孤児院経営の魔導士

ライカ

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本編

ハーピィの国からの招待状

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自室で目を覚まし、ベットから起き上がり、伸びをして、窓を見れば、まだ日が昇り始めた所のようで空が白み始めていた

(珍しいな…………
この時間に起きるのは………)

いつもならマーシャに起こされるが、今日は珍しくその前に起きれた
本当ならこの時間帯に起きたいが、戦時中では無く、平和になったからな………
顎を摩りながら部屋を出ようとすれば、机に手紙が置いてあった

(手紙?)

寝る前には、机に無かったソレを見つければ、近付いて、手に取り、差出人を見た

(……………アイツか)

差出人の名前を見た瞬間、微笑むと手紙を開けた
そして軽く内容をサッと読めば、目が点になるのが分かった

「は?」

一度、手紙から目を離し、もう一度、内容を何度も読み返してから、俺は目頭を押さえた

「……………今日、平和だといいな」

そんな呟きをしてから、俺は手紙を大事にしまった

そして時間が過ぎ、今……………
俺は一人、転移陣である国を訪れていた

(久しぶりだな
ハーピィ族の国………、【ウィンゲイル】)

ウィンゲイル…………
戦時中、魔族と人族の中立となった国………
ある時は、味方に、そしてある時は、敵として何度も戦いあった国だ………
だが、和平が決まり、終戦となった今、ここはハーピィ族の力を使った観光地に生まれ変わった
ハーピィ族が人が五人くらい入れるゴンドラを空に浮かせて、そしてこの国の近くにある見事な滝を見て回る観光が大人気だとか、聞いたことがあるな

だが、今回は観光目的で来た訳では無い
だからティアに留守を任せてあるが、今度は孤児院の皆で遠足に来るのもいいかもな

そんな事を考えながら外に出ると、すぐに足を止めた

「………………また珍しく迎えを寄越してきたか」

前に鎧をつけたハーピィ族の部隊が並んでいて、俺に気付けば、その中の一人が近づいて来た

「お久しぶりです ノア兄ちゃん」

「大きくなってもその呼び方は変わらないな
【アレス】」

俺がそう言えば、アレスはニシシ、と嬉しそうに笑っていた

アレス・ウィンドル
この国の第三皇子にして、ハーピィ族騎士団筆頭と言われている
昔、イグニスと初めてこの国に来た時、まだ小さかったが、今では俺の首元くらいの身長になったから大きくなったと思うが、昔から俺やイグニスの事を兄ちゃん呼びしてくる事は変わらないままだ

「えへへ、それよりようこそ
ウィンゲイルへ」

「あぁ、でだ…………
この招待状は何だ?」

笑顔のアレスに俺は持ってきた手紙を見せた
内容は、俺への招待状だったが、肝心な所が書かれてなかった為、内心…………、かなり疑っている

「あぁ、ごめんね
全く…………、姉ちゃんは………」

そう言って、アレスはため息を吐き、翼で頭を掻く仕草をすれば、俺を見た

「それはお城でお話しするね
さぁ、乗って」

そう言い、アレスに背中を押され、ゴンドラに入れられれば、すぐに出発し、空を駆け始めた
窓の外を見れば、騎士のハーピィ達がゴンドラを警備しながら飛んでいる
その異様な光景に苦笑いしながら周囲を見渡した

(おかしいな………)

いつもはゴンドラを持ち、空を飛ぶハーピィ達が行き来しているが、見るからに今、飛んでいるのは、このゴンドラのみ…………

「キナ臭くなってきたな…………」

そんな事を呟きながら外を見てれば、大きな巨木が見えてきた
この巨木こそ、ハーピィ族の城である

城に着き、ゴンドラから下りれば、既に数名、入口前で待っていた

「お久しぶりです ノアさん
遠路はるばるお疲れ様でした」

「あぁ、確か去年の建国記念の祭り以来だったな
【ハピネル】」

ハピネル・ウィンドル
この国の女王にして、元人国同盟騎士団の長を務めた実力者だ
今は国を持つ身として、城に居ることが多いが、その身なりは変わらず鍛錬を怠けてはいないようだ

「そうね
今年はあれ以上にするつもりだから楽しみにしてて」

「あれ以上かよ…………
とんだ祭りになりそうだな………」

苦笑いを浮かべながら俺は近付けば、招待状を見せた

「で、招待状を寄越してきたのはいいが、何の招待状だ?」

「それに付いては中で話すわ」

そう言いつつ、ハピネル達に連れて来させられたのは、ハピネルの部屋だった
部屋のテーブルには、様々な菓子や紅茶類が並べられ、カップ類も様々な物が置いてあった

「…………お茶会?」

「まぁ、そんなところね
とりあえず座って?」

言われるまま、椅子に座れば、ハピネルは器用に紅茶を淹れ始めた
この場合、普通なら王族ではなくメイドとかにやらせるはずだが、ハピネルは自分でしないと、気が済まないとの事で自分でやってしまって、使用人達は、困ってる事を思い出した

