは、速攻で行動したと考えられる
(だけど、母さんに護衛を頼むなんて…………)
イグニスの事は、理解している………
王になり、簡単に単独で行動が出来ないから、護衛をつけなければならないのは、理解している…………
だけど…………、現時点で国の最高戦力の一人でもある母さんを護衛にするなんて…………
かなり慎重過ぎると思うが………、イグニスならあり得る話だな………
それに母さんも、ここにそろそろ来る頃でもあったし、その次いでだろうな
「ノア、馬車が見えてきたわ」
「あぁ、分かった」
着替えを終え、部屋を出た時、丁度、ティアが部屋前に来ていて、そう言ってきた
頷き、部屋に鍵をかけてから、簡易転移を使い、孤児院前に転移すれば、遠くに馬車が来ているのが分かった
その馬車が孤児院前に来ると、ゆっくりと扉が開いた
「よ、よぉ…………、久しぶり……………」
「何か既にボロボロになってるんだが!?」
馬車から下りてきたのは、イグニスで間違いないんだが…………
その服装は、シワが出来ていて、更に顔も窶れ、髪はボサボサのまま……………
見るからにボロボロになってるのが、分かる
「だ、大丈夫!?」
「あー、気にしないでくれ…………
ここに来る前に仕事を終わらせたりしてただけだから…………」
ティアが慌ててイグニスの傍に行き、疲労回復魔法をかければ、イグニスは、乾いた笑いでそう答えた
「……………イグニス
お前…………、最後に寝たのいつだ?」
「えーと……………、四日前…………?」
「今すぐに寝ろ!!」
あまりの惨状に、嫌な予感がし、聞き、イグニスがそう答えた瞬間、俺は思わず孤児院を指差しながら叫んだ
「ご、ごめんね、ノア
あんまりイグニスを責めないで」
「アメリア……………」
そんなやりとりをしている中、イグニスの影から声が聞こえれば、アメリアが顔を覗かせてきた
……………正直、イグニスに隠れて、見えなかったから、ほんの少し驚いた
「書類とかは、殆ど終わらせているよ
ここに来る前も四日分は終わらせて、ちゃんと睡眠とってきてあるよ」
「それなのに馬車の中でまで仕事すんじゃねぇよ…………
国王とはいえ、お前は人間だからよぉ…………」
「いいえ、馬車では、仕事はしてなかったわよ」
その声に視線を向ければ、母さんが仕事着として着ているローブをはためかせながらコチラに来ていた
「は?
じゃあ何でイグニスの野郎、ボロボロになってんだよ?
仕事を持ってきてないのなら少なくとも休めていただろ
アイツ、馬車酔いはしなかったろ?」
「それについては、ねぇ…………」
俺が聞けば、母さんが珍しく口籠もって、視線をアメリアに向けた
母さんの視線を追い、アメリアを見れば、アメリアの顔が真っ赤になっていた
「アメリア、どうした?」
「な、ななな何でにゃいでしゅ!!」
聞くと、アメリアは、不自然に噛みながらそう言う為、俺は思わずティアと見合い、首を傾げた
ティアもアメリアの様子を不思議に思っているみたいだ
「……………貴方達は、しばらくそのままでいてね」
そんな俺らを母さんが、なんとも言えない表情で見ていたのには、気づかなかったが…………
「いやー、悪いな
ようやく大丈夫になったわ」
孤児院に入り、ティアの魔法のお陰か、イグニスは顔色が良くなり、見るからに元気になった
何故、ボロボロになっていたかは…………、聞かないでおこう…………
さっき聞こうとしたら、母さんから威圧感が出ていたから…………
「それで…………、この子達が」
「あぁ」
そして今、足にしがみ付いているファンナとオシュアの頭を撫でながら俺は頷いた
イグニスは、ファンナ達と目線を合わせ、二人を見ると、二人は、俺の足の影に隠れてしまった
イグニスが怖いから隠れたのでは無く、警戒はしているものの、俺の友人と話していたからか、チラチラと顔を覗かせ、イグニスを見ている
「可愛らしい二人じゃないか
それにお前にとても懐いてる」
「まぁな、ここはファンナ達の家だからな」
そんな他愛のない会話をした後、イグニスは急に真剣になりながらファンナ達を見た
そして立ち上がると、俺に目配せしてきた
「ティア」 「えぇ」
俺はティアを呼べば、ティアはすぐにファンナ達を連れて、部屋を出ていった
ファンナ達は、俺を数回、見てから出ていったが……………
そんな姿を可愛く思いつつ、イグニスを見た
「確かにフェンリネス族だったな…………
俺も初めて見たが、あそこまで一目で分かるくらいだったない」
「あぁ…………、イグニス」
「分かってる
既に情報網は、封鎖済み
この事を知ってるのは、少なくともお前とごく限られた者たちだけだ」
そう言えば、イグニスは、母さんを見れば、母さんは、俺を見た
「それとギルド本部からの調査で分かった事があるわ
現在、ブエルゼナ国の豪雨災害の被害を受けた村について、調査をしていたのだけれど……………
その豪雨が人為的によるものが分かったわ」
それを聞いた瞬間、置いてたコップにヒビが走った
「ノア、怒りを表すのはいいが落ち着け
孤児院の奴らにバレる」
「…………すまん」
イグニスにそう言われ、すぐに溢れ出ていた魔力を抑えれば、母さんが話を進めた
「その村の当時の事を村の人に事情聴取をしていたところ、いきなり豪雨になったと言っていたわ
それにその豪雨になる前に、山の方に人影を見たと言う目撃証言も出てきたわ」
「そいつらの目的は、十十八九」
「……………ファンナ達か」
「その通り、フェンリネス族は、神話的存在
そんなのが居るって、分かったら商売目的で狙う輩が居るのは、当然だ」
「…………そいつらの行方は?」
「現在、全国のギルド、各国による捜索、撲滅の連携を行なっている
だが、情報は今は無い」
そこまで言えば、イグニスは、思わず頭に手をやった
「くそっ、平和になってもバカのする事は分からねえ」
「お前が落ち着け」
「っと、そうだな…………
その件は、俺達に任せてくれ
だが、お前も気をつけてくれ」
「勿論だ」
そこで話が終わったと感じた瞬間、母さんが手を叩いた
「話が終わったわね?
それじゃあ久しぶりに孤児院の子達と遊びましょうか
私も勿論、アメリアには、良い経験になるわ」
母さんが、そう言えば、イグニスは、急に真っ赤になった
「ちょっ!? ノアの母ちゃん!!
俺達、まだ式を上げてないんだが!?
それにこ、子供はまだ早い気が…………」
「あら? でもいずれは子供を待つ気でしょ
なら、アメリアには、子供の接し方をここで学んでもらうには、十分な所よ
ノアもそれでいいわね?」
「俺も構わないけど……………」
「なら、いいわね
ほら、アメリアも待ってるし、行くわよ」
そうして、母さんに背を押されて、俺達も部屋を後にするのであった
「ところで母さん
子供ってどうやって」 「貴方には、まだ早いわ」
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