「はい、この国で最近、流行り出してる紅茶よ」

「あぁ」

カップを受け取り、一口、飲んでみた

「渋っ!?」

一口、飲んでみた瞬間、俺は思わず叫んでしまった
口に入れた瞬間、想像を超える渋さをして、思わず口に含んだヤツを吐き出す所だった

「あっ、やっぱり」

「知ってるなら最初に教えてくれ…………」

思わず頭を押さえて、下を向けば、悪戯に成功したと分かるくらい嬉しそうな笑顔をしたハピネルが、向いに座り、器用に紅茶を飲んだ

「うーーん、私達には、美味しいんだけどね」

「そこは種族の違いだろう…………
まぁ、確かにこの国で流行るのは分かるがな」

ハピネルの様子を見れば、どれだけハーピィ族にとって美味しいのかが分かるからそう言えば、ハピネルは、一息ついて、伸びをした

「あーあ、私も王族とか妹に譲って、ノアの孤児院で働きたいなぁ」

「おまっ、相変わらずそこは変わらねえのかよ………」

「仕方ないじゃない
だって、書類とか、国のアレコレとか、正直、私のがらじゃないのよ
昔の私を見たノアなら知ってるでしょ?」

「そりゃそうだよな…………
単騎で魔族の軍勢を相手に手球にとったお前ならな………」

苦笑いを浮かべ、ハピネルを見れば、着ていた王族のドレスを飽きた表情で見ていた
こう見えて、ハピネルは、この国一の実力者でもある
昔はよく魔族の軍勢を相手にたった一人で突撃して、勝ってくる程の戦闘狂と言えるくらいか…………
落ち着いたと思っていたが、どうやらそんな事はなさそうだ…………

そんな事を思っていれば、ハピネルが両翼を合わせた

「あっ、そうだ
そろそろ内容を話すね」

「やっとか…………」

「あのね、【カユリア】が結婚するの」

「ぶっ!? あの女タラシが!?」

ハピネルの言葉に思わず吹き出し、聞き返してしまった
俺が聞き返せば、ハピネルは頷くが、その表情は何処か複雑そうな顔をしていた
恐らく俺の言葉だろうな

カユリア・ウィンドル
この国の第二皇女で、今は参謀長をしている
その性格から昔は、ハーピィ族の頭脳と言われるくらい冷静であり、状況把握が早いくらいだ
そして……………、この国一の女タラシだ…………
大体、カユリアの部隊には、アイツが堕としたハーピィ達で結成されてたな…………
しかもタチが悪い事に本人は無自覚な所だからなお悪い…………

「マジかよ…………」

「えぇ、大マジよ
私も驚いたのだけどね」

ハピネルは、そう言い、クッキーを食べれば、扉がノックされた

「いいわよ~」

ハピネルが簡単にそう言えば、扉は勢いよく開いた

「姉さん!!
あれほど勝手に騎士団の一つを動かさないでって言ったじゃない!!」

そして勢いよくハピネルに飛びつけば、凄い剣幕で早口でカユリアが迫っていた
と、言うか…………
この様子だと、俺が居ることも、来てることも知らないようだな……………

「まぁまぁ、落ち着いて
お客さんを連れてきてもらっただけよ」

「お客さんって」

「よぉ、久しぶりだな」

「…………っっっっっ!!?!?!?」

ハピネルが落ち着くように言い、理由を話せば、カユリアがゆっくりとこっちを向いてきた
まぁ、気楽に挨拶をするつもりで言えば、カユリアが驚き過ぎて、天井に激突した

そこまで驚く事はないと思うんだがな…………

「ノアさん!?
な、何で!?」

「私が招待したのよ
一緒にお茶会をしたくてね
ついでに貴女が結婚する事を報告にね」

「もーー、姉さん
それなら先に言ってよ…………」

なんとか落ち着きを取り戻したカユリアは、改めて俺の方を向いた

「お久しぶりです」

「おぅ、結婚するだってな
おめでとう」

「えぇ、これから末永くよろしくお願いしますね
お義父様」

「……………はっ?」

簡単な挨拶で済むと思っていた俺だったが、カユリアの言葉に思わず声が出た

「今…………、何て言った?」


「お義父様と言いました」


「……………と、言う事はお前の婚約者って」

ギギギ、と顔をハピネルの方に向ければ、満面の笑みで頷かれ、俺は思わず頭を抱えて、項垂れた


「……………久しぶりに説教だな」

「紅茶、美味しい♪」


